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なろうラジオ大賞6応募作品集

英雄皇帝は死の間際にトレーニング不足を嘆く

作者: 富井トミー
掲載日:2024/12/25

 フリードリヒ一世。又の名を、バルバロッサとも。

 ドイツ諸邦を纏め上げ、傾きかかった神聖帝国を立て直した皇帝。

 戦に交渉。剛と柔を巧みに使い分け、目的を成す英雄でもある。


 そんな彼は、激動とも言える人生を送った。


 二十五の歳、父の死と共に大領地を継承する。

 その数年後には、ローマ王というドイツ諸邦の頂点に君臨する事となる。

 そこからの彼は、権力に溺れる事無く、国の安定を目指した。


 自身の持つ権利を切り崩し、味方を増やしていった。

 最大のライバルに対しても同様に、協調の道を模索した。

 そして、やり遂げた。足元が固まったのだ。


 そこで彼は、柔から剛へと舵を切る。

 神聖帝国が神聖たる所以。ドイツなのにローマである由縁。

 いわゆる、イタリア遠征の開始だ。


 その頃には、彼の称号は王から皇帝へと変わっていた。

 戴冠を受けた相手と、幾度となく争った。

 その相手が病死すると、後継問題にも介入した。


 だが、これが良くなかった。

 本国を後回しにしたツケが、じわりじわりと彼を蝕む。

 剛毅な政策が、イタリア諸邦の反感を買う。


 味方から顔を背けられながらの戦いに、彼は敗北を喫する。

 後継問題でも、苦渋の譲歩という結果に終わる。

 しかし、彼は天に見捨てられてはいなかった。


 相手方の足並みが乱れに乱れたのだった。

 敗北と譲歩を取り戻すべく、彼は柔軟に交渉した。

 そして、ある程度の挽回を果たしたのだ。


 そこからの彼は、緩急剛柔の姿勢で多くの成功を収めていく。

 外交政策によって、周辺国への影響力を強めた。

 国内政策でも、再びの安定を取り戻す事となる。


 そんな彼のもとに、衝撃的なニュースが舞い込んだ。

 聖地エルサレムの失陥である。

 神聖帝国の長としての彼とキリスト教徒としての彼の間で、難しい決断を迫られた。


 帝国の近隣には、火種があった。

 しかし、敬虔な彼は、十字の軍に身を捧げたい。

 そして、彼は十字架を掲げる決意をしたのだ。


 厳しい道のりだった。

 戦の数々に、補給の不安。慣れぬ土地というのも、拍車をかけた。

 それでも彼は突き進む。掲げた十字の為に……。


 ――それは、突然起こった。


 渡河の最中の出来事だ。

 彼の馬が足を滑らせ、彼は水面に叩きつけられる。

 そして、彼の遺体は発見されぬまま、その生涯を閉じたのである。


 彼は、死の間際にこう思ったのではないだろうか。

 出生地の河で、もっと泳ぎのトレーニングをしておけばよかった、と。


 彼亡き十字の軍は、聖地を奪還する事が叶わなかったのだった。

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