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47:本当の名

北中穂乃果の病院から出ると、辺りはまだほんの少しだけ薄暗かった。ミシリは何も言わずに、俺の腕を引っ張る。引っ張られたまま、ミシリに着いていくと、小さな川の橋だった。そこで、ミシリは立ち止まり俺に尋ねる。


「谷沙耶が羽尾奈美だったということを知ってたんですか?」


「知らなかった...」


"あの日"のことは忘れられない。"あの日"のことは一生消せない。


「そうですか...」


「ミシリ。これを機に言った方がいいと思う。前世のことを。」


俺はミシリの目を見て言った。


「そうですね。もう、黙っている意味はありません。私の本当の名も。」


ミシリの目に強い決意が宿っていた。その時、俺とミシリの横に羽尾奈美が現れる。


「今なら話せる。橋の下で話そう。」


俺はいきなりのことで何も言えず、ただミシリと谷沙耶が橋の下に移動していく姿を見ることしかできなかった。


話が終わるまで、空模様でも見ていよう...




「ごめんね。いきなり。」


「う、うん。」


互いに何も話さず、ただひたすら川の音が2人の耳に入ってくる。

この沈黙を破ったのは羽尾奈美だった。


「謝らないで...」


「えっ...」


「ごめん。心の覗いちゃった...」


ミシリは獅子湊に会ってから、記憶が少しずつ思い出してきた。幼少期の頃、謎の夢や記憶が混ざり、今の自分は何なのかわからなくなっていた時がある。しかし、獅子湊から出会ってから一緒にいる時間が増えるにつれて、思い起こされた。


「たしかに私は"あの日"死んだ。死ぬ時は怖かった。でも、怒ってない。」


「...」


「私があの業界に足を踏み入れたのは、復讐だよ。」


羽尾奈美はミシリの目を見て言った。目の奥に光がなく、殺意に満ちた目だった。


「復讐はできなかった。そのまま、死んで終わりなんだと思ったよ。後悔はあったけど、やっとお父さんに会えると思ったんだよ。でも、目覚めたらこの世界にいた。斬られたはずの首は無事で、体には傷一つもなかった。」


その時、羽尾奈美は立ち上がった。


「ごめん、また夜会おうね。」


ミシリは何も言えず、羽尾奈美は煙のように消え去った。


復讐...お父さん...奈美が言っていたこと何一つもわからないよ...


ミシリは橋の上にいる湊の元に向かった。


「話は終わっ...大丈夫か?」


「え?」


「顔色が...」


「大丈夫です!少し考えことを...あはは...」


俺はミシリが谷沙耶と何を話したのか気になるが、聞かず宿に戻ることにした。歩いていると、複数の国兵のような鎧を身につけた者と何度か見かける。前、馬を預けたおっちゃんに聞いた通り、馬に跨っている者もいた。みんなして、同じ方向に向かっている。


何かあるのか...?そっちの方向は...


「準備中じゃないのーーーーー!!!」


そう思っていた時、前からいきなりウタの大声が聞こえた。よくよく前を見てみると、ウタとマナ、ミントがメモに残しておいた飲食店の前にいる。俺とミシリはそのままウタたちの元へ歩いて行ってた。


「ウタ〜!」


俺は手を振りながら呼ぶと、ウタたちはこちらを向く。すると、ウタはマナとミントの手を取り、走って向かってくる。


「えっ...」


「2人でなにしてたの?」


ウタは俺に顔を近づけ、目をぴくぴくさせている。


「ら、ラックキルについてだ。」


「ふーん...」


これ信じてないやつだ...でも、本当なんだけど...


「そうです。ラックキルについて話してたんですよ。」


すると、ミシリはウタに真剣な眼差しを向けて言った。


「とりあえず、どこかで朝ごはんを食べてから話します。」


ミシリがいつもと違う様子で、ウタたちは不思議に思う。俺がメモしたリオネスマーチ店はまだ準備中であるため、他の違うところで朝食を摂った。その後、俺たちは宿に戻る。部屋に着くとウタとマナ、ミントはテーブルを囲んで座った。俺とミシリも腰を下ろした。


「その...今日、ミシリと行ったのは病院だ...ケルンが治療したところの...」


「なんで?」


ウタが俺に尋ねる。


「ケルンの治療をしてくれた先生は俺と同じ転移者なんだ。昨日、話に行ったんだけど、ラックキルが裏で操っていること、俺が話したこと全て知ってたんだ。どこから聞いたのか聞くと、俺と同じ前世ラックキルに所属していた人からで、今日その人と会ってきたんだ。」


「では、なぜミシリさんをつれて行ったのですか?」


今度はマナが俺に尋ねてくる。


「...ミシリは前世ラックキルに所属してたんだ。」


「ミシリさんも転移者なんですか?」


「ミシリは転移者ではなく、転生者なんだ。」


「やっぱりね...」


ウタは机に肘をつきながら言った。マナとミントもウタと同じような反応をしている。


「やっぱりって...知ってたのか!?」


「知らないわよ。まさか、転生者だったとはね。でも、ミナトと会ってから様子がおかしかったのは、すぐ気づくよ。一緒にいることもなんか多かったように感じるしね!」


最後の一言は要らないような気がする...


「黙っててすみません。」


ミシリはウタたちに謝った。


「私の本当の名は、古六詩音(こむいしおん)。獅子湊は私の先輩です。少し前に先輩から"あの日"のことを聞いたと思いますが、その時に生き残ったのが私です。」


「だから、ミナトくんはミシリを連れて行ったの?」


「ミントの言う通りだ。そして今日、全身黒色の姿をしている人とあうことになっている。だから...」


「私たちはここで待っとけって言いたいのよね?」


ウタは俺の目を見て言った。


「えっ...」


「そんなの無理よ。私は本気でミナトが言ってるラックキルを潰したいと思ってる。」


俺を見るウタの目は真剣だった。


「私もです。ミナトさん、ミシリさん。行かせてください。」


「私もだよ。ラックキルを潰したい。」


マナ、ミントはウタと同じ目をしている。

ラックキルを潰す時は近づいている。ミシリとの関係も話した。3人に隠す必要はない。


「わかった。相手が良いと言うかわからないが、一緒に行こう。」

最後まで読んでいただきありがとうございます!!

明日も投稿予定ですので、よろしくお願いします(*゜∀゜*)

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