46:千里眼
驚きが隠せない。明らかに今、俺は動揺している。手の震えが止まらない。
「すごい震えてますね。」
谷沙耶は俺の差し伸べた手を掴み、ゆっくりと立ち上がる。ミシリは両手で口元を覆っている。
「また会えることができたのは、"あの日"以来ですね。」
俺の肩を軽く叩いて、北中穂乃果の隣の椅子に腰を下ろす。北中穂乃果は今、何が起こっているのか理解できない。
「いつまで、立ってるんですか?死神さん。それに、ここに座っている可愛いお子ちゃまは誰ですか?」
俺は何も言えず、ただ、重い足を動かして椅子に座る。ここにいる可愛いお子ちゃまとは、ミシリのことを言っているのだろう。ミシリは転移者ではなく、転生者。容姿ほもちろんのこと、変化しているため、わかるわけがない。
「ナ、No.5640」
ミシリは口元に覆っていた両手を下ろして、谷沙耶に目を合わせず言った。
「No.5640......久しぶり。」
谷沙耶は少し考え込んだ後、あっさりとミシリがNo.5640と信じ込んだ。
谷沙耶。本当の名は、羽尾奈美。俺が前世の頃、何回か指導や任務を遂行したことのある人物。そして、初めて俺が任務中に死人を出さしてしまった人物でもある。
「単刀直入に聞きますけど、ラックキルについてですよね?」
さっきまでとは違い、柔らかい口調で言う。
「え...あ、そ、そうだ。」
俺はそのペースについていけず、慌てて応える。
「言いたいことはあると思いますけど、それはまた後で。」
大きなため息をつきながら、谷沙耶は喋り出した。
「今、自分はラックキルに追われている身なんです。元々、ビスケス国にいましたが、なんとかここまで逃げてきました。」
たしか...今、ビスケス国はラックキルが支配している...それに、芝大翔が言っていたのは、谷沙耶のことだったのか...?
「そして、死神さん...全身黒色の姿をした人物が気になっているようですね。」
「ッッ!?なんで...わかった?」
「私も転移者ですよ。隠れスキル、千里眼。」
「千里眼...」
「まぁ、そのことは後々話します。」
谷沙耶は深呼吸をする。
「——会ったことがあります。その全身黒色の人物に」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「うぅ〜ん...」
目を擦りながら一番早く起きたのは、ミントだった。隣のベットで寝ていたはずのミシリの姿がなく、湊の姿がないことに気がつく。ゆっくり起き上がってみると、テーブルには紙らしき物が置かれているのが、視野に入る。目を擦りながら、手に取るとお金と手紙だった。
ちょっと、ミシリと出かける
リオネスマーチっていう美味しそうな店が見つけたから
このお金で食べて
昼前には帰る ミナトより
「え......えぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」
ミントは大声で驚き、その声でウタとマナが起きる。
「朝から...なに?」
「...どうしました?」
ミントは慌てて2人の腕を引っ張って、手紙が見れるように近づける。
「これ!」
ミントは2人の前に手紙を差し出す。ウタとマナは目を細めながら手紙に目を通す。そして、2人揃って部屋にミシリと湊がいないかを確認する。再び、2人は手紙に目を向ける。
『えぇぇぇぇぇぇぇ!!??』
ウタ、マナ、ミントは驚き謎に焦りながらも、顔を洗い、着替えて出る準備をした。
「なんで、2人だけで出かけるの!」
「まぁ、とりあえず、このお金で朝ご飯でも食べようよ。」
ウタの愚痴にミントはお金をなびかせながら、落ち着かせる。
「とりあえず、2人が帰ってきてから話を聞きましょう。」
始めマナも焦っていたが、落ち着きを取り戻した。3人は部屋を出て、リオネスマーチという店へ向かう。
「って、それどこなのよ。」
ウタが不機嫌になりながら、ミントに尋ねる。
「うーん...どこなんだろう?」
湊が書いた手紙には店名しか書かれていない。
「聞くしかありませんね。」
マナはそう言うと、ささっと近くにいたおばちゃんに尋ねている。その行動力にウタとミントはいつも助けられている。
「そこの曲がり角を右に曲がったら左手に出てくるそうです。」
マナの言う通り、リオネスマーチ店は姿を現したが、
「準備中じゃないのーーーーー!!!」
ウタは大きな声で叫んだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「私が話せるのはここまでです。」
「そうか...ありがとう。」
「では、また、夜に来てください。」
俺たちは椅子から立ち上がる。北中穂乃果は俺が渡した上着を脱ぐ。なんか、とても えっち だ。
「死神さんはえっちな人ですね。」
「な、何がだ!」
ニヤニヤしながら谷沙耶は窓から出ようとした時、ミシリが呼び止める。
「な、奈美!」
谷沙耶は少し驚いた顔をしていたが、微笑む。
「また、話そうね。」
谷沙耶は窓から出て、その場から消え去った。俺は北中穂乃果から上着を受け取り、ミシリと共に病院から去った。
今日の夜、俺とミシリは全身黒色の人物に顔を合わせる。
本格的にラックキルを潰すのはもう近い。
待ってろよ...ラックキル...
最後まで読んでいただきありがとうございます!!
明日も投稿予定ですので、よろしくお願いします(*゜∀゜*)




