43:中心部
馬を走らせて数時間が経った。馬も体力の限界で徐々にスピードが落ちていく。朝は準備しかしていないため、何も食べていない。ウタはお腹が空き過ぎて馬の上でグターというような効果音をつけて、死にかけている。
「ウタ。もう少しで街に着く。我慢だ。」
「ミナト〜...死んじゃうよ〜。」
ウタ以外のマナ、ミシリ、ミントは平気な顔でいる。すでにクリオス国には入っているが、隠れスキルを持っている北中穂乃果がいる街には遠い。おそらく、今日中に着くことは難しい。
「ウタさん!街が見えてきましたよ。」
マナはウタに声を掛けながら励ます。
「一旦、そこで朝食を摂ろう。」
ここはクリオス国の西部あたりある街である。馬が珍しいのか、街に入って朝食の取れそうな店を探している時、俺たちの顔を見てくる。
「あ!あそこで良いんじゃないですか?」
ミントが指差す方向を見ると、看板に朝食セットとデカデカと書かれていた。数人が列を作って並んでおり、評判は悪くなそうである。
「そうしよう...でも、その前に馬をどうにかしないと...」
「ミナト...まだぁぁぁ?」
「ウタさん。もう少し我慢しましょうね〜。」
マナは相変わらずウタの面倒を見てくれている。感謝はしているが、ここまでウタは駄々をこねるもんだろうか。辺りを見渡すと、牛などを飼っている牧場が見えた。
「俺はあそこで預けられるかどうか、聞いてくるから待っていてくれ。」
俺は牧場の方へ馬を向かわせた。
「すみません。この馬を預けることってできませんか?」
「あー、問題はねーが。あんちゃん、珍しいね!どこかの兵かい?」
「兵?」
「いやー、馬に乗るなんて国の兵ぐらいしかないからな〜。」
どうやら、俺らの方をチラチラと見ていたのはどこからの兵なのかを伺っていだのだろう。まさか、この世界で馬は珍しいとは...俺はまだ、この世界のことについて知らなさすぎると実感する。
「あと、4頭も預けられますか?」
「4頭!?まぁ問題はないぞ。」
「お金は払いますので、餌とかって...」
「あー!全然いいぞ!」
「ありがとうございます!」
俺はウタたちの4頭を連れてくる。ウタたちにはミントが見つけた店に並んでもらうことにした。
「すみません〜。」
「おー!それじゃ、この5頭に餌とかやっておくから。用が済んだら、戻ってきてくれ。」
「ありがとうございます!」
俺はお金を払って5頭を預けた後、ゆっくりと店へ向かった。
「ミナトくーん!こっちでーす!!」
ミントが顔を出しながら大きく手を振ってくれたおかげで簡単に見つけることができた。まさか、こんな短時間で並ぶお客さんが増えるとは思ってもいなかった。さっきよりも3倍ぐらい並んでいる。
「ここ、結構有名らしいですよ!」
ミントは少し興奮気味で言う。
「そうなのか?」
すると、店員さんらしき人が顔を出して「次のお客様〜!」と呼ばれた。俺たちは店に入って、朝食セットを5個頼んだ。すると、数分もしないうちに出てきて、提供スピードに全員が驚いた。
『はやっ!』
朝食セットなのに、プレートには大きなハンバーガーとサラダがあり、朝食にしてはとても重い。
『いただきまーす!』
一口食べてみると、ここの店が人気だということが充分理解することができた。値段が安い割に量が多く、かつ、とても美味しい。俺たちはゆっくりとハンバーガーとサラダを食べ終えた後、預けた馬をみんなで取りに行った。
「おー!あんちゃん!早いなー!」
「まぁ、そこの店で朝ごはん食べてきただけですから。」
「そうなのか?お?あんちゃん、ハーレムかい?」
「え?」
俺の後ろの方を見て尋ねてきた。確かに、男1人に対して女は4人。
「いやー!いいな!」
「あはは...」
このおっちゃん...ハーレムって意味知ってっか...
俺はおっちゃんから預けていた馬を受け取る。ウタたちは受け取った馬に乗り、この街から出発する準備をした。
「栄養のある餌を与えておいたからな!」
「ありがとうございます。」
お礼をした後、俺も馬に跨った。
「それじゃー、元気でな〜!」
「はぁーい!」
俺たちはおっちゃんに手を振って再度、馬を走らせた。おっちゃんが良い餌を与えてくれたおかげか、朝よりも馬は元気に走っている。
「今日はどこまで行くのですか?」
馬を走らせている途中、ミシリが尋ねてきた。
「目的地はウタの故郷だ。だが、今日中は難しいから、クリオス国の中心部を目指す。」
「それって...クリオス国の一番大きいダンジョンがある場所?」
朝食を食べてから、ウタの調子は戻った。
「そうだ。まぁ、ゆっくり目指すぞ〜。」
『お〜!』
ウタ、マナ、ミシリ、ミントは空に拳を掲げた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「やっと着いたな...」
日が暮れる前にクリオス国の中心部にたどり着くことができた。クリオス国で一番大きなダンジョンは俺たちを見下ろしているように見える。以前、泊まったことのある宿に泊まることにし、馬もそこの宿で預かってもらった。
「なんで、5人部屋なの?」
「うーん?だって、ここ露天風呂ついているんだもん!」
ウタさんよ...まぁ1日だけだしな...
「ところでみなさん、一緒に入りません?」
うーんと、マナさん?それ以前も同じこと言ってたような...
『賛成ー!』
俺は忍び足で部屋から出ようとしたが、後ろからマナに肩を掴まれた。
「ミナトさんもですよ?」
「へ?」
無理やり俺は服を脱がされ、一緒に入ることになった。何度か自分の顔をビンタし、心を無にする。俺は見晴らしの良い露天風呂では、一切疲れをとることができなかった。
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