40:涙
え...あの人って...
勝手に体が動き出し、両手を失った研究者らしき人物の元へ駆け寄る。群がっていた人たちは俺に気づき、捕まえようとする。
「おい!避難しろ!」
捕まえる手がどこに伸びるのか知っているかのように避ける。さらに、上手く避けていることで群がる人たち同士がぶつかり合う。
「クソ!捕まえろ!」
もたついている間に、俺は研究者らしき人物の前までついていた。肩からは血が溢れ出しており、その付近には腕の肉片が飛び散っていた。
これはあまりにも...悲惨すぎる...
目を逸らしたい気持ちがあったが、体が動かせない。俺は勝手に手を伸ばし、研究者らしき人物を揺らした。
「や...め......」
まだ...意識があるのか...?でも...
小さい声で言った研究者らしき人物はもうすぐ息絶えると俺は悟った。まだ、揺らしていると俺の方にもたれかかってくる。そして、俺の耳元で囁いた。
「だ...まさ...れ...るな...いき......ろ...」
言い終えると同時に、両腕が無いはずなのに俺は力強く抱きしめられる感覚があった。その感覚は、安心させられるように暖かかった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
気がつけば、俺は目が覚めていた。俺の顔を覗き込む、頭から血を流すミシリと肩をおさえるマナの姿が俺の視界に入る。
「ミナト!!」
「ミナトさん!!」
二人は俺に抱きつくが、何が起きたのかわからなかった。ただ、しっかりと覚えているのは、レオと戦っていたこと、"研究者らしき人物が残した言葉"である。
ゆっくりと体を起こして辺りを見ると、少しずつ夜が明けていた。俺の周りには、エルフ族の族長やアーシャ、その他のエルフ族がいた。
「お、お父さん!!」
エルフ族の族長、ドルボは左胸を押さえながら地面に座り込んでいた。
「だ、大丈夫だ。アーシャ、シシミナト様を。」
「で、でも...」
「アーシャ。私は大丈夫だ。手当てを。」
「わかりました...」
アーシャは俺の方に駆け寄り、手当てをした。俺は至る所に切り傷、刺し傷などをしており、流血していた。
その後、俺はミシリからどんな状態だったのかを詳しく聞いた。
ミルクレオとの戦いでは、俺は首を斬り落として殺したこと。それを見たミシリはマナを連れてきたそうだ。連れてきた時に俺は静止しており、マナは精霊魔法をかけたが、力が足りず弾き返されたようだ。
そこで、エルフ族の族長、ドルボに相談した所、ドルボ自身が精霊魔法を他のエルフ族たちと行ったそうだ。その時、俺は暴れたらしくそれを押さえるためにミシリとマナは俺に飛びかかったそうだ。
俺があの二人を怪我させてしまったのか...
「だ、大丈夫。ミナト、先輩が戻ってきてくれて。」
ミシリはそう優しく微笑みながら言って、
「ミナトさんを信じて良かったです。」
マナは目に涙を浮かべながら言ってくれた。
俺は手当てをしてくれたアーシャにお礼を言って、傷口が広がらないようにゆっくりとドルボの元へ近づいた。それに気がつくドルボは慌てて、
「シシミナト様!」
と立ち上がろうとするが、すぐに俺は引き止めた。再び座るドルボに俺は正座して座る。
「本当にありがとうございます。」
深く頭を下げた。
「や、やめてください。私はただ、精霊魔法をかけたまでです。」
ドルボは眉をハの字にして言った。
「シシミナト様のお陰で事を収めることができました。本当に感謝しかないのです。」
「そう言って頂けると、とてもありがたいです。」
「いえいえ、さぁお仲間様の元へ行ってあげてください。」
「本当に...ありがとうございます。」
俺は精一杯、頭を下げてその場を後にした。ミシリとマナの案内の元、ウタとミントに会うことができた。
「ミナト〜〜!!」
泣きながら、ウタは俺に飛びついてきた。傷口が痛むが、ウタに従って俺も抱きしめた。ミントは泣きながら、
「本当に...良かったです...」
と微笑みながら言ってくれた。ウタが充分に俺を抱きしめた後、ミントに変わって優しく抱きしめてくれた。
俺はみんなが無事で終えられたことに、涙を流した。
最後まで読んでいただきありがとうございます!!
41話は来週の土曜、18時ごろに投稿予定です!!
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