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プロローグ



《黎明神話:アト・エン・ソフ》



——はじまりに在ったのは、知識でも、命でもない。“境界”であった。


かつて宇宙ソフィアは一つであり、全ての可能性が混在する混沌カオスだった。

そこに現れたのが、“認識するもの”アト(At)である。アトは一切の形を持たず、ただ情報の差異を知覚する存在であった。

アトはやがて、熱の奔流と静寂の間に「隔たり」を感じ、それを観測した。

その瞬間、全宇宙は分かたれ、「動」と「静」、「陽」と「陰」、「生」と「死」とが分岐した。


これが「エン・ソフ(Ein Sof)」、すなわち“無限の境界”の誕生である。




《二つの民:アダムとイヴ》


エン・ソフの揺らぎから二柱の存在が誕生する。

一柱は“アダム”——力と意志の化身、熱を生み、変化を司る存在。

もう一柱は“イヴ”——均衡と調和の女神、秩序と再生を象徴する者。


アダムは星を穿ち、時間を進め、命を燃やした。

イヴは風を編み、空間を満たし、命を癒した。

両者の交わりにより、最初の星——ガイアとバベルが誕生する。


しかし、アダムはある日、「時間が止まれば熱も失われぬ」と考え、イヴの秩序を疑い始める。

彼は“魂”と“肉体”を切り分け、情報だけで維持できる生命を創ろうとした。

それが“アニムス”の原型であり、マクスウェルの悪魔の理論に基づく試みだった。


だがイヴはこれを「禁忌」とし、言った。


「命とは、熱に耐え、冷たさに戻ること。

永遠の保存は死の否定であり、宇宙そのものの崩壊に繋がる。」


争いの果てに、アダムとイヴはそれぞれの星へと去る。

アダムは火と意志の民を従え、ガイアへ。

イヴは風と記憶の民を従え、バベルへ。

そして両者は誓約を交わした。




《誓約と終焉》


その誓いとは、

「生命を完全に制御しようとせぬこと」、

「星と星の間を越境せぬこと」、

そして、

「再生の時が来るまで、“扉”を開かぬこと」。


この三つであった。


だがアダムの民の中から、一人の反逆者が現れる。

その名は——プロメテウス。

彼は星の終末を予見し、“禁じられた扉”を開こうとする。


イヴは最後に、アダムへこう告げる。


「お前が再び“境界”を超えんとするならば、我はこの星を灰に戻し、

全ての命を『ゼロ』へ還すだろう。」


こうして、世界は「最後の審判」へと向かう。

命は滅び、記憶は風に還り、ただ一つ、“再生”の種だけが未来へと託された。


それが——

「人間」という、限りなく脆く、限りなく自由な存在である。



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