儀式再び
2日後、私はまた馬車に揺られていた。
シエルは終始無言で一緒の馬車に乗っていた。
「シエル」
「はい、ダヴェル様」
「あちらに着いたらどうするのだ?」
「密かに先に神殿に向かいます」
「まぁそれがいいだろうな……だがその前に一悶着ありそうだがな?」
「あの者達ですか?……」
私達が言っているのは薄暗い森の中に蠢く人影の事だ。
それは大体見えるだけで3~4人
前の仕返しでもしに来たかと思いつつ、目を閉じ、トラップ系の魔術を行使する。
昔なら魔物の10匹や100匹程度なら吹き飛ばせるが今はそのような魔術を今行使しようとすると難しい、たがあの程度の人間ならズッコケさせる程度ならできる。
何て考えていると外の方で「いてぇ!!」「なんだぁ!?」「おげぇっ!?」と言った声と共にドサッ!と地面に落ちたような音がした。
「シエル、出来るなら捕縛してこい」
「かしこまりました」
シエルに命令すると揺れてる馬車の中扉を開け飛び出して言った。
ただ思うことは1つ「扉くらいは閉めていけ」と思いながらシエルが飛び出したあとである扉を閉めてのだった。
数分後、ドスンッ!という音が天井の方からした。
ひょこりと馬車の扉の窓の上から顔を出し私を見つめてくるシエル、多分だが捕まえてきたのだろう。
扉を開けると滑り込むように入ってきて私の隣に座る。
何処か褒めて欲しいそうに私を見つめてくる。
だが褒めすぎると甘やかすだけなので、たまには褒めないというのもあってもいいと私は思う。
「褒めてやらんぞ」
私がそう言うと彼女は露骨にしょぼくれて、体を丸めて壁に体を預け、溜息を吐いていた。
そこまでされるとさすがの私も罪悪感が溢れてくる。
深く溜息をつき、シエルに近づくと頭を撫でてやる。
ハッとした様子で私を目を丸くして見たと思ったら私に抱きついてくる。
「お、おもい…」
「お気になさらずッ♪私は褒めて欲しいだけですのでっ…♪」
と言いながら私の頬に頬ずりしてる所だけを見るとただ甘えたいだけなのでは?とは思いつつも私は我慢し、ため息を吐く。
「ところで、捕縛したやつらはどうした?」
「氷漬けにして馬車の荷台に縛り付けております」
急にキリッと真剣な表情を見せたかと思うと何時もの完璧メイドになる。
「そうか、3人とも命はあるか?」
「ええ、命には別状は無いでしょう」
「うむ、よくやった……後で尋問だな」
「はい、かしこまりました」
会話が終わるとすぐに顔を崩し私に甘え着いてくる。
結局到着するまで私に抱きついたままだった。
彼女が先に馬車からおり、私の降りる手伝いをしてくれた。
案の定、この前見た少年少女たちから目を向けられる。
その中心には少女がおり、容姿淡麗で、右目が緑眼、左眼が碧眼、その髪は背中まで伸びている金髪が風邪で揺れていた。
少女は私を見つけると駆け寄ってくる。
「……ダヴェル様♪」
急に名前を呼ばれたかと思うと急に抱きつかれた。
シエルの顔が引きつらせている。
私もいきなり抱きつかれると思わず目をぱちくりさせながら固まってしまった。
「え、えっと……何方でしょうか?」
「私はあの手紙を送らせてもらったチェアリー・スマル・カルテスです」
「えっと……王女殿下……あの、離れて貰えますか?他の皆さんが口をあんぐりと開けて私達を見てるのですが……」
「嫌です、やっと一目惚れしたお方に会えたのですから、離れたくありませんっ」
「はぁ、チェアリー王女殿下様、お戯れも過ぎると王妃様からお叱りを受けられますよ」
ため息を漏らしながら私達に近づいてくる執事服を着た老人がメイド2人を連れてやってきた。
「うっ、わかりました……お母様は怖いので……」
さすがの王女殿下も王妃様は怖いらしい。
父親である陛下にはワガママが言えるのに……そこら辺はどこの家も変わらないのだろうか、そんなことを考えていると、王女殿下は私の体から離れ、老人のすぐ近くに行く。
「失礼しました、ダヴェル様、私王家筆頭執事長をしております、ハザールと申します」
「いえ、こちらも王女殿下とお会いできて光栄でございます」
彼が一礼してくるので私も軽く礼をしてほほ笑みかける。
「前回の儀式が終わってからお話しようと思ってたのですが前回の襲撃がございましたので、お話ができず、今回になってしまい申し訳ございませんでした」
「そうなのです、ダヴェル様、あの時のお姿は私は見とれてしまいまして……是非ともご婚約をと思いまして、いかがでしょうか?いいですよね?……ね?……」
ハザールとの会話を遮るように王女殿下が会話に入ってくる。
その目を輝かせて私の手を握り、顔を近づけてくる。
近い近い……シエルがまた顔を引き攣らせてるし……
私が苦笑いしながら「私が決めれることでは無いので」と言うと落ち込んだ様子で手を離して、私から離れていった。
「……とにかく、今回はよろしくお願いいたします、前回のこともありまして陛下も近衛騎士を10人ほどつけて下さいましたので」
「ほう、それはそれは、私の出る幕もなく終わりそうですな」
「それはわかりませんよ、ダヴェル様」
ガシャガシャと鎧が擦れる音を鳴らしながら私達に近づいてくるのはガルサスだった。
彼は我々に1人ずつ礼をしてくれた。
「ガルサス殿、お久しぶりです」
「お久しゅうございます、ダヴェル様、しっかりと陛下には私の方からも推薦しておきましたので、是非とも王女殿下とのご婚約、考えていただけると」
貴方もかー!!!と心の中で思いながらもガルサスを睨むシエル、彼は少し頬をピクピクと痙攣させていた。
それほど今のシエルの放ってる殺気はえぐい、私を近くにいる全員がチラチラとシエルを見ていたり、目をそらすようにしていた。
「ご、ゴホンッ!と、ところで…ダヴェル様、馬車に乗ってる、山賊らしき男たちはどうしたのですか?」
「あ、あぁ、私のメイドが捕まえてくれたのだ」
「……そ、それはそれは、さすが、グラスフィア侯爵家のメイドですな、戦闘までできるとは……」
私とガルサスが苦笑いしながらそんな事を話し合っているとシエルのオーラが段々と収まっていく。
ため息を漏らしながらそれに安堵する。
「では、我々はこれにて……」
ハザールは王女殿下を連れて私達から離れていった。
まるでシエルのオーラのせいで逃げれなかったようだった。
王女殿下は終始笑顔で、慣れてるのだな、と思いつつ最後に一礼して、私の頬にキスをして去っていった。
「……あの小娘はなんなんですかね……」
「王女殿下だぞ!喧嘩を売るな!」
ため息を漏らしたかと思えば王女殿下を小娘呼ばわりするシエル。
私は聞かれないように焦って口調を少し強めに彼女に言う。
「……そうですぞ、シェルザール様」
「……所でガルサスさっきの話は本当なのですか?」
「うっ、そ、それはですがね?…」
彼が言うには言い出したのは王女殿下が最初らしく、自分は呼び出され、王に本当のことを伝えたまでだと言うことらしい。
つまりは、後押しをしたということて、今シエルに臀を蹴りあげられていた。
「……容赦なしです」
「……ぐっ……それは甘んじて……受けましょう」
なかなかの歳をいってるはずなのにタフだなぁ……と思いつつも先程の蹴りあげの音がかなりの音がしていたので、一瞬なんの音だとチラチラと私たちのことを見つめてくる護衛の騎士達、私は終始苦笑いでシエルとガルサスの会話を聞いていた。
すると警戒を知らせる魔法発煙弾が打ち上げられた。
ザワザワと護衛と騎士達が貴族の子供たちを守り始めた。
「よぉ、ゾロゾロと騎士さんたちが寄ってたかって何してんだァ?……」
数十人を背後に連れてその長い緑髪を靡かせて、ゆっくりと砂利をふむ山賊の棟梁のアザウェルが森の影から出てくる。
「またお前か……」
ガルサスよりも先に彼に近づいていく。
彼さえ取り押さえてしまえばほぼ終わりだと思ったからだ。
「あぁ、あん時のガキじゃねぇか、まぁ、護衛が増えるってのは分かってたからな、今回は大量に連れてきたぜぇ?」
アザウェルは私を見ると笑顔で見つめて、私が大体10メートル位の範囲にナイフを両手で構えてくる。
あの時の戦闘1回で間合いが何となくわかったらしい。
私は立ち止まると中々の力量を図る目を持っているな、と思いつつ私は魔術を頭の中で詠唱しながら「……つまらんことをやるもんよ」と言い、手のひらを空にかがげると私の身長よりも大きな岩石が一瞬にして現れる。
その光景を目にしてこの場にいるシエルとガルサスを除いて全員が目を見開き驚いていた。
「お前は誰だァ!」
「ただの、本が好きなガキだとも」
そう言って私は彼に向かって岩石を放り投げた。
彼は飛び退いて私の岩石を避けると姿勢を低くして駆け出し、私に近づいてくる。
「そうかァ!なら死ねェ!」
約10秒で約10メートルの間合いを詰めてきた。
私は何も驚かず時間を停止、私だってそれくらいの実力を図る程度は出来る。
彼がなかなかの実力を持っていてこの程度の攻撃ならよけれることも把握済み、ならばどうしたらいいか、凍りつかせればいい。
そのまま彼に触れると魔術を行使、彼を氷漬けにした。
そして時間の停止をとくと一瞬何が起きたのか分からない護衛たちと山賊たち
「お前らの棟梁は捕まえたぞ」
私がそう言うと山賊達は一斉に逃げ始めた。
「……ダヴェル様、ここからはお任せ下さい」
ガルサスが私の横に来て一言そう言うのでコクリと頷くと彼は護衛の騎士たちの1部を連れて、山賊達の捕縛に向かうため、森の中に消えていく。
「……ダヴェル様、私も向かいます」
「あぁ、あとは手筈通りにな」
「かしこまりました」
シエルも衣装そのままに駆け出し、森の中に消えていった。
「……さすがダヴェル様ですね」
後ろから近づいてくるのは王女殿下だった。
当の護衛であるハザールは忙しなく指示を飛ばしていた。
「……護衛は要らないのですか?」
「貴方様の隣なら大丈夫だろうというハザールの判断です」
「……まぁそうですな」
そのまま1時間経たないうちに捕縛を終えた、ガルサス達と護衛の1団が帰ってきた。
そのまま私に近づいてくるガルサス。
「お疲れ様でした、ガルサス殿」
「いえ、ダヴェル様こそ、アザウェルを捕まえていただきありがとうございます」
満面の笑みで今まで悩みの種だっただろう山賊を捕まえられて喜んでいるガルサス
「まぁ、運が良かったのですよ」
「それはそれは、幸運が始祖の竜様がお与え下さったのですね、私も感謝せねば」
そう言ってガルサスは胸にあるであろうネックレスに握り拳を当てて祈りを捧げていた。
「これで問題なく儀式を行えますな、ガルサス殿」
「そうですな、ダヴェル様」
そのまま何事もなく儀式は進み、今私達はガルサスに連れられ、雪山を進んでいた。
その間にも王女殿下に腕に抱きつかれていた。
と言うのも寒いからいいですよね?と無理矢理、理由づけられ、抱きつかれているのだ。
後ろからは他の参加者にじっと見つめられなんだか恥ずかしい気持ちになりながらも進んでいた。
するとガルサスは立ち止まり私達の方を向くと手のひらを氷で作られたであろう神殿を指して
「ここが氷竜王シェルザール様のお住いとなる神殿です」
と説明を入れ、また進み始めた。
段々とその神殿に近づいていくと、その全貌がわかった。
柱、床、屋根、そして、装飾に至るまで全てが氷で作られていたのだ。
さすがシェルザールと言ったところか、細部までこだわられたその神殿は美しいその一言に限る。
それまでの出来栄えだった。
太陽光を反射し私達を照らす中、そのまま進んでいく。
神殿の中心では青い鱗で覆われたドラゴンが一匹、横になっていた。
ガルサスは私たちを静止し、数歩前に進むと跪いた。
「シェルザール様、ガルサス、御身の前に参上致しました」
シェルザールは首をあげるとゆっくりと口を開いた。
「……よく来ました、ガルサス、そして我が子達、私がこの国、カルテス王国を守護する氷竜王シェルザールです」
その姿に見とれているのかじーっと見上げている子供たち。
まるでいつもの事のようにシェルザールは話を切り出した。
「……では、私から貴方たちに祝福を、私の加護を与え、この国に繁栄を祈りましょう」
そう言って彼女は口から氷の息を吐き
私を除いた、少年少女に加護を与えた。
「では、ガルサス、帰りも頼みましたよ」
「はっ……氷竜王様のお言葉のままに……」
そう言ってガルサスは立ち上がり、私達を連れて神殿を後にした。
神殿から戻ってくる頃にはシエルが馬車の近くに立っていた。
そのまま解散となり、私が馬車に乗るとシエルも乗り、そのまま馬車は走り始めた。
「……ふぅ……終わりましたね」
「そうだな」
「……次はあの小娘をどうにかせねば……」
「そういえばだが……竜の巫女とやらは金髪で、オッドアイだったのだろう?」
「そうですね……」
「……王女殿下と一致しないか?」
「やっと気づかれたのですね!!」
どこからともなく現れたかと思えば私の横に座る王女殿下。
私も気づかなかったため、びっくりしながらもシエルが私と王女殿下との間に入る。
「……あぁん……お話したかっただけなのに……」
「……つまり、私の正体も知っているという事ですね?」
「はい♪氷竜王シェルザール様」
「……今はシエルという名をいただいてるのでそちらで呼んで頂けますか」
「かしこまりました♪シエル様」
満面の笑みで彼女の警戒を解いた王女殿下。
シエルは溜息をつき、私達の反対側に座る。
「……古代魔術まで使って私の馬車に乗るとは……」
「ふふ、使う機会があまりございませんからね、この魔術は」
そう、王女殿下が使ったのは「テレポート」という古代魔術の1種。
私が使ってる時間停止よりは簡単だが、距離が遠いほどに使う魔力量が変わってくるので注意が必要な魔術だ。
「……つまり、貴方様は……竜の巫女の生まれわかりという事ですか?」
「はい、私は”初代”竜の巫女の記憶があるのです♪」
「ほぅ、”初代”ですか……」
「なので、敬語は不要ですよ、ダヴェルカーザ様♪」
「では、遠慮なく……前世の名前を教えてくれるか?」
「前世の名前はサピロスと申します」
「……ふむ、わかった、では今はチェルシーと呼ばしてもらうが構わないか?」
「はい、構いません♪」
「では、チェルシー、この事を知ってるのはお主だけか?」
「はい、私だけです、あの古代文字は父上も読み解けなかったので、この世界で読み解けるのは私を含め、貴方様と竜王様方だけでしょうから」
「ふむ、そうか……」
「はい、あぁ、もうひとつ言い忘れていたのですが……」
「ん?……なんだ?」
「私♪ハザールにこの馬車に居ることを伝えておりません♪」
「……ふむ、そう……はぁぁぁっ!?!?」
馬車の中に響く私の声と共に満面の笑みのチェルシーを連れて馬車は進む。
我が家に向けて。
王女殿下誘拐という大罪を背負ってしまった、私を連れて。
今回は読んでいただきありがとうございます。
時々私も見返すと思いますが、誤字脱字ございましたら是非ともご指摘いただければとおもいます。
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