氷の国の習わし
スキルを授かってから1週間がたった。
私は家族に見守られ、我が家を出て、シェルザール山を目指していた。
馬車に揺られて1時間ほどがだった。
森を眺めていると唐突に目の前が開けた。
ここの森の中心は広場になっており至る所に馬車が止まっていた。
「おい、あれ……」
じっと私の馬車を見てくる数人の同年代くらいに見える少年少女、そしてその付き人と見える騎士たち数人、ザワザワと噂になってるのは当然だ。
そう、私がスキルを授かって2日後の事だ。
私は自分の知識と魔法を使い、何か父上や母上の助けになりたいと思い、岩を砕き土地を広げるために爆薬の研究をしていた。
「……この部屋に小麦を風魔法で巻き上げ……」
私は自分の土魔法で作り上げた一軒家程の大きさのドーム型の家を作り上げ、その部屋の中心には小麦粉が入った木製のボールが置いてあり、その小麦を風魔法で巻き上げる。
そのドーム型の部屋中に小麦が巻き上がる。
土魔法で家の蓋をする。
「よし、あとは火魔法で……」
人差し指を立て、ちょっとした火種を指先に起こすとそれをその蓋をした時に少しズレた隙間から火種を入れると目の前の家が
ドカーンッッ……!!
と爆音を立てて家が吹き飛んだ。
その音に驚き私はすっ転んだ。
「うわぁっ!?」
すっ転んで腰を痛めたのか、腰を擦りながら立ち上がる。
「いてて……もうちょっと離れたところで見るべきだった」
そんな後悔をしながらも目の前にあったはずの部屋が吹き飛んで小さなクレーターが出来ていた。
「おぉ、この威力なら、山の中をくり抜いて小麦を撒けば……ある程度は吹き飛ばせるぞ!…」
その広がった土地で畑を作れば、そこで新しい実験ができる。
ふっふっふ……と笑みを浮かべて思考をめぐらせていた。
「ダヴェル……??何してるのかしら?」
私の後ろからする聞きなれた声。
私はまずいと顔を強ばらせながら後ろを振り向くと笑みを浮かべながらどす黒いオーラを放つ母上がいた。
「は、ははうえ、どうされました?」
微妙な笑みを浮かべなが、母上の元に動けず膝をガタガタさせていた。
ゆっくりと母上は近づいてくる。
ついに私は恐怖から腰を抜かす。
「私が執務してる時に庭で爆発音がするんですもの、飛んでくるわよ?それで、何をしていたの?」
母上は表情1つ変えずクレーターを指をさしてくる。
「そ、それは……ちょっと実験をしていて……」
「そのちょっとの実験で地面がえぐれるの?」
「か、加減を間違えましてー……あはは」
「お説教されたいみたいね、うふふ、しっかりとしごいてあげますからね……」
母上の説教とは、戦闘相手になれということだ。
5歳の息子に大して本気になる母上もどうかと思うが、鬼のような形相で片手で身長よりも大きな両刃斧を振り回してくるのだ。
それだけなら良いもののそれ加えに魔法を使いながら、愚痴をぶつけてくるのだ。
精神的にも身体的にも負担はすごい。
「あ、あのじご……」
「地獄?……なぁに?私との修行は地獄だと言いたいの?」
「い、いえ!?母上!わ、私も5歳の息子、て、手加減を加えて欲しいのです!」
「その歳でこの前、魔物の森に一人で出向き、何を倒してきたか仰りなさい?」
「……ヘルグリズリー……」
その一体が街や村に出るだけで災害級とされる、クマ型の魔獣、本来であれば発見された時点で逃げるのが得策とされているが実力を図るため私は1人で戦い勝ってしまったのだ。
「本来であれば1小隊をもって戦うはずの魔物を一人で軽く倒す息子に……手加減は必要ですか?」
「ふ、不要です……」
その後は言うまでもない、夜遅くまで修行は続き、お互いに汗だくになり、訓練場は至る所に魔法や剣撃による、損傷でえぐれていた。
「……今日はこのくらいにしてあげます、せめて実験するなら私と父の双方の了承を得てからにしなさい、分かりましたか?」
「はぁ……はい……母上……」
私は息を切らせながらも、その場に座り込む。
母上は息を切らせもせず、汗はかいてるものの、私よりもその量は少なく、服もそこまで濡れていない、私は所々怪我をしており、上の服はぐしょぐしょになっており、とても気持ち悪かった。
そんな嫌な過去を思い出しながら、馬車をおりる。
コソコソと何かを話し合う貴族の子供たち、私は友達がいないのでため息を吐きなが入口となる氷の門をに近づく。
この門から子供たち以外入ることは許されない、入ろうものなら聖騎士にその命を奪われるらしい。
まぁ、私はその加護を貰いに来たのだから襲われないで済む。
だが、ほぼ毎年、山賊による誘拐が起きており、聖騎士対山賊との戦いが起きている。
是非ともそこに参加させてもらいたいものだ。
私も魔物との戦闘はあるものの、人との戦闘はないので楽しそうで気になっているのだ。
そんな事を考えながら門の目の前に行くと目の前にたちはだかる少年。
「おいお前、グラスフィアの三男か」
その言葉を無視しじっと観察を始める。
背丈は110cmほど、歳は私と変わらないはずだ。
短髪の赤髪に赤い瞳、イライラしてるのか腕を組み、胸を張りながら右足を鳴らす。
「おい無視するなよ!チビ!」
私の胸元を掴みじっと睨んでくる彼は私よりもその場にいる子供たちより立場が上なのか、誰もこの間に入ろうとせず、従者も止めようとしない
「……なに?」
「そうか、お前は俺の事を知らないんだな」
私が面倒くさそうに答えると彼は私を突き飛ばし、威張り散らす。
「俺はな、このカルテス王国筆頭貴族、ジャイール公爵家の長男、イーサル・ジャイールだ」
「……へぇ」
私は面倒くさそうに応えるとかなり癪に触ったのかまた私の胸元を掴む。
「おい、チビ、お前は”グラスフィアの神童”とか呼ばれてるらしいがな、俺の方が身長高いし、スキルも多いんだぞ?身分も上で俺の方が強いんだ、大人しく今日は帰れ」
……なにそれ、私、そんな名前で呼ばれてたのか、グラスフィアの神童ねぇ……馬鹿みたいな事しかしてないせいか、もうちょっと面白い名前になると思っていたのに、まぁそんなことはどうでもいい。
「帰る?なんで私が君に指図されてる筋交いが?」
「……そんなの決まってるだろ、俺の気分だ」
……バカなのか?お前の気分で私はあいつに会いにいくなというのか?
私の過去を知るあいつは私の嫁だぞ?
それは私の怒りも買うことをこいつは知らないのだろう。
「なんだよその目、俺の決定に不服か?」
「あぁ、そうだな、お前の気分で私の人生を決めるなど……おこがましい……」
「そうですな、あなたがお決めになるのではなく、シェルザール様がお決めになることですぞ」
そこに割り込み入ってくる声は老人そのものだった。
「何!?貴様、俺をだれだとっ……」
イーサルは自分の後ろからする声を聞いて振り向くと急に固まった。
私も少し顔を覗き出すとそこにはガルサス神父が蒼白の騎士姿で立っていた。
「お、お前……あの時の神父ではないか……なぜこのような場所で……」
「至極真っ当な理由が私にはあります、それは私がシェルザール様直々に加護を授かった氷竜聖騎士だからです」
彼の言葉を聞いてかざわつき始める少年少女たち、私は剣をしているのは想像ついてたがあいつの加護を授かった聖騎士とは……ふむ、少し驚いた。
「そ、そうかっ、な、なら、そなたも分かるだろう?このチビがこの場にふさわしくないことを」
「いえ、私はこの方のスキルはとても素晴らしいものだと思っております。シェルザール様も会うのをとても楽しみにしてるようでしたので、この方を外せば、あのお方はかなりお怒りになられることかと」
その言葉を聞いてさらにざわつく場を一人黙りこみ、腕をふるふると怒りを抑えてるのが目に見えてわかった。
「な、なぜこのようなチビが!この俺よりも氷竜王様はご興味が!?どうしてだ!教えろ!チビ!」
私の胸元を掴み取っ組み合いの喧嘩をするような行動をすると流石にと彼の従者だと思割れる男たちが私から引き剥がしてくる。
「お前ら!離せ!こいつに事情を聞かなければ!俺は!……俺は気が済まないぞぉ!!!」
広場の中心で叫び散らかすイーサルをみる私とガルサスはため息をピッタリ合っていた。
「お久しぶりです、ダヴェル様、あの本はどうでしたかな?」
「……いえ、こちらこそ、貴方様がまさかシェルザール様の聖騎士様でしたとは」
「ご謙遜を、貴方のことをシェルザール様にお伝えしたら喜んでおいででした」
「つまり、私の正体はバレてると?」
「ええ、あの反応からするに、貴方は……神竜皇……ダヴェルカーザ様ご本人ですね?」
ふむ、やはりあいつは気がついているという事か
そんなことを考えていながらもガルサスは私を見て笑みを浮かべていた。
「……あぁ、そうだ、私は前世の記憶がある」
「おぉ、やはり……この事を知ってるお方は?」
「今のところ……シェルザールと貴方だけだろうな」
「ふむ、私はあのお方の命令で各地の聖騎士に連絡をしておきましたので、各地の神殿に主向けば他の竜王様方に会えることでしょう」
「用意周到だな、流石、シェルザールだ」
「昔からお変わりないのですか?」
「……まぁな、私は変わったがな、今はただの人の子よ」
呆れた顔で私が笑みを浮かべるとガルサスはくすくすと笑い空を見る。
空には高く輝く太陽があり、ちょうど私たちの真上で輝いていた。
ガルサスは私から離れて門の目の前に立ち、少年少女を1回見回す。
多分だが全員揃ったのだろう。
私を含め10人の少年少女たち。
これから私たちはシェルザールが居る神殿に向かうのだ。
「……それでは!これより!私の引率の元、氷竜王様の住まう神殿に向かう!」
それを聞いて、少年少女達はガルサスに近づいていく、その時だった。
「おっとぉ!そこから先は行かせないぜ!」
若い男の声がした。
そして一気に従者達が襲われ殺されていく
完全に計画された犯行だろう。
「今年もか……」
ガルサスは蒼白の剣を構え私達の前に立つ
「そうだ、今年こそ、荒稼ぎしねぇとなぁ?毎年やられっぱなしとは行かんのでね」
合わせて数百人の部下を連れた若い男、長髪緑髪の赤眼で、格好は獣の皮を使ったコートを着て、皮物のブーツ、この山を生きるための最低限の装備だろう、彼は血の着いたナイフを舐めながら近づいてきた。
「……山賊風情が……」
「今年はお前の命貰うぜ?聖騎士さんよ?」
「……出来るものならやってみろ!!」
踏み込み一気に数人の胴体を切り裂くガルサス、歳はかなりとっているはずだが、その動きは洗練されており素早く的確に1人ずつ倒していく
「キャー!!!」
「……やはりお前は相変わらずだな……アザウェル……」
その間に後ろに回っていた、山賊の1人が黒髪の少女を捕まえ人質にした。
それを見た私を除いた、少年少女たちは怯えていた。
「なんだよ、これは家業だから仕方ねぇだろ?」
「だからといってこの幼子達に手をかけるのか」
「あぁ、そうだよ、じゃないとこのご時世、生きてけねぇのさ」
「働けばいいものを……」
「お前と違うのさ!楽をして稼ぐのが楽しいんだよ!」
アザウェルと呼ばれた男は高笑いしていた。
……はぁ、あまり手を出したくなかったが……と思いつつため息をひとつつく、私は怯えず少女を捕まえた山賊に近づいていく。
「おい止まれ!ガキ!こいつがどうなってもいいのか?」
「そうする前にお前を殺せるぞ、私は」
それを聞いた彼は少しづつ後ずさりしながら首元にナイフを突き刺そうとするので、瞬間的に魔法を展開、時間を止める。
昔なら1時間ほど止めれたが今では10秒ほどだ。
それでも十分だ。
彼から少女を抱き上げ、救うと2発、腹部をなぐる。
ちょうど時間が動きだし彼はわけも分からず一気に吹き飛び、木に衝突、気絶した。
「……おい、あのガキ、何したんだ?」
「し、しらねぇよ、急にキールが飛んだぞ」
「オメェら、あのガキを相手しろ、多分だが聖騎士よりもやべぇぞ」
「「わ、分かりやした!お頭!」」
10人の男達が私を囲む、それを無視して私はお姫様抱っこしてる少女を見る。
「大丈夫?」
「えっ、あっ?……私男の人に捕まってたのに?あれ?」
彼女は困惑してるようなので、その場に下ろすと座らせた。
余裕綽々にその行動をしていると痺れを斬らせた男が1人突っ込んでくる。
私はまたもや時を止めて、数発、腹部を殴り時間を動かし、今度は1人を巻き込んで吹き飛ばした。
それを見た残った8人は一気に襲いかかってきた。
「……暇だな」
そんな事をボソリと着きながら同時詠唱、的確に相手の脳天目掛けて、魔法の石を飛ばす、全員ほぼ同時に頭に石が直撃して頭から血を垂らし気絶した。
「……もうちょっと楽しませて欲しかったがな」
そんな事を思っていると急にガルサスの近くに地面と何かが衝突した音がした。
「……遅いですよガルサス」
「……申し訳ありません、シェルザール様」
聞きなれた女の声私は直ぐにシェルザールだとわかった。
おぉ、シェルザールか、久々に姿を見ると思いながら、振り向くと、龍の姿のままで自分が起こした土煙を翼で吹き飛ばしていた。
「それでは、掃討するとしましょうか」
「おっと、氷竜王様自らのご登場とはな、今日のところは失礼するぜ」
事切れた男達を捨てて、気絶した男たちを抱えた数十人の男たちは一斉煙幕を炊きに逃げ始めた。
アザウェルと名乗った男は最後に私を見てニヤリと笑い煙幕を炊き逃げていった。
私達、子供たちのところにやってくるガルサスとシェルザール、ガルサスはシェルザールに対して膝まづいて頭を下げた。
「……シェルザール様、面目ない、かぎりでございます……」
「構いません、私も少し遅れました、誰一人として怪我は無いのでしょう?」
「はい、あの子のおかげで、誰一人として怪我もなく」
ガルサスは私を見てにこやかに微笑んでいた。
シェルザールは私を見て、何故か頬を赤らめて、笑みを浮かべた上にしっぽが動いていた。
口パクで今は控えろ、と伝えるとシェルザールはスっと表情を戻した。
「……今日は日を改めましょう、ガルサス、この子供たちの家に言伝を、そうですね、近くの貴族達に護衛を任せましょうか」
「はっ……シェルザール様のご意志のままに」
ガルサスは深く礼をして立ち上がるとどこからともなく梟を出すと何羽も飛ばした。
「私はこの子供たちを各馬車で休ませておきますゆえ、あの子とお話されては?」
「そうしましょうか、この場の1番の苦労者ですからね」
ガルサスは子供たちと私を引き離すと、シェルザールと2人にしてくれた。
「……この場ではあまり言えませんので、少々お待ちを」
「わかった」
私が頷くと彼女は魔法を使い、氷のテーブル、イス、そして自分の姿を隠せるように大きな壁を立て、周りから見えなくした。
そしてシェルザールは私の目の前で姿を変え、人の姿になった。
その体は前よりも肉付きが良くなっており、魅力的になっていた。
それを彩るのは彼女の鱗と同じ色をした蒼白のドレス、ラミネート加工されてるのか日差しに照らされて輝いていた。
「……お久しゅうございます、ダヴェルカーザ様」
「そうだな、シェルザール」
「……あぁ、でも私の土地でお生まれになるとは、これが愛の力なのですねっ……♪」
……この性格は相変わらずなのだな、と思いつつもイスに腰かけると反対側に座るシェルザール
「そういえば、ここ1000年で何があった?大分と歴史が変わってるようだが」
「はい、ナヴィルルーグ様が竜の巫女にお話されてるのはガルサスに手渡した本でご存知ですよね?」
「あぁ、まぁな」
「実はですね……」
シェルザールはゆっくりと語り始めた。
貴方様がお亡くなりになられてから数日後、それをどこから聞いたのか人間たちが竜の巫女と名乗る少女を連れて私達、いえダヴェルカーザ様の住処である神竜皇の神殿にやってきたのです。
そこで私は正直に証言したのですが、そこに疑問を持った竜の巫女は質問をしてきたのです、それに返事をしたのがナヴィルルーグ様でございます。
あの時の本の内容そのままに仰ると巫女は人間に伝え、人間たちは自分たちの国を建国しました。
そして彼らは醜い争いを始めたのです。
我らは四方に飛び、人間たちを宥め、統治しました。
まずは私が統治する、北国、カルテス王国
サージャズールが統治する、東国、フールブ王国
ナヴィルルーグ様が統治する、西国、バイル皇国
そしてガヴェルナーガが統治する、南国、ハイサル帝国
その4国です。
我らはそれぞれの国を生存圏として神殿を立て、人の子の中から私達と人との縁を繋ぐために聖騎士を立てました、ですが、ここ数100年、各地で異変や戦争が起こっており、私は悩ませていたところなのです。
ため息をついてシェルザールは私を見つめ、ずいっと前のめりになる。
前よりもふくよかになった胸が眼前で揺れた。
「是非とも貴方様のお知恵をいただきたく!!」
「そうか、そんなことがなぁ……そういえば竜の巫女とやらはまだ生きているのか?」
「いえ、死んでいるはずです、私が知ってる限りあれ以降、竜の巫女と名乗る少女は出ておりません」
「特徴は?」
「オッドアイでした、金髪で、私も見とれてしまうほどの絶世の美女と言えます」
シェルザールが認めるほどの美女か……気になるものだ。
そんな事よりも何故今更シェルザールが成長してるのか気になった。
「シェルザール、お前体つき良くなったな、前よりもいいでは無いか」
「……お褒めに預かり、感激ですっ……♪」
やった、と小さくガッツポーズししっぽを振るシェルザール、実に可愛らしい
私は彼女の様子を見ながら笑みを浮かべた。
「……ダヴェルカーザ様はとても愛らしくなられましたね?」
「そうか?まぁたしかに……姉上からは可愛いと言われるがな」
それを聞いた、シェルザールは表情を強ばらせた。
「……姉上様……ですか」
「む?お前のところに行かなかった?ルナシェル・グラスフィアが、私の姉上だが?」
「……確かに……会いましたけど……あの私よりも成長しそうだったので少し呪いをかけてやろうかと思いましたが……」
「……今な、ナヴィルルーグよりもでかいぞ」
かなり切れてるのかシェルザールは怒りのままにテーブルを叩き割った。
「もしかして……お風呂など一緒にはいられているのですか?」
「母上に言われてお目付け役にな、読書させてくれればいいものを……はぁ」
ため息混じりにそんなことを言うとシェルザールは急に立ち上がった。
「私も行きます!」
「おい、お前神殿はどうするつもりだ」
「睡眠など不要なので時たま掃除に向かいますし、儀式の時はお休みをいただきます」
「まぁ、お前がいるなら私も少し気が楽だからな……」
「息苦しい思いをしてらっしゃるのですか?」
「いや、私は今”グラスフィアの神童”と呼ばれてるらしくてな、周りの目がすこしな」
「見てくるやつを殺せばいいのですね」
「違う!全く違うぞ!父上も母上も優しい方だ!母上は少し厳しいが、生みの親だ、感謝しているとも!」
「……ならいいですけど……」
「まぁ、素になれないというのがあるからな、お付のメイドは居ないからお前を傍に置いておけばたまに気を緩められるかと思ってな」
「なるほど、それで私を……」
納得したのかクルリと一回転すると、昔のメイド服姿になる。
ただし、角としっぽは魔術で消しているのか、人の姿そのものだった。
「うむ、その姿がいいだろう、人の姿などそうそう見られてないだろうから隠す必要も無いだろうな」
「ええ、今回の子供たちの記憶からは消しておきます、一応神殿から私が出ることはほぼあってはならないことなので……」
「む?お前その手の魔術は苦手と言ってなかったか?」
「あの後……色々ありまして練習したのです」
「相変わらず努力家よな」
「お褒めに預かり光栄ですっ……♪」
両手を頬に当てて顔を少し赤らめながら身をよじらせていた。
私はシェルザールに出会う事ができ、そして身内として受け入れることが出来た。
これで少しはのびのびと生活できるだろう、姉上の目や母上の目を気にせず実験をやろうかと思いながらも数日後に変更された、この習わしのことを思い出すのは数時間後のことになる。
今回は読んでいただきありがとうございます。
時々私も見返すと思いますが、誤字脱字ございましたら是非ともご指摘いただければとおもいます。
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