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2/12

氷の国にて

目を覚ますと私は白髪でエメラルド色の瞳の女性に抱かれていた。

その女性は笑みを漏らしながらじっと私を見てくる、その頬や額には汗が滲んでおり息を切らせていた。


「あら、もうお目覚めかしら」


ゆっくりと息を吐くように私に問いかける、ゆっくりと私が手を伸ばし彼女の髪を触る、彼女は微笑みながらも私の頬にキスをした。


「あぅ、あー」

「あらあら、みてハルフィ、嬉しそうにしてるわね」

「そうでございますね、奥様」


ハルフィと呼ばれ、にんまりと満面の笑みを見せるメイド服を来た女性、体格は細く顔は美形だ、その手は少々荒れており水仕事や色々しているのが垣間見える。

そしてこの奥様と言われたのが私の母なのだろう


「名前はどうしましょうか」

「……旦那様を呼んでまいりますね」

「ええ、よろしくね」

「かしこまりました、失礼いたします」


深々と一礼してハルフィは私達を置いて部屋を出ていった。


「そうねぇ、どんな名前がいいかしら」


んー、と悩んでいる母上、私にはしっかりとした名前がある、口をもごもごとさせながらも何とか出そうとする


「だ、ヴぇる……」

「……え?なぁに?」

「だ、ぅぇる」


んむー!こんなにもどかしいことがあるのか!人の子供とはいつになったら言葉を喋ることが出来るのか!?怒りに任せて私が暴れていると目を丸くして驚く母上。


「まさか……この子……ダヴェルカーザって言おうとしたの?……」

「あぃ!」


私はその言葉を聞くとにんまりと笑い、声を上げた。

それを見てさらに目を見開く母上。


「……まさか返事をしたの?私の言葉がわかるの?」

「あぃ!!」


当然わかるともと答えたかったができる訳もなく声を上げることしか出来ない


「そうなの、賢い子なのね……それなら始祖の竜にあやかって、ダヴェル……あなたの名前はダヴェルよ」

「あーぃふふぅ!」


うむ、母上よ、生まれ変わってもその名前は気にいっているのだ、当然その名前じゃなければ納得がいかん。

全身で喜びを表現してると、母上は目を細め嬉しそうに私を見つめていた。

突如部屋の扉が大きな音を立てて息を切らせながら飛び込んでくる男が1人


「はぁ……はぁ……すまない、子供は驚いてないか?」


男は黒髪、青眼、で貴族服を着ており顔は少しやつれており労働の疲れの色が見える。彼を見てくすくすと笑う母上、多分だか彼が私の父だろう


「ええ、ほら、見てください全く驚いてないでしょう?、逆にあなたをじっと見つめて”まるで観察してる”ようじゃないですか」

「むっ、そうか、トリシャにて賢い子なのだな」

「ええ、この黒髪は貴方のですよ、グレーゴル」


父上と母上は仲睦まじいそうにお互いに微笑みあっていた。

私もついつい笑みをもらす


「あぅあぃ!」

「あぁ、そういえば先程名前の方を決めましてね」

「そうか、もう決めたか、名は?」

「ダヴェルにしようと思います」

「……始祖の竜様から頂いたのか」

「はい、この子が先程ダヴェル、と言いかけていたので頭のどこかにダヴェルカーザという名を知っているのでしょう」

「ふむ、それは賢い子になりそうだな、あやつらにも見せてやらんと、おっと……もう既に来てるようだな」


2人とも扉の方を見ており私は首が動かせないのでじっと母上の表情を伺っていた。

すると先程の父上よりも確かに軽い足音が2つ、母上はそれをめで追いかけてるのか自分の近くに近寄ってくるのを嬉しそうにしていた。


「ロアム、ルナ、あなた達の弟よ」


黒髪、緑色の瞳をした8歳くらい少年と白髪、水色の瞳をした6歳くらいの少女が私の顔を見ながら目を輝かせていた。


「お母様!抱いてもいいですか?」

「母上、僕が先に!」

「はいはい、人気者ね、ダヴェルは」


うふふ、と笑みを漏らしながらロアムと呼ばれた私の兄に抱かれていた。大人しくしていたら何もされないだろうと思いながらもじーっとロアムを見つめていた。


「わぁ……黒髪はいっしょだぁ♪えへへ、えっと、ダヴェル、お兄ちゃんだよー」

「ロアム兄様、長いですよ、私にも見せてください」

「もーちょっとまってっ」

「むぅ……」

「わかったよ、落とすなよ?」


ゆっくりと兄上から姉上に渡されると姉上は嬉しそうに私の瞳を見つめていた。


「わぁ!私と瞳の色が一緒ですわ!お母様!」

「そうね、ルナ、そろそろダヴェル預かってもいいかしら、お父様が抱きたくてうずうずしてるのよ」

「あっ、ごめんなさいお母様、ダヴェル、ルナシェルお姉ちゃんだよ?よろしくね?」


ニコッと微笑むと頬にキスする。

あー!と兄上は指さしてずるいずるいと駄々を捏ねていたが母上が姉上から私を抱き上げると父上に抱かせた。

うむ、父上は剣をしているな、中々の腕の筋肉をしている

なんて感心しながら父上の額の傷に手を伸ばしてみる。


「む、なんだ、ダヴェル?」

「あぅ」

「あぁ、この額の傷か?お前の母さんにやんちゃしてる時に付けられた傷だよ」

「グレーゴル?まるで私が武人見たいな言い方やめてくれる?」

「おぉ、こわいこわい、実際私より強いでは無いか、今はお前に経理を任せてるから誰も知らんだろうがな」


意外な真実が聞けた、ふむ、母上の腕はたしかに軽く筋肉が着いていたがあれでも落ちたほうなのか、まぁ当分は私は動けんからな大人しく抱かれていることにしよう


「む、そろそろ、私は事務に戻る、あとは頼んだぞハルフィ」

「はい、旦那様、坊っちゃま、お嬢様、お勉強の時間ですのでご退室を」

「「はーい」」


私を母上に渡し、父上は事務仕事に戻っていった。

その後ろには兄上、姉上が面倒くさそうにしながら部屋を出ていった。


「……ハルフィ、ちょっとの間お願い出来る?私寝るわね」

「かしこまりました、奥様」


ハルフィは私を抱いて一礼し部屋を出ていった。

そして彼女はある部屋に入る、子供部屋にしては本が沢山ある……誰か好きなのかと思いつつも私は揺りかごに寝かせられると


「ふぅ、奥様も3人目ですか……私も……ほしいなぁ……」


ため息混じりに揺りかごを揺らしてるハルフィ、歳は母上と変わらないのだろうか、片手には指輪をしてるところを見る限り、結婚していてあやすのを手馴れてるところを見るに兄上、姉上もあやしているのは彼女だろう。

まぁ私にも息子がいたが嫁達が自分の巣に置いてきて私のところに顔を見せてくれなかったというのもあるし、私自身もあまり興味を持たなかった。

そんなことを考えてると心地よい揺れでついつい眠ってしまった。


目が覚めるとハルフィと一緒に兄上と姉上がいた。


「ダヴェル、おはよ」

「あぃう!」


私が兄上に返事をすると3人とも目を見開いていた。

兄上と姉上は嬉しそうにキャッキャと喜んでいたがハルフィは絶句してるようにも見えた。


「ぅーあー?」

「ん?ハルフィどうしたの?変な顔して、ダヴェルが心配してるみたいだけど」

「い、いえ、お気になさらずお嬢様」


姉上は私が腕を伸ばすと人差し指を出してくる、握手と言うやつか?……と思いつつ小さな手でその出された人差し指を握る、全然力が入らない、不便なものよ、人の成長とは遅いと聞くが私はどうなのだろうか……


「んぅ〜♪可愛い!握手できるとか偉いねーダヴェルはー」


ふふん、当然だろう、握手程度ならできるともと胸を貼りたかったが私にはそれが出来ないのであぅあぅ、としか答えれなかった。


「あぁ、ダヴェル、僕もしてくれないかな?」


それを見た兄上は姉上と同じように人差し指を出してくるので空いた手で指を握る、するとキャピキャピと喜ぶ兄上と姉上、その光景を見つめながら、私のことを凝視してくるハルフィ、私はなにかおかしい事してるか?……と思いつつじっと見つめていた。



夜は老け朝の3時ほど、私は目が覚めていた。寝ている場所はハルフィの部屋だ、兄上、姉上からは触れた時に魔力を感じていた。

つまりは彼ら、もとい、この家の人間は魔力を持っている。という事になる、ハルフィは分からないが私自身も持ってるのは感じ取れる。


「あぅ、んー!」


両手を伸ばし魔法を想像する、私の記憶が確かであれば、魔法は想像の産物、たとえば水の中で火を起こす、これは普通なら不可能だが魔法なら可能だ。

それをこの場で起こす、私の手の先に水の球体が作られていく成人男性の握りこぶし程度になると私は魔力がまだまだあることに気がついた。


「あぃ!」


一声、凍れっ!と言ったつもりなのだがな…と思いつつも目の前の水の球体は氷になった。

うむ、これはどうしたらよいか、と思っていると目の前でその氷の球体は誰かに掴まれた。


「やはり、貴方様は…成長が早すぎますね…」

「あぅー?」

「はぁ、初めてですよ、生後1日目直ぐに声を出したかとおもえば始祖の竜の名前を言おうとして、その夜には魔法を唱えるとか…あなたは生まれ変わりか何かですか?」

「あぃ!」


そうだ!と言わんばかりに声を出し全身をうごかす

ハルフィは目を見開いて、驚いていた。


「…そうですか、あの話は本当なのですね…」


ハルフィは一冊の本を見つめていた。

背表紙には白いドラゴンらしき絵が書いてあった。


「…神竜皇、ダヴェルカーザ、私達を厄災から守り続け、そして1000年前、急に姿を消した。4匹の竜王の嫁を持ち世界の頂点を見た彼は何をしたのか、それは誰も分かりません、ある日、竜の巫女は4匹の竜王に問いました。かの神竜皇様はどこに行かれたのですか?、その問いに冰竜王様は”あのお方は旅に行かれた”と答えられました。そのほかの竜王様は何も答えませんでした、さて、冰竜王様が言った”旅”とはなんだったのでしょうか、研究者の方々ではどこか知らない土地を守りに行ったのだ、や、”生まれ変わった”のでは無いか、などと言っておりますが…今日は私真実にたどり着いたのでしょうね」


…む、私はやりすぎたということか…ふむ、身の振り方を考えんとだめじゃな、なんて考えているとハルフィはゆっくりと私を抱き上げる


「貴方様はダヴェルカーザ様を加護を授かった神童なのでしょう」


は?…私は思いながらも彼女が勘違いしてるのだと思いながらもそれにあやかろうと私は思考をめぐらす。

えぇい、考えるのあまり苦手だ、待たせても勘違いだと思わせるだけだ、なら返事してやる!


「あぅあ!」


私は大きな声で返事をした。

元々私はあまり考えてこなかったが本のおかげで少しは考えるということをし始めてきたのだ、やはり本という存在は素晴らしいな、そんなことを思いながハルフィを見つめているとまた私はゆりかごに寝かされ、揺らされる、やはりゆらされると眠たくなるのかまぶたが落ちていく

やはりハルフィは子供の扱いが手馴れているらしい。



「やはり貴方様が…」


ボソリとこのお方の顔を見つめる、顔は奥様に似ており黒髪、すやすやと眠るその表情は天使そのものだ。

だが恐ろしいことに、このお方はこの歳にして魔法を使えている、それも水魔法、火魔法など簡単なものではなく、氷、そう水を固形として昇華しなければならないはずの氷を作り上げているからだ。

なぜこのようなことを言っているかと言うと、水、火、土、風を基本の四元素としてこの世界の魔法を行使している、だが氷と言うのは本来存在しない、作り上げるためには水そして物質を凝固させるために土の応用がいるからだ。

それをいとも簡単にやり遂げたこのお方は王族やこの周辺国家に衝撃が走るだろう、そしてこのお方を殺しにくるかもしれない、そのためにも私が旦那様にお伝えせねば。


私はこのお方が作り上げた氷を片手に部屋を出て旦那様がまだ執務中であろう執務室に向かうのであった。

今回は読んでいただきありがとうございます。

時々私も見返すと思いますが、誤字脱字ございましたら是非ともご指摘いただければとおもいます。

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