ヲタッキーズ112 母を探して秋葉原
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!
秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。
ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。
ヲトナのジュブナイル第112話「母を訪ねて秋葉原」。さて、今回は天才女詐欺師による合計10億円の詐欺が発生w
事件は、首相官邸も巻き込む騒ぎに発展し、解決のために腕利きが派遣されますが、犯罪データの解析結果は冤罪で…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 魔性のヲタク
窓際で冷めたピザを噛んでいる。薄くカーテンを開ける。
「山本町12から万世橋。室内に動きを確認。南西の部屋です」
「ROG。チームアルファ、移動」
「チームデルタ、移動します」
神田山本町の1軒家にSWATの2チームが忍び寄る。
「久しぶり、テリィたん」
「あれ?リルラ?」
「人手不足でしょ?お手伝いょ」
ブリーフィングにミニスカポリスが合流スル。
馴染みの首都圏ハイウェイポリスのリルラだ。
「テリィ様。ヲタッキーズは今、マリレが月面で作戦中で…」
「その間、私が代理ってワケ」
「内調のSWATは正面から突入。シークレットサービスとヲタッキーズは両翼と裏口。万世橋は周囲を固めろ」
指揮を執るのは国家安全保障局 政策第4班のブラキ班長だ。
「メイドの詐欺師を挙げるにしちゃ随分大掛かりね」
「おい!この女はタダのメイドじゃないぞ。内調が26カ月追って来た。私が担当して2年。ココの指揮を執るのは私だ…準備は?」
「班長。全ユニット、スタンバイ」
サイレンサー付きの短機関銃を片手に全員が突入準備。
「行くぞ。3, 2…突入!」
「全ユニット突入!急げ!」
「リビング、クリア」
「キッチン、クリア」
「寝室、クリア」
何かがおかしい?
「誰もいません!」
「何処かに隠れているハズだ。探せ!」
「周辺はどうだ?」
指揮車から無線が飛ぶ。
「誰も外には出てません。クリアです」
「班長、リビングにベビーモニターが落ちてました」
「くそ。逆に監視されてたか?突入が丸見えだ!」
地団駄を踏むブラキ班長。
「でも、ココにいたのは確かだ。絶対に見つけてやる」
「この家は無人です。誰も外に出てません」
「ひとまず家から出よう。先ず警察犬。ソレがダメなら家全体をぶっ壊す。今回は逃さない。全員外に出ろ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ルイナのラボ。彼女は史上最年少の官邸アドバイザー。
「歩く辞書のルイナ。チャイティンのオメガ定数は?」
「オメガは0.00787499699だけど…ソレ、SATOの資料でしょ?」
「ダメ!テリィたんに頼まれたの!」
デスクの書類を慌てて隠す相棒のスピア。ルイナは"敵性次元"への情報漏洩で機密情報アクセス権を剥奪されているw
「何ょ!ちょっとくらい良いでしょ?ケチ!」
「でも、ルイナに甘い顔をすれば、私まで機密情報アクセス権を失うわ」
「いつまで続くんだ、って君達の夫婦漫才じゃなくて、南秋葉原条約機構のアクセス権復活の審査の話だょ」
僕がラボに来たのは、このタイミングだ。
「SATOのモリン・モール心理作戦部長が報告書を提出した後、首相官邸が決定を下す手順だっけ?」
「ケチ呼ばわりされても、私はルイナの味方だょ…あら?なんてコト?!」
「どうしたの?」
突然、素っ頓狂な声を上げるスピア。
「再開発計画ょ!和泉橋北詰にシネコンが建つらしいわ!」
「え。シネコン?大きな画面で映画見れそう」
「和泉橋の北詰はダメなの!」
このドサクサに紛れスピアの書類に手を伸ばすルイナ…
「ダメょ!」
超天才の手をピシャリと叩くスピアw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
突入現場では、捜査員が銃を下に向けてゾロゾロ出て来る。
「周辺警備は万全だったのに」
「顔写真を公開しよう」
「…不可能だ。実は、奴の写真は存在しない」
改めて一同に驚かれ、ウンザリするブラキ班長。
「ねぇねぇ2年も追跡して来たんでしょ?」
「奴は一流ナンだ。写真も指紋も残さない。手強い相手ナンだ」
「まるで幽霊じゃナイの」
班長は激しく首を振る。
「14社から合計10億円も盗む幽霊がいるか?いったい何処に消えたンだ?」
「今まで色んなプロフェッショナルに化けたんでしょ?今回はマジシャンにでも化けたンじゃナイの?」
「ソレだ!奴は捜査官に化けたンだ!」
一同は、現場直近に駐車中の指揮車に雪崩れ込む。
「周辺の監視映像が見たい!何人突入した?」
「内調SWATは6, 他の諸機関を含めると合計15人が突入しました」
「出たのは何人だ?数えろ、1人、2人、3人…どけ、私が数える…現場を後にした捜査官は16人だw」
ラギィ警部が画面を指差す。
「コイツょ!」
「捜査官に紛れ込んで一緒に外に出たのか!」
「やられた!チクショウ!」
うつむき加減で顔を隠し、歩きスマホで立ち去る"犯人"。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
早速、万世橋警察署には捜査本部が立ち上がる。
僕達は、SATOからリモートで捜査会議に参戦w
「1度も振り返らズ顔も見せナイ。身元確認は不可能だわ。2年も追ってた内調はどーなの?ブラキ班長、何か情報は?」
「残念だが、手元には似顔絵しかない。永田町が奴につけたアダ名は"メイド版ジョジ・ベイリ"だ」
「"素晴らしき哉、人生"?」
往年のアメリカ映画だ。確か白黒w
「誰もが良いメイドだと褒める。あらゆる人間になりすます。例えば、教師や医者、OLや弁護士のコスプレ。愛嬌を振りまき、どんな御屋敷にも溶け込み信頼を得るんだ」
「口座番号やパスワードを手に入れるタメ?」
「YES。最初は売上から10万円ほどに手をつけ、1度姿を消した後で親会社からドカンと盗む。被害は数千万円単位だ」
国家安全保障局の政策第4班は異次元専門の組織だ。
班長のブラキ・カカシは、ネクラで性格は超陰険w
「…1度目は、テストでパスワードや暗証番号を試す。安全を確認してから大仕事に出る。東南アジアのシンジケートと同じやり口だ。1人潜入させて口座情報を盗み、全額を持ち出す。賭けても良いが、このメイド詐欺師は、デカい氷山の一角だ。バックにはゴールデントライアングルのシンジケートが絡んでる!」
ネクラ男が不自然なまでに雄弁←
「やぁモリン」
僕は、同じくリモートで捜査会議に参戦しているSATOの心理作戦部長であるモリン・モールを見つけて、声をかける。
「ルイナの件、いつ答えが出るのかな」
「テリィたん…徹底的な調査を行っているの。時間をかけたいのょ」
「そーは逝ってもさ」
少し食い下がってみる。
「じゃ結論を言うわ。過去の規律違反でヲタッキーズには懲戒処分を勧告スルつもり。ルイナの機密情報アクセス権も剥奪スルわ」
「ゲロゲロ。ヲタッキーズの処分は仕方ないが、ルイナはSATOに必要な人間だろ?」
「テリィたんは、そう考えてるみたいだけど、私は違うわ。実は、もう勧告は済ませた。後は首相官邸の判断ょ」
モリン部長はリモートをログアウト。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
神田山本町の現場。エアリは、トースターの中に半焼けのベーグルを見つけて、傍らの首都高HPリルラに話しかける。
「急いでたのね。カラダ1つで逃げたって感じ」
「でも、私物らしい私物は一切残ってない。不気味ょ」
「確かに用心深い女ね」
リルラは部屋の中を見回す。
「かわいいクッションや飾り。ソレに絵画。家族写真まで揃ってる」
「インテリアに凝る独身女がいたら悪い?ソレにしても…家族写真?」
「写真立てがアルんだけど、中の写真がサンプルのママ。入れ替えてナイわ」
エアリは、溜め息をつく。
「この部屋自体がカタログみたいで不自然だわ。見よう見まねでモデルハウスを作ったみたい」
「家庭を知らない者が家庭を演出してる?」
「おっと。リアルお隣が御帰宅ょ」
駐車場にバックでシボレーを入れた老婦人に身分証を見せるエアリとリルラ。因みに、2人はミニスカポリスとメイドw
「こんにちは!SATOですが、お隣のジョジ・ベイリさんを御存知ですか?」
「あらあら。コスプレのお嬢さん方。ココじゃお隣同士、お互いに干渉ナンかしないルールょ」
「そーですか。誰か人が出入りしてる様子はありましたか?」
すると、老婦人は急に声を潜める。
「実は、2日前に恋人が来て大喧嘩してたわ」
「なぜ恋人と?ただのボーイフレンドでは?」
「ソンなの見ればワカルわ」
何処を見たらワカルのだろう?
「どんな大喧嘩ですか?口論の内容は?」
「わからないわ。家の中から見てただけだモノ」
「おやおや。お互い干渉しないハズでは?」
リルラは、思わズ口走るw
「うーんココらは昔は長屋で下町気質だから…ソレにセレブを見るとつい興奮しちゃって」
「セレブって誰です?」
「俳優のライア・ライラ。韓流の地下アイドルだった子ょ。今はスマホTVの朝の連続ドラマに出てるわ」
え。朝メロ男優?
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
謹慎中?のルイナのラボを激励訪問スル。
「あれ?相棒のスピアは?」
「あら、テリィたん。スピアなら、都市計画プロジェクトのコトで出掛けてったけど。彼女に御用だったの?ってか、私の機密情報アクセス権の復活、もう決定が出た?」
「未だだけど、どーも諮問されたSATO心理作戦部長のモリン・モールはネガティブな勧告を出したみたいだ」
フンと鼻で笑う超天才ルイナ。
「ただの勧告でしょ?その通りになるとは限らないわ」
「どーもモリンの狙いはヲタッキーズらしい。ルイナは巻き添えを食っただけカモ。ゴメンな」
「謝らないで。でも、もしヲタッキーズが解散になったら、ミユリ姉様達はどーなるの?テリィたんも、栄光の秋葉原のヲタクから第3新東京電力のサラリーマンに"成り下がる"ワケ?ダサ過ぎ」
僕は、実はヲタクの傍らサラリーマンもやっている←
「あのな、ルイナ。今、TEPCO-3が推進してる"タカマガハラ・プロジェクト"は、首相官邸のかなり高い次元が発動した計画で、航宙自衛隊が所有スル敵基地攻撃能力の要諦となるモノだ。コレはコレで片手間には出来ない仕事ナンだけど…そうなる前に、とりあえず、良かったらだけど、この事件、手伝ってくれないか?」
ファイルを見せるとルイナの顔がパッと輝く。
第2章 超天才の御帰宅
神田松富町にある芸能プロダクション"オフィス・ヲタ"。
「クライアントに話がアル。ライア・ライラさんと連絡を取ってくれない?」
地下アイドルがメインと聞いてやり手ババァのワンマンオフィスかと思ったら、可愛い受付嬢がいる。アイドル崩れか?
「私がライアのマネージャーょ。お話しは弁護士を通していただけます?」
「恋人らしき交際中の男について質問がアリます」
「ライアは、朝メロのロケで鹿児島だわ。何かの間違いじゃないの?」
吹き抜けの2Fから声がして中年オバが階段を降りて来る。
「ソレにライアが交際してる、スキャンダルの相手はウチの社員ナンだけど」
「誰?」
「新入社員のリカル」
僕は、内調謹製のジョジ・ベイルの似顔絵を見せる。
「この女と似てます?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
早速、捜査本部に戻って作戦会議だ。
「何週間か前、地下芸能界の幹部2人にアポを取り、リカルと名乗って、たちまち気に入られて即採用されたらしい」
「呆れた。身元チェックはしないの?」
「とにかく、メチャクチャ人に好かれるタイプなんだ」
ヤタラ力説する内調ブラキ班長。
「一応、経歴の申請書は渡したらしいけど、未だ提出されてない。所詮、芸能界だから。しかも、地下だし…」
「オハヨーゴザイマス!貴方、あの"国民的ヲタク"のテリィたんだって?ルックス抜群ね。芸能界に興味はない?」
「え。サラリーマンに集中したいけど…」
あれ?ライアのマネージャーだwついて来たのか?
「しかし、信じられないわ。あのリカルが悪党だなんて。会えばわかるけど、性格の良い子ょ?」
「彼女の写真はありませんか?プレスリリースやパーティでのスナップとか。なんでもOKナンだけど」
「未だ社員証の写真も撮らせてくれないのょ」
こりゃダメだ。
「じゃ彼女の社給PCを任意で御提出願います。もしかしたら、既に少額窃盗を働いてるカモ」
「え。窃盗?いくら盗られたの?リカルは泥棒なの?」
「ソレを知るタメにもPCの御提出を。テリィたん、スピアをスタンバイさせといて」
ラギィ警部は指図スルけど…遅いんだょ。
「ラギィ。スピアなら、もうハッキングしてるょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
続いてルイナのラボに顔を出すとスピアがハッキング中←
「あれ?ルイナは?」
「ギャレーでサボってる。で、犯人のターゲットの選択には何かパターンがあると思うのょ」
「地理的な要素?」
ストリート育ちのハッカーであるスピアは首を振る。
「テリィたん、発想が貧困。あぁこーゆー予測はルイナの得意分野なのにな」
「犯人の狙いは何だろう?」
「ズバリ、芸能プロダクション"オフィス・ヲタ"の運転資金ね。リカルはパスワードを探ってた。オフィスのアカウントをハッキングするつもりょ」
ココで鋭い指摘を発スル僕←
「もしかして…既にハッキングした後じゃナイか?」
「いいえ、未だね。ただ、リカルは入社して2週間以上経つのに、未だ盗みを働いてない。だから…彼女は必ず戻ってくるわ」
「やれやれ。今日は残業になりそうだ」
ココでスピアは話題チェンジ。
「ところで、テリィたん。秋葉原の1大事なのょ。コレを見て」
「神田リバーの再開発プラン?あのリバーフロント、なくなるのか」
「ね。ヒドいプランだと思わない?普通、駐車場はコッチょね?そーすれば首都高からも近いのに」
いきなり河川域の再開発に反対を唱えるスピア。何なんだw
「知り合いのハッカー(どうせスピア自身だw)に区の企画局をハッキングしてもらった。見てょ。かなり大規模。人をバカにしてるわ!」
「え?何が気に入らないの?駐車場?」
「問題は場所ょ!"神田リバーフロント"を潰してシネコンにスルつもりょ」
確か"神田リバーフロント"はバブルの頃に流行った第3セクターで御多分に洩れず破綻し解散。以来、開発は停滞中←
「だからって、和泉親水公園は取り壊し?」
「でも、別に新しい親水公園が出来るみたいだょ?」
「あの親水公園が良いのっ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「コレが張り込みなのね!」
神田リバーに浮かぶショーボートレストラン…に張り込む覆面パトカーの狭い車内に4人がギュウギュウ詰めだw
「YES。思ったほどスリルはないでしょ?」
「いいえ、すんごい非日常。エキサイティングだわ!」
「しかし、火曜なのに超盛況だな。みんな働いてないのかな」
ヤタラ興奮してるマネージャー&ボヤく僕←
「今、超人気のクラブなのょ。でも、私と一緒なら顔パス。一緒にどう?テリィたん?」
「え。僕?あ、遠慮しとくょ」
「絶対に失望させないわ、約束ょ。私がバカテクで楽しませて、ア・ゲ・ル」
「no・thank・you。せっかくですが、証人との浮気は推しから禁止されてルンですょ」
前席で笑いを堪えるエアリとリルラ。肩が小刻みに震えるw
「アレを見て!」
「え。鳥ょ?飛行機ょ?」
「いいえ、彼女が…リカル・ラント?」
闇に沈む淡路坂を下って来る女の人影…
「青いタータンチェックw彼女のジャケットだわ!」
「ショーボートに入った!テリィたん達はココにいて!」
「ROG!」
ところが、ジャケットの女は直ぐに出て来て走る!
覆面パトカーから駆け出して逝くリルラとエアリw
「ヘイ!フリーズ!」
「みなさん、道を開けて!ヲタッキーズです!」
「捕まえた!暴れないで!」
女を組み伏せるエアリ。ところが…
「私は、このジャケットを着て走るように言われただけ!1万円あげるからって…」
この女はオトリだwその時!
「おい!止まれ。勝手に乗るな!」
観光客をショーボートへ運んだ2階建てバスの運転手が一服した隙に、何者かが彼を突き飛ばしてバスを発車させるw
「俺のバスを盗みやがった!」
「ねぇソコのミニスカポリス。私達の記念写真撮ってょ」
「そのスマホ、首都高HPが押収します!」
リルラが観光客のスマホで運転席の女をフラッシュ撮影!
「バッチリ撮れたわ。"幽霊"の写真を撮った!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ダメじゃん。フラッシュの反射で何にも写ってナイわ。この眩しい反射、どうにか処理してょ!」
リルラが技術班に噛み付く。決死?の撮影だったが、残念ながら運転席の女の顔の部分にフラッシュが反射し白く輝くw
「技術的にはコレで限界です」
「私達を2度もコケにしてくれちゃって!」
「リルラ。リカル・ラントの社給PCを調べてみたら、社会保障番号を盛んにマイニングした痕跡がアルわ」
捜査本部のモニターにスピアが映る。
ルイナのラボからリモートで参戦中←
「あら、スピア。何で社会保障番号?」
「次はナリスマシ詐欺でもヤルつもり?やっぱり東南アジアのシンジケートと通じてるんじゃないの?」
「あぁ!せっかく彼女の顔を捉えたのに、画像が使い物にならないなんて!」
天を仰ぐ首都高HPのリルラ。ホントに悔しそうだw
「うーんソッチじゃないわ。ホラ、コッチ。運転手が持ち込んだ魔法瓶に顔が写ってる。ねぇココ、拡大出来ない?」
「え。ちょっと待って…コレじゃ歪み過ぎょね?」
「確かに人間の目で見れば、顔つきは判別しにくい。でも、表面の屈折率で非線形の歪みが生じてるだけ。貴重なデータであるコトに変わりはナイわ」
ルイナは運転手のステンレス魔法瓶に写る犯人の像を指差す。
「要は遠近法の問題。例えば、昔の天体望遠鏡を考えて。星空を拡大するコトは出来ても、あくまで平板、2次元の世界の再現だったわ。ソレに奥行きや次元的な広がりが見られるようになったのは、フーリエやハッブル望遠鏡のおかげなの」
「つまり、正しい遠近法が必要だったけど、昔の望遠鏡には、そのために必要なデータを集める力がなかったってコト?」
「YES。逆に、この魔法瓶に写った画像なら、必要な遠近法を計算出来るカモしれないってコト」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。和泉橋北詰の和泉親水公園。
「ホントにこの公園?なんだかフルボケちゃってるけど」
「そもそも、リバーフロントが流行ったのはバブルの直後だった。バブルが弾けて、周囲はひどく荒れ果てた。放火された店の残骸や地上げし損なった虫喰いの跡地が残った」
「ソレで公園をつくるコトにしたの?」
コックリうなずくスピア。
「スケボーがオリンピック競技になる遥か前の話。計画が承認されるまで28ヶ月かかった。オリンピックでキックフリップ・インディをキメたブラウを知ってる?」
「スケボーのレジェンドでしょ?確か英国人ょね」
「お母さんは日本人。この親水公園のスケボーパークで滑走を始めた。この親水公園は、多くのストリートチルドレンを救ったの」
スピアは、和泉親水公園に目をやる。
「残念だわ。この公園が消えてしまうナンて」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の取調室に朝メロのイケメン男優が出没!
署内の老若女々が、文字通り老いも若きも殺到w
ラギィ警部もやりにくそう←
「リカル・ラントが偽名だったら罪なのか?」
「貴方の熱愛の相手が嘘をついてたのょ?貴方は、コケにされたの」
「だから何だ?秋葉原のヲタクは、どーせ全員嘘つきばかりだ!」
呆れるラギィ。
「あらあら。私なら絶対許さないけどな」
「俺のライア・ライラだって同じナンだ。もちろん、芸名だし俺は自分の本名さえ知らないんだぜ?」
「ライアは、里親に育てられたの」
付き添う例のマネージャーが口を挟む。
「リカルは、俺の養護施設の話にも驚かなかった。ソレどころか熱心に聞いてくれたんだ。なぁ俺もう帰りたいな」
「警部さん。この子、鹿児島からの長旅の後で疲れてルンですけど」
「待って。リカル・ラントは今、何処にいるの?」
先を急ぐ朝メロ男優は、明後日の方向に視線を飛ばす。
「さぁな。でも、アンタらから逃げ切って欲しいょ」
有無を言わせズ立ち上がり、取調室を出て逝く。
「強い性格だわ」
「でなければ、よほどの演技派男優か」
「朝メロを見る限り、芝居はヘタクソなのにね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
SATOの駐車場。パーツ通りの地下深くにアルw
「どんな感じ?」
「OKょテリィたん。撮るわょ!」
「眩しい!」
極秘に運び込まれた2階建てバスの運転席に座り、スピアが焚くフラッシュに目をつむる僕w
「テリィたん!そこ、少し高くして。そこょ!」
喘ぎ声で聞きたい台詞を叫ぶ車椅子のルイナ。バスのウィンドウに方程式を描き殴っているw
「テリィたん!動いちゃダメ!リカル・ラントの頭は、恐らくこの位置だったハズ…だから、動かないで!」
「僕はモデル失格だな。なんで僕を呼んだの?ルイナ」
「バイオメカニクスのダミー人形は、重くてスピアが運べなかったの。あ、レーザーの赤い光線を直視しないで!」
じゃ照らすなw
「僕は、ルイナが捜査から外され、スネてル顔を見るのにウンザリしたから手伝ってルンだ」
「テリィたんって、観察力ゼロね。私はスネてナンかいないわ。でも…ヲタッキーズは失業寸前、スピアの親水公園も風前の灯火。もう、どんな決定でも良いから、早くカタをつけたいの!」
「全くだ。つけたいねぇ」
僕も溜め息をつく。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
僕は、SATOの秘密駐車場でダミー人形の代わりを務めてから、万世橋の捜査本部に顔を出す。
「ラギィ。ライア・ライラはどうだった?」
「ソレが…さすが腐っても朝メロ男優って感じょ参ったわ。テリィたんの方は?超天才はヒマでヒマで死にそうナンじゃナイの?」
「大好きな実験に付き合って来た。しばし、俗事を忘れてた…と思う。もともと、何処か他人行儀だったのが、今回の件で、ルイナとの距離がカナリ縮まった気がスルょ」
ココでラギィのスマホが鳴動。
「ラギィょ…テリィたん?今、ココにいるわ。OK…テリィたん、ルイナの決定が出たって」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。ルイナのラボ。
「スピア。ランチでも食べない?」
「ソンなコト言って、ルイナ。捜査が気になってルンでしょ?偵察しに来たワケ?」
「ソレもあるけどね…親水公園のコト、聞いたわょ」
スピアは、立ち上がる。
「政治的に戦うコトにした。再開発の反対運動を起こそうと思うの。署名を集めて役所に掛け合うわ」
「まぁ!出来るコトがあったら言ってね」
「頼りにしてるわ」
ココでルイナのスマホが鳴動。
「ルイナょ。テリィたん?何?…え。決定が出た?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
SATO司令部はパーツ通りにある、とあるゲーセンの地下深く秘密裡に作られ、専用の秘密エレベーターで降りる。
今、声紋チェックを終え司令部フロアに着いたエレベーターのドアが開くと…司令部要員が総立ちで拍手し大歓迎。
スピアがルイナの車椅子を推ス。
「おかえり!超天才!」
「機密情報アクセス権、復活おめでとう!」
「正式に復帰だね!」
司令部要員はもちろん、SATOのレイカ最高司令官自らも出迎え、車椅子のルイナをハグ。
「やっと戻ったわね?ルイナ、未だ仮発行だけどコレをつけて。貴女はオールアクセスょ」
ルイナのゴス服についてたビジターバッジを投げ捨てる。
「早速仕事に戻れる?スピアから報告がアルわ」
「ルイナ、写真の修正プログラムなのょ。ステンレスの魔法瓶の表面に映った歪んだ顔を修正プログラムにかけてルンだけど…こんな感じ?」
「うーん近いけど何か違うのょねぇ。ルイナ、何とかならないかしら?」
実際に間近で見たリルラは不満顔だw
「わかったわ。微分同相マッチングを使う」
「そっか!ソレなら屈折の閾値を…」
「スピア。私にやらせて」
ハッカーは喜んでキーボードを譲るw
「例えば、こんな風に手を加えたらどう?」
「あ!コレょコレ!犯人の顔だわ!」
「コレなら顔認識で照合出来ます!桜田門とデータリンクします!」
捜査本部のモニターに写るリカル・ラントの顔は、どんどんクリアになって逝く。
「スピア。でしゃばってゴメンね」
「ルイナ!やっぱり貴女って最高ょ!萌え」
「この瞬間を2年間も待ったんだ!」
いつの間にか国家安全保障局のブラキ班長が来ている。が…
「データベースにヒットありませんw」
「ソンなバカな!何と照合したの?」
「犯罪者、政府職員、免許保有者などなど…奴は免許は持ってナイのかな?」
僕は、一計を案じる。
「待てょ?養護施設の記録はどうだ?朝メロ男優の発言が気にナルんだけど」
「ビンゴ!奴の本名は…ケピナ・ヲルパです!」
「え。冗談だろ?こんなハズはない…」
ブラキ班長が絶句←
「奴が17才だと?未だ子供じゃナイか!」
第3章 犯人は17才
児童養護施設"外神田の森"理事長室。
「もちろん覚えているわ。たくさんの里子を育てたけど1人も忘れてない。中でもケピナ・ラルパは愛想が良くて、人から好かれる子だった」
「院長。ズバリお伺いしますが…彼女は悪い子でしたか?」
「うふふ…微妙」
サンダ院長は、答えをはぐらかす。
「ケピナ・ラルパは、とても年上に見えた。だから、他の子から慕われていたコトは確かね」
「つまり?」
「誰かがハデな悪さをした時は、私達は多分ケピナにそそのかされたんだろうと思ってた…貴方、国民的ヲタクのテリィたんょね?」
僕はミユリさんと"外神田の森"を訪問してる。
彼女は、ムーンライトセレナーダーに変身中だ。
「彼女は、御両親の死後、里子に出されたそうですね。御両親の死因は?」
「飲酒運転の事故に巻き込まれたの。でも、亡くなったのは養親よ」
「え。養親だったんですか?」
サンダ院長は自ら淹れたドリップコーヒーを薦めてくれる。
「かわいそうな子なの。実の母親には捨てられ、育ての両親は殺されるなんて。あの子ばかりが不幸を背負って生きている…ねぇそう思わない?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。万世橋の捜査本部。
「ケピナ・ラルパの逮捕まで、あと一歩だ。2年も追いかけ、ついに素性と名前が知れた。奴も身の危険を感じてるコトだろう」
「そりゃ何がしか感づいてるでしょ。でも、自宅をSWATに急襲された後も平気で芸能事務所に顔を出してる。どーゆー神経ナンだか」
「金のためだ。欲深い女だから、手ブラでズラかる気がしないだけだ」
鼻息荒いブラキ班長に、ヲタッキーズのエアリが反論。
「アレだけ慎重で写真1枚残さズ、2年も逃げ回った奴が、どーして朝メロ男優の推し活ナンか始めルンです?何かヘンでしょ?」
「ヲタクだからだ。推し活に夢中になり、つきまとうファンやパパラッチに写真を撮られる危険が増すコトまで気が回らないのだ。バカなヲタクだ」←
「…せめて、ホンキで推したから、とか言えないの?ヲタクは、推すと決めたら命がけなの」
呆れるエアリ。だが、ブラキ班長の毒舌は止まらナイ。
「いや、単に社会が見えてナイだけだ…確かライア・ライラとケピナ・ヲルパは、生い立ちが似てる。同じ孤児院…じゃなかった、児童養護施設上がりだからな。心が惹かれ合ったンじゃナイか」
エアリは、溜め息をつく。
「とりあえず、ライア・ライラを尾行します」
「良いだろう。でも、まさか君達、尾行にかこつけてライアを推すワケでは…」
「ありません!」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
続いて、復帰なったルイナのラボへ。
相棒のスピアがスマホに怒鳴ってるw
「違うの!住民投票したいワケじゃない。欲しいのは、正式な署名用紙だから…あ。おかえり、テリィたん」
「街中華"新秋楼"のデリバリーボックスだ。チャーハンもギョーザも買って来たぞ」
「ブラボー!しかし、反対運動ってコレほどの手続きが必要とは思わなかった。骨が折れるわ」
早くもスピアは息切れ気味だw
「和泉親水公園を守る運動、トコトンやる気だろ?…ところで、ルイナ。晴れてSATOに凱旋した感想は?」
「正直言って良い気分。戻れなくても構わないと思ってたけど、やっぱり素直に嬉しいと感じるわ」
「そっか。じゃ早速お仕事追加だ」
僕は、ラギィから預かったファイルを見せる。
「この国家安全保障局のブラキ・カカシって班長がヤタラ絡んで来て逆に怪しい。ソレと、何故かみんなケピナ・ヲルパは単独犯じゃなくて、東南アジアのシンジケートとつながりがあると思ってる」
「ヘンな先入観ね。どーして?」
「手口が似てるの1点張りだ。先ず、組織の内部に1人潜入させ口座情報を盗ませる。ソレから外の連中が億円レベルを巻き上げる。このやり口がゴールデントライアングルっぽいんだって」
車椅子にゴスロリのルイナは頭をヒネる。
「で、その組織を特定したいワケ?」
「うん、まぁYES」
「確率伝播アルゴリズムを試してみるわ。バラバラの情報からまとまった全体像を整理するプログラム。投票日のTV局を想像して。当確を出すために色々と情報を集めるでしょ?出口調査や開票経過。関連性が強い情報もあれば、投票当日の交通量や天気予報とか、あまり関係ない情報もある。確率伝播は、膨大な量の情報を確率計算にかけて、正確な結論を導くの。ソレで当確者や共犯の組織を特定出来るワケ」
例によってルイナの話は半分もワカラナイw
「で、やれるか?」
「モチロンょ。任せて」
「頼むね」
ルイナは嬉々として新しいホワイトボードに何やらトンでもナイ方程式を描く。
そのサマは、まるでペンキ屋さんが鼻歌混じりに白い壁に原色を塗るが如くだ。
「ヲタッキーズも廃業を免れて良かったね」
相棒ハッカーのスピアが耳元で囁く。
「うん。でも、理由を知りたいょ」
「テリィたん、考え過ぎょ。率直に喜べば?」
「そうかな」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「おはよう。ライア・ライラのグルービー?」
張り込み中の覆面パトカーにレンチンしたコンビニホットドッグを届けるエアリ。車内には首都高HPのリルラがいる。
「朝メロ男優の華麗なる人生だわ。"ホテル24"で高級ディナー、そのままバーで飲んでクラブを3軒回って明け方に御帰宅」
「ディナーもクラブも私達には無縁だモノね」
「きっと今は爆睡中だから、昼の張り込みは楽…」
ところが、マンションのオートロックから、サングラス姿のいかにも"芸能人"が現れて、路駐のボルボへと乗り込む。
「ありゃりゃ。どうなってるの?一晩中退屈させといて。やってくれるわ」
呆れるリルラ。一方、エアリはアゲアゲで運転を交代。
「山が動いた。出番だわ!」
スマホしながら早朝の中央通りを飛ばすボルボは、万世橋の南詰で停車。サングラスを車内に投げ捨てリバーハウスへ。
「あらあら。未だ開店前ょ。朝ラーかしら?」
「で、どーする?」
「リルラ、任せるわ。私、秋葉原じゃ面が割れてるし」
ライアは、無人のテラス席にポツンと1人。ソコヘ…
「心配したんだぞ!無事か?」
「こうして会えたわ」
「どーも写真を撮られたらしいな」
フラリと現れたのはケピナ・ヲルパ!すると…
「コスプレバーの朝営業セット、いかがですか?」
ビラ配りのミニスカポリスが営業をかけてくるw
「な、何だ?間に合ってるぞ!」
「ソンなぁ写真の子がスタンばってます。全員、早朝割引が効くのょ?お好きなコスプレ無料で御給仕しちゃう」
「え。コスプレ無料?良く見せてくれ…」
ところが、写真はケピナ・ヲルパだw
次の瞬間驚くケピナの両手には手錠←
「ooh!NO!」
「ヤメろ!彼女を離せ!」
「はい、ココまで。ゲームセットょ」
激昂するライアを背後から抑えるエアリ。
リルラが手錠をかけたリカルを立たせる。
「さ、行くわょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
捜査本部に凱歌が上がる。
「ヲタッキーズがケピナ・ヲルパを逮捕したわ!」
「ホントか?とても信じられん」
「今、連行されて来る」
国家安全保障局の政策第4班長は半信半疑だ。
「恩に切る。ヲタッキーズ、最高だ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
凱歌はSATO司令部でも上がる。
「おめでとう!テリィたん、やったね」
「うん。ライア・ライラが鍵だった」
「ヲタッキーズがどんな手を使ったかは聞かナイわ」
え。振り向くとモリン・モーラ心理作戦部長がいる。
「ヲタッキーズ、またまたお手柄ね。ルイナの処分に関する首相官邸の決定もおめでとう」
「モリン。もうそのコトは水に流そう」
「テリィたんのヤンチャを官邸も認めたってワケね。秋葉原で好き放題にヤルお墨付きが出たと思ってる?」
超天才ルイナは、マルチバースの"敵性次元"への情報漏洩で機密情報アクセス権を喪失、その後の再審査で、モリンはルイナが極めて不利となる報告書を官邸に上げているのだ。
「でも、私の勧告は無視されて、結局ルイナは無罪放免となった」
「その通り。でも、僕にも首相官邸の真意はわからない」
「トボケないで!テリィたんにはわかってるハズょ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の取調室。ケピナ・ヲルパの独白。
「面白いコト、教えてアゲル。私は、この日が来るのが怖かった。ずっとね。でも、ココに座って感じるのは…安心感。逃亡生活は刺激的だけど、長くは続けられないわ。この年で胃潰瘍の心配だナンて」
ケピナは、監視カメラに向かって余裕で微笑む。
「最悪なのは、常に別人のフリをスルことね。2年間、あらゆる人間に化けて、もう自分が誰だかわからなくなったわ。ねぇアンタも寂しい?今日でゲームオーバー。明日からは、退屈でしょ?」
雄弁な独白。モニターを見ていたカカシ班長が怒鳴り込む。
「俺の前でニヤニヤ笑うな!そうやって得意のスマイルで金儲けのために何人も騙してきたんだろ?!」
「待ってょ取調べは所轄に任せて」
「別に襲ったり殺したりしたワケじゃない。ただ、会社の儲けをいくらかチョロまかしただけょ。ただの少額窃盗だから!」
制止を振り切り、取調室に飛び込んだカカシを抑えるラギィだが、ふと不審に思ったコトを口にスル。
「少額?ねぇ合計10億円が少額なの?」
「10億円?何ソレ。年末ジャンボ宝くじ?私、最高でも…」
「フザケルな!2019年8月18日には2384万円、同じ年の10月30日は1861万円。12月からは、ヤタラ大胆になったな。3864万円。いくらでも続けられるぞ。全部、丸暗記しているからな!」
瞬間、キョトンとしたケピナ・ヲルパは直ちに大反論←
「私が10億円も持ってると思う?何なのコレ?」
「だから、助けてアゲル。私達には、貴女と司法取引に応じる用意がアル。シンジケートの全貌を教えて。秋葉原における共犯者も」
「何の話?へぇ警察はこーやって罪を作り上げて行くのね?冤罪だわ!」
カカシ班長は、ヤタラと結論を急ぐw
「ラギィ警部。どーやらコイツには時間が必要みたいだ。蔵前橋(の重刑務所)に突っ込んでやれば、少しは考えも変わるだろう。今すぐだ!」
ケピナの首筋を摘み、取調室から連れ出すカカシ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ルイナのラボ。
「テリィたんの言ってたシンジケートとのつながりだけど、東南アジアどころか、海外との接点自体が見つからないんだけど」
「何も見つからないコトも価値アル発見だ…って話はさておき、ソレって確率何チャラアルゴの解析結果って理解してOK?」
「YES。ついでに、ケピナは10億円も窃盗してないわ。そもそも高額窃盗は発生してない。コレも確率伝播の解析結果ょ」
万世橋で聞いてた話と違う。頭をヒネる僕。ソコヘスピア。
「区役所とのバトルだけど…テリィたん。私、白旗を上げるコトにしたから」
「え。どうして?」
「うーんバブルの遺物のリバーフロントを守ろうって、恐ろしく身勝手な話だなと思って。全て私のワガママでした」
スピアが突然殊勝なヒトに豹変←
「スピア、どーした?雷にでも打たれたか?」
「私なりに、再開発の図面を吟味してみたら、まぁ良く出来たプロジェクトだった。秋葉原の雇用創出にも貢献スルし」
「でも、和泉親水公園は?」
スピアは屈託ナイ。何処までも爽やかだw
「もっと良い親水公園が出来るわ。プールやスケボーパークもアルのょ!」
「ホントに良いンだな?」
「of course。あんなボロ公園、惜しむのは私だけ。恐らく私1人ょ」
最後、やや視線を落とすスピア。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
僕とミユリさんで蔵前橋重刑務所にケピナ・ヲルパを訪ねる。
「ラギィが接見の申請を出してくれてる」
「テリィ様。ルイナの解析結果だと、ケピナは少額窃盗だってコトですけど」
「そーナンだょ。ミユリさん、ソレで筋が通るかな?」
ニッコリ笑って応えないw
「じゃ誰が合計10億円を強奪したの?」
「テリィ様。ソレをケピナ・ヲルパに聞くのです。ケピナが誰かに自分の手口を話して、ソレが真似された可能性もあります」
「あ、メイドさん?ヲタッキーズの方ですょね?すみません、被疑者が見つかりません」←
看守が駆け込んで来る。続いて所内にサイレンが鳴り響く!
「見つからないって…何処に行ったのかしら?」
「直ちに重刑務所を封鎖し、人数確認を行います」
「待って。監視カメラの映像をお願いします」
所内の全カメラのモニタールームに通される。
「全て10分前から巻き戻して再生してください。私がスーパー倍速でチェックします」
無数に並ぶモニターの中からミユリさんが1つ指差す。
「いたわ。この子ょ。そのママ巻き戻して…止めて!」
静止画像に振り向いた顔がチラ見えスル。サイズが合ってない安いスーツ姿ナンだけど、間違いなくケピナ・ヲルパだ!
「彼女?彼女なら被疑者ケピナ・ヲルパの公選弁護人です。私が通しました」
「看守さん。彼女は凄腕ょ。公選弁護人にしとくのは惜しい人材だわ」
「秒で釈放しちゃったね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の捜査本部で警部はカンカンだw
「仮にも"重"刑務所でしょ?!どうやって逃げたの?」
「弁護士と面会がアルと言って公選弁護人がトイレに立った隙に服とカバンをチョロまかしてお出掛け。悔しいけど、相当に機転が利く女ょ恐るべき17才だわw」
「万世橋のみなさん、ルイナです。SATO司令部からアプリでお邪魔しまーす。みなさん、10億円窃盗犯人を探してましたょね?で、仮に詐欺がバレたと仮定して、ケピナ・ヲルパの同類項を追ってみた」
同類項?数学2B?絶望?0点?negative spiral←
「で、犯人が見つかったのか?」
「テリィたん、私の話を聞いてナイでしょ。同類項ょ同類項。人じゃないの。数字。パターンが見つかった。マイナンバーね、恐らく」
「コレで13人目ょ」
横からスピアの声がスル。何が13人なんだろう?
「ケピナ・ヲルパが狙った全ての企業に、このマイナンバーを持つ社員がいる。7823で始まって中3桁が不明、最後は64で終わるわ」
「テリィたん!この組み合わせは、全国でも1000人もいないのに、この秋葉原に13人もいる。コレ、決して偶然じゃないから!」
「つまり、ケピナ・ヲルパは、そーゆーマイナンバーの社員のいる会社ばかり狙って襲ったってコト?」
珍しく話についてイケテルw
「テリィたん、すっごーい!サエてるわ、さすがミユリ姉様のTO!」
大きくうなずく僕←
「さ。コレがソレっぽいマイナンバーの人達ょ。全員が女性で、しかも38才から46才までの…オバ」
「オバさんをバカにしないで!」
「はい、ミユリ姉様…」
アプリの向こうはヤタラ賑やかだw
「うーん待てょ。ラギィ、ケピナ・ヲルパの里親養育ファイルどこだっけ?養子縁組の記録は残ってナイか?」
「テリィたん、ムダょ。今時は個人情報保護で、生みの親のデータは黒く塗り潰されてる」
「うんにゃ。この業界は軽く半世紀は遅れてるから、黒塗りは全て手描きだ。ホラ、母親のマイナンバーの数字の下半分や右半分やらが黒消しからハミ出してるから読めるぞ」
アプリの向こうでスピアが反応。
「テリィたん!最初は7823。後3桁飛んで、最後が64だから…ってか、コッチでも照合スルし」
「ケピナ・ヲルパのホントの狙いはコレだったのか!」
「彼女は、自分の母親を探してたのね?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋警察署は、朝メロ男優ライア・ライラを召喚スル。
「しつこいな!彼女の居場所ナンて知らないよっ!」
「あらぁ。でも、前もそう言ってリバーテラスでデートしてたわょね?ホントは居場所を知ってルンでしょ?貴方に教えズ彼女が姿を消すハズがナイ」
「もう帰る!今後は弁護士を通してくれ」
席を立ちかけるライア。ソコに僕が顔を出す←
「ラギィ、もうOKだ。お母さんが見つかった」
「良かった!裁判所の情報開示命令をとった甲斐があったわ。テリィたんの元カノのミクス検事が良い仕事してくれた」
「青森便が、さっき神田リバーに着水した…で、ミクスが僕の元カノだって情報、必要かな…あ、ライア。君、もう帰って良いょ」
狐に摘まれたような顔をするライア・ライラ。
何度も振り向きながらエレベーターに消える。
「ラギィ。彼氏、いつケピナに電話スルと思う?」
「エレベーター降りたら直ぐにホットドッグ1本」
「甘いな。もうしてるにブラックパンダー1本」
第4章 再会、そして別れ
その日の夜。僕達はラジオ会館8Fの男子用トイレから神田明神通りを赤外線ナイトビジョン双眼鏡で見下ろしている。
「kingからqueen。食いつくかな、ミユリさん」
「テリィ様。何しろ2年も探してたのですから、一刻も早く会いたいハズ。きっと現れます。あ、目標視認」
「乗りますか?」
警察署の夜間出入口から人影がフラリと現れる。
まるで待っていたかのようにタクシーが横付け。
「どちらまで?」
「え?あ、貴方は?」
「タクシーの中だ!抑えろ!」
警察無線が叫び、路地から、地下駐車場から、赤色灯を回転させ、サイレンを鳴らしてパトカーが飛び出す!
「コチラへ!」
タクシーに乗りかけた人影を刑事が保護、入れ替わりに全員が短機関銃で武装した内調SWATが駆け出すw
「ケピナ・ヲルパ、降りろ!」
「被疑者を確認!」
「来ないで!」
タクシーから運転手が飛び出し、駆け出しながら振り向く。赤色灯の中に目を凝らし…見つけると棒立ち←
「アレが、お母さん?私のお母さんなの?」
次の瞬間、銃尻で殴り倒され、その上に何人ものSWAT隊員が折り重なる。後手に手錠されて立ち上がる。
「お願い。お母さんと話をさせて」
「OK。20年後にゆっくり話すんだな。ホラ、立て!」
「ブラキ・カカシ班長!」
残忍とも思える笑みを浮かべ意気揚々とケピナを連行するブラキ班長。ところが、その前に立ち塞がる影w
「いってらっしゃい、お母さんのトコロへ」
「ムーンライトセレナーダー?ホンキなのか?こんな奴のために?」
「私、お母さんに会って良いの?」
反応は真っ二つ別れる。
内調SWATは、安全装置を解除した短機関銃を一斉にケピナに向ける。ケピナは手錠されたママ、動けない。
ソコヘムーンライトセレナーダーとヲタッキーズが割って入る。さらにラギィ警部以下の万世橋の刑事達が…
拳銃を抜き内調SWATに向ける←
「わ、わかった、ラギィ警部。SWATは武器をおろせ!」
「アンタ達!アンタ達も拳銃下ろして!ってか何でアンタ達まで拳銃を抜くのょ?始末書は私1人で十分でしょ!」
「さ、今のうちに…」
しかし、ケピナは金縛りにあったように立ちすくむ。
ソコヘお母さんが駆け込んで、娘を固く抱き締める。
「ケピナ。ケピナょね。一眼見て貴女だとわかった」
ケピナの両眼からボロボロと涙がコボれる。
ソレでも、彼女は呆然と立ち尽くしている。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
深夜。捜査本部が解散となった万世橋のギャレー。
「別に隠してたワケじゃない。君達に聞かれなかったから言わなかっただけだ…パーコレーターで淹れたコーヒーはクソだな。所轄の連中は良くこんなモノ、飲めるなw」
「最初ケピナの被害に遭ったのは、班長の妹さんの会社ナンだってね。ホント、ルイナのデータ解析ってスゴいや。さすがは超天才。パーコレーターの悪口はヤメてくれ」
「始まりは、たかだか200万円の窃盗だった。大袈裟な捜査網を敷くワケにも行かない。そもそも、私が噛まなければ、警察も内調も相手にしなかったヤマだ」
呆れた話だw
「ケチな窃盗だぞ?妹さんに泣きつかれて動いたのか?」
「違う。俺のプライドの問題だ。俺は、バカにされても腹を立てないヲタクと違う。ケピナ・ヲルパは、盗んではマンマと逃げる。俺達をバカにしてる。取調室で見たろ?俺達を、この俺を嘲笑ってたんだ」
「で、被害額を引き上げたのか?おいおい。窃盗額の10億円が何処に消えたか、やっとわかってきたぞ」
核心に触れるがブラキ班長は顔色1つ変えない。
「俺は、2年間1日も休まズあの女を追い続けた。この捜査のために、定年退職も伸ばした。全て奴を逮捕スルまではと」
「そして10億円を手に、晴れて老後をエンジョイか?」
「仮に10億円を盗んだのが俺だとしても…」
ココは大事なポイントなので念推し←
「そーなんだろ?」
「…ケピナ・ヲルパに世間の注目を集めたかった、と言う一心からだ。ゆえに、10億円は手付かずのママで、奴が捕まれば持ち主に返すコトが考えられる。なぁ2年だぞ。俺は、悪党ぶち込みヲタクなんだ。社会から蔑まれても構わない。テリィたん、アンタもヲタクならワカルだろ?
「ワカラナイな」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
翌日。パーツ通り地下にあるSATO司令部。
「ブラキ・カカシ班長に関する報告書を読んだわ。テリィたんの告発で、班長の34年間のキャリアや楽しい老後生活は崩壊スルけど…てっきり、アナタは規律には拘らない人だと思ってたわ」
「やぁモリン心理作戦部長。班長もソレなりの罰は覚悟してたみたいだょ?」
「ソレもそーね。首相官邸の決定が出た時、テリィたんも私に負けズに驚いてるように見えたわ」
タイトスカートで脚を組み替えるモリンw
「結果が全てなのね。今はそーゆー時代。でも、私はソンなSATOが大嫌いょ」
「まさか辞めるつもりじゃないだろーな」
「私は時代遅れの古風な女。ソレは、良くワカッテル。テリィたんのような、自由で気ママなヲタクがSATOを背負って行くのね。コレ、ルイナに渡して」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"。
御屋敷のバックヤードをスチームパンク風に改装したら居心地良くて回転率ダウン。メイド長のミユリさんは渋い顔だ。
「ルイナ。オンライン呑みしてる?」
ルイナの外出は大騒ぎなので、いつもラボからの参戦だ。
「飲んでないけどオンライン。テリィたん、何?」
「モリン部長から、機密情報アクセス権復活の正式な資格証明書を預かったょ」
「やったー!モリン部長、さぞかし悔しがってでしょ?どんな顔してた?」
カウンターの中のメイド服のミユリさんから提案。
「とにかく、ルイナの復活をお祝いして乾杯しましょ。御屋敷の奢りです」
「ミユリさん、待った!も1つ、乾杯ネタがあるんだ。スピア、いる?」
「はーい。ココ!」
カウンターの末席から手が上がる。
「和泉橋北詰の親水公園の件、どーやら区は既存の公園を残すコトを条件に、デベロッパーに再開発の許可を出すみたいだ」
「え。マジ?テリィたん、何でソンなコト、知ってるの?」
「あの親水エリアは、スケボーチーム"ベジタブラ7"のベースだ。ソレを参酌スルよう、官邸筋から話してもらった。ホラ、僕はベジタブラの連中とは色々あって…」
実は、あの"大晦日戦争"を共に戦った戦友ナンだ。
僕は"神田川面に映る2つの流れ星"の称号を持つw
「超天才の御帰宅と神田リバーの流れ星に乾杯!」
そして、大歓声の中で乾杯は繰り返され盛り上がる。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
目の前のカウンターに琥珀色の"ねこぱんつ"。
ミユリさんの、僕専用のオリジナルカクテルだ。
「テリィ様。どうぞ」
「ミユリさん…実はルイナの復帰は喜ばしいけど、ホントにコレで良いのかなって」
「だと思いました…私が未だ池袋にいた頃、テリィ様は前推しのエリスさんと出逢いましたょね?確か、その時テリィ様は落ち込んだと伺いましたが、覚えてますか?」
今カノが語る前カノ話w心の中で第1級警戒体制に移行←
「覚えてる…カモ」
「あのね。ヲタクには、ダメょと叱ってくれるメイドが必要なのです。だって、いつもヲタクは恐れてる。いつか歯止めがなくなり、自分が廃人になるんじゃないかって。でも、大丈夫。歯止めならあるの。ソレは…自分自身」
「ミユリさん。ソレで僕達ヲタクは楽になれるのかな?」
ミユリさんは微笑む。
「私、楽になるなんて逝ってませんょ」
おしまい
今回は、海外ドラマによく登場する"生みの親探し"をテーマに、往年の名画の主人公、国家安全保障局の腕利き班長、朝メロ男優、変幻自在にコスプレする女天才詐欺師、彼女を追う超天才や相棒のハッカー、ヲタッキーズにヘルプの首都高ハイウェイポリス、敏腕警部や刑事達などが登場しました。
さらに、超天才の機密情報アクセス権の復活や、相棒ハッカーの親水公園保存の運動などもサイドストーリー的に描いてみました。
海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、円安でメッキリ増えた外国人観光客で賑わう秋葉原に当てはめて展開してみました。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。




