26.文明が開花した気がする
ここ最近、大きな戦闘が続いているような気がする。
そりゃ本業の冒険者にとって言えば、簡単な仕事かもしれないが、まあ素人の俺にとっては重いものには変わりない。
家に帰った後は疲れてしまい、速攻眠りに落ちてしまった。
少しは頑張ってボタンが送ってくれるであろう荷物を受け取ろうと思っていたのだが、耐えられなかった。
「あ、ああ……」
かなり爆睡したと思うが、相変わらず体が重い。
なんというか、重力が俺の周りだけ何倍も違うような気がする。
「ガチで疲れたぁ……ああ?」
体をぐっと伸ばし、ちらりと横を見てみる。
「……!」
そこには俺のことをじっと見ているレイレイの姿があった。
なんだ、今日はレイレイが俺の隣に寝ていたのか。
よかった……こんな疲れた日に隣がミーアだったら死んでいたかもしれない。
「どうした。俺のことじっと見て」
「な、なんでもありません!」
なんだかやけに、俺のことをじっと見てきているような気がして聞いてしまう。
しかし、すぐに顔を赤らめてそっぽを向かれた。
あれ……もしかしてめちゃくちゃ寝相が悪くて寝れなかったとかあるのかな。
それで嫌われたとか。
「なんかすまん」
「へ? どうして謝るんですか?」
「いや、だって――」
そう聞こうとした瞬間、頭がガコンと揺れる。
一瞬何が起きたのか理解できたなかった。
俺は飛びかけた意識をどうにか戻し、後ろを見てみる。
「おはよう! ご飯!」
ちらりと横を見てみると、どうやらミーアが枕を投げてきたらしい。
おいおい……さすがに寝起きに枕はねえだろ。
「ミーアよ、てめえしばき倒れさたいのかこら」
「おお? もっと遊びたいの?」
俺の返事に反応し、ミーアが枕を再度構える。
ならいいだろう。
俺も抵抗してやる。
同じく枕を構え、ミーアと相対する。
相手は魔族。俺よりはるかに格上だ。
しかし枕投げは人間が得意とするジャンルの一つだ。
俺は必死で抵抗してお前の顔面に一発枕を叩き込んでやる――と思っていたのだが。
「はぁ……朝から何やってるのよ」
イヴがコツンと背中を突いてきた。
振り返ってみると、嘆息しながら腰に手を当てている。
「いや、今から男として真剣勝負しようと思って」
「あなたも言い方。セクハラよ」
「どこがセクハラだ。俺はミーアに渾身の抵抗をだな」
「いいからストップ。うるさい」
イヴが言いながら、ミーアと俺に赤い目を向ける。
刹那、体が動けなくなった。
ミーアも同じらしく、苦笑しながらイヴを見ている。
「あはは! ごめんって!」
「まあいいけど」
すぐに拘束を解除してくれたのだが、いや……怖かった。
やっぱイヴを怒らせると体が多分持たないな。
自由になった体を動かしていると、イヴがキッチンの方に向かう。
そして、箱から何かを取り出していた。
「なんだそれ」
「ボタンから送られてきたものよ。あなた、帰ってきて速攻爆睡してたから代わりに受け取っておいたわ」
「マジか。ありがとな」
「別にいいのよ」
そう言いながら、イヴが魔道具らしきものをキッチンにセットする。
多分、これが火を起こす魔道具だろう。
試しにいじってみると、ぼっと音を立てて火が点いた。
「おお! 文明が開花した!」
半ば感動しながら、火を点けたり消したりを繰り返してしまう。
その様子を見て、イヴは苦笑するが別に気にしない。
感動するものは感動する。
「これで料理の幅も広がるな!」
「ええ。もしかしてカレーも作れたりする?」
「多分作れる。水がないから……そうだな。近くの湖で汲んできてくれたら問題ない」
「そう。なら汲んでくるわ」
言って、イヴは外に向かう。
「もしかしてカレー!?」
「カレーですか!?」
「おう。カレーが作れそうだから、作ろうかなって思ってる」
送られてきた箱の中に、カレールーがあったのを確認している。
前いた家とは違って、完全オリジナルってわけじゃないけど、他にも食材があるから近い味には仕上げることができるだろう。
「やったー! スレイのカレー復活祭! わっしょい!」
「嬉しいです!」
「ははは。そんなに喜んでくれるのはお前らくらいだ」
いいな。
なんだかめっちゃスローライフしている感あるじゃん。
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