24.不思議だな
「ふぅ……死ぬかと思った」
俺は手を払いながら、倒れたスキンヘッドを見据える。
とりあえず死んではいない。ただ気絶しているだけだ。
しかし、頑張ったな俺。
俺みたいな貧弱な人間が斧持ち相手とよく戦えたな本当に。
「お疲れ。あたしたちの方も終わったわ」
「全員気絶させたよ! 私偉い!」
イヴは少し疲れた様子で、ミーアは相変わらず元気にこちらに駆け寄ってきた。
ちらりと見てみると、彼女たちの背後には男たちが倒れていた。
すげえな。全員ぶっ飛ばしたってわけか。
この子たち、本当にすげえ。
誇らしいよ。
「わ、わたしも準備していたんですが、不要でしたね」
釣り竿片手に、レイレイが魔法陣を浮かべている。
すっと空を指で撫で、魔法陣を消失させた。
やはりレイレイも戦う覚悟はしていたらしい。
「問題なかったな。最悪レイレイに戦ってもらう感じになってたけど、俺たちでどうにかできた」
そう言って、俺はふうと息を吐く。
「ごめんな。やっぱり不安だっただろ」
「え? 不安ですか?」
彼女たちは最高に強い。
多分、どんな奴らだって倒すことができる実力を持っているだろう。
しかし、実力があったとしても気持ちは違うだろう。
心はしっかりと女の子をしている。
レイレイこそエルフ。長寿な種族だけど、まだまだ若い。
人間年齢で言えば、俺より年下である。
囮作戦なんて、不安で仕方がなかっただろう。
「まあ……確かに不安でしたけど、スレイさんたちなら絶対に大丈夫だって信じてました。実際、大丈夫でしたし」
「そっか。信用してくれてたならありがたいよ。それに応えることができて俺も嬉しい」
こんな俺を信用してくれるなんて、感激である。
俺なんて彼女たちと違って、実力もないし怖がりだし。
覚悟はしてるつもりだけど、怯えて敵前逃亡するかもしれない。
そんなやつを信用してくれてるって思うと、嬉しいし頑張ろうと思える。
「それと……たくさんお魚釣れました」
言いながら、レイレイがかごを持ち上げて誇らしげにしてみせた。
中を覗いてみると、俺たちが食べる分には十分なほどの量が入っているようだ。
「ははは……この様子だと大丈夫そうだな」
緊張感しかない状況で、これならレイレイも大丈夫だろう。
俺なら、こんな状況に陥ったらビビって魚釣りどころじゃない。
ずっと震えながら釣り竿を握っていることだろう。
多分、魚がヒットしたところで気が付かない。
そう考えてみれば、やはり彼女のメンタルは強靭なのかもしれない。
「さて、と。彼らをどうするかだな」
俺はパンと手を叩いて、倒れている山賊たちを見る。
「普通にボタンのところに運べばオーケーでしょ。向こうも被害被っていたらしいし、対応してくれると思うわよ」
「確かにそうだな。んじゃ、気絶しているうちに運ぶとするか。物置小屋に荷車があったと思うから、誰か持ってきてくれないかな」
「私が持ってくる! 急ぎで行くから待っててね!」
うおーと叫びながら、元気に走っていくミーア。
相変わらず彼女の元気はどこから湧いてきているのだろうか。
不思議で仕方がない。




