表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/43

23.任務完了

「ナ、ナイフ一本で斧を防いだってのか……!?」



「はは……俺、こんなことできるんだ。驚いた」



 ナイフに当たっている斧に手を伸ばす。


 そして、持ち手を掴んで相手の方にぐっと近づく。



「どうだ山賊。ビビっただろ……!」



 正直、俺の内心もビビりまくっている。


 しかしここは大きく出た方がいいだろう。


 勇気を振り絞り、相手を威嚇する。



「てめえ! 離しやがれ!」



「うわっと」



 スキンヘッドが斧に力を込めて、大きく俺から距離を取る。


 俺のことを危険だと判断してくれたか。


 そりゃ嬉しいこった。



「クソが! お前ら、ただ見てねえでこっちに手を貸せ――っ!?」



 スキンヘッドが振り返ると、愕然とした様子で斧を落とす。


 状況は無事、俺たちが有利な方向に運ばれていっているらしいな。


 俺はあくまで囮。まあオマケみたいなもんだ。


 本命はイヴやミーア。二人である。



「頭……やべえです!」



「あの男、魔族を連れていやがる!」



「それも強力な――あがっ!?」



 一人の男が叫ぼうとした瞬間、イヴの一撃が直撃する。


 男は言葉を紡ぐこともできずに、その場に倒れ込んだ。


 他の男たちもそうだった。


 必死で抵抗しようとしているが、すぐにイヴやミーアに意識を奪われる。


 残っているのはスキンヘッド含めて三人。



「おいおい、どうなってんだよ! なら一番貧弱そうな癖に護衛を名乗ってる男を人質にするしかねえ!」



「俺を狙うってことか。いい判断だな……! 二人共、残りの男たちを頼んだ!」



「分かったわ! でも大丈夫なの!?」



「すぐに片付けてそっち行くよ!」



「大丈夫だ! 気にすんな!」



 すうと息を吸い込み、相手を見据える。


 スキンヘッドを見るに、まあ俺より手強い相手だ。


 さっきの斧だって、奇跡的に防ぐことができたと言っていい。


 でも――あいつらばっかに頼るわけにはいかない。


 俺だって、やればできるんだ。


 仲間を守ることだってできるんだ!



「来いよ! 俺が相手してやる!」



「やってやろうじゃねえか! こっちは何年山賊やってると思ってるんだ!」



 斧を大きく引き、ムチのようにこちらに向かって放ってくる。


 俺は体術や護衛術の心得なんて一つもない。


 だから全て、我流で回避する。


 傍から見たら不格好かもしれないけれど、全部避けたらこっちのものだ。



「いちいち避けんじゃねえ! うぜえんだよ!」



「申し訳ないな! 俺は生憎とこういう戦い方しかできなくてね!」



 俺は姑息な戦い方しかできない。


 ヒーローのような格好いい戦い方なんてもってのほかだ。


 でも、誰かを助けることができるなら、どんな戦法だって正義だ。


 一歩後退し、地面を踏みしめる。


 ナイフを逆手に持って、向かってくる男に向かって手のひらを差し出す。



 ――パンッ!!



「――っ!?」



 猫騙しである。


 誰だって、突然目の前で破裂音がしたら怯まざる負えない。


 どんな人間だって、そういう仕組をしている。


 スキンヘッドは目をぐっと閉じて、大きく怯む。


 瞬間、俺は思い切りお腹に向かって拳を放った。



「あがっ……」



 男は口を開き、呆然としながらその場に膝をつく。


 俺のことをちらりと見て、恨めしそうに睨んできたかと思ったら倒れ込んだ。



「任務完了っと」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ