14.指名手配?
「やあやあ! 妾はボタン! 第三村のボスじゃ!」
「は……え?」
開いた口が塞がらないとはこのことだろう。
ボタンと名乗る少女はガハハと笑いながら、椅子の上に立つ。
腰に手を当て、ニヤリとこちらを見てきた。
「なんじゃ。その不思議そうな目は」
「いや、なんでもないです! ちょっと驚いただけで!」
ダメだダメだ。
ここで変な印象を持たれては今後に関わってくる。
とりあえず無難そうな感じに……。
「ちっちゃいね! 可愛いー!」
「この子がボス? 本当に?」
「ああ……ちょっと二人共。怒られますよ……」
おいちょっと待て。
お前ら、普通初手でそんなこと言うか!?
相手は村のボスだぞ!
しかも普通の村じゃない。
荒れに荒れた人達をまとめているボス。
そんなのを敵にまわしたら……俺の首がまた飛ぶ危険性が!
「ガハハ! 可愛いじゃろ! 妾、可愛いからのぉ!」
「ええ……」
どこか満足気なボタンさんを見て、少し困惑してしまう。
この返答で問題なかったのか。
「ところで、お主らが妾の部下たちをボコったのじゃろ!?」
そう言うと、目を輝かせながら俺の目の前へと走ってくる。
顔をぐっと近づけてきて、何度も聞いてきた。
「ああ。えっと、俺がまぐれで撃退しました」
「謙遜するな! 妾の部下は鍛えておるからな、まぐれで勝てるような相手じゃないわ!」
そ、そうなのだろうか。
俺はたまたま勝てたって思っていたんだけど、彼らって意外と強かったのかな。
「ところで、お主……スレイじゃったか。お主が考えていることは分かっておるぞ!」
そう言いながら、ボタンさんが決めポーズを取る。
本当に元気な子だなぁ。
あれ、というか俺って彼らに名乗っていたっけか。
うーん、記憶にないが知らないうちに言っていたのだろう。
「第三村と仲良くしたいんじゃろ? さすがに個人で生活するには、ここじゃと難しいからの」
「ええ……はい。すごいですね。俺が考えていること、全部筒抜けだ」
まだ何も説明していないのに、ボタンさんは全部知っているようだった。
もしかして俺の情報がどっかで漏れているのか?
いや……そんなのありえないと思うけどな。
「ふふふ! ともあれ、お主らのような強い相手は妾たちも歓迎じゃ! 仲良くしてやっても良いぞ!」
ボタンさんは俺の背後にいるミーアたちを指さしていく。
「ケモミミが獣人。クールなのが吸血鬼。耳が尖っておるのがエルフ! うむ、妾こやつらに興味があるしな! なんたって、彼女ら全員がレアキャラじゃからな!」
レアキャラ……そうなのだろうか。
もちろん、彼女たちのことは俺は特別だと思っている。
でも、レアキャラって世間的に言われるほどだろうか。
まあ褒めてもらえるのは嬉しい。
「私に興味を持つなんていい趣味だね! 好き!」
「ミーア……お前はなんか軽いな」
どこか興奮しているミーアに、俺とイヴ、レイレイは苦笑する。
まあ、一番怒っていたミーアが納得してくれたので俺的にはいいかな。
「歓迎の印に今夜は泊まっていくがいい! 妾、スレイと色々喋りたいからの!」
「お、俺ですか?」
わざわざ、村のボスが俺を指名するって?
「あ、スレイを取るのは禁止!」
「どういうつもりなの?」
「……スレイさんが心配です」
先程まで弛緩していた三人に少し緊張感が走る。
「そりゃ気になるじゃろ! だって、ほれ!」
言いながら、ボタンさんが紙を取り出した。
「……は?」
そこには、俺の顔写真と【指名手配】という文字列が並んでいた。
「指名手配されている人間に興味がないわけないじゃろ!」
嘘……俺、指名手配されてんの?




