95 sideマリア『勇者達』①
私はマリア。少し前までハルピインの街で冒険者ギルドの受付嬢をしていました。
今はサーシャが一時的に抜け、メロン、カリナで構成された冒険者パーティー「殺戮天使」のマネージャーをやっています。時折「殺戮天使」の臨時メンバーとして、一緒に冒険もします。
転機はサーシャとの出会いでした。初対面ではトラブルになりかけましたが、結果的に仲良しになれました。
そして、再び冒険者に戻り食材ハンターを目指そうとしたとき、サーシャから相談を受けました。彼女が一時的に「殺戮天使」を抜けたのです。
自分がいない間、人が良すぎるメロン、カリナを悪意から守る防波堤役が欲しいということでした。だから、迷わず名乗りを上げました。
するとサーシャは捨て値同然で総ミスリル装備、貴重な「氷魔法極」「魔力増加」のスキルオーブ、そしてS級武器を売ってくれました。
新拠点は私の両親が経営する食堂があり、メロンとカリナの故郷に近いダンガーラです。
昨年まで戦争をしていた敗戦国との国境も近く、荒くれ者が多い街ですが、私達3人にちょっかいをかける馬鹿はすでにいません。
私達は、最初から暴れたのです。
「殺戮天使」が拠点をダンガーラに移して最初の依頼は、ほかの冒険者との合同討伐でした。
街の北50キロ、メロンとカリナの故郷の村から30キロの地点の森にオークの大規模集落ができていました。
総勢40人の冒険者を集め、ダンガーラのギルマスをリーダーにオークの巣に向かう途中、私達は他の冒険者になめられていました。
メロン、カリナは美女で物腰が柔らかく、か弱い乙女に見えます。「特級ダンジョン踏破者」もアピールしません。
私も「まずまず」の、もう一度言いますが、まずまずの美人です。きっと間違っていません。ですが、知り合いも多いダンガーラでは、弱くて一度は冒険者を断念したことが知られています。
何人かの冒険者がひわいな言葉をかけてきました。しかし、不思議と彼らが怖くありませんでした。
オークの巣に到着して、誤報がありました。
少し高い場所から見るとオークが120匹という情報に対し、優に300匹。プラスしてキング誕生の可能性もありました。
作戦を立てることもできず、撤退です。ギルマスの判断は間違っていません。
しかしここは、メロンとカリナの故郷に危険が及ぶ範囲。
明らかに2人の雰囲気が変わりました。私も付き合います。
「ギルマス、「殺戮天使」プラスワンは残ります」
「マリア、女3人では危険すぎるぞ」
「マリアさん、とりあえずオークキングだけは倒します」
「だね。残しておくと、ペルミ村のお兄ちゃん達に危険が及ぶね」
2人はすでにギルマスの言葉を聞いていません。
丸い巣から50メートル。
キング担当のメロンが中央から切り込む。カリナが右、私が左側と大ざっぱに魔法を打ち込む。そんな作戦を立てました。
私がサーシャにもらった「六角氷姫」の本気を出すチャンスが来ました。
私が剣に魔力を込めていると、異変を感じました。
「六角氷姫」がどこまでも魔力を吸い込むのです。そして私の魔力も尽きません。
強烈な冷気があふれています。気分が高揚しています。
だけど横を見るとメロンとカリナは、私など比べものにならないほど、魔力を膨れあがらせていました。
まあ、上には上がいます。
私は底力が上がったからといって、勘違いするとこでした。
「さあ豚の間引きをしましょう。うまくいけば今夜はボーク丼ですよ。「六星氷弾」」
「うなれ黒虎!「風虎疾走」」
「黒獅子よ!「黒顎」」
ど。
どど。
どどど。
どどどどどどどどどどどどどどどど!
牽制の攻撃のつもりです。
なのにオークの巣が弾け、豚どもが空を舞っています。
何が起こったのでしょうか。ギルマスも冒険者も目を丸くしています。メロンとカリナも、「あっ」という表情です。
そうです。私達は自分の力量を計り間違っていたのです。メロンとカリナはここ半年ほど、特級ダンジョンのゴーレムばかり相手にしていました。
すでに人外です。
私もサーシャに3つの希少なアイテムをもらって掛け合わせたくせに、ギリギリCランクだったころの感覚で戦いました。
どう見ても、一番弱い私でさえAランク冒険者の域にさしかかってします。
とりあえず巣に足を踏み入れると、オークキングだけ辛うじて生きていました。
すでに「特級ダンジョン攻略者」の称号を持つメロンとカリナが、キングのトドメを私に譲ってくれました。
私の冒険者復帰戦は「オークキング討伐」からスタートしました。
私にはいい経験でした。もしダンジョンに入り、周りに他の冒険者がいる場所で「六角氷姫」の全開を引き出していたらと思うと、冷や汗が出ます。
ちなみにメロンとカリナの提案で、何とか形が残ったオーク200体を参加した冒険者全員で分けることにしました。
こうして人気者であり、街で一番恐れられる美女3人組が作り上げられたのです。私もギリギリ美女側に入れて下さい。お願いします。
メロンとカリナは移動スピードも尋常ではないので、20キロ離れた自分の村に住んで、街に通いで冒険者をしています。
私は実家の食堂に食材を提供し、他の店にも格安で卸しています。
領主の三男とやらが、うちの食堂を気に入ったのか、頻繁に来ます。
目立っている自覚がありますし、仲間のメロンとカリナは貴族が取り込もうとしても不思議ではない人材です。最初は警戒しました。
しかし彼、カインは親の身分を鼻にかけることなく、実力で騎士を目指しています。その姿に好感が持てます。
親にはよくカインのことを聞かれますが、ちょっと仲がいい程度です。
私はもらったスキルとダンジョン通いのお陰で、1ヶ月半でレベル32。氷魔法が強力なので、シルバーベアも1人で倒せました。
カインにピンチが訪れたなら助けてあげようかな、くらいは考えています。




