62 沼様、ゲルダが変
サスルの街に到着して、かなりお高い宿を3泊取った。ゲルダをふかふかのベッドで迎えるためだ。
そして沼様の元で体を修復している彼女を待った。
2日後、買い物に出ているとき沼様からの交信があった。
『取りあえずゲルダの体が崩れないとこまでは修理したぞ。肝臓をはじめ、内蔵の半分は召喚者のやつと取っ替えた』
沼様のスイーツを買い終え、大きい商会で塩、胡椒、雑貨の会計をしていた。
『でな、子宮は代用品がなかった』
「女の神器持ち、楓夏の体があったよね。それはダメだったの?」
『お前があの周辺全部を破壊しただろう。悠長に修理してたら、ゲルダが死んでたぞ』
「あっちゃ~。やっちまった」
『だからゲルダはお前の子供を産めん』
「え?最初から女と女のカップルでは、子供は出来ないよ」
『あ、そうなのか。そういう生き物だったか。奴とお互い、子宮に通じる部分を熱心に攻めて性的興奮が高まっておったから、てっきり子作りかと勘違いした』
「言わないで!」
「はいいいいい?」
塩の会計をしていた商会の人を驚かせてしまったが、私は真っ赤な顔をしていたと思う。
◆
何か変だ。慌てて宿に帰ってきて、ふかふかベッドの前に立った。
「沼様、ゲルダを出して大丈夫?」
『ゲルダは眠らせていたが、さっき起こして注意点を言っておいた。しばしの逢瀬を楽しめ』
「沼の底発動! ゲルダ」
どっぷ~~ん。
2メートルの高さから、全裸のゲルダが出てきた。背中からベッドの上に落ちてきた。
ぽふっ。
ベッドの中に沈んだあと、ゲルダが顔を出した。
「・・サーシャだ」
「お帰り・・」
「ありがとうサーシャ。もう会えないかと思った。あなたと沼様が助けてくれたんだね」
彼女の笑顔を見たら、何を言っていいか分からなくなった。
「ゲ、ゲル、う、うあ、ああ、あ」
素っ裸でシーツにくるまれた彼女の上半身を起こして抱き締めた。
何も変わってない。ほんの一週間前まで見てた顔、鎖骨、腕、胸だ。
「先にちょっと残念なお知らせ。死ぬとかじゃないよ」
「なに」
「私に他人の内臓と下半身をくっつけたから「きょぜつはんのう」というのが起こるんだって」
「何か難しい話だね。沼様、たまに高位魔道師みたいなこと言うもんね」
「私、ラボってとこで眠るの。時間をかけて私の元の体の「さいぼう」ってやつに、もらった体を取り込みながら融合させないと、体が崩れるんだって」
「そっか、仕方ないけど、ずっとは一緒にいられないか」
「今日は4時間したらサーシャに言って沼の中のラボに帰って来いって。次は10日後」
「うっ、短い。そしてクールタイムが長い」
「けどね、治療が進めば逢える時間は延びていって、3年後には沼様の元に戻らなくても大丈夫だって。眠ったまんまなら、ラボに入る期間は短くなるらしいけど、それは寂しい」
「私も。3年か・・。長いけど、たまにでも逢えるなら待つ。ゲルダ、沼の中で精神は保てる?」
「私のことは沼様が眠らせてくれる。たまに起こしてサーシャと話をさせてもいいらしいけど、沼の中で長く起きてたら気が狂うらしいわ」
「ならいい・・。そういえば、もっと大事なことがあった。ゲルダ、足は動く?」
「多分。足に感覚はある。なくなったものを取り替えたから、変な感じだけどね。立ってみたい。サーシャ、手を貸して」
シーツにくるまったままの彼女を抱っこして、ゆっくり、ゆっくりと立たせた。
「ちょっとぐらぐらするけど、立てる。怖いから手を離さないでね」
「うん、良かった」
ぎゅっと抱き締めたら、ゲルダも抱き返してくれた。
「ちゅっ、ありがとサーシャ」
「ん・・ん、んん」
「もう、あん」
「ふふっ」
その時、異変を感じた。
むくむくむく。
「ん?シーツ越しに何か当たる。沼様に何か持たされたの、ゲルダ」
「な、なんかサーシャとキスしてたら、股間が突っ張る感覚が。ちょっと痛い・・」
「うそ! ま、まさか、合体した体が、うまく融合してないの? 他に痛いところは」
再会の喜びから一転して、血の気が引く感じがした。
あわててゲルダからシーツを外した。
「へ?」
私はそれを見たことがある。だけど、なぜゲルダに付いてる。ゲルダはさらに驚いただろう。
「なによ、これぇ!」
叫ぶゲルダの股間から、男性のアレが生えていた。
沼様、生体改造って何したんだよ・・。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/295429334/181668538
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