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イレギュラー召喚で神器をもらえませんでした。だけど、勝手に付いてきたスキルがまずまず強力です  作者: #とみっしぇる


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56 大後悔の10分前

神器持ちの男、奨太に焼き殺された女子供22人の遺体を後日供養するため、時間停止付き収納指輪に入れた。


その後、私とゲルダは「子爵家正規軍」に滅ぼされた彼女の故郷を訪れた。遺体はなかったけど、心を込めて村の人たちのためにお墓を作った。


そして、お墓の前でゲルダを捨て石にしようとしたことを謝った。


「ごめんなさい。特に旦那さん。ゲルダと一緒にいることを許して下さい」



◆◆

ゲルダの故郷に行って2週間後、私達は動き出した。

私とゲルダはマツクロ子爵領の領都から北に20キロの街に宿を取り、情報を得ていた。


20キロといっても今の私達なら走って20分もかからない距離。領都の情報屋に高い金を払って、毎日子爵家の動向を探ってもらっていた。


10日目、マツクロ家三男がわざと姿を見せていた私達に対して「正規軍討伐隊」を組んだ。数は50人の予定。情報屋から詳細な報告書をもらった。


「残念ながら楓夏ちゃんも討伐隊の中にいるのか」

「彼氏が人を死なせて狂いそうになった日に、楓夏が抱きしめて初めて男女の仲になったって、書いてある」


「楓夏は処女だった。そして「高校」という教育機関にいた時期から楓夏の方が惚れていた。恋も成就して男に情が沸きすぎて、逃げる決断が出来ず残った」

「まだ、そういう関係じゃなかったんだ。てか、この報告書作った情報屋すごすぎない?」


「あはは。じゃあ一網打尽にするか」

「だね。領都からこの街まで20キロ程度の進軍だから一旦、子爵邸に軍勢が集結。一応は「正規軍」だから団結式のようなもんをやる。そこを攻撃しよう」


追加プランも考えている。


子爵軍を相手に暴れて、主だったメンツを倒したところでゲルダが悲鳴を上げる。

そこに私が用意している、赤いミスリル装備を着せた「人食い水溜まりのサーシャの遺体」を置く。


ゲルダの安全が第一なので、無理ならやらない。


もうゲルダには、沼様のことまで話してある。「沼」に沈めたものを出せることも知っている。

爬虫類軍団の出し入れを見てれば分かるわな。


いざというときは沼に入って隠れると言うが、やめてほしい。


◆◆

決戦の舞台に向かっている。


情報屋の追加情報によれば、三男は私達を甘く見ている。


「15メートルの鰐も、人食い水溜まりの魔法も、敗残兵の誇張と決めつけている」


「なんでそうなるのかな」


「偶然よ。サーシャのスキル効果。結局、遺体があったのは四男と五男だけ。帰ってこない敵は全員が行方不明」

「ふむ」

「そして大事なとこはここ。生き残りが全員無傷。かすり傷もなく、敵と戦った痕跡がゼロ」


「あっそうか。歴戦の強者から見たら、不自然だよね。私達は剣で戦うタイプじゃないけど、三男にはそんなこと分からない」


「弟の四男と五男は罠にかけられて死んだって決めつけて、逃げた奴らが責任逃れに敵を大きく見せてるって騒いでるんだって」


「私達が大したことないと思う上に、神器持ちも2人いるから強気になるよね」


だからわずか2人、「赤いサーシャ」、「白銀騎士ナイト」だけで攻めて来るとは思っていない。子爵邸の門が全開で空いている。


「侵入方法を考えて来たのが馬鹿みたい。正面から入ろ、ゲルダ」


門番2人を殴り倒して中を覗いた。


一辺70メートル程度の殺風景な庭の右奥に、大きな屋敷。バルコニーもあるので、そこから庭を見ている人間もいる。

左側が馬屋と兵舎。煌びやかさはなく武骨な作りだ。


庭の右端の方に石の台があり、壇上には185センチの男が2人と170センチくらいのなよっとした黒髪の男が立っていた。


「子爵と三男だよ。二人の間で槍持った黒髪が、火属性の神器持ちね」


壇上の三男が演説していた。


「相手が女だろうが関係ねえ。ブチ殺せ! ここにいる奨太も女子供も容赦なく焼き尽くした。水魔法なんぞ屁でもねえ。なあ、奨太!」

「お、おお~。俺に任せろ」


おあつらえ向きに、兵士たちが馬の準備をしに馬屋に向かった。私達から見るとターゲットが右側にいて、その他大勢が左側へと分断されてくれた。


それにしても黒髪の男、目が変だ。薬で精神がおかしくされているかも知れない。


『おいサーシャ、神器持ちが2人もいるな。片方でいいから食わせろ』

「あ、沼様。2人?本当だ、壇の陰に楓夏もいた」


「サーシャ、楓夏が憔悴しきってる。この前は殺すって言ったけど、彼女は助けてあげたい・・」


私がゲルダといて新しい感情が芽生えたように、彼女も私と過ごして優しさを取り戻しているようだ。なんか嬉しい。


「方向転換アリよ。可能なら助けよう」

「ありがとうサーシャ、チュッ」


私のフルフェイスの前面を覆うフェイスガードを上げてキスしてきた。


「ん・・。もうこんなとこで」


『お盛んだな』

「こほん。沼様、神器持ちの1人は狙うよ。もう1人は保留していい?」


『それでいい。けど、1人の経験値だと沼レベルが5・7から5・8の間くらいにしかならんな。前にも言ったように、レベル6になれば簡単な生体改造ができる。ゲルダをお前好みに作り替えてやるぞ』


「ははは。今のゲルダが好きだから、生体改造は必要ないよ」

「生体改造?」


「まあいいから、乗り込もうよ」


「じゃあサーシャに高レベルにしてもらった水魔法で三男を狙う。ウオーターランス!」


びゅるるるるる!


「水魔法が飛んできた」


だけど三男には当たらなかった。


「火槍盾」


ぼわっわぅっ。じゅっ。

パーン! 高水圧と高熱が激突して破裂した。



「おう奨太、サンキュー。向こうから乗り込んで来やがったか。殺してやらあ」


火の槍を持つ奨太の推定レベルは50。殴り合いなら私達が勝つだろうけど、やはり神器から出る炎だけは要注意だ。


「まず、雑兵を足止めしよう。爬虫類召喚」


少し走って兵士がいる方向に、飢えた15メートル鰐と8メートルコドモオオトカゲを1匹ずつ、2メートルのカバウサギ2匹を放出した。






https://www.alphapolis.co.jp/novel/295429334/181668538




こちらで先行掲載しています。

読んでいただきありがとうごさいます

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