39 強制トロル戦
貴族家次男坊と仲間を沼に沈めた。
わざわざダンガーラからハルピインに寄る理由がなくなったから、レベルアップに励むことにした。
西から東へダンガーラとハルピインを結ぶ街道から、100キロほど南にそれた。
南部に攻略記録ゼロの超級ダンジョンがあるコメンの森。今いる外縁部から南に3000キロほど広がり、そのまま絶壁から海に抜ける。
そこに5キロほど入って1ヶ月を目安に魔物を倒す予定だ。弱気? それ以上入ると、苦手な猿が出るのだ。
オーク、オーガ、ゴブリンとスケベ魔物も豊富。悪意の次に、私に性欲を向ける相手が好物の沼様も歓迎している。
私のレベル119は、全ステータスが同じの平凡な119なのだ。
普通、レベルが100を越えることができる戦闘職は物理か魔法の能力が飛び抜けている。
自分の得意分野ならレベルが20上の相手に戦えることもある。
私は神のスキルを扱える代償に、レベルアッブをしても最低限のステータス上昇しかない。
ならば1人になった今、「沼の経験値10倍効果」をフルに使ってレベルを爆上げしないと。
「最近、増えたオークがコメンの森から来てるって情報があったよな。大規模な巣があるなら、経験値とお金にしたいな」
◆
50メートルを越える高い木々が生い茂る森に入った。
早速、幅広い林道でハイオーク3体を見つけた。走ってきた方向に行けば巣に着くなという安易な考えがあった。
異変は感じたけど、オークの巣にオーガでも乗り込んできたんだろうとか思ってた。
ぽちょん。2・3メートル沼発動。
「ぶもっ?」
私のスペックは低くても、沼の動きは私のレベルアップに合わせて早くなっている。
時速140キロで3匹をとらえると、また2匹を発見。
同じ方向からハイオーク、オークが走ってくるから目一杯の10メートル前に沼を置いて、どんどん捕獲していった。
とぷん、とぷん、とぷん、とぷん、とぷん、とぷん。
「おおっ、どんどん走ってくる。左右の木の間にもいる。豚祭りだ」
なぜ、オークが蜘蛛の子を散らすように走っていたか、答えがこいつだ。
4匹のハイオークを沼に沈めるために下に集中しすぎた。
私が捕獲した獲物を踏み潰すため、それが空からふってきた。
どし~ん。ぽちょっ。
「え?灰色のでかい右足がジャンプしてきて沼にはまった・・。トロルだ!」
身長15メートル、腕が10メートルくらいある巨人。
「あんが?」
「沼」にとらえられたけど、まだ右足の指も全部沈んでない。
「これも沼様から戦いを避けろと言われてた奴だ。ヤバい」
沼を揺り動かせばいいのに、でかいトロルの圧迫感から後ろに跳んでしまった。
ぴた。
「私が跳ぶだけじゃ、沼の10メートル範囲で止まってしまう。沼自体も動かさないと」
右にある幹が8メートルくらいの木にぶつけたいが、そこまで50メートルもある。
「とにかく動けええ!」
私の操作に引っ張られた沼。はまったトロルも強制移動させられ、何かに気づいた。
「げ、腕を振ろうとしてる。こなくそ。沼よ動きまくれ」
ブンブンと沼を振ったが、トロルが沼に沈んだのはまだ足首くらい。
「ぐふ、ふんがああああ!」
私はめちゃめちゃに沼付きトロルを動かした。大木まであと20メートル。
目を回したトロルは攻撃できなくなったけど、10メートルの長い腕がランダムに振り回されてしまった。
「うわっ、でかくて長い鞭みたいな腕が、読めない軌道でぶん回されてる。沼を動かし続ける余裕がない!」
トロルが沈みきるまで10メートル以上離れられない私に、縦横無尽に動く太い腕が襲いかかった。
逃げ場はジャンプして上か、横に飛ぶしかない。後ろに飛んでも、沼から10メートルで強制的に止まるから、トロルとの距離が変わらず手が当たるのだ。
「沼動け。うわっ、やべっ。うわわわわ!」
大木まで残り5メートル。ここまで3分もかかった。
「トロルよ、木にぶつかれ!」
どんっ。
トロルの体を大木に密着させて止めた。止めたけど、長い腕が反動で飛んできた。
「跳ぶしかない。げっ、ダメだ」
横凪ぎの左手を上に避けたが、ノータイムで真横からトロルの右手のひらが迫っていた。
びった~~~ん。
「いやああああ!」
ごろごろごろ。どんっ。
「沼」を操作できなくなった私は、沼の中心部分から10メートルの位置を一周回らされ、トロルの手に当たって止まった。
「あつつ、止まったから手から離れなきゃ。けど、目が回る~~~」
トロルの反撃があると思ったが、なかった。
「あ、トロルの両方の肩が外れたみたいになって、股が木に密着してる」
「うが、うが・・」
「いやよ、沼から離さないわよ。素直に沈んで。トロルが何て言ってるか分かんないけど」
ごきごぎごきごき。
「うがーーー!うがあーー!」
股関節あたりから2・3メートルの「沼」に収まりきれないトロルの肉が、ねじ切れながら沼様の元に送られていった。
あまりの悲鳴に、生き物は何も寄ってこない。
やがてトロルが弾け、つながったままの肉片が何十メートルも先に四散した。
ずり、ずり、ずり。なかなか終わらない。
ほちょ~ん。
「肉片までみんな沈むのに10分以上かかった。本当に今回は運が良かっただけだ。危なかった」
レベル119の防御力と装備のお陰で打ち身だけですんだが、かなり怖かった。
「苦労したのに高値で売れるトロル素材もぼろ雑巾みたくなってんだろうな。もう疲れた」
少し歩くと大きな枝か張り出した木があったので、枝に寝袋を固定して周りにガードの沼を展開して寝た。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/295429334/181668538
こちらで先行掲載しています。
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