27 故郷と盗賊団
「え?殺戮天使のお三方で、もうキンヌダンジョンをクリアしたのですか」
ざわざわざわざわざわ。
ダンジョン攻略の次の日、ギルドにクリア報告に来た。
「はい3人分のギルドカード。クリア証明もあるでしょ。素材買い取りは、後日にするね」
「分かりました。昨日の素材の入金と解体したお肉が用意してあるので、お受け取り下さい」
一人120万ゴールドになったがメロンとカリナは現金で受け取った。
2人ともギルドカードの残高も500万ゴールドくらいあるはずだし、現金も収納指輪に入れておけば安全だろう。
私はブライト王国の王子や貴族から「徴収」したお金もある。下手したら3億ゴールドくらい持ってるかも知れない。
「あのさサーシャ、この120万ゴールドなんだけど、故郷の村に送っていいかな」
「サーシャに稼がせてもらったお金だけど、春の長雨とかで農作物が不作になりそうな感じなんです」
「ふふ、二人とも優しいね。私の許可なんか必要ないから」
◆◆
ギルド解体場でマツサガカウをはじめとする高級食材のお肉を受け取った。
解体所を出ると、マリンとカリナが受け付けカウンターで何かを訴えている人を見つけた。
「あれ、ポールおじさんだ」
「知り合い?」
「同じペルミ村の近所の人。子供のころにかわいがってもらったんだ」
向こうもこっちに気づいたが、かなりあせっていた。
「ポールおじさん、こんな遠くまでいつ来たの?」
「メロンとカリナか、そういえば冒険者になったんだな。いや、ゆっくりしてられん。ギルドに討伐依頼を出しに来た」
「ペルミ村で何かあったの?」
「村に盗賊が出てな。金をかき集めて討伐依頼を出しに来たんだが、金が足らなくてな・・」
「受け付けのお姉さん、どんな依頼なの」
「あ、殺戮天使のみなさん・・。この方が盗賊の討伐依頼をお出しになったのです。相手は40人規模の盗賊団だそうです。心苦しいですが、その規模となると最低でも200万ゴールド、そして別途の経費が必要となります」
「そんな・・」
「おじさん、いくら出せるの?」
「サーシャ?」
「さ、30万ゴールド」
「おおっ、一人につき10万も儲かるじゃん。受け付けのお姉さん、殺戮天使がその依頼受けるよ」
「サーシャ様・・。では早急に手続きします。お客様、このギルドで最強のパーティーが依頼をお受けしてくれるそうです。ご多幸をお祈りします」
「メロン達が最強?」
「ポールおじさん急ごう。行きながら話を聞かせて」
「そうです。ペルミ村に向かいましょう」
「よし、私の出番だね」
緊急事態だ。おじさんを抱えて街を出ると、人がいないとこで「無人馬車」、高さ2メートルのコンテナ1個、3メートルの長板を収納指輪から出した。
水の中で「沼」を出して、沼が置かれる位置が、発動時の私の一番低い位置になることが分かった。
だからまず私がコンテナに乗り、1メートル置きに60センチ小沼を出す。
そこに板を敷いて小沼で密着。その上に馬車の荷台を置けば、「沼」パワーを動力とした低空を浮く「無人馬車」が完成する。
沼移動は高低差には対応できない。山があればお手上げだがスピードは出る。
「メロン、ペルミ村はハルピインからどのくらいの距離?」
「100キロで道もほぼ平坦よ」
「本気で行けば、この「馬車の魔道具」なら100キロは出るけど、安全を考えると70キロ。それでも一時間半」
「すげえ魔道具をもってんな、この美人さん」
「それより、村はどうなってるんですか」
「そうだ、ペルミより西の国から流れてきた奴らが盗賊になったんだ。そいつらが10日前に村に乗り込んできて、食料を取って行きやがった」
「それが1回じゃすまなかったのね」
「そうなんだメロン。もう村にはギリギリしか食いもんがないのに、次に来るっていいやがってよ」
「いつ来るっていったの?」
「・・今日だ。正直金が足りねえのも分かってたし、時間もない。だけどこのまんまじゃたかられて、女にも危害が及ぶ。だからみんなで金を集めてギルトに行ってみたんだ」
「おじさん、幸運ね。勇者メロンと勇者カリナがいれば百人力よ。とばすわよ」
「勇者ってなんだ?」
◆◆◆
1時間とちょっとでペルミ村に着いた。村の門の前には、いかにも盗賊団ですって集団がいた。
「おじさん、あいつら村の人間?」
「いや、盗賊だ」
「まだ門は破られていないですね。良かった、みんな無事みたいです」
「櫓の上にお兄ちゃんたちがいる。おおーい、お兄ちゃーん」
「あ、メロンとカリナだ。危ないから来るな!」
「こいつら盗賊だ。こっちに近づくな」
盗賊団も気づいた。カールさんに聞いた通り40人くらいいた。
「へへっ、何だ若い女が3人と、おっさんが一人きたぞ」
「おおラッキーだな。村から女もさらおうと思ってたとこだ」
「よおおし、まずはこっち来てる女3人をつかまるぞ」
盗賊団の50メートルくらい手前で「馬車の魔道具」から降りた。
そして女3人でゆっくり盗賊団に近づいた。
私はすでにテンションが高く、思い切り叫んだ。
「勇者メロン、勇者カリナ、そして従者サーシャ参上!」
「な、なんだこいつら・・」
故郷を襲おうとした盗賊団にメロンとカリナはかつてないほど怒っていた。
「メロン、私は左に回ります。右をお願いします」
「絶対に誰も逃がさないように、素早く展開するよ」
「もちろん。サーシャはこのまま中央をお願いします」
「分かった。アジトがあって仲間がいたら災い招くから、拷問用に何人か生かしておいてね」
「散開!」
盗賊団は、私達の動きで間違いに気づいた。
だけど、もう遅い。ウインドスラッシュ、ウオーターランスで次々と手足が破壊されていった。
私? ここで私が動くのは野暮ってもんでしょう。
逃げそうな盗賊がいたら小沼を乗せて、強制送還した。
「メロンもカリナも冒険者になって一年で強くなってる」
「ただいまお兄ちゃん。無事だった?」
「大ピンチだったけど、危機は過ぎ去ったみたいだ」
「カリナ、心配してたぞ」
「えへへ。ついこの前までギリギリの生活をしてたけど、サーシャと会ったおかげで流れが180度変わりました」
「あ、あのすげえ美人さんか」
「どうも、メロンとカリナにくっついてきたサーシャです」
「何言ってるのサーシャ。お兄ちゃん、恩人で仲間のサーシャだよ」
「うんそうだよ。今はギルドの提案で仮のパーティーを作ってるの」
「う、仮だね・・・」
「でもね、私達はサーシャさえよければ、きちんとパーティーを組みたいの」
「うん、私達じゃ力不足だけど、サーシャお願いします」
「うん。私ははじめから、そのつもりだった。もう私はいらないって言われるのが怖かった・・」
生まれて初めて、本音を言った。
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