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フラグはフラグでも、しあわせフラグはめいっぱい立てたいよね part2-2

あけましておめでとうございます。

今年の決意としては、「本作を必ず完結したい」と思います。

そして、エリーゼと共に精霊たちの好き放題を愉しみたいとおもいます。

第57章 加護ラッシュで保護者はお祭り騒ぎ


 それからしばらく、マリアンヌの加護への寿ぎでその場は大騒ぎが続いた。

 プラータは、素知らぬ顔で、他の精霊達とお菓子を食べ始めたが、リンダはそうもいかず、恨めしそうに他の精霊たちを見ながらそれでもマリアンヌのそばで光っている。

 かわいそうなので、お皿に少しとりわけマリアンヌに手渡す。

 マリアンヌからそれを受け取り、リンダは3倍は輝きを増した。


 ようやく落ち着いたところで、カーリーが再び口を開く。

「マリアンヌのためにたくさんのお祝いをありがとうございました。けれど、みなさんへの嬉しいご報告はまだありますので、もう一度席についていただけますでしょうか。美味しいお茶をお淹れしましたので」

 保護者たちは、少し恥ずかしそうな顔で、それぞれの席に着く。

 私も、お茶を飲む。

 

 これは、ハンナが淹れたものね。

 ハンナでなければ、ここまで美味しいハーブティーは淹れられない。

 それが証拠に、我が母が誇らしげに、そして一番満足そうに、それを味わっている。


「それで、カーリー嬢、さらにまだ嬉しい報告とは何かな」

 尋ねたのは父だ。

 マリアンヌの加護では、女神プラータの登場もあり、他の大人たちといささかはしゃぎすぎていた父だが、次に報告されることは予想できるからだろう、落ち着きはらった声だ。


「マリアンヌの試練に同行していただいたシュタイナー辺境伯の御子息、レイナード様とアルベルト様は、揃ってその崇高な騎士としての精神を認められ、それぞれに風の精霊、緑の精霊の加護を賜われたとのことです」

 実はその件をカーリーとレイチェルが知ったのは今朝のことらしい。

 今日のこのお祝いの会の準備をしながら、マリアンヌからマレの指輪の試練の話を聞き、その流れの中でそれを知ったとか。

 カーリーも自分のお祝いの会のお手伝いは、流石にしなくてもいいのでは? と思わないでもないが、カーリーだからね、ついついやっちゃうんだろうな。そして気づいたら先頭に立って仕切っていたのだろう。


 レイチェルは、レイナードの加護の件を聞いて、喜びのあまり失神したらしい。すぐにマリアンヌの回復魔法を受けたらしいが。


 そして今、アルベルト達の母君が、同じように失神した。支えるべきシュタイナー辺境伯も、手足に力が入らないようだ。


「「母上」」

アルベルトとレイナードが慌てて駆けよる。

 私もすぐに駆けより、ご両親に回復魔法「レフリ」をかける。

 

「エリーゼ、ありがとう」

 未だ驚嘆冷めやらずの体ではあるが、意識もしっかりした母親の顔を見て安心したのか、アルベルトが私に丁寧に礼を述べてくれる。


 それは驚くよね、

 エルスター家の祝いに来て、よもや自分の息子が、それも双子の兄弟揃って、精霊から加護をもらったと知ったら。


「父上、母上、驚かせてしまい申し訳ありません。実は、加護を頂戴したのが昨日のことでご報告する時間もなく」

 あれ?

 でも確か、二人は昨日の夜、王都の辺境伯の屋敷に帰ったのでは?


「レイナード達のご両親は、昨夜は、王宮にお泊まりだったの」

 レイチェルが私にそっと教えてくれる。

 なるほど。王家に、おそらくレイナードが辺境伯の跡を継ぐことやレイチェルとの婚約の儀に関する報告もあったのだろう。

レイチェルのご両親もだが、それ以上に辺境伯であるシュタイナー様が王都に滞在されることは稀だ。

 おそらく、こちらに見えてから、日々、王都でなければできないあれこれを忙しくこなされているのだろう。


 とはいえ、この場で初耳というには、事が大きすぎたかもしれない。

 だけど、何故か主役のはずがこの場を取り仕切っていたカーリーは、ご両親は既知のことと思っていただろうから、仕方ない。


「父上、母上、まずは私の加護精霊ビリジアンをご紹介させてください」

 アルベルトがそう言うと、お菓子を食べまくっている精霊達の溜まり場から、ビリジアンが抜け出してくる。

 そして、この場の誰にもわかる様にその姿を見せてくれる。

 アルベルトがその名を名付けたからなのか、緑の蝶(ビリジアン)の光は緑というよりは青緑色で、光り輝き、光粉を振り撒きながら、時々にその濃淡を変えている。

 誰もが見惚れる美しさだ。

 こんな美しい蝶は、私も前世の図鑑でも見たことがない。


「アルベルトの加護精霊、ビリジアンだ。よろしく頼む、父と母」


「こちらこそ、我が息子に加護を授けてくださりまことにありがとうございます。末永くアルベルトのことをよろしくお願い申し上げます」

「もちろんだ。アルベルトのことは必ず僕が守る。それに、アルベルトの両親なら、わが父と母も同様。二人の良き未来のためにも僕は惜しまず力を貸そう」

「もったいないお言葉です」

 辺境伯は、深々と頭を下げその後で、騎士の礼をとる。

 お母上の方は、感激のあまり何も言葉にならないのか、ただ嬉し涙を流し続けている。


「では次に、私の加護精霊様を紹介させてください」

 アルベルトに代わり、レイナードが席を立つ。

 その傍に、黄色に輝く貴公子、スイレンも姿を現す。

「こちらが、私に加護をくださった、風の精霊、スイラン様です」

 まぁ、なんて素敵な、と言って、うちの母はスイランを、なぜか拝んでいる。相変わらずのイケメン好きだ。

 アルベルトは、再び膝から崩れ落ちそうになる母君を支えている。

「スイランという、清廉で誇り高い名をレイナードからもらった、風の精霊だ。レイナードの正義の心と剣に心底惚れて彼に加護を授けた。聞けば、そこの見目麗しき乙女と将来を誓い合ったばかりと言うではないか」

 レイナードが、レイチェルを手招きする。

 レイチェルは驚いている。

 今日の主役はカーリー、そしてマリアンヌだと思っていたからだろう。こんな形で、皆の前で自分がお披露目になるなんて、と戸惑いは隠せないようだが、それでも愛しいレイナードに手招きされれば、覚悟を決めた様だ。凛と背筋を伸ばし、レイナードの傍に寄り添う。


「ここにいらっしゃる親しい方々はすでにご承知かと思いますが、来月の佳き日に、こちらのレイチェル・フォン・メントライン子爵令嬢と、正式に婚約の儀を交わすこととなりました。これからも、今までどおり、皆様のご指導ご鞭撻を賜り、愛と正義の信念を尊重し共に成長できればと思っております」

 レイナードの素晴らしい挨拶に、またもや辺境伯ご夫妻の目に涙が。

 こんな素敵な息子たちを育てたご両親には、尊敬しかない。

 

「祝い代わりに、二人に風の精霊より、祝福を贈ろう」

 スイランが、レイナードとレイチェルに向けて手を差し出すと、黄色の光が二人を包む。

 

「風の精霊スイラン様、若い二人へのありがたい祝福、まことにありがとうございます」

 辺境伯は、ひれ伏すようにスイランに礼を尽くす。

「息子たちには、この奇跡のような幸運を決して忘れることなく、驕り高ぶらず、人々の平和を守る者としてその道を歩いてもらいたいと、父として願います」

 

「レイナードの父よ、そなたも素晴らしいな。長生きして、息子たちの良き手本となれ」

「はっ。心して精進いたします」

「そして母よ、そなたもまた素晴らしい。レイナードは良き男だ。アルベルトもまた愛に溢れる男だ。そなたの愛情が深く豊かであったからであろう」

「あ、ありがとうございます。もったいないお言葉でございます。どうか息子をよろしくお願いいたします」

「任せておけ」


 すると、そこへプラータもその美しくも神々しい姿を再び現し、こう言った。

「それでは、我が愛し子エリーゼのかけがえのない仲間であるレイナードとレイチェル、そして同じく愛を誓い合ったというオスカーとマリアンヌにも、妾がリンダと共に祝福を贈ろう」

 プラータの手からは銀白色の光の粒が舞い、それを光の精霊リンダが光の杖でそれぞれのカップルの頭上で、ハートの形に象った。


「互いが愛と信頼を分かち合う限り、妾の祝福はそなたたちとその子孫から悪運を遠ざけ、幸運を運び続けるであろう」


 おお、さすが女神。スケールが大きいし、威厳があるわ。


 オスカーのご両親も、エルスター男爵も、感涙に咽びながら、プラータとリンダに感謝の言葉で礼を尽くす。

 オスカーも、流石にこれは想定外だったのか、マリアンヌとともに目を潤ませている。


「めでたい。まことにめでたい。若き学院生たちが、清廉な心で日々努力を重ねた結果、精霊様に加護をいただいた。そしてさらには女神様に祝福を賜った。これは、彼らが次の頂を目指し邁進する、そのスタートの日であるとも言える。その良き日に、こうして立ち会えた幸運を私は生涯忘れることはないであろう。この素晴らしい奇跡のような出来事を、エメラルド王国第一王子として寿ぎ、必ずや国王陛下にご報告しよう」

 アデル殿下が、皆を見回しそう言った。

 それに大きく頷く父の傍で、いつの間にか兄はカーリーと寄り添っている。

 あれ?

 気づけば座っているのは私だけ?

 私は慌てて立ち上がる。


 兄とカーリーは、今はまだその時ではないと、自らに言い聞かせるように佇んでいる。

 少し胸が痛む。

 もし、私の断罪イベントがなければ、兄とカーリーもここで祝福されるカップルになっても良かったはずだ。

 私のために、兄や両親は、そしてカーリーも、誰かを寿ぐことに徹している。仲間の悦びは、もちろんそれはそれで嬉しいことだけれど、寂しい想いもさせているはずだ。


 最後は私の加護精霊たちも全て姿を見せ、精霊たちと女神と人間が入り乱れて、賑やかな宴は夜遅くまで続いた。


 その夜は皆、エルスター男爵の屋敷に泊まり、翌朝、私たち学院生は寮に戻った。

 

 私は、自室でハンナのお茶を飲み、身支度を整えてから一人にしてもらいひさしぶりにクリスを視た。


 留学前までは定期的に視ていたけれど、留学中は不定期になり、こちらに戻ってからは、有益な情報をくれる美花のことは視ても、まだ一度もアレは視ていなかった。同じ追放場面ばかり視ることに嫌気がさしていたからだ。

 でも、フィリップの洗脳をしていたと思われるマルクスは、飛んで火に入る夏の虫、ではないが、あちらから飛び込んできてくれたおかげで彼から遠ざけることができた。

 まだ気が早いかもしれないが、あの場面を一度、ここで確かめておきたかった。



 心を鎮め、プラータの光に癒されながら、私はクリスを視る。


 その日の、フィリップが映る。

 初めて、今まで視たことのない場面が映る。

 まず、フィリップ殿下の傍にマリアンヌがいない。

 ホッとする。

 当たり前だけど。

 

 マリアンヌは光の精霊リンダの加護を受け、オスカーと婚約をし、女神と精霊の祝福も受けている。

 卒業記念パーティーにフィリップのパートナーとして出ているはずもない。

 それでもこれは、初めてのことなのだ。

 初めて、クラスには別の光景が映っている。


 代わりに隣にいる令嬢は誰だろう? まったく見覚えがない。少なくとも、今、学院にいる生徒ではないと思う。


 フィリップ殿下は、正面にいる者と激しく言い争っている。

 誰と? 

 どうやら私ではないようだ。

 言い争っている声が私や私の家族のものではない。

 そもそも、私がそこにいるのかどうかもわからない。

 フィリップ殿下が、私の名を一切呼ばないので。


 これは明らかに、今までのように、一方的に私が責められ因縁をつけられ国を追われる、というような断罪場面ではない。


 いやこれは、逆にフィリップ殿下が断罪されているのか?

 

 そこへフィリップ殿下の背後から王妃様が出てきた。


 王妃様が、険しい顔でフィリップ殿下に告げる。


 廃嫡の上、国外追放ですって!?

 なんで?

 訳がわからない。


 私の断罪イベントが、フィリップ殿下の断罪イベントに変わっている。

 これはこれでまずいのでは?

 少なくとも、私はこんな、いわゆるザマァな展開を望んではいない。


 私は慌てて、兄とアルベルトに連絡を取り、図書室に向かった。



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