敵の陣地に留学します。せっかくなので楽しんじゃうよ!! part7-1
おかげさまで、ブックマークが100を超えました。とても嬉しく思います。楽しみに次を待っていてくださる方の存在が、一番の励みになります。これからもよろしくお願いします。
第33章 蒼の森に残してきたあれこれを片付けるために、準備します。
二週間後の留学最終日には、大公閣下の主催でフェアエルパーティーを開いてもらえることになった。
それまでに、私はそこで披露するピアノの練習と、蒼の森の魔草学についての論文執筆で大忙しの毎日を送っていた。
アデル殿下は、ラピスタやユークリッドのことであれこれやることも多いのか、最近は顔も見ない。
なのでおざなりになっていたが、そろそろ蒼の森に残してきた、鶏やらネズミのこともなんとかしないと。留学が終わり、エメラルド王国に戻ってしまえば、蒼の森に行くのはひと手間かかるようになる。
こちらで仕掛けたことを放置して、もしオニキス大公国に迷惑をかけるようなことになったら、大変だ。
精霊たちとともに、きっちり落とし前をつけないと。
兄に連絡をとると、エメラルド王国の魔法学院の図書室でミーティングをしたいというので、すぐにアルベルトといっしょに向かった。
兄と本来オニキス大公国にいるはずのアデル殿下が、図書室の私たちのおこもり部屋に先に来ていた。
いつのまに戻っていたのか。
まあ、王族だものね、色々あるだろう。
こちらでの用事も、移動手段もね。転移が使える者は、宮殿には何人かいる。
「では時期を決めて、蒼の森に一緒に出向こう。そろそろいい塩梅になっているだろう」
いい塩梅とは?
「アデルも行くからな。あれでも一応王族だからな、権威付けにいいだろう」
言い方。お兄様。
「あとはお前と護衛にアルベルト、それでいいだろう。精霊様のご都合はどうだろうか?」
私は、アマリージョを呼ぶ。
アマリージョはすぐにやってきた。
「フェアエルパーティーの後で、蒼の森にて、リベルタースの残党の裁判を行いたいと思いますが、ご都合はいかかでしょうか?」
兄が訊く。
「裁判?」
アマリージョが意外そうに聞き返す。
「ルクスやニュクスなど幹部の罪は明らかで、いまさら裁判も必要はないかと思いますが、それでも裁判もなしに刑を執行すれば後で問題が起きたら面倒です。それに配下の者たちにはその罪の大きさによってふさわしい罰を与えるべきかと」
「なるほど。でも、放っておけば森が正しい罰を与えるわよ」
「けれど、罪を償った後、彼らはどうなりますか?」
「死に値する罪でなければ、いつの日か、森は彼らを解放するでしょう」
「しかし、彼らが蒼の森を出れば、おそらく人の理で再び捕まるのでは?」
それが何か? という風情のアマリージョ。
「アマリージョ、精霊にとっては面倒で意味のないことかもしれないけれど、人の理では、罪に対して裁判をして、それにふさわしい罰を与えることが当たり前なの。そしてそれを公にすることで、残るかもしれない禍根を、できる限り少なくするの」
「裁判とはどんなふうにやるのかしら?」
「エメラルド王国や多くの国が採用しているのは、罪を追求する人と罪人を弁護する人が、証拠を示し意見を出し合い、その罪にあった罰を決めていくのよ。最終判断は王族がするわ」
「あら、アデルにそんなことができるのかしら? リュートが上手なのは認めるけど」
アマリージョ、言い方。
殿下も、それ以上はダメです。そんなに詰め込んでは。
そのアップルパイは、四人分なんですよ。
「できますよ。アデルはこう見えて、そういうことに慣れています。私憤ではな公平な判断ができるはずです」
「そう。なら、罪を追求するのは、リベルタースに潜り込んでいた私とインディゴがやりましょう。弁護は誰がいいかしらね?」
「エリーゼに頼もう」
お兄様?
「エリーゼなら、裁判の前に事前に彼らと面談しても安全だろう」
「反対です。安全だと、何を根拠におっしゃるのでしょうか」
アルベルトが、すかさず反対する。
「アルベルト、あの森はヴェルデ様の支配下にある。そこで、どんな危険がエリーゼにあるというのだ?
それに、一人で行かせるわけでもない。精霊様たちや、もちろん護衛であるお前もついていくのだから」
ここのところ兄は、私をあまり甘やかさなくなった。私を妹としてではなく、一人の大人として扱ってくれることが増えた。
その代わりにアルベルトが、とことん甘いわけだが。
「しかし、彼らは根の腐った者も多い。身の危険はなくても言葉の暴力にエリーゼが傷つくのは、がまんなりません」
「言葉の暴力ね。それはあり得るな。エリーゼはどう思う?」
おそらく、アルベルトの危惧はあたりだろう。
言葉の暴力は振るわれる、その可能性は高い。特にルクスやニュクスからは、それを覚悟しておくべきだろう。
けれど、だからといって、私は逃げたくもない。
前世でも、私は、たくさんの言葉の暴力を受けてきた。
生きている価値などない、お荷物、金食い虫などとメグミに言われ続けてきたのだから。
親と一緒に死ねばよかったのに、と言われたこともあったっけな。
だけど、それ以上に優しい言葉で私を癒してくれた人もいたし、厳しいが愛のある言葉で叱咤激励してくれた人もいた。
そして今、この世界に私を守り慈しんでくれる人たちは、その笑顔は多い。
だから、どんな言葉の暴力にだって、負けるはずはない。
「大丈夫です。ここに、私を信じ愛してくれる人たちがこんなにいるのですから、それが大きな盾となり私を守ってくれるはずです」
「よく言った。それでこそ我が妹エリーゼだ。頼んだぞ」
「まかせてください」
アルベルトはまだ不満そうだが、私がサッサと依頼を受けたせいで、小さくため息をついて黙った。
「ではまず、ミケランジェロとウリンダの実を見に行きます。その際、別行動でヴェルデに彼らの様子を見てきてもらいます」
「いいだろう」
「その様子次第ですが、お兄様の提案通り、とりあえず幹部連中は後回しにして、ネズミの人たちからお話を伺いましょう。彼らの中には、そもそも自分がどういう立場で何をさせられていたのかをわかっていない人もいそうですし、わかっていても逆らえない立場の人もいたはずです」
「そういえば、すでに罪が軽いと森が判断し、早々にネズミから人に戻された者が2名いるようですよ」
アマリージョが言う。
「それなら、彼らからまずお話を聞くべきですね」
「罪の許された者がいるのなら、彼らを、ルクスたちとは別のエリアで囲みこむ方がいいかもしれないな」
「そうだな。ルクスたちの悪影響を受けて、再び罪を犯されてもこまる」
「お兄様、その2人だけをすぐに連れてきて、別に裁判を行ってはいけないのですか? 森がこんなに早く許すほどの者なら、罪も軽いか、もしかしたら罪がないのかもしれません。だとすれば、知っていることを話してくれるでしょうし証人としても意味があるのでは?」
「では、連れてきましょう」
アマリージョがサクッと消える。
そして、十秒ほどで私と年ごろが変わらないように見える、顔立ちの似た二人を連れてきた
「連れてきましたよ。こっちがテック、あっちがマーサ。双子の兄妹です」
子どもではないか。
二人は何が起こったのかわからないようで、彫像のように固まっている。
「まあ、座って。お茶でも飲みたまえ」
兄が手ずから淹れた紅茶を二人に勧める。
しかし、二人は動かない。動けないのだろう。
それにお兄様、子どもに紅茶はどうなんでしょう。
「私はエリーゼ。後ろにいるのはアルベルト。二人に聞きたいことがあるの。座ってくれる? あ、そうだ、これを食べると元気と勇気がでるよ」
私は、精霊の光粉入りのハーブクッキーを二人に手渡す。
二人はまだ戸惑っている。
紅茶を飲んだりクッキーなど食べている場合か、と思うのは当然だ。
ネズミにされて、蒼の森に放り込まれて、いきなり人に戻ったはいいけれど、そこは人智の及ばない場所。周囲には、自分たちと同じ境遇だったネズミもいるし、鶏もいただろう。ルクスたちは、今もきっと不幸を重ねている最中だろう。
そこにいきなり精霊のアマリージョが現れて、転移魔法で二人を連れてきたのが、なぜか場違いすぎる図書室の特別エリアだったりするんだものね。
まあ、大人でもそうだろうけど、子どもにしたら理解不能の異常事態だ。
「毒なんか入ったりしていないから、食べてみて。元気が出るよ」
私は彼らに視線を合わせるようにかがみこむ。
そんな私の再度の言葉にようやく彼らは、クッキーを一口かじってくれる。
「おいしい!!」
でしょう?
「こんなおいしいクッキーは食べたことがありません」
「当たり前よ。それはエリーゼの手作りで精霊の粉も入っておるのだから」
アマリージョ得意げに言う。
二人は、せ、精霊様の粉が!? と再び固まる。
「エリーゼには加護精霊が複数いる。だから君たちを驚かせることも多いかもしれない。それには慣れてもらうしかない」
兄さま、慣れてもらうしかない、なんて少し投げやりでは?
「とりあえず、座って話をさせてくれ。言っておくが、君たちは犯罪者としてここに連れてこられている」
は、犯罪者ですか? と二人は、意外なほどに驚いている。
「落ち着いて自分の身の潔白を話せないのら、牢に入ってもらい国の裁判を受けてもらうことになる。ただ、ここにいらっしゃる精霊様が、君たちの罪は小さくすでに蒼の森に許されているとおっしゃったので、話を聞くためにここに連れてきてもらったのだ」
深呼吸をした後で双子の兄、テックの方が口を開く。
「僕たち、悪い事なんてしていません。奉公に入った商会の番頭さんの命令で、魔法学園の清掃に行っただけです」
「清掃ねえ」
「だけど、君たちは、隠し通路に置いてあった魔道具をとりに来て捕まったはずだけど?」
「それが番頭さんの命令だったからです。通路を清掃して、そこに放置してある壊れた魔道具を回収してくるようにって」
私の何かを調べることが目的ではなく、魔道具の回収をしにきただけなのかな。
「へんな命令だって思わなかったの? だって、あの通路、どうみても女子の部屋の覗き用だったでしょう?」
「そうだけど。私たち何も見ていないし、とっとと魔道具を回収して戻るつもりだったんです」
「だから、入ってすぐに魔道具をとりに行ったんです。絶対に覗いたりしていません」
兄と妹が必死に弁明する。
「君たちの奉公する商会って、ザイクロ商会であってる?」
「はい」
「ということは、ルクスとの繋がりも深い。でもあそこってそれほど悪い噂もないんだよ」
「ザイクロ商会は、日用品や日常に使うのに便利な魔道具を扱っているだけの、ふつうの商会です」
テックが言う。
「でも、番頭さんが君たちに命令したことは、あきらかに変だよね?」
「あの魔道具は、お部屋の空気を清浄に保つものだと聞いていました。それがどうやら故障したらしいので回収してきて欲しいといわれたんです。置いてある場所は確かに変だと思いましたが、回収自体はそうおかしなことでもないかと思いました」
「でも、通路に入る前、誰にもその姿を見られないようにしなさい、というのは変だと思いました」
妹のマーサがそう言うと、兄はそれはそうなんだけど、と同意する。
「ほう」
「だって空気の清浄用の魔道具を回収するだけで、姿を見られてはだめだなんて。それにこのことは会頭に言ってはいけないとも言われました」
「へえ」
「会頭は、自分の店の商品にとても自信を持っているし愛着もある。故障したなどと、がっかりさせたくないんだよ、と説明を受けました」
「そうなの?」
「まあ確かに、会頭さんはもともと魔道具の研究家だったので、商売にはそれほど熱心ではないようなんです。でも、だからといって故障にがっかりするなんてことはないと思うんです。故障の原因をしっかり調べてもっといい製品を作り出そう、って思うような人だから」
なるほど。
「つまり、番頭がキーマンか」
「番頭さんはどんな人?」
「やさしい感じだけど、本当は怖い人です。笑顔で、嘘をついているのを何度も見たことがあります。お金至上主義で、お金のためならなんでもするようなところもあります」
子どもだからと侮っていると、こんなふうに本質を見抜かれることもある。
「そういえば、私、見たことがあります。番頭さんが怪しい黒いフードの男と裏庭でなにやら相談しているところを」
「何を話しているのか、わからなかった?」
「少しだけ。そちらから身寄りのないものを派遣してくれとか、犠牲の分は金で弁償するとか」
「なるほど、それで君たち、身寄りは?」
「いません。村に残っていたじいちゃんが二か月前に病気で亡くなって、それで二人きりに」
「ご両親は?}
「二人とも、僕らが小さい頃に出稼ぎで街に出てそれっきり音信不通になったんです。たぶん、死んじゃったのかなって、じいちゃんは」
「つまり、君たちはリベルタースの配下の代わりに、送られたんだな。誰も戻ってこない場所へ」
「え?」
「身寄りもなく、あとくされがない。おそらく、リベルタースの者でなくても、送り込めば囚われ戻ってこないのかの検証もしたかったのかもしれないな」
「どういうことですか?」
「つまり番頭に売られたんだよ。君たちは、リベルタースに」
「リベルタースって、なんなんですか?」
彼らは、リベルタースさえも知らないらしい。
なんだか申し訳なくなってきた。ネズミにしてしまったことに。
「リベルタースは、国をまたいで暗躍している悪の秘密結社だな」
「はい?」
「秘密結社ってなんですか?」
「地下に潜って、わからないように悪だくみをする連中だ」
「そこに俺たち、売られたのか? 番頭さんに」
「そうなるな」
「ということは、俺とマーサもその悪だくみの仲間ってことになるのか?」
今まで、少なからず私たちはそう思っていた。
あそこに侵入してきたからには、何かしら後ろ暗いところのある者たちだと。
でも、どうやら違ったらしい。
彼らは、だから、蒼の森に許された。
「君たちは、悪い組織に売られ、無自覚に悪だくみに参加したということになるな。それが罪かと言われれば違うかな、と私は思う」
アデル殿下がきっぱりと言う。
「私も、彼らは無罪放免でいいと思う。ただ、このままじゃ、また悪い人に騙されて知らない間に悪事に加担しそう。それが心配」
「エリーゼの言うとおりだな。彼らは、いったん私が預かろう」
「アデル、いいのか?」
「ああ。こういうのも縁だろうし。彼らは見た感じ、バラードと同じ年ごろだ。とても放ってはおけない」
「そういえば、君たちはいくつなんだい?」
「「10歳です」」
双子だけにシンクロ率が高いな。
10歳なら、バラード殿下とまさに同じ年齢だ。
「君たちを罪にとうことはない。しかし、君たちには教育が必要だ。よかったら私のところに来ないか?」
アデル殿下は子ども好きだ。
バラード殿下の面倒も、侍従のようによく面倒をみている、と兄が言っていた。
さきほどご自分でおっしゃっていたように、いたいけな彼らをどうにも放っておけないのだろう。
「お断りします」
ところが、テックがそれを拒否する。
なんで?
「もうだまされたりしません。番頭さんも、戻ってきたらおいしい肉串をたくさんご馳走してくれると言っていましたが、本当は戻ってこないと思っていたわけですよね? 大人は嘘つきです」
「しかし、アデルは、番頭とは違うと思うぞ?」
「そうよ。アデル殿下はエメラルド王国の第一王子、そんな嘘で子どもを騙したりされないわ」
「「王子様!?」」
二人はいすから飛び降り、じゅうたんに頭をこすりつける。
「そんなふうに額ずく必要はない。で、どうだ? 私のところへ来るか?」
「……」
二人は困ったように見つめ合う。
「ほら、これも食べなさい。おいしいわよ」
私は、彼らに、新作のグミを差し出す。
とうとう、ゼラチンの魔法陣が完成したのだ。
動物臭を抜くために、文官養成科のみんなが実験を繰り返してくれ、カーリーの手で魔法陣も完成した。
それをつかって、マリアンヌや私が作り出したものはたくさんある。
ゼリーやババロア、マシュマロにグミ。
マーサがグミを口に入れる。
「うわあ。おいしくて不思議な噛み応え」
そうでしょう、そうでしょう。
実は、ゼラチンがかんたんにできるようになってからも、グミを作ろうとはなかなか思わなかった。
前世で、グミを作ったことがないからだ。グミはコンビニでレジに並んでいる間につい買っちゃうもの、みたいな感じだった。
でも知識はあった。果汁とゼラチンとお砂糖があればできるって。
そんなある日、前世での親友美花をクリスを通じて視ていたら、彼女がおいしそうなグミを口にしていた。
あ、ゼラチンでグミ、作れるじゃないって、その時思いだした。
ちなみに、美花は相変わらずまじめに『ジュエリー・プリンセス』をやりこんでくれていて、新しい情報があれば、こまめに知らせてくれる。
そういえば、美花発の最近大きなニュースがあった。
どうやら、『ジュエリー・プリンセス』の続編が近々発売されるというのだ。
私のこちらでの生活にどんな影響があるのかはわからない。
あの卒業パーティーでの断罪イベントは変わらないけれど、それ以外の私の立場は今、ゲームとは大きく変わっている。
なにせ、一番の違いはたくさんの精霊に囲まれているということだ。それに、家族の愛情や友人にも恵まれている。ヒロインとは今や親友といってもいい仲だ。
マリアンヌが、なぜ、あの場面でフィリップに寄り添っているのかはわからない。
今の彼女なら、オスカーの傍らにいるほうがしっくりくるもの。
きっとあの場面には、まだわからない別の意味があるのだろう、と私は思っている。
ゲームにはなかった秘密結社とのあれこれはあったけれど、それも精霊たちが精力的に壊滅に追い込んでくれている。
とはいえ、やはり変わらない断罪イベントの映像にもどかしさはある。
『ジュエリー・プリンセス』の続編に何かヒントがあればいいのだけれど。
とにもかくにも、グミに魅了されたテックとマーサは、こんなおいしいお菓子を食べられるのならと、アデル殿下の預かりになることをすんなり受け入れてくれた。
「では、この子たち以外は、森でそれぞれの罪を確認するということでよろしいのかしら?」
アマリージョが言う。
「ネズミが10匹、ルクスと、鶏、魔法師が一人だよ」
インディゴがめんどくさそうに内訳を教えてくれる。
13人か。少なくともネズミさんの10匹は、ちゃんと話を聞かないと。
「それに、面倒ついでに、ザイクロ商会の番頭も森に送り込んでおきましょうか?」
増えるじゃん。
しかも、悪人決定の男が一人。
「アマリージョ様。これ以上エリーゼの負担を増やすのはどうかと」
アルベルトが言ってくれる。
「だったら、やっぱり不幸のネズミを送る?」
「そこは、ザイクロ商会の会頭に委ねてみてはどうだ? 会頭は商売熱心ではないようだが、それなりに良心は持ち合わせているようだ。あの子たちの言葉を信じるのなら」
「私も、それがいいと思う。なんでもかんでも私たちがかんでいくのは、違うかなって」
ザイクロ商会も膿を出すべきだろうが、自浄できるのならこれからのためにもその方がいい。
「では、私から会頭宛てに書簡を出そう」
兄も、番頭のことには直接手を出さないと決めたようだ。
アマリージョ、チッて言わないの。
とりあえず、罪の軽いというか罪などほとんどない子どもたちは保護できた。
この先はアデル殿下が責任をもって彼らの面倒を見てくれるようなので安心だ。
こうやって、一つずつ問題を解決していくことが大事。
そして解決できなくても、方向性を決めていくことも大切。
一人では絶対に無理だけど、仲間と協力すれば、できることは多い。
精霊たちは、とんでもなく優秀だ。
でも、精霊の力を頼ってばかりいるのも良くない。
できることは頑張ろう。そして頼る時は頼ろう。
そう決意している私が振り返った先には、心配そうに私を見つめるアルベルトがいた。




