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敵の陣地に留学します。せっかくなので楽しんじゃうよ!! part5-3

第29章 奇跡はどこか、喜劇に似ている byオスカー。


「あなた、名前はなんていうの?」

 エリーゼが隷属の首輪が外れた彼に尋ねている。


「ラピスタと言います」

「ラピスタ、あなたの今の行動は死を覚悟したものだよね? 死のうとしたの?」


「あいつの今の行動の方が、ふつうなら死にたいのか? と聞く場面だがな」

 マテウス様が、ルクスたちを無視して無防備にラピスタと会話を始めたエリーゼにため息をこぼす。

 確かに、敵はまだ三人いる。

 魔法師は、杖を破壊されてはいるが、だからといって魔法が使えないとは限らない。

 威力の低いものなら、攻撃魔法が使えるかもしれない。

 聖騎士のほうは、無傷だ。

 ルクスも、至近距離でエリーゼを睨みつけている。

 彼は魔力が小さくなったらしいが、その分、魔道具を用意しているかもしれない。

 ふつうなら、まだまだ危険だ。

 ふつうなら。

 何度でも言おう。ふつうなら、危険だ。絶対に安心はできない。

 

 だけど、エリーゼはふつうではない。

 物理攻撃も、魔法も呪いも効かない加護を受けているらしいし、一ミリも油断していないアルベルトもいる。

 そして、精霊様たちも。

 おや?

「精霊様たちはどこに?」と私が声に出すと、クリスが円になって集まっている精霊たちを映し出してくれた。

 真ん中にこんもりと積まれているのは、もしかしたら?

「あれって、クッキーだよね?」

「定番のハーブクッキーだね」

 レイチェルのあきれたような言葉を、カーリーが肯定する

「私の作ったマドレーヌもあるわ!!」

 マリアンヌがものすごく喜んでいるが、ここは喜ぶところなのか? 


「精霊様たちは、もうこの戦いは終わったと認識しているのかしら?」

 レイチェルが首を捻る。

 状況がこちらに有利なことはクリスを通じて見て取れるが、それにしても精霊様たちのあの姿は、すでに打ち上げお茶会のようだ。

「だろうな。不幸のネズミの威力は半端ないそうだから。一方でエリーゼには黄金のウサギの加護もある。この先、彼らが何をしても、エリーゼたちを傷つけることも苦しめることもできない、そう判断されているのだろう」

「不幸のネズミとはそれほどに?」

 私はマテウス様に尋ねる。

「文献によると、その不幸は百回続くとか。そして」

 マテウス様が天を仰ぐ。

「その後も、幸運は永久にこない」

 すさまじい、呪いだ。

「試したことはないがな」

 試していたのなら、今ここに、マテウス様はいらっしゃらないだろう。

「もし、自分がそのような目にあったらどうすれば?」

「エリーゼのつくった魔法『エスぺランンサ』なら、不幸のネズミの呪いも解呪できるかもしれんな。あれは闇魔法と光魔法の融合魔法だから」

「もちろんできるわ」

 プラータ様があたりまえでしょう? というようにお答えになる。

「では、そんな時は、エリーゼにすがりましょう」

 私がそう言うと、オスカー様はうなづきながらこう言った。

「解呪の魔道具も研究してみればどうだ? エリーゼに協力してもらって。あるいは光魔法ならカーリーやマリアンヌも使える。闇魔法はインディゴ様に教えを乞うしかないかもしれぬが。ニュクスを味方につける手もある」

 なるほど。

 今まで、自分の魔力の限りで魔道具を製作してきたが、誰かの助力を乞うのもありだな。

 ニュクスが、こちらに寝返るは思えないが。

「検討してみます」

 マテウス様は、そんな私を見て微笑みながら目を細めた。


「私に死を。死ぬ自由を」

 ラピスタがエリーゼに嘆願する。

「だめよ」

「どうしてですか? 私は、嫌々ながらも土地の魔力や人の魔力を枯渇させ、人々を不幸にしてきました。今日は、それどころかあんな土くれになるまで魔力を吸い取ってしまって。人の命まで奪ってしまったのです」

 あ、と今さらながら、あれがゴーレムだったことを思い出したようにエリーゼがしかめ面をする。

「あれは、仲間をあんなふうにされて怒りがないわけじゃないけど、しかたないわ」

「しかたない?」

「あれは、ヴェルデが作ったゴーレムだから、魔力を吸い取ったらああなるのは仕方ないっていうか。ああでも、あのゴーレムたちも大事な仲間だったのよ」


「ゴーレム?」

 ルクスが、あんなゴーレムが存在するわけがないと、わめきだす。

 存在するのだ。大地と緑の大精霊のヴェルデ様の手にかかれば。

「だから、あなたは、誰も殺めてなんかいないよ?」

 エリーゼは、ルクスを無視している。

「本当ですか?」

「ええ。それに、逆らえない状況であなたがしてきたことに、あなたが責任を感じることはないわ。その罪はすべて命じた者が追うべきよ」

「しかし」

「あなたのその力で助けられる命もあるのよ」

「私に?」

「詳しいことは、後でゆっくり話すけど。今はこれだけ聞かせて欲しいの。ラピスタ、あなたはルクスと歩みたい? それとも私たちの仲間になりたい?」


「言うと思った」

 マテウス様が、こめかみを押さえている。

「よく言った、と言ってやれよ」

 アデル殿下は、半笑いだ。

「お前のレポートは読んだぞ。魔力過多症の者への対処療法に関する考察だったか?」

「そうか。しかしあれは、エリーゼとの共著だ。根本的な治療が無理だと諦めず、対処療法でも救える命はあるはずだと言われてな」

 どんなことでも諦めないエリーゼらしい言葉だ。

 私もさっそく読まねばなるまい。

「彼が仲間になってくれれば、対処療法のみならず、いつか魔力過多症で亡くなる妊婦や子どもがいなくなるかもしれないな」

 アデル殿下も力強くうなずいている。


「仲間になる。もし許されるのなら、せめて罪滅ぼしをしたい。誰かの役に立てるというのなら、あなた様の僕になりたいです」

「僕とか、そういうのはちょっと。仲間よ、仲間。それでいい?」

「ぜひとも、お仲間に」

「わかった。なら、今は後ろに下がっていて。ロッホ、彼をお願い」

「了解。ラピスタ、こっちにおいで。うまいよ。エリーゼの作ったクッキーも、マリアンヌのマドレーヌも。ハンナお手製のお茶も」

 気づけば、精霊様たちは、マグカップも手にしている。

 完全に、お茶会モードだ。

「な!? なんでみんなそこでお茶会してるの?」

 ようやくエリーゼも精霊様たちのお茶会に気づいたらしい。

「ま、いいか。それじゃあ、ラピスタだけはきっちり守ってよ」

「はい、はーい」

 インディゴ様が、しっぽを振っている。


「あはは、ま、いいかだって。エリーゼだわ。笑える」

 レイチェルが、大きな笑みをこぼす。

 カーリーも笑っている。マリアンヌも。


「待て。それは私の奴隷だ。こちらに返せ。それにその火の精霊もこちらによこせ。この森は、リベルタースの支配下にあるのだから、この森のものはすべて私のものだ」

 ルクスが叫ぶ。

「どっちも渡すわけないでしょう」

 アルベルトが冷ややかに答える。


「というか、あなたたちは、ほぼ詰んでいるんですけどね」

 輪から抜けてやってきたアマリージョ様が言う。

 妖艶な美貌の持ち主のアマリージョ様だが、今は学生の姿だ。とはいえ美貌は隠しきれず、口の周りの食べこぼしがまた、チャーミングだ。

「学生風情が、何を。その口から出た言葉で身を滅ぼすがいい」

 ルクスが、聖騎士を侍らせたまま、前に進み出てくる。

「くらえ」

 さすがに、ルクスは杖も使わず無詠唱で闇魔法が使えるらしい。


 ルクスの指先から、アマリージョ様扮する学生に向けて、闇の火魔法が発せられる。

 しかし、その魔法がアマリージョ様に届くことはなかった。

 アマリージョ様が、フッと笑う。ただそれだけで、ルクスの闇の火魔法がかき消えた。

 そしてその直後、ルクスは躓いてとがった根の端に顔をぶつける。


 もしかして、これが不幸のはじまりか?


 顔から血を流しながら立ち上がったルクスの頭に、今度は大きなとげとげの実が落ちてくる。

 実は破裂し、ネバネバした緑色の液がルクスの顔面を覆う。

 そのネバネバに向かって、巨大なハチに似た昆虫が群がる。

 

「な、な、なぜ。なんなんだこれは。この森は。お前たちは」

 ルクスは、大声で喚きながら闇雲に魔法をかけようとするが、何もおこらない。


「まず、あなたの魔力はもはや枯渇しているわ。さっきの火魔法ですっかり終わり。そんな魔力で私に対峙するなんて、本当にバカね」

「お前は、いったい」

 さすがにルクスも、アマリージョ様がただの学生ではないと気付いたようだ。

「あなた相手に名乗りたくもないけど、私はエリーゼの加護精霊、風の精霊アマリージョ」

「そんなばかな。あの娘には緑の精霊と光の精霊の加護がすでにあるのだぞ。その上、風の精霊の加護だと? ありえん」

 その気持ちはわかる。

 わたしだけでなく、クリスを注視していた全員がうなづいている。

 あり得ないよね、と笑いながら。


「それから、さっきの灰色の毛玉、ウリンダの実からとれた不幸のネズミだから」

「聖騎士さんには感謝だよ。うまい具合に三人均等にばら撒いてくれてさ」

 インディゴ様が、お茶で喉を潤した後、その場からは動かず少し大きな声でそう告げる。ラピスタを守るよう言われたから、その場を動かないのか、まだまだ食べ足りないのか。


「不幸のネズミたと……」

「つまり、あなたはまだ、後96回不幸に見舞われるってこと」

「そんな。どれほど探してもウリンダの実は探せなかったのに」

「あたりまえですよ。あの実は、精霊か精霊の加護を受けている者にしか見えないのですから」


 そうなのか、とマテウス様が呟き、カーリーも納得したようにうなづいている。


「エリーゼ、そろそろ帰りましょうか」

 アマリージョ様が、アルベルトにも促しの視線を向けつつそうおっしゃった。

「え? でもまだ決着が」

「彼らはもう、この森から出ることはできませんよ。この森で百に及ぶ不幸に襲われそれでもここを出られる力を保てるとでも?」


 魔法師はすでに絶望に彩られた顔で膝をついている。聖騎士は呆然と立ち尽くしている。

 ルクスは、ハチに似た昆虫にたかられ、息も絶え絶えだ。


「あの、二人の剣士はどうするの?」

 そういえば、あまりに早い段階で戦力外になっていたので忘れていたが、茨で巻かれているとはいえ、彼らにネズミの呪いはない。

 放っておけば、ルクスを助けて共に逃れて行くかもしれない。

「彼らは連れて帰りましょう。お兄様なら、色々聞き出してくださるはず。今回のこの件を、エメラルド王国とオニキス大公国の両国に納得してもらうためには、生き証人も必要ですから」

「じゃ、僕が」と言って、インディゴ様が、茨に巻かれたままの剣士たちをスルリと陰に飲み込んでしまわれた。

 しかし、すぐに一人は転がり出てきた。

「やっぱりこいつは嫌。たくさん殺しすぎているから、連れて行きたくない」

 そして、転がり出てきた剣士をサクッとネズミに変えられた。

「ちょうどいいや。こいつもここにおいて行こう」

 代わりに、というわけではなかったのかもしれないが、陰からさらに放り出されたのは、一羽の鶏。


 あれは、ニュクスか?


「こいつらも、もう面倒だしいいかな」


 次々と出てきたのは、ネズミ。

 魔法師がネズミに悲鳴を上げ逃げまどっているが、あれらは不幸のネズミではなく、ルクスが送り込んできていた配下達だろう。

 

「人に戻してあげないの? それに裁判にもかけず森に放置してもいいのかしら? それぞれに事情もあるでしょう?」

「罪が軽ければ、反省さえすれば、森が本来の姿に戻してくれるし、生き延びることもできるさ」

 森が裁くということか?


「あとは、あの騎士は連れて行く」

「なぜ」

「あいつは、呪い薬を飲まされている。けど、いい奴だ。僕が子犬になって組織に潜入していた時、よく食べ物を分けてくれた。だからエリーゼ、あいつにエスペランサをかけて」

「エリーゼ、私からもお願いしますわ。私も、彼には蜂蜜酒をもらった恩義があります」

 アマリージョ様も、聖騎士をかばう。

 精霊様に、飲み食いの恩はかなり効くらしい。


 エリーゼは、アルベルトと一緒に聖騎士に近づいていく。

 その足に魔法師がすがるようにまとわりつく。

「私も連れて行って。この森から連れて出て。なんでも話すから」

「お前はダメ」

 ロッホ様が飛んできて、魔法師にダメ出しをする。

「お前は、さっき明確な殺意を向けたからな。ラピスタに」

「でも、あれは、ルクス様に命令されたからです」

「命じられたまま、考えもせず誰かの命を奪おうとして、それに全く躊躇いを感じないやつを助けるわけがないだろう? お前は、この蒼の森で不幸にまみれろ」

 やはりロッホ様は、気高く勇ましい。

 

 ただ、それにしても、いったい何枚のクッキーを食されるのか。まだその手にはかじりかけのクッキーがある。


 ロッホ様が魔法師とやりとりしている間に、エリーゼがサクッと、聖騎士に魔法をかける。

 エリーゼは魔法陣を描く以外で杖は使わない。

 けれど、呪文は使う。ほとんどオリジナルのものだが。

 

 あれが、先ほどマテウス様が話されていた『エスペランサ」らしい。

 七色の光が闇を包み、やがて融合し、聖騎士を包み込む。

 とても、美しい魔法だ。

 最後に一瞬、細かな光の粒が金色に輝いた。

 

「お前の呪いは解けたぞ。ちなみに不幸のネズミの呪いは、先にかけられていた呪いのお陰で、お前には効き目がなかったようだ。よかったな」

 ロッホ様の言葉にも聖騎士は、黙ったままだ。

 何が自分におこっているのか、わかっていないようだ。


「あなた、お名前は?」

 そんな聖騎士にエリーゼがにこやかに声をかける。

 どこにいても、その緊張感のなさがエリーゼの特徴だ。

 そんなエリーゼにアルベルトが付き添う。あの位置取りでは、万が一聖騎士が敵意を向けた場合、その刃の犠牲になるのはアルベルトのみ。

 しかし、その心配はないだろう。

 聖騎士に敵意はかけらも感じられない。

「ユークリッド、です」

 ようやく、彼が声を絞り出す。

「素敵な名前だわ!! 幾何学の父ね」

 エリーゼは、時々、意味不明なことを言う。

 きかがく、とはなんだ?


「ユークリッドはルクスの護衛なんだよね? でも、呪いの薬を飲まされていたのなら無理やりってことでいいのかしら。もしそうなら、私たちと一緒に帰る? それともこの森に残って彼らを助ける?」

「彼らを守る気も、救う義理もない。ルクスとあの魔法師エリンギは呪いの薬で私を隷属化した。ここを出たあかつきには、隷属化してからの悪事の数々を暴露し、その責めをこの命で償わせてもらう」

「まったくもう。ラピスタにしてもあなたにしても、本当にわかってないわ。命はもっと尊いものよ。償いの方法は他にもあると思うの」

 エリーゼの視線は、こちら側にいるマテウス様に尋ねているようだ。

「それでいい。ラピスタとユークリッドは連れて来い。決して悪いようにはしない」

 マテウス様の言葉は、精霊様を通じて、すぐにエリーゼに伝わったようだ。


「じゃあ、帰ろうか」

 エリーゼの言葉に、あちらでも、こちらでも仲間のみんながうなづく。

  

「待て。待て、これをなんとかしろ」

「おいていかないで。お願い助けて」

 ルクスとエリンギが、何度も立ち上がろうとして、そのたびに転び色々なものにとりつかれ、粘液や枯葉や虫塗れになり、着衣もボロボロになりながら喚き続けている。

 その周りをたくさんのネズミが走り回り、鶏が飛ぼうとする様に羽を羽ばたかせるが、飛べるわけもなく蔦に絡まれ木に激突している。

「あ、言い忘れていたけど、その鶏、ニュクスだから、お腹空いても焼き鳥にしないでね」

 そのエリーゼの言葉に、その場はいっそう混沌とした。


 シュール過ぎる。

 戦いとは、もっと陰惨で虚しいものではないのか。

 これでは、喜劇を観覧しているようなものだ。


「ルクスやニュクスの尋問は、よろしいのですか?」

 マテウス様に尋ねる。

「しばらくはあのままで。呪いが終わる頃には、心も萎えて素直になっているかもしれないし、それからでいいだろう」

「しかし、魔力が戻れば自力で脱出するかもしれません」


 その時、クリスが映し出したのは、黒の森と蒼の森を繋いでいる転移の魔法陣。

 ヴェルデ様が、いい笑顔を浮かべられている。

 その手には棍棒。

 前回と違い、ダイヤモンドではないようだ。不思議な黒い光を放つ物体だ。

 なんだあれは?


「まさか、あれは黒龍石か?」

 黒龍石といえば、闇の魔法をこめることができ、それを武器にすれば、魔王も倒せるという、あの?

 そんなものが、まさか。

 こちらの動転などがまうことなく、ヴェルデ様が魔法陣にその黒い棍棒をふるわれる。

 転移の魔法陣は、パリンと割れたあと黒い光粒になり消えていった。

「これで、あいつらは森を出ることができない。あとはオリエントに頼んでおけば、生かさず殺さず、かれらを懲らしめてくれるよ」

 すっきりとした顔でヴェルデ様笑われた。


「向こうの転移魔法陣は?」

 ヴェルデ様を追いかけるように、エリーゼたちが、転移魔法陣のあった場所までやってきたようだ。 

「こっちをつぶしたから、あれはどこにももう跳べはしないけど、悪い奴らに研究されたらやっかいだからやっぱり壊すよ」

「壊す前に、お兄様に見せてはもらえないかしら?」

「マテウスならいいけど。でも、クリスで見ているだろうから必要ないんじゃないの?」

「でも、こっちのものだけでしょう? それに、実際に見れば勉強になることって多いもの」

「それなら、破壊する時に連れて行こうか?」

「できたら、オスカーも」

「わかった。でも」

「戻ったら、チーズケーキとチョコレートケーキを焼くわ。マリアンヌには、フルーツたっぷりのロールケーキを頼みましょう」


 エリーゼは女神だ。

 女神のおかげで、マテウス様と私は、黒の森に残っている転移魔法陣をこの目で見ることができるようだ。ありがたい。


「では、みんな集まって」

 すでに、転移魔法陣はない。

 しかし、エリーゼや精霊様には、そんなことは関係ない。

 ないのなら作ればいいだけ。

 エリーゼが、杖をもつ。

 魔法陣を描くために。

 あっという間に、美しい魔法陣ができあがる。この、私たちのいるエリーゼの私室に戻ってくるための転移魔法陣だ。

 エリーゼ、アルベルト、ラピスタ、ユークリッドが、輪になる。その輪の中に、ヴェルデ様以外の精霊様たちが入る。どうやら、ヴェルデ様は森に残られるようだ。今エリーゼが描いた魔法陣を消し去るためだろう。もうその手には、先ほどの黒い棍棒が見える。


 エリーゼたちが消える。

 そして、現れる。

 クリスには、やはりいい笑顔で転移魔法陣を破壊しているヴェルデ様が大写しになっていた。

 


次から、エリーゼ視点に戻ります。

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