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ようやくヒロインとお友だちになりました

第11章 お茶会と合コン開催です。


 私はお茶会の準備に邁進した。

 とにかくお菓子作りだ。ハーブクッキーはもちろん、スコーン、アイスクリーム、プリンにシフォンケーキ。チョコレートももちろん利用する。価格なんて考えなくていいからね。

 私は、おそらくこの国で一番裕福な公爵家の令嬢だから。

 

 マヨネーズも作りサンドウィッチも添える。

 ミラとハンナの手を借り、いわゆるアフタヌーンティー形式に整えることにした。

 それとは別に、甘いものばかりでは飽きるかと、ポテトチップスもつくる。

 

 合コン用にもハーブクッキーは寄付しておいた。魔法科にお菓子のファンが一人でも増えれば、文官養成科の研究資金の足しになるからね。

 準備は整った。

 兄と殿下に任せておけば、合コンのほうはうまくやるはずだ。参加した誰かが、もし好みの人に出会えたのならそれはそれでよきことかな、ですし。


 いよいよ、お茶会当日だ。

 懸念だったリリアからも参加の返事をもらっている。魔法科の女子にハブられているようで合コンに参加しづらかったことも幸いしたのだろう。

 

 カーリーとレイチェルには先に来てもらって準備を手伝ってもらった。次がリリアで最後にマリアンヌがやってくるように時間は調整してある。

 

 リリアがやってきた。

 リリアは、令嬢らしく丁寧な礼で挨拶をする。

 私は、レイチェルをまず紹介する。そしてカーリーを。あの礼拝堂の裏手でのあれこれはなかったこととして、お互いを初対面のように。

 リリアは一瞬顔をしかめたが、なんとか堪えたようでカーリーにも礼を返した。まずまずじゃないだろうか。あとはマリアンヌだ。

 因縁のあるカーリーとも挨拶ができるのなら、元平民とはいえ今は男爵令嬢でもあるマリアンヌとも案外うまくやれるのではないかしら? おいしいお茶とお菓子があれば。などという私の淡い期待は、その直後、マリアンヌが部屋を訪れた瞬間にもろくも崩れ去った。


「エリーゼ様、本日はお招きいただきありがとうございます」

 マリアンヌは、部屋に先に来ていたリリアを見ても嫌な顔もせず、とても可愛らしい笑顔で挨拶をしてくれた。

「マリアンヌ様、よく来てくださいました。今日は、おいしいお菓子をたくさん用意しましたの。ぜひ、お茶といっしょに楽しんでいってください」

「ありがとうございます。私、先日の文官養成科の模擬店でいただいたアイスクリームとクッキーが本当においしくて、とても楽しみにしていました」

「さあ、みなさん、お席にどうぞ」


「私は、結構です。こんな平民と同席するなんて、汚らわしい」

 リリアが般若のような顔でマリアンヌを睨んだ。

 アウトだけど、もう少し粘ってみたい気もする。

「リリア様、学院に身分差はありませんのよ。カーリーなどは、うちで一番の才媛ですし」

「カーリーはいいのです」

 リリアでも、カーリーの素晴らしさは流石にわかるらしい。

「平民ですが今もこれからも私の人生に無関係ですから」

 そういうこと?


「問題はその女です」

 リリアはマリアンヌを憎々し気に指さす。

「まあ。でも、マリアンヌ様は聖なる光魔法の使い手でいらっしゃるし、それにふさわしく心根も美しい方と聞いております。何か誤解があるのではなくて」

「エリーゼ様は魔法科にいらっしゃらないからご存知ないでしょうが、その女はエリーゼ様の婚約者のフィリップ殿下に色目を使い、婚約者の座からあなた様を蹴落とそうと日々陰謀をめぐらせているのです。そのせいで殿下はその女に朝から晩までベッタリで、それはもう目をそむけたくなるほど不愉快で」


 たぶん、マリアンヌは色目なんか使ってないんだろう。

 だけど、目をそむけたくなるほどフィリップが彼女にベッタリなのはわからなくはない。

 私も時々、二人の姿を見かけるけれど、フィリップはマリアンヌにそれはそれは甘い笑顔を向けている。

 でも、私はそれを不愉快だとは思っていない。むしろ微笑ましいと思っている。

 フィリップが、本気の恋を知ったことで、私を婚約者のままにしておくことをうとましく思うのなら、理解もできる。いつでも快く婚約解消に応じるつもりだ。

 つい先日、母が王妃様とのお茶会でその旨を伝えてもくれた。フィリップ殿下のほうから婚約解消の申し出があればすぐに応じると。しかし、王妃様はよい顔をされなかったと聞いている。

 兄は、王妃様は、次の私の婚約者に、いつ国を捨てるかわからないアデル殿下ではなくバラード殿下の成長を待たれているのでは、と考えているようだ。


「おまけに最近は、オスカー様にまで手をのばして二人きりでこそこそと文まで交わしているのです」

 あ、それ、私が頼んだやつだ。オスカーは、フィリップの目は盗んだけれどリリアには見られたわけだ。たぶん、リリアのことは眼中になかったんだろうね。


「それに、光魔法が使えるとはいえ、その女の魔力は小さく、たいしたものではないんですのよ。それを大げさに、まるで自分が聖女であるようにふるまって、ほんとうに腹立たしい」

 マリアンヌは、教会から聖女認定をされている。だから、非難される謂れはないはず。


 リリアは、次から次へとマリアンヌを攻撃する言葉をまき散らし、マリアンヌは当然ながら他のものはみな、唖然としている。


 そんな状況で、ミラとハンナが、アフタヌーンティーのセットを持って部屋に入ってきた。

 私はなんとか笑顔をつくる。

「みなさん、おいしいものでも食べて、もう少しなごやかにお話いたしましょう」

 特にリリアには、渾身の笑顔を向ける。しかし。

「私はここで失礼させていただきます。身分をふりかざすのがお嫌いなエリーゼ様は、どうぞ平民とのお茶会を楽しんでくださいな。いつか、その愚かな行為がヴォーヴェライト家の足を引っ張らぬことを願います」

 そう言ってリリアは荒々しい足音を立て私の部屋を出て行った。すぐに私は追いかける。他の三人には先にアフタヌーンティーを楽しんでもらうよう言い残して。

 

 精霊たちは、私が彼女に追いつく前にリリアを確保し、インディゴがすみやかに呪いをかけ、アマリージョがリリアに成り代わっていた。

 私は、何もわかっていない振りでリリアに扮するアマリージョを呼び止め、あれこれ説得の言葉を浴びせ、なんとか部屋に戻ってもらうことに成功した。あたりまえだけど。

そして、「あらどうしてこんなところにピンクの子豚が?」と言って、何がおこったかまったくわかっていないだろうピンクの子豚(リリア)を抱き、部屋に戻った。


「リリア様、お戻りいただけたんですね」

 カーリーが笑顔でリリアを迎える。レイチェルはさすがに憮然としている。マリアンヌは、困ったようにうつむいていた。

「そうなの。リリア様、私の言葉に耳を傾けてくださったのよ」

 

 ブヒブヒと抗議の声なのか、子豚がなく。

「エリーゼ、その、ピンクの子豚さんは?」

「なぜだかわからないんだけれど、廊下にいたの。誰かのペットかしらね。迷子になっちゃったのかしら」

「それは大変ですね。心当たりがないか寮監に聞いてまいります」とカーリーが席を立つ。

「とりあえず、飼い主が見つかるまでこちらで預かると伝えてもらえる?」

「わかりました」

 

 カーリーはすぐに戻ってきた。

「ピンクの子豚のペットは届がないようですね。でも内緒で飼っている人もいなくはないので、とりあえず、迷い子豚さんがいることを周知してもらえるようお願いはしてきました」


「それではみなさん、仕切り直してお茶会をはじめましょう」

 ハンナが、新しく淹れなおしたハーブティーを配ってくれる。私が自分のアフタヌーンティーのセットに手をつけると、みんなも嬉しそうに自分のものを食べだした。

「これはなんですか? 私は初めて食べました。おいしいです。アイスクリームもおいしかったですが、このツルンっとした食感がとてもいいですね」

「それはプリンというお菓子ですよ」


「これはふわっとしているのに弾力もあって、ほんのりとした紅茶の味がしますね。クリームもおいしいです」

「シフォンケーキね。それは私の好物よ。エリーゼは私がここを訪ねる時はいっつもそれを用意してくれるのよ」とレイチェル。


「私は、このカフェの試食で出てきたチョコレートの濃厚な深みのある甘さが好きです。エリーゼ、レシピをお尋ねしてもいい?」とカーリーがメモを出す。

 そういうえば、あの時は忙しくて詳しいレシピを話していなかった。


「それはね、カカオからカカオマスを作るところまでは魔法陣にしてあるのよ」

 すでに、特許もとってあるし、母の商会で魔法陣も販売している。

 私は、カカオの種子を発酵・焙煎してカカオマスを作る過程をカーリーに説明する。

 カーリーは優秀なので、たいていの人が魔法でできるのならそれでいいじゃない、とスルーする部分をちゃんと理解しようと努力する。

 

 ミラに頼んでカカオマスの魔法陣を持ってきてもらうと、それを興味深そうにながめ、時々質問をして許可を得てメモもしている。

「このカカオマスから砂糖やカカオの脂肪を固めたカカオバター、粉乳などを混ぜて好みの味にするのよ」

 そういえば、サトウキビから砂糖を作り出す魔法陣の時も、根ほり葉ほり尋ねてきたよね。しかも、私と兄が顔を突き合わせて作り上げたものの改良品も作ってくれたし。


「確か、カカオの価格が高すぎて、カフェのメニューからは外しましたよね?」

 レイチェルが興味があるのは、その過程にどれほど経費がかかりどの程度の利益が生まれるかということだ。

「おいしいカカオの大量栽培には手間取っていたの」

 それは、私の前世でのカカオ栽培についての記憶がとても曖昧だったせいだ。

 しかし、ようやく最近、その栽培方法の要がわかってきた。

 つい先日、ヴェルデが自然のカカオ生育地に連れていってくれたからだ。

 バナナの木や、前世でカカオ園の写真で見たことのある高木のそばに寄り添うように育っているカカオを見て、ようやく思い出した。

 ゼミ仲間が言っていたことを。

 カカオはね繊細なのよ。定期的な雨も必要だし光は嫌うのと。

 必要だったのは、陰だ。


「でもね、ようやく糸口が見つかったから、近い将来、もっと安価にカカオマスができるようになると思う」

「その時は、栽培や流通の方法を私も学びだいわ」

「それはありがたいけれど、レイチェルの領地での栽培は無理よ。だから、あなたの得にはならないけれど大丈夫?」

「それは別にいいの。でもなぜ?」

「植物にはその土地の気候が大切でしょう? カカオは高温多湿の気候を好むのよ。無理に作ろうとするとその土地に会うように改良を重ねないといけないし経費がかかりすぎるから」

「なるほど」とうなづきながら、レイチェルがポテトチップスを口に入れる。


「ウンッ!? これはなに? おいしい!!」

 一口食べて驚き、レイチェルは、ポテチを次々と口に放り込んでいる。


「それはポテトを薄く切ってオリーブオイルであげ、塩をまぶしただけのものよ」

「ポテトですか? あのポテトがこんなおいしいお菓子になるなんて」

 こちらでは、ポテトといえば、ふかしたものや茹でたものが主流だからね。


「これに少しチョコをつけてもおいしいよ?」

 レイチェルがさっそく試したいというので、ミラにチョコレートを温めて溶かしてもらう。


「チョコレートの甘さとポテトチップスのしょっぱさの融合がすばらしいわ」

「レイチェル、このパンもおいしいよ。パンがふわふわでおまけに味わったことのない調味料が塗ってあって、いくつでも食べられそう」

 カーリーはサンドウィッチがお気に入りらしい。

 レイチェルもサンドウィッチに手をのばす。


「エリーゼ、このパンに塗ってある調味料はなに?」

「それは卵とお酢と油、塩、胡椒で作ったマヨネーズというものよ。マスタードを入れてもおいしいのよ」

 ちなみにお酢はこちらの世界にもあったが、干しぶどうやリンゴから作ったものだ。油はオリーブ油が主流のようだ。


「お酢と油は水溶性と脂溶性だから、混ぜても分離するのでは?」

 カーリーは、ほんと優秀だね。一度聞いたことは忘れない。

「マヨネーズはね、卵の乳化性を利用しているの」

「乳化性ですか?」

「卵の卵黄にはレシチンというものがあって、その作用でお酢と油が乳化してクリーム状になるのよ」

 レシチンは天然の界面活性剤だからね。


「このマヨネーズの作成魔法陣はあるの?」

「マヨネーズは、混ぜる順番や油を慎重に少しずつ入れていく、とかちょっとしたコツは必要だけど、そんなに作るのが難しいものじゃないから、魔法陣は作ってないわ」

「それなら、魔法陣を私たちが作ってもいい?」

 レイチェルが魔法陣の作成に興味を示すことは珍しい。その利用方法に興味を持つことはよくあるが。


「いいわよ」

「これは、ぜったい人気になると思うの。エリーゼに作るのは簡単かもしれないけどコツは要るかんじでしょう? そのコツって、一般には面倒なものなのよ」

 そういえば、前世でもマヨネーズはスーパーやコンビニで買ってくるものだったわね。こちらにきてから食べたいものはなんでも手作りが基本だから、忘れていたけど。

 こちらだと保存しておく術が少ないから、新鮮な材料を集めて魔法陣で作るのが一番いいかもしれない。


「その魔法陣の儲けをどう使うの?」

「もちろん文官養成科の活動費にするわ。でも、おそらくその利益は年ごとに膨大なものになると思うから、基金を作っていずれは国民の医療や教育にまわしていくのはどうかな?」


「レイチェルの領地で独占しなくてもいいの?」

「領地の目先の利益にこだわるのはよくないな、って最近考えるようになったの。エリーゼやカーリーはいつも、自分ではなく他者の幸せを考えているんだもの」

 ほう。でもこれは、私やカーリーではなくレイナードの影響かもしれない。


「あら、私は自分の幸せも考えているわよ。自分が幸せにならなくては他人の幸せを願えないもの」

 カーリーも変わったと思う。

 自己犠牲が過ぎることを心配していたけれど、自己犠牲など最後の手段で知恵のない愚か者がすることだと兄から言われたらしく、ちゃんと自分のことも考えるようになった。

 自分の足元を固めてから他者に手を差し伸べる。どれだけ縋られても倒れないように。そんな気概が見える。

「私もよ。でも、自分の幸せが大切な人たちの不幸になるとわかった時は、いったん自分のことは置いておくかもね。幸せでなくても不幸にはならない方法はあるはずだから、それを探すわ」


「文官養成科のみなさんて、本当にすごいですね」

 マリアンヌは目を丸くしている。

「ごめんなさい。つい、自分の興味だけを優先してしまって」

 カーリーはマリアンヌにあやまる。

「そんなことないです。自分の知らないことを知る機会はとても貴重です。みなさんのお話を聞いて、とてもためになります。それに、みなさんのフレンドリーな様子もうらやましいです。私は魔法科でうまくお友だちが作れないんです」

「どうして? マリアンヌ様は聖なる光魔法の使い手として、特別扱いされているのかしら?」

 子豚(リリア)が猛烈にブヒブヒ言う。

 おそらくマリアンヌの悪口だろう。全部、ブヒブヒだけどね。

 そういえばオスカーは動物の言葉がわかるらしい。気を付けないと、これがリリアだとばれちゃうかも。ま、オスカーにはそのうち話すつもりだけど。


「それもなくはないと思いますが」

「他には何が?」

「あとは私が元平民だということでしょうか。魔法科は私以外はすべて本物の貴族様ですから」

「貴族に本物も偽物もありませんよ。それに、学院では身分差はいっさいないはずですし。現に文官養成科で身分差など感じることはいっさいありません」

「それは、騎士科でもそうだと聞いています」

「まあ、レイチェルは、レイナードにそれを聞いたのかしら?」

 カーリーの冷やかしにレイチェルの頬が染まる。


「もしかして、レイチェル様とレイナード様は、その、こ、恋仲なのですか?」

 あ、レイナードもゲームではマリアンヌの攻略キャラだった。レイチェルのことを不快に思うかしら?

「そうなのよ。ほら、そのレイチェルの髪飾りを見てよ。あれはレイナードからの贈り物なのよ」

「まあ、素敵ですわ。スズランの髪飾りだなんて、ご婚約もすぐかもしれませんね」

 どうやら大丈夫そうだ。


「そういうマリアンヌ様は、気になる殿方など、いらっしゃらないの?」

 なかなかに女子会らしくなってきた。

 しかも、マリアンヌに聞いてくれるなんて、レイチェル、グッジョブだよ。


「マリアンヌは、フィリップ殿下と恋仲ですよ」と、ずっと黙っていたアマリージョがいきなりぶち込んできた。ピンクの子豚もまたブヒっている。


「とんでもないです。エリーゼ様、どうか誤解されないでください。私は、フィリップ殿下にとてもよくしていただいておりますが、恋仲だなんてありえません。殿下は、友人の一人も作れない私を心配して、なるべくそばにいてくださっているだけです」


「それなら、オスカーとできているのかしらね?」

 アマリージョ、なかなか攻めるね。

「それも誤解です。リリア様、先日の文は、エリーゼ様からのお茶会の招待状をマテウス様経由でオスカー様がお受け取りになり、私に届けてくださったのです」

 アマリージョがうなづく前に、子豚(リリア)がブヒブヒ言う。怒っているのか納得したのかまったくわからないが。

 子豚が鳴くたびに、カーリーが、ヨシヨシとその頭を撫でている。


「それは本当よ。招待状をお渡しした私が証人になりますわ。兄は、才能豊かなオスカー様を気に入って、研究仲間として彼を勧誘中らしいのよ」

「それは素晴らしいことですね。オスカー様はうらやましいほど魔力も豊富で勉強熱心で、見習うところばかりの立派な方です」

 どうやらオスカーには好意的だが、恋心は見えないような。

 だとすると、やっぱりフィリップ殿下のルートなのかしらね。まだ、確定はできないけれど。


「マリアンヌ様も、聖なる光魔法を使えるのですから、その魔法の力はオスカー様に勝るとも劣らないのでは?」

 マリアンヌがうつむく。

「私は魔力が小さいのです。光魔法も一度使うとそれで魔力切れなんです」

 子豚がブヒッと偉そうに鳴く。


「でも、それなら魔力を増やせばいいことですよね?」

「カーリー様、それが私、どうやって魔力を増やせばいいのかわからなくて」

「どうか私に様はつけないでくださいな」とカーリーが困り顔になる。

「とういうか、みんな、様なんかいらないわよね?」

 レイチェルとカーリーがうなづく。そして渋るマリアンヌにも、ここからは、いわゆる無礼講で、という感じのお茶会にしてしまう。


「魔力上げに手っ取り早いのは、学院の森林での魔獣狩りよ。私もそれでずいぶん魔力量が増えたもの」

 レイチェルが言う。

 レイチェルにとって、レイナードが付き添ってくれる魔獣狩りは、もはやデートの一環となっているので、それはもう魔力がうなぎのぼりなのだ。


「魔法科では、魔獣狩りは野蛮な行為だからと避けられているのです」

 まあ確かに、野蛮だ。前世でこれをやれ、と言われたら私も泣いたかもしれない。生物学科の友人が、育てた鶏で唐揚げを作る時に号泣していたほどではないにしても。

 でも、この世界には魔獣が存在していて、いつ自分が襲われて犠牲になるかわからないということも事実だ。

 王都の貴族は安全な場所で過ごすことが多いし、たいてい護衛がついているので危機感が少ないのだろうが、万が一に備え自衛の訓練はしておくべきだろう。

 少なくとも、我が家では全員、そういう認識だ。


「フィリップ殿下が危険だと、魔法科全体をお止めになっているとか」

 アマリージョが、サラッと暴露する。

「でも、オスカー様はたまに森で見かけるわよ」

「あの方は孤高の天才ですから。魔法科であって魔法科でないんですの。フィリップ殿下だって、たとえば、オスカーにこんな子豚にされたら嫌でしょう? だからオスカーが何をしても何もおっしゃらないのです」

 子豚が悲しそうにブヒッと鳴く。ようやく自分がどんな目に合っているのかを理解してきたのかもしれない。

「あら、こんな可愛らしい子豚さんなら、なってもいいわ」

 カーリーがまた子豚を撫でる。そして、クッキーを一枚食べさせる。

 意外にも平民のカーリーからもらったクッキーでも、子豚(リリア)は素直に食べた。お腹が空いていたのかもしれない。そういえばのども乾いたかもしれない。私はハンナに子豚用にも飲み物を頼む。


「魔獣狩り以外で、魔力を増やす方法をご存知ないですか?」

「たとえば、ここにあるハーブクッキーも、飲み物も、少しですが魔力を増やすことができます。そういうふうに作ってありますから」

「オスカー様もそうおっしゃっていましたね」

「でもね、それだけじゃね。お菓子の食べ過ぎで太りすぎても困るし」

 レイチェルが、伸ばした手を引っ込める。まあ、レイチェルはちょっと加減した方がいいと思うよ。せっかく素敵な彼氏もできたことだし。


「他にもなにかありますか?」

「なくはないんだけど、その前に、もしよかったら、あなたの魔力の状態を確認してもいいかしら?」

「魔力の状態ですか?」

「そうよ。魔力の器の大きさを確認して今どれくらい魔力があるのかを確認するの。そうすれば効率よく魔力をふやす方法がわかるから」

 私は、ミラに頼んで大小のグラスを用意してもらう。


「兄の研究によれば、人は、生まれつき魔力の器の大きさが決まっているの。こんなふうにね」

 私はグラスの大きさを比べる。

「マリアンヌは、光魔法が使えるくらいだから、たぶん、こちらの大きなグラスのように魔力の器はそれなりに大きいはず」

 

 私は小さいグラスに水を満たし、大きなグラスにはほんの少し水を入れる。

「でもね、小さいグラスでもこんなふうに水をいっぱいに満たせば、こちらの大きな器よりたくさんの水が入るでしょう?」

「はい」

「この水を魔力と考えるとね、あなたの魔力がどんな器にどれほど入っているのかを知ることは、とても大事なことなの。なぜなら、いつも器を魔力でいっぱいにしていれば、不思議なことに、あふれ出ないように器も大きくなっていくのよ。そして、大きな器でもいつも少しの魔力しか入っていなければ、器もだんだん小さくなるの」

 マリアンヌがうなづく。


「兄の作った魔道具があるの」

 魔力の属性を調べるあの水晶玉形のものとは違い、魔力の最大値や魔力の現状を調べることができる魔道具だ。

「カーリーやレイチェルも使ったことがあるのよ。現状を知ってよりよくすることは、誰にとっても大切なことだから」

「でもね、エリーゼは使わないのよ」とレイチェルが笑う。

「それはなぜですか?」

「エリーゼは魔力が大きすぎて、魔道具が壊れてしまうからよ。その代わりに、エリーゼの魔力はエリーゼの加護精霊がいつもチェックしているんだって」


 ヴェルデが、そのタイミングで姿を現す。

 子豚(リリア)がブヒッと驚き、ブルブルと震える。ヴェルデはリリアの呪いには参加していないが、精霊の存在に脅威を覚えているのかもしれない。


「こんにちは、私はエリーゼの加護精霊、ヴェルデよ」

「はじめまして。私はマリアンヌと申します。精霊様はとてもお美しいお姿ですね」

 ヴェルデは、デレて、粉をまき散らす。


「マリアンヌ、この世界で生きていくのなら、魔力は大事よ。ちゃんと調べた方がいいわよ」

「わかりました、エリーゼ様」

 私が眉根を寄せると、マリアンヌが言い直す。

「エリーゼ、その魔道具で私の魔力を調べてもらえますか?」


 ハンナが魔力測定の魔道具を持ってくる。

「ここに両手をあてて、このランプが緑になるまでそのままでいてくれる?」

 マリアンヌは素直にうなづく。子豚も真剣に魔道具を見ている。マリアンヌが手を置いてから5分ほどでランプが緑に変わった。

「どうでしょうか?」

「器はカーリーより大きいわね。これはかなり大きいと思ってもいいわよ。カーリーは文官養成科で一番の器の大きさで、彼女より大きいのは兄とアデル殿下と芸術科のミケランジェロ、魔法科のオスカー様の4人しかいないわ、私の知っている限りではね」


「そ、それはどこでわかるのですか?」

「ランプがつくまでの時間よ。長いほうが器が大きいの。兄とオスカー様は最大値の10分までランプがつかなかったし、アデル殿下とミケランジェロは8分だったかしら」

「それで、私の魔力は?」

 私はグラスをいったん空にして、大きい器に三分の一ほど水を入れる。

「マリアンヌの魔力は器の大きさに対して、今はこれくらいですね。このまま放置していれば、器が小さくなり、それに合わせて魔力もさらに減ることになるわ。このままだとあと一年ほどで『聖なる光魔法』を使うこともできなくなるでしょう」


「そうですか。減ってきていると思っていましたが、そこまでですか。でも、それならそれで、もういいのかもしれません」

「「「どうして!?」」「ブヒッ!」

 レイチェルとカーリーと、子豚が声をあげる。


「聖なる光魔法は私にとって重荷でしかありません。私は三歳に時に孤児院から優しい両親に引き取られ愛情深く育ててもらいました。ところがこの魔法のせいで、八歳で無理やり引き離されエルスター男爵家の養女になりました。この学院では私が元平民だということをみな知っています。魔法科のみなさんとお話が合うように勉強もマナーも一生懸命努力しましたが、友人は一人もできません。聖なる光魔法が使えなくなって家に戻されるのなら、そのほうがずっと幸せです」

 わからなくもない。

 

 私も、前世のままならそんなふうに思ったかもしれない。けれど、この世界に来て、別の価値観も持つようになった。与えられたものだけで人は幸せにはなれない。不幸は、あちらこちらに待ち伏せをしている。それをかいくぐり幸せを手にするためには、勇気と弛まぬ努力が必要なのだ。それとおいしいお菓子や食べ物も。


「マリアンヌ、もしあなたが聖なる光魔法が使えなくなれば確かにエルスター男爵の養女ではなくなると思う。でも、おそらく以前の家族の元には戻れないわ」

 私の言葉に、レイチェルだけがうなづく。

「どうしてですか?」

「貴族は、自分の暗部を知られたものを野放しにはしないから」

「たぶん、男爵の息のかかった修道院に送られてそこで幽閉されると思うよ」とレイチェル。

「だけど、私も孤児で修道院育ちだし、そんな凄い魔法も使えないけれど、大事に育ててもらって、この学院にも通わせてもらっているのよ」とカーリー。


「それは、カーリーの修道院はヴォーヴェライト公爵家が後援しているからよ。あなたはとても幸運だったってこと」

 そうなの? 私も知らないことをレイチェルは調べ上げているのね。すごいわ。


「それに養両親もただではすまないと思う」

「そうね。少なくとも違約金が発生するはず」

 エルスター男爵が、普通の貴族ならね。

 貴族とはそういう生き物だから。

「そんな。両親は、血のつながりもない私を本当の娘のように思い、娘をお金には代えられないと、男爵家からの援助はすべて返しているんですよ。それに今の義父も、それほど冷たい人ではないはず」

「それでも、違約金は発生するのよ。あなたが聖女でなくなればね。それだけですめばいいほうだと思う」


「ではどうすれば」

 マリアンヌが涙をためる。

「もっと魔力を増やして、堂々と聖女だと名乗れるようにするしかないわね。そうして確固たる地位を作れば、自分の意見がとおるようになるわ。もしできるのなら、フィリップ殿下との関係も維持した方がいいわ。あなたが本当に殿下を好きになれば恋人になってもいいし、そうでなくても良い友人関係を保つのよ。王族とのつながりがあれば、男爵家などどうにでもできるわ」

「でもそれなら、エリーゼの立場が」

「私? 心配ないわよ。うちは王家とつながりが切れても大丈夫だもの。お金も人材も、なにもかも」


「エリーゼの心配なんかしても無駄よ」

 おいおい、レイチェルさん。

「そうね。エリーゼにはマテウス様もついていますし」

 カーリーさん、それはなんか違う気が。

「わかりました。それなら、私はなんとしても魔力を増やす努力をします」


 そこで、私はハンナを呼ぶ。

 ここからは、リリアに聞かれてはまずい。ここまでは、リリアが心を入れ替えて呪いがとければ知っておいたほうがいい話だったけれど。

 ハンナに、お茶会が終わるまで子豚(リリア)の面倒を頼む。


「それで、魔力を増やす方法なんだけど、やっぱりまずは魔獣狩りをやった方がいいの。手っ取り早くいつも器をいっぱいにしておくのは基本だもの。そのうえで、器をもっと大きくする方法が魔獣狩り以外にあるから、それは私が教えるわ」

「でも」

「もともとフィリップ殿下が止めるまで、魔法科でも魔獣狩りは推奨されていたのよ。当たり前だよね。魔法科なんだもの、魔力が増やすために効率のいいことをやるのは」

「だけど、フィリップ殿下が魔法科をまとめている今、王族の命令を無視するのは難しいんじゃない?」


「そこで朗報よ。もう間もなく魔法科でも魔獣狩りが授業に組み込まれることになったの。今までの課外活動なら、やるもやらないも自由だったけれど授業となると別よ」

「そうなんですか?」

「ええ。王妃様のお墨付きだから間違いないわ。騎士科との合同授業でだけどね。参加しないと卒業資格がもらえないそうよ。マリアンヌのようなタイプは後方で支援魔法や回復魔法を使うことになるわね」

 

 マリアンヌだけでなく、魔法科の生徒の魔力増大計画、これには、アデル殿下と王妃様の多大な協力があった。フィリップ殿下も派閥の力が及びにくい学院での活動では、この二人に逆らうことは難しかったようだ。


「でも支援や回復だけでは、魔力が増えないのでは?」

「パーティーで役割分担をして協力すれば、メンバーには均等に魔力が分配されるのよ」

 なぜか、学院では直接攻撃した人だけが魔力が上がると信じている者が多い。しかし、後方でメンバーを支える者も魔力が上がることは実践すればすぐわかる。なので、文官養成科やそれを聞いた芸術科では常識になっている。


 そのせいか、私が魔獣狩りに行くときには、芸術科の生徒や魔法も剣もうまくないクラスメイトが順番についてくる。私が行けばたいてい兄やアデル殿下も行くので、倒せない魔獣は学院の森にはいない。

 文官養成科のクラスメイトはせっせと荷物をもち、倒した魔獣を解体し魔石を回収してくれる。

 芸術科の生徒は、ちょっとした生活魔法や音魔法で後方から支援してくれる。そうすることで、魔力を増やし、自分たちの得意な方面に魔力を振り分けていくのだ。


「でも私、光魔法が一回しか使えないんです」

「だったら、回復魔法を覚えればいいわよ。マリアンヌの魔力量なら、30回は使えると思うわよ。それにこの薬も併用すればいいわ」

 私は、ミラから薬瓶を受け取る。


「これは?」

「これは文官養成科が作った『ヒール』と同じ程度の効力をもつお薬よ。自分たちで効用を確認済みだし学院の認可も受けているからなんの問題もないわ。ただ。文官養成科が作ったとかいうと、魔法科のみなさんが嫌がるかもしれないからそのあたりはうまくやって欲しいけどね」

「ということで、マリアンヌは回復魔法を覚えましょう。ふつうは『ヒール』を使うけれど、私の作った『レフリ』のほうが魔力の使用量が少なくて効力も高いから、そちらを教えるわね」


「「私も『レフリ』を覚えたい」」

 レイチェルとカーリーが手をあげる。

「でもあなたたちは、『ヒール』をとても上手に使えるでしょう? 確か、『ハイ・ヒール』も使えるよね」

「でも、効率がいいってことよね。その『レフリ』の方が」

「そうね」

「私は、効率のいいものを愛しているのよ」とレイチェル。

「私は修道院に戻った時に、少しでもたくさんの人に回復魔法をかけたいので、やはり効率は大事です」

 カーリーもうなづく。


「なら、みんなでヴェルデの魔法教室に参加する?」

 全員がピシッと手をあげた。

 その日は、レイチェルとカーリーには不要だったが、基礎の基礎の座学を終え、お茶会という名の、マリアンヌの魔法力増大計画会議が終わった。そして、レイチェルとカーリー、リリアになりすましたアマリージョには一足先に部屋を出てもらう。これは事前に打ち合わせ済みだ。


「マリアンヌ、今日はたくさんお話しできてよかったわ」

「エリーゼ、私もです」

「ただ、もう一つ、あなたにだけ伝えておかないといけないことがあるの」

「なんでしょうか」

 プラータ、お願い出てきて、と私は光の精霊を呼ぶ。

「この精霊は、光の精霊でプラータです」

 マリアンヌが息をのむ。

「こんにちは。私は光の精霊の最高位、エリーゼの加護精霊、プラータよ」

「はじめてお目にかかります。私は、マリアンヌ・フォン・エルスターです」

「マリアンヌ、あなたには、光の精霊の加護がありませんね」

 いきなりですね、プラータさん。

「はい。私は、光の精霊様に会ったこともないのです。なぜそんな私に、聖なる光魔法が使えるのか、一番知りたいのは私です。プラータ様は理由をご存知ですか?」

 マリアンヌは、とても正直だね。加護がないことを隠そうともしない。


「それは、あなたがずっと幼い頃、光の精霊がうっかり零した光のかけらを口にしてしまったからなのよ」

「光のかけら?」

「そうです。それは、太陽神であるヘリオスに献上するための聖なる光のかけらでした。ですから、ほんの小さなかけらでも、その力は大きく高位の精霊の加護と同じほどの力をあなたに与えてくれたのです」


「光のかけらは、自然と小さくなりいつかは消えていくそうよ。だから、このままだと魔力を増やしても五年ほどで聖なる光魔法は使えなくなるらしいの、もちろん、光魔法の属性はあるから、通常の回復魔法や癒し魔法は使えるけどね」

「五年ですか」

「ええ。どんなに努力をしてもそれが限度かと」

「ではそれまでに、私は家族を守る術を手にしないとだめなんですね」


「どうすればいいと思う? あなたが自分のその手で家族を守るには」

「わかりません。エリーゼは知っているの?」

「そうね、いくつか手はあると思う。たとえば、五年の間にフィリップ殿下の正式な婚約者になるとか」

「それはできません」

 即答だ。

「どうして? フィリップ殿下は、あなたのことを大事に想っていると思うわよ。殿下と私の間には愛も信頼もないから、婚約解消になっても、私はそれを不快にも思わないし反対もしないわ」


「私は、フィリップ殿下をよい方だと思っています。殿下は、少しわがままで時に暴言を吐かれますが、そう悪い人ではないんです。ただ、自分の大事なものを守るためには周囲が見えなくなるというか」

 まあ、すごくいいように見ればそうかもしれない。だいたい私は、彼のことをさほど知らないのだ。

「なので、そんな殿下を利用し、こんなに親身になってくれるエリーゼを蹴落とすなんて絶対に嫌です」

「私がいいと言っているのに?」

「はい。それなら私は修道院にでもどこにでも幽閉されたほうがましです。ただ両親のことだけはなんとかできないか、最後までその方法を探したいけれど」


「どう思う、プラータ?」

「よき娘かと。しかし、おそらくまだ足りません」

「そうなのか。私よりずっといい子なのに」

「エリーゼ、あなたの魂ほど良い香りのものを私は知りませんよ。もっと自信を持ちなさい」

 叱られちゃったよ。

 

 精霊の基準がよくわからないのは、前世の記憶が戻ってからずっとなんだよね。魂の匂いとかもどんなものなのか不明だし。わかっているのは、精霊たちが驚くほど食いしん坊だということくらい。


「それなら、光の精霊の加護をもらうしかないわね。あなたがあと五年の間になんとか光の精霊の加護をもらえれば、あなたの『聖なる光魔法』は、ずっとあなたと共に在ることができるそうよ」

「加護とは、希望してもらえるものではないですよね?」

「そうね」

 どちらかというと、強引に授けられる感じかしら。


「それでは、私には可能性がないのでは?」

「あなたは、光のかけらを口にし生き延びた時点で、ある程度の合格点はもらっています。うっかり落とした光の精霊もあなたに対して謝罪の気持ちはあるようです。ですから、あなたが今のあなたに足りないものを自分で見つけそれを身につければ、おそらく加護は授けてもらえるでしょう」


「足りないものですか」

 わかんないよね、そんなこと言われても。もらった今でも私もわからないもの。


「それが何かが私にもわからないの。ただ、カーリーに足りないのは勇気らしく、お兄様には赦しが足りないと聞いたことはあるの。あと、逆境にあってもとにかく前向きで希望を持ち続けることは大事だと思う。努力も大事。それと、おいしいものを作ることも」


 あら? プラータがビクッとしたわね。これ、正解の一つじゃないの? おいしいものって。


「可能性がゼロでない限り、諦めず頑張りたいと思います。まずは回復魔法をものにして魔力量を増やし、それからさきほど教えていただいた魔力の流し方や圧縮と解凍の訓練ですね。魔法科に学ぶ生徒として、文官養成科のみなさんに負けないよう励みたいと思います」

「そうね。私もできる限り協力するわ。とりあえず、週に一度、ここで魔力の増えるお菓子作りをしましょう。精霊たちはおいしいお菓子が大好きだから仲良くなれるし、そうしたらヒントもくれるかもしれないわ。それに、内緒の話もしやすいしね」

「はい、お願いします」


「できれば、魔法科の他の人には内緒で通ったほうがいいかもしれないわ。なんていうか、私は悪い公爵令嬢であなたの恋敵だという噂もあるらしいし」

 実際、そんな噂は、断続的に生まれてくるのだ。そのたびに、アマリージョが吹き飛ばしてくれている。

「その当りの判断は、マリアンヌに任せるけど。フィリップ殿下にどう話すかも含めて」

 おそらく、その一つ一つの判断が、これからのマリアンヌの未来を決めていく。だから、やはり自分自身で決めた方がいいのだと思う。

 ただ、光の精霊の加護を得られなくても、私は彼女を守るつもりだ。彼女の家族も含めて。

「わかりました」


 ちなみに合コンもつつがなく終わったらしい。

 アルベルトが大人気だったらしい。アデル殿下や兄はスペックが高すぎて敬遠され、レイナードはレイチェルとの仲が噂になっているせいでこれまた敬遠され、オスカーは、合コンに出るには出たがほとんど兄と話していて、女子はほぼ無視だったらしい。

 役立たずだ、と様子を見に行ったヴェルデにけなされ少しは落ち込んでいたらしい。

 というわけで、ちょうどいいスペックで人当りも良いアルベルトに人気が集中し、毎日のように魔法科女子からお誘いがあるらしい。いいお相手が見つかればいいね、と言うと、見つかっていればその日に交際を申し込んでいるよ、とため息をついていた。

  

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