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序章
王立魔法学園卒業記念パーティー。フィナーレを飾る舞踏会が始まる。
公爵令嬢である私、エリーゼ・フォン・ヴォーヴェライトのエスコートは、幼い頃からの婚約者であるエメラルド王国の第二王子、フィリップ殿下。
そのはずだった。
しかし、今、フィリップ王子の傍らに寄り添い頬を染めるのは、その清楚な美貌で彼を虜にした聖なる光魔法の使い手、エルスター男爵令嬢のマリアンヌだ。
フィリップ王子は、ふいにその手をはねのけられ床に倒された私に、冷たい目を向けこう言い放った。
「エリーゼ、お前は、マリアンヌ嬢への度重なる謀により彼女の尊厳と命を脅かした。よって、今この時より私との婚約は解消、すべての私有財産を没収の上、国外追放を命じる」
何をどうやっても今の私の状況は変わらない。変わるはずがないということを私は知っている。
なぜなら、この世界は乙女ゲーム、『ジュエリー・プリンセス』の世界で、私は悪役公爵令嬢、そしてマリアンヌは、主役の男爵令嬢なのだから。
これは、避けようのない、断罪イベントなのだ。