アラクレモノタチ。
僕は、ふと、今いるファミレスが入店時から、今も、ほぼ満席であることに、
(ここ流行っているな…)と思い、自分の腕時計を見ると、入店してから大分、時間が過ぎていることが分かり、目の前にいる台東に、
「そろそろ、行こうか」と言おうと、彼を見ると、
彼はグラスを片手に少し俯きかげんにボーッとしており、そんな彼がピアスをしていたことに僕は、その時、初めて気づいた。
僕は、その彼の右耳にあったピアスを見ていたら、
彼はおもむろに顔を上げ、僕と目が合い、
そんな彼が言った。
「今、負けられない勝負をしていてな…正直、俺は勝ち方が分からない…昔、俺は勧誘業をしていてさ、一緒に勧誘をしていた人と、少し休憩しようとコンビニに入った。
その人は、先にコンビニに出てタバコを吸っていた俺に『私は、寿司の味が分からなくなるからタバコは辞めた。そして、缶の飲み物も、もう飲まない』って俺に言ったから、缶の飲み物は、どうして飲まなくなったのか、俺、聞いたんだよ。
したら、缶の飲み物って、缶に入れられてること自体に中の、その飲み物に微々たる人体有害物質が混じるらしく、それを飲み続けることにより、身体が、とても害になる、ってことらしいんだ。その人いわく、それは信憑性のある話らしかった…」
「…君は今、その人と、何か勝負をしているわけなの?」
と、僕が聞くと、
彼は、笑って、
違う、違うよ♪
そろそろ、行くか!
と、僕らは、ファミレスを出て、
その日は、お開きとなった。
この時、
僕は、それから、僕が、かなりの長い間、台東と会って話す機会が訪れなくなることを、微塵も思っていなかった。




