表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/14

5

車内が何とも言い難い空気になっていた。


そんな中、台東が、コロッと異様に明るく語りだした。


「なぁ、馬鹿な話だと思って、聞いてくれよ♪

俺の好きな物語で、こんな話があるんだ。


二人の男が一緒に世界中を旅していた。


そして、二人は、旅路の果てに、とても大きな都市に辿り着いた。

その都市の市長が、名実とも、そこにおいて最高権力者なのだが、

その市長に、二人は、

こう言われる。

『実は、この都市は、私のイメージが元になっている幻想都市で、本当のところ、ここら一帯は、何もない砂漠地帯があるだけなんですよ。

だから、今、ここらへんにいる人といえば、私と、あなた達だけなんです。

あとは、全てが幻なんですよ。

私が作り出したね。


でも、妙ですね。

今、私の前にいる、あなた達からは、生命エネルギーが、1つしか、感じられません』と。


結末を言うと、その物語において、

共に旅をしていた男二人組は、

その幻想都市に、入り込む前に、

旅の途中で片方が亡くなっていてな…

残された一人は、その相方の死に様が、あまりにも惨く、受け入れることが出来ずに、その相棒が亡くなったという己のリアルな記憶を封印して、

自分が作り出した相棒の幻と、途中から旅をしていたんだ」


僕は、台東の、その話を、僕が、ちゃんと理解しているか確認したくて彼に聞いた。

「つまり、その二人組の一人は、

最後に辿り着いた、その幻想都市とやらの市長と同じようなことを、いつの間にか、していた……と。」


「そう、そういうことなんだよ!

そして、物語のラスト、実に、親っていた相棒が、既に死んでいて、たった一人で途中から旅をしていたという悲しい現実を、その幻想都市に入って、思い出した男は、

己の存在すらも、幻ではないのか!?と、疑心暗鬼になるのに加え、

『人』としての、在り方において、考えが対立した、その幻想都市の市長と対立して戦うことになる…」


「ふーん、…で、最後の最後、どっちが勝つの?」


「男が、市長に勝ったような描写で幕を閉じるが、その勝利の代償として、男は心身に大きな深傷を負い、

途中で、相方が悲惨な死に方で、亡くなったということは、揺らぐことのない事実であるという余韻を克明に引っ張り続けて、その物語は幕を下ろすのさ。


で、最近の俺の、ハッピーなニュースと、アンハッピーなニュース、おまえ、どっちから聞きたい?」


これまた、唐突な話の展開だと僕は、思いつつも、

ボソッと、

「アンハッピーな方から」と言うと、

台東は、

「こういう物語が、俺は、昔から好きで、その性分を変えたいと思っているが、それが、中々できないんだな…」と本当に困っている顔で言うから、僕は、

「……じゃあ、ハッピーな方は?」と続けて聞くと、

彼は、笑って言った。

「自分に正直になって、この手の物語が好きなことを受け入れ、

そういったニュアンスは、そこそこに取り入れて、自分よりの物語を自ら、創作することにしたよ」

「…ってことは…」

「俺、曲がりなりにも今、作家なんだ(-.-)v」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ