1日④
電話は、しばしコールして相手は出た。
「台東です」
「…台東?ひ、ひさしぶり……今、君、この街にいるの?」
「ああ、いるよ」
電話を掛けた方は、出た者に、今から会えるか?と言えば、いいぜ、と言われ、いつか最後に二人でダベったファミレスで、すぐに会う手筈になる。
一人の男が、ジャージ姿で家を飛び出すと、マイカーでファミレスに向かう。
男は、
(会えば、分かるさ!台東は、そんなことしない、って!!)と思い、ハンドルを握っていた。
ジャージの男は、ファミレスに着き、中に入り、しばらくすると本当に久しぶりに、台東という名の男に会った。
やけに、身なりの良い彼を見て、挨拶も、そこそこに、
目の前の彼に、何か不穏を感じた。
ジャージの男は、俯きかげんに、タバコを吸い出そうとする台東を見た。
そして、顔を上げた。
今、まさに、タバコに火をつけた台東に、
「台東、君、今まで何をやっていたのさ?」と、言おうと彼をマジマジ見ると、
何か目頭が熱くなり、
また下向きかげんになり、
涙が出そうなのを堪えて出た言葉は、
「…台東、君、どうして、そんな似合わないピアスしてるのさ?」だった。
そんな、ジャージの男に、本当に慌てた台東の、
「え!?似合ってない?!マジで??
ほら、人間の心臓は、左寄りにあるから、これで俺の体的には左右フラットに、なってるはずなんだよ!!」という声が、
聞こえたジャージの男は、タバコの灰を落としそこねるほどの慌てぶりになる台東を見て、笑った…。
やっぱり、彼が、あんなことに関わっているはずがないと、笑った。
でも、すぐ次に、
ジャージの男の頭の中には、目の前にいる男よりも、昨年、一緒に東北の『ワンにゃんランド』という様々な犬猫たちと触れ合えるレジャー施設に行った明子のことがあり、
台東とは、『これから』は、ある一定の距離を保とうと思うのであった。
(終わり)




