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四話 アイシャ

「カノン君、解っていると思うが、くれぐれも目に見せないように気を付けるんだぞ」

「解っていますよ」


 顔を見れないのは残念だけど、久しぶりにまともな会話をできることでうっかり忘れてしまわないかが心配ではあるけど。


「では、行くか」


 そう言うと先生は戸を叩いた。いざとなると緊張してしまう、どう話せば良いのかが判らない。だが私が葛藤している内に母さんが来てしまったらしい、中から足音が聞こえてきた。


「…どちらさまですか?」

「おお、アイシャさん、ジェイムスです」

「まあ! ジェイムス先生、実は相談したいことがあったのでちょうど良かったです!」


 そう言いながら母さんが戸を開けた、そして直ぐに息を呑むような音が聞こえた。多分、私がいることに驚いたんだろう。


「カノン…」

「…母さん、その、えっと…」


 どうしよう、何を言えばいいんだ。


「とりあえずだ、アイシャさん、中に入れてもらってもよろしいですかな?」

「ど、どうぞ、お入りください」


――――――

―――


 まず、先生が昨日話したことを母さんに説明した。途中で何度も私に何か言いたそうにしていたが黙って聞いてくれていた。


 しかし、一週間は顔を合わせられないという所でついに抑えきれなくなったようだ。


「納得がいきません! 何故一週間も我が子の顔を見ることができないのです!」

「だから何度も言ってるでしょ、魔眼封じを持ってきてもらうまでにどうしても一週間はかかっちゃうんだって」

「あんな眼鏡を取ってくるだけでそんなにかからないでしょう!」

「そういう訳にはいかん、魔眼持ちの保護の為に無料とはいえ手続きは必要になってしまうのだ」

「で、でも、うぅ…神は何故まだ幼いカノンに祝福を授けたのでしょう…」


 怒ったと思ったら今度は泣き出してしまった、まあこうなるだろうとはわかっていたけれどね。母さんはかなり感情的、悪く言えば子供っぽい所がある。自分の手に負えないことが起こるとこうなるんだ。


「落ち着いてくれアイシャさん。とりあえず、ここからは親子二人で話すこともあるだろうし、わしは村長の所へ報告に行く。午後にはまた来るからな」

「解りました、魔眼封じのことも頼むの忘れないでくださいよ」


―――――――

――――


「さて、そろそろ良いかい母さん?」

「グスッ、ええ、大丈夫よ」


 先生が眠ってからもしばらく泣き続けていたがようやく泣き止んでくれた。たまに泣き疲れて眠るなんて本当に子供みたいなこともあったから心配していたけど、さすがにこの状況では大丈夫だったか。


「それじゃあ何から話す?」

「そうねぇ、まずは、殴ってごめんなさい、カノン」

「い、いいんだよ母さん、私にも母さんにもどうしようもなかったんだから」

「それでもよ、愛する我が子に意味もなく手を上げるなんて、親として失格だわ。それに、今でもはっきりと思い出してしまうの、あなたの怯えた顔を。それを考えたら何度謝っても足りないくらいだわ」


 そんな顔をしていたのか私は。

 …しかし、愛する我が子か、言葉にされると嬉しいものだな。


「ところでカノン」

「うん?」

「目は駄目でも顔をこっちに向けてくれるくらいは良いんじゃないかしら」

「いやいや、魔眼は別に目と目を合わせた時だけ効果が出るものじゃないからね? 力は幾分か減るみたいだけど」

「そうなの?」

「そうなの」


 まあ、ちゃんと調べてないとこんなものなのかもしれないな。と、学んだことを発揮する機会ができたことに若干の嬉しさを感じつつ、話を続けようとしたその時


 ――――――クゥ………


「…あらあら、お腹が空いてるのね」

「いや待って、違うんだ。今のはそう、鳥か何かの鳴き声だと思う」

「ふふっ、良いのよ、直ぐに何か作ってあげるわ。楽しみに待っていてちょうだい」


 そう言うと母さんは台所の方へ行った。最悪だ、今、私の顔はさぞかし紅く染まっていることだろう。二度とこんな醜態は晒さないと決意したが、母さんが料理を運んできた際にまた腹を鳴らし、顔を赤らめてしまうのであった。

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