第四話『帰り道』
「ねぇランド」
マリーが相変わらずしつこく話し掛けてくる。
この女は勉強しているのだろうか?俺に話し掛けてない時は他の友人らしき人と話をしているし…
ランドはそう思ってマリーに聞こうとしたが、話が長くなって面倒くさそうなのでやっぱりやめた。
「なんかずっとこっち見てる奴がいるんだけど…」
どうせまたマリーのファンが俺を妬んでこっちでも見てるんだろうと思いマリーの指差す方を見てみると…
ランドはゾッとした
。
はたから見ればそいつはランドが思った通りの嫉妬するだけの男だった。
しかし何かが違う。何かが…何だろう…わからない。
だがランドは一瞬だが恐怖した。
近い将来、あいつが俺にとんでもない事をやらかすんじゃないか。取り返しのつかない程の不幸をもたらすんじゃないか。そんな気さえした。
気づけばランドは朝と同じく大量の汗をかいていた。
「ランド?」
よびかけるマリーの声も聞こえなかった。
「なんだ…あいつは…」
見た感じランドと同じ18歳くらいだろうか。170…いや175センチはある。やや痩せている眼つきは氷のように冷たく、ランドがそれまで見たことがないくらい殺気立っていた。
「いままでいたか?あんなやつ」
「あんな奴ただの根暗じゃない」
マリーは全く気にしていなかったが、ランドはそいつばかりが気になり勉強に集中できない。
「お〜いサム」
遠くから声がしたと思うと、その男はこちらを見てニヤリと不気味な笑いを浮かべて声の方へ消えていった。
「サム…サムと呼ばれていたな…」
サムに気を取られて気づかなかったが、ランドがハッと気づくともうすでに帰宅時間になっていた。
「ラ〜ンド。一緒に帰ろ」
「悪い。一人で帰らせてくれ」
試験の結果は良かったが、変な奴に眼をつけられるわ、今日の分の勉強は進まないわ。大変な一日(あくまでも学校生活だけの話だが)だった。だから帰りはせめて一人にして欲しかった。
「ふぅ…」
ランドは帰り道もサムの事が気になって仕方なかった。
あの不気味な眼差しを覚えていたためか、いつもの帰り道がやたらと遠く、そして怖く感じた。
「ポーラ…」
ランドは早く帰って妹にに会いたくなった。
「疲れた…とっとと帰ろう」
ランドは疲れた体に鞭を打ち走り出した。幸い明日は仕事も学校も休みなので苦にならなかった。
「はぁ…はぁ…」
五キロくらい走っただろうか。ランドは森に入った所で少し休む事にした。
いつもは気にならなかったが、夜の森というのは少し怖かった。少し風が吹くとガサガサ音はするし、何かコウモリみたいな奴も飛び回っている。静かだが、妙にざわざわしていた。それになんだか寒気もする…
なんだ…
どこかで感じた事のある感覚だ……
どこだ…
どこだ…
…
思い出せない…
寒い……
眠りたい…………
「はぁ…はぁ…おかしくなりそうだ…行こう」
サムとかいう奴に気を取られていたせいでいつもより一時間ばかり帰るのが遅れていたせいだろうか。ランドはいつも帰る道とは違う道を進んでいる感覚だった。
「おかしいな…疲れてるのかな…」
ここ最近は迷った事なんかないのにおかしいな。と思いながらもウロウロしていると、ランドは森の出口らしき場所を発見した。
「ま、まぶしい」
おかしい…もう夜があけたのか?
そんなはずない。第一森に少しくらい日が射してもいいはず…
なんだこれは…
光の先が見えない…
怪しいな…
怪しい怪しいと思いつつもランドは光の方へ引き込まれていく…




