第二話『朝』
「うわあああああああああああああぁ」
「……お兄ちゃん………お兄ちゃん」
ある朝、兄がかなりうなされていたのでたまらず心配になり起こすと、ひどく疲れきった顔で目覚めた。
「ポ、ポーラ?」
兄は起きると『なぜお前がここにいるんだ?』と言わんばかりの表情で私の顔を見ていた。顔には、人間はここまで汗がかけるものなのかというくらい今まで見たことがない量の汗をかいていた。まるで風呂上がりのように髪の毛もびしょびしょに濡れていた。
「お兄ちゃんどうしたの?」
「わからない…覚えてないんだ。ただ、凄く恐ろしい夢を見た気がする」
「そぅ……疲れてるんじゃない?お兄ちゃん毎日忙しいし」
兄ランドは毎日忙しかった。病気がちで体の弱い私のために医療費を稼ごうと昼は働き、医者になるために夜は片道二時間はかかるであろう隣街の学校まで通っていたからだ。
…私が兄の人生を奪ってしまった。私のために働き、私のために勉強し…兄にもやりたい事はたくさんあったはずなのに…
「ごめんね。お兄ちゃん」
「謝るなっていつも言ってるだろ?それよりお前の体調は大丈夫なのか?」
「うん。昨日もらってきた薬飲んだから大丈夫」
今日はいつもの頭痛や吐き気はなく、体調は良い方だった。もっとも、朝は兄の寝言で起きてからずっとそれが気になってたので、自分の病気どころではなかっただけかもしれないが。
もう十年以上になるだろうか……父は母や幼かった兄と私を置いてたくさんのお金だけ残してどこかへ消えてしまった。母もその一年後に死んでしまった。
父が残していったお金でなんとか生活はできたが、兄がちょうど働きだした頃にそのお金も尽きた。なにもできない自分が情けなかった。
そんな事を考えているといつものズキズキと響く痛みが頭に走った。
「本当に情けないなぁ」
色々考えているうちに泣いてしまっていたらしく、兄がひどく心配そうな顔で私を見ていた。
「どうした?」
「うぅん。なんでもないよ」
兄はいつも嫌な顔一つせずに私の面倒を見てくれる。
だから余計つらかった。こんな優しい兄に迷惑をかけた自分が嫌で嫌で仕方がなかった。
「心身共にもっと強くならなきゃ」
そう思う反面、頭痛はより一層激しくなっていった。




