第一話『村の男』
村に住む男ガイは走っていた。今日は村長に呼ばれていたのだが、寝坊し、約束の時間を大幅に過ぎていたからだ
「くそっ。あんな嫌な夢は見るわ遅刻するわ気分わりぃな」
ガイは昨夜、おかしな夢を見ていた。
ランドという背の高いハンサムな顔立ちの男と、名前は思いだせないが、絶景の美女と三人で魔王とかいう奴を倒しに行ったところだった。夢とはいえ、かなり恐ろしかったのでかなり鮮明に覚えていた。
「はぁ…はぁはぁ…それにしても……あのジジイ……なんの用だ」
走り続けて30分くらいして、ようやく村長の家が見えてきた。
村長と言う割には対して大きくもない…むしろ小さい部類に入るであろう、まるで物置きの小屋のような家だ。
「遅いぞ…まぁ入れ」
外では村長が待ちぼうけていた。長い白髭を蓄え、杖をついたどちらかといえば村長と言うより仙人と言った方が似合う老人だ。
ガイは言われるがままに村長の家にはいると、とても村長と血がつながっているとは思えない、可愛らしい孫娘が出迎えてくれた。
「また何か悪さでもしたの?」
確かにガイは若さゆえに、女の子を泣かせたり、家の窓ガラスを割ったり、可愛らしいものだが色々悪さもしていた。その度に村長には説教をされていたので、孫のミミも今日もそんな事だろうと思ったのだった。
ガイ自身も起きた時は
「また説教か」と憂鬱になったのだが、改めてよくよく考えてみると覚えがない。
怒られる内容がないのだ。
「で?今日は何の用事だよ?」
ガイが聞くと村長は先ほどまでの穏やかな顔とは比べものにならない程深刻な顔つきになり話し始めた。
「うむ。ガイよ…実はだな…お前はこの村の人間ではないのだ」
「!?」
「あれは15年程前のある日……村に見知らぬ女が来て、まだ3つだと言うお前を置いていったんじゃ……あまりにいきなりの事でわしも戸惑ったんじゃが、ミミも一人で寂しそうだったし、女がどうしてもというので預かったんじゃ……その時、女が(どうかこの事は…この子が18になるまでは黙っておいて下さい)と言うから今まで隠してたんじゃ……そして先日、お前が18歳になったんで話しておこうと思ってな」
「…嘘だろ…?」
信じられなかった。
ずっと村の人間だと思ってたのに…自分は村の人間じゃない…他人?しかも親には捨てられた…?
バカな…………
「まぁ15年間ずっとこの村にいたわけだしな。すっかり村の住人…家族じゃよ」
「あ、当たり前だろ……」
村長は励ましてはくれたがガイは少なからず動揺していた。
ガイは、人一倍そういう『自分が村の人間である』という誇りのような物を持っていたから余計につらかった。
「………」
話が終わるとガイはいつもの元気はなく、別人のように落胆した様子で自分の家へと帰って行った。




