続・目先にあるのは光か闇か~FINAL~
私は一休みしようと立ち寄った公園で少女の遺体を発見した。
遺体の側には何本かのネギが植えられたプランターと木材が置いてあった。
木材には『私はこの世からいなくなっているかもしれません。肥料を与え続けることができない可能性があります。なので誰でもいいから肥料を与え続けてください。そうすれば永久的にネギは収穫できるはずです。もちろんこのネギは自由に食べてください』と書き記してあった。
私は木材から遺体に視線を移した。この人がネギを植えたのだろう。残された私たちのために食料を残してくれたんだ。辺りに漂う忌々しい紫色のガスがこの人を死に至らしめた。見ず知らずの私たちのために食料を残そうとしてくれた優しい人を死なすなんて許せない。
この人を埋葬してあげなくてはいけない。このまま放置するのはこの人に対して悪いから。
私はホームセンターでシャベルを手に入れて、公園の土を掘りまくった。二メートルくらい掘り進めたところで手を止めた。遺体を抱え、そっと穴の中に置いた。上から土をかぶせて埋葬を終える。
名前が分からないから、『あの人のお墓』と木材に書き、ゆっくりと土に差した。
私は手を合わせた。私が必ずネギに肥料を与えて育てるので安心して眠ってください。私は心の中であの人に約束した。
それから私はネギに肥料を与え続けた。ネギは順調に成長していき、分げつ――植物の根元辺りから新芽が伸び株別れすること――して十本にまで増えた。それをバラバラにし、植え直した。それを繰り返していくうちに、プランターの数は増えていった。
やがて私の作業を見ていた子供たちが集まってきた。子供たちは『何をしているのか』と聞いてくる。私は『ある人が残してくれたネギを私が受け継いで育てているんだよ』と答えた。すると子供たちは『手伝うよ』と言ってくれた。
その日から私は子供たちと一緒にネギを育てるようになった。最初は暗い表情だった子供たちも笑顔を見せるようになった。ネギを育てるという目標ができたからだろう。
私も笑顔で子供たちと接するようになり、一丸となってネギを育て続けた。
そして私がネギを育て始めてから三ケ月が経過した。
プランターの前には多くの子供たちが列を作り、嬉しそうな表情でネギを収穫していた。
私はあの人のお墓に目を向けた。
――あなたが残してくれたネギはこんなにも増えました。あなたのおかげで私たちは笑顔を取り戻すことができました。あなたに救われたんです。
私は再び子供たちに視線を移した。
――あなたは私たちの救世主です。
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