今夜は朝まで
気が付くと、部屋に立っていた。
また、夢なのかな?と考えていると、ベットから気配を感じる。
ベットには横になっている女の子がいた。
布団を蹴飛ばして、あまりいい寝相とはではなさそうだ。
その上、どこから手に入れたのか、パジャマ姿でよく眠っている。
よく見ると昨日の勧誘で涼の逃げ道を塞いだ少女だった。
ここは確かに自分の夢のようだが、彩香もぼんの姿もない。
状況を確認するにはどうらや彼女を起こすしかないようだ。
仕方なく少女の体を揺すって起こすと、ベットの上で
もぞもぞしてから、むくりと体を起こした。
それから一つ、大きな欠伸をして周囲を見回す。
そこでようやく涼の存在に気が付くと彼の前に正座する。
そのまま涼を見上げて笑顔を作ると、彼の足元のフロア-を
右手でぺしぺしと叩いて座るのを待っている。
促されるままに腰を下ろすと、腕組みをしながら
「遅すぎですよぉ、みんな先に行っちゃいましたよぉ!」
とおかんむりだ、さらに両手の人差し指で角を作り
「彩香ちゃんだって、怒ってましたよぉ!」
と頬っぺたを膨らませる。
その姿を見て、この子は小学校の低学年くらいだろうか?
と余計な事を考えていると、空気を察したのか
「と、ともかく今日はみんな出かけちゃったから
私と朝まで特訓ですよぉ!」
そして彼女は魚住遥と名乗り、年齢は十八歳と聞いて
もしかしてこの教団は、変は人ばかりなのか?
そんな不安がよぎりつつ、しかも今は自分もその一員なのだと
いう事実に今後の不安を隠せずにいた。
その表情を見て誤解したのか
「大丈夫、特訓して立派な夢狩人にしてあげますよぉ!」
とテンションが上がってしまった。
ともかく、基本的な事から実践系形式での特訓を開始する。
まず、初歩は夢のコントロ-ルからなのだが
方法としては、遥が悪夢と仮定をして涼を拘束する。
自分の夢の中で他の者の影響を排除し、その拘束を解いて
今度は悪意の元凶である彼女を拘束する、という訓練だった。
そこに彼女が取り出したのは一本のヒモだ。
ヒモはまるで生き物のように涼の体にまとわりつき、自由を奪っていく。
数秒で後ろ手に組まされ、両手両足を拘束されてしまう。
そこで彼女が特訓開始を告げるが、ヒモは強力で抜け出すことが出来ない。
それを見た彼女がため息をつくと
「このままじゃ涼君が、悪夢に取り込まれてしまうかもしれないから
これはやりたくなかったんだけどぉ。
心を鬼にしちゃいますよぉ!」
それを聞いて何が始まるのかと体を強張らせていた彼だったが
体感できる痛みなどが無く、不思議に思っていた。
「涼君の初恋の相手とか、恥ずかしいヒミツ、見ちゃいますよぉ!」
そう言うと本棚に近づいて、一冊の本を手にする。
青い表紙の本で彼は見た事が無かったが、本能的にタイトルが脳裏に浮かぶ
『西神涼 秘密編』
遥は椅子に腰を下ろし、ゆっくりとページを開く。
そして読み進めながらほぅほぅ、とか、まさかそんな事がなどと言っているが
涼にも今どんな内容を読まれているか、体感として伝わっている。
恥ずかしさの為猛然と暴れるが、ヒモは切る事が出来ない。
そんな彼を横目に更に読み進めようとすると、不意に
「あつっ!」
遥が持っていた本を床に落とした。
青い表紙だったはずの本はいつの間にか燃えるような赤色に変わっている
「それ以上は、やめてください」
拘束を解き、怒りの表情で遥に近づく。
その手には、縄が握られている。
彼女が距離を置こうと椅子から立ち上がりかけた時
涼の手の縄が彼女を素早く拘束する。
「貴女も同じ思いをした方が良いですね」
そう言うと、彼女のパジャマのポケットから手帳を取り出した。
「ちょっと待って!?嘘!?ウソ!?」
暴れようとするが縄が食い込むばかりで抜け出すことは出来ない。
それを見ながら彼はゆっくりと手帳を開く。
そこで彼女が半泣きで許しを求めて来たので
縄を解き、白紙の手帳を彼女に返したのだった。




