春の嵐 4
そういえば昨日、春の嵐がやって来るとかテレビで言ってたっけ?
夢と現実が混ざり合った状態の涼の前に彩香が現れる。
但し、彼女は無数の手を持っており、その全てに食べ物を握っている。
「ふーん、アンタのことがよくわかったわ」
そう言ったのは涼のすぐ側にいる彩香だ。
正面に千手の彩香、そして傍らにも彩香がいる。
この状況でぼんが
「もう一度言うけど、ここは君の夢の中なんだよー。
それで、今、君の正面にいるのが精神的負荷って事なんだよねー。
だから、その負荷を取り除くのが一番最初の試練ってワケ。
じゃあその君の障害を、倒してみよーか」
と、涼に迫る。
これを聞いていた涼は、彩香の表情が険しくなるのを横目で見ながら
このぼんと言う人は実は『ボンクラ』のぼんなのではないかと疑ってしまう。
彩香の話では導師と言う肩書のようだったが、オリジナル彩香を目の前にして
精神的負荷だとか、障害だとか言う人に導かれて
大丈夫なのだろうか?
そんな事を考えていると怒りのゲージがMAXになっているようだ。。
そこにポツリ、と雨が降り出した。
雨は急激に勢いを増し、続いて風も強くなってきた。
既に三人ともずぶ濡れになってしまっている。
いくら自分の夢とはいえ、急な嵐に涼が気後れしていると
側にいた彩香が一歩前に出る。
その瞬間、異形の姿をした彩香の姿が消し飛んでいた。
恐らくはオリジナルの彼女が何かを行ったようなのだが
涼には認識できなかった。
そして、ぼんは困った表情で涼に
「本当は、自分で克服するべきなんだけど
彩香ちゃんが甘やかしちゃったから、しょうがないねー」
それを聞いて、恐らく、いや絶対に甘やかしたのでは無いだろう
と思ったが、あえて言葉にはしなかった。
ただ、この人の愛称は間違いなく『ぼんくら』からきているのだろう
と確信する。
ここで再び彼女を見ると、偽物を倒していくらか気が晴れたのか
表情が和らいでいる。
いつの間にか雨は止み、風も治まっている。
ここで彩香が思い出したように
「そういえば、缶詰に何が入っていた?」
それを聞いたぼんも
「そうそう、それは凄く大事な事なんだよー」
などと言いした。
「何も入ってなかったけど?」
と言う返事に
「ありえないわ」
「無くしちゃったんじゃないのー?」
この二人の反応に思わず
「本当だって、目が覚めたらわかるよ!」
思わず強い口調で言ってしまう。
「しゃあ、今から確かめましょう」
その答えを聞いた涼がぼんに
「あなたはどうするんです?」
と試しに聞いてみる。
「いや-、僕は目が覚めてもそこにはいないから
あとは二人に任せるよー」
と軽い返事を返すと自分だけ姿を隠してしまう。
結局、あの人は何をしに来たのかわからず
かといってこれ以上詮索しても無駄な気がした彼は
彩香と共に夢に世界から帰還する。
彼が目が覚めると彩香は既に目覚めていて
ぬるくなったお茶を目覚まし代わりに飲んでいる所だった。
いったいどのくらい眠っていたのか?
ふと時計を見ると彩香が来てからまだ一時間も経っていないようだった。
そんな涼の姿を見て
「おはよう」
お声をかける彩香。
「えーっと、これはいったいどういう事なの?」
彩香と二人で自分の夢の中にいた、と言う夢を見た恥ずかしさからか
まだ現実との区別がついていないようで、先程の夢を彩香と共有したような
そんな感覚に陥ってしまい、思わず口に出てしまった。
しかし、そんな自分がおかしい事に気が付いて思わず訂正しようとする。
そして彼が口を開こうとするのを遮った彩香が
「さっきのは夢だけど、夢じゃないの」
と告げる。その言葉を聞いて再び
「えーっと、これはいったいどういう事なの?」
と聞いてしまう。
「話は少し長くなるから、今は缶詰の中身を探しましょう」
そう言うと、彼女は部屋を探し始める。
二人で探したが、結局中身は見つからなかった。
「仕方ない、ぼんに相談しましょう。
他にも話があるから、今夜は私の夢に来なさい」
そう言うと、荷物をまとめて帰って行った。
そしてその夜、興奮して遅くまで寝れなかたが
日付が変わった頃、ようやく夢の世界へと落ちていった。




