春の嵐 1
ようやく解放され、自宅に戻った涼は
夕食まで部屋で一人、今日の話を思い返していた。
女性は新聞のスクラップブックを開きながら語る。
「私たちは夢の神、モルペウス様の使者なの。
私たちの使命は、この世から悪夢を滅する事。
今の世の中では悪夢が精神に異常を及ぼして
心の弱い人たちが犠牲になっているの。」
と、この調子で話が進み、世間で行われている
犯罪や、無気力な人間の増加は、悪夢が全ての原因で
それらを退治?する戦士を求めて活動中である。
そして、あなたは戦士として選ばれた。
だから戦士の証として、この缶詰を与える。
戦士で無い者がこれを欲しがったら恐らくは
数百万円の価値があるものだから
決して他人に見せないように。
などど、注意事項まで伺い。
ようやく解放か?
と思われた所で
「身分証明書。」
隣に座った少女がいきなり言った。
「えっ?」
いきなりの発言に、思わず聞き返す。
「あと、連絡先もね。」
他人が見れば、美しい女性に囲まれて、羨ましい様子だったかもしれない。
結局、生まれて初めての運転免許証を控えられ
電話番号を交換することになった。
こうして、涼の回想シーンは終わり
けだるさだけが残っていた。
ベットの上で所在なくモゾモゾしていると
ポケットに異物感があった。
そう、缶詰だ。
ため息をつきながら缶詰を取り出すと
プルトップを引っ張り開けてみる。
そして、中身を見てみると
見事に、空だった。
ここで、改めて缶詰を見てみると
缶の周りにラベルが貼ってあり
『真なる力の源』
と書かれていた。
それを見て、数秒、突然閃いたのか
立ち上がり、何度も深呼吸を繰り返す。
過去に空気を詰めて販売しているというニュースを
見たことがあったので、もしかしたら
という思いに駆られての行動だった。
そのまま部屋の中央でボクシングの選手のように
何もない空間に向かって数発の拳を放ってみる。
その時、自分では意識していなかったが
繰り出す拳に合わせて
「シュ、シュシュシュッ」
と口走ってしまう。
そこで我に返り、自分の行動の滑稽さを悔いながら
ため息をつきつつ、ベットに倒れこんだ。
ちょうどその時、母親から夕飯を食べに来るように言われた。
食事は母と二人で食べることが多かったが
免許をとれた話はしたが、宗教に捕まった話は
なんとなく、切り出せずにいた。
食事も終盤?に差し掛かろうとしていた時
「明日、彩香ちゃん来るみたいよ~。」
母が何気なく言った言葉で涼に緊張が走る。
「えっ?
何時ごろ?」
それを聞いて母が
「やっぱり彩香ちゃん、頼りになるわね~。」
などというのを聞いて
「だから、何時って聞いてんじゃん!」
イラっとして声を荒げてしまうが、は
「大丈夫、夕方よ、ゆうがた~。」
特に気にした様子もなく答えた。
それを聞いて少し冷静になった涼は
「明日、片付けるから。」
と言って自分の部屋に戻る。
部屋に戻るとため息をつきつつ
ベットに倒れこんだ。
自分にとっての天敵である彩香の訪問に
今から部屋を片付けるか、明日にするか
と、ベットでグズグズしているうちに
眠ってしまう。
その夜、彼は夢を見た。
幼稚園の頃だろうか?
彩香の家に遊びに行った時
彩香ママがおやつにショートケーキを出してくれた。
イチゴが乗っているケーキで凄くおいしそうだった。
しかし、ケーキは一つしかなく、彩香ママは涼に
食べなさい、と言ってくれる。
どうやら彩香は先に食べてしまったみたいだ。
優香ママがいなくなると、彩香が
「半分ちょうだい。」
と言って来る。
涼は深く考えずに頷いた。
そこで彩香はケーキの上半分を食べ、残りを涼に差し出した。
目が覚めた涼は時計を見ると
九時半になっていた。
何か夢を見たようだが全く覚えていなかった。
まずは、シャワーを浴び
着替えてから部屋の掃除に取り掛かる。
普段、すぐ見れるように床に散らばっているバイクの雑誌や
インターネットで購入した時の段ボールなど
一時間ほどかけてを整理をする。
後は、整理したダンボ-ルを処分して
ついでに床屋へと行ってきた。
後は綺麗になった部屋で雑誌を読みながら
彩香を待つ。




