日常の裏通り
四月一日
昨日まで少し肌寒い気候だったが
今朝の天気予報では
「例年よりやや暖かい」
とテレビのお天気お姉さんが笑顔で伝えていた。
この日、春休みを利用して念願の原付免許を取った涼は
免許試験場から帰宅する為にバスに乗っていた。
最寄り駅の駅前広場には、募金や宗教勧誘、待ち合わせなど
様々な人でごった返している。
そんな所にバスが到着する。
特に予定はなかったが、このまま帰っても、という思いから
駅のステーションデパ-トの本屋でバイクの雑誌でも見ようか
と、本屋に向かう為に広間を横切ろうとしていた。
「ちょぉ-っとイ-ですかぁ-?
あなたはかぁみを信じますかぁ-?」
いきなり、二十代前半と思われる金髪のハーフっぽい青年に声をかけられる。
とっさに
「ぃ・ぃぃえ・・・。しんじてませえん・・・。」
とは答えたものの、緊張で声が出なかった前半の発言と
それに気づいて動揺した後半部分のコンビネーション発言に青年が食いついた。
「それはイけなイ、世界の平和を守るために私たちの集会に参加しましょウ」
その口調は穏やかだったが、気の弱そうな少年を見つけて狩ろうとする
狩人の目になっている。
このままでは、狩られてしまう。
危険を感じた涼は
「いや、俺が神なんで、大丈夫です。」
神の存在を否定しながら、自らを神と名乗るという暴挙に出たあと
その場から逃げ出そうと振り向いた。
「あ・・・。」
振り向いた目の前には少女がおり、危うくぶつかりそうになるのを
慌てて避けようとしたのだが、なぜか少女は涼の手をぎゅっと握り
「神様、里奈のお話し、聞いてください」
突然の告白に意味が分からず
「いや、でも」
などと言っている間に周りに同じ団体と思われる女性が3人ほど現れる。
逃げ場が無いように囲まれ、名前は?、年齢は?
などと聞かれているうちに
「ちょっと座れるところでお話ししたいなぁ。
涼君も一緒に来てくれるでしょ-」。
と必要以上に体を近づけてくる。
女性に対する免疫のなさや断りにくい雰囲気から
「す・少しだけだったら・・・。」
と返事をしてしまう。
移動の途中も両サイドでは腕を組まれ他人が見たら
四人の女性に囲まれたうらやましい状況だったが
本人にしてみれば、見事に捕獲され、調理台に向かう獲物のような気持だった。
喫茶「夢」
駅の商店街の路地を突き当るとその店はあった。
周りは全てスナックや居酒屋らしくこの時間で開いているのは
この店だけのようだ。
店内に入るとカウンターに白いコックコートを着たマスターらしき
人物が立っている。
背は低めで体重は八十キロ以上はあると思われた。
「いらっしゃい。」
女性たちは慣れた様子で店の奥まった席に涼を案内する。
一番奥に涼が座り、隣に二人、正面の席に二人が座る。
そして、正面の女性は自分たちがどういう団体でどんな活動を
しているかなど、熱く語り始めた。




