出会い
裕也が玄関を開ける。続いて玄関の中に入る。
「こんにちはー!」
靴が二つ綺麗にならんでる。女性物のサンダルとスニーカー。
大きな声で、挨拶した。母親にいつも「よそ様のお宅に入る時は、元気よく振る舞うことと、笑顔で挨拶しなさい。」と言われていた。いつもはうるさいと思ってたけど、そうする事で少し緊張がほぐれた。
「上がっていいよ。」と言いながら、裕也は自分の靴を脱ぐ。
そのまま、玄関右手の部屋に入っていく。
1度目の挨拶では、反応がなかった。聞こえなかったのかと思い、もう一度言う。
「おじゃましまーす!」
2回叫んだけど、反応なし。
仕方がないので、靴を揃えて玄関を上がった。
裕也の入っていった部屋へ続いて入る。
少し、コソコソしている自分に気づく。
「座ってていいよ。今母さん呼んでくるわ。」
言われた通り、その場で座ってみた。
野球少年らしく、バットや野球ボールが置いてある。(中には、サインが入ってるやつも!)
裕也達のチームは、結構強くて今年は全国大会が控えてる。親に甲子園までの旅費をねだったが、ダメだった。
裕也のかっこいい姿、直接見たかった〜
「いらっしゃ〜い」
凄い美人が、目の前に現れた。
「里穂ちゃんよね〜?話は聞いてます!裕也がいつもお世話になってるみたいで、ありがとう。」
裕也のお母さんか!美人だけど、とても親近感のある、優しそうな人。
立ち上がって、お母さんに向かいながら言う。
「私なんて、全然!こちらこそ、いつもお世話になってます。」
一度、頭を下げる。
「そんな、気を遣わないでね。今日はカレーにしたから、里穂ちゃんがよければ食べてって。じゃあ、ごゆっくり〜」
そう言いながら、美人なお母様は部屋を去っていった。
奥のドアが閉まったのを確認して言う。
「お母さん、凄い美人だね。」
自然と小声で話していた事に触れず、裕也はいつもの音量で、
「そうか〜?はい、これ里穂好きだろ。」
手に持っていたスーパーの袋を裕也から受け取る。
取り出すと、赤いパッケージが見えた。
「あ、HARIBOだ〜!」
裕也を見るととても満足そうな顔をしていた。
裕也なりに、考えてる事があるんだろうな。きっと。私は裕也についていくよ。