真珠の首飾り
「...マ...マ。ママ!ママ!!」
目を覚ますと目の前に吸い込まれそうな大きな口を開けて、トトロのめいのように笑った裕也がいた。
裕也は、私が目を開けるのを確認し、さらに声を出す。
「プリン!プリン!お腹空いたー。おやつで約束してたプリン食べたい!」
そうだった。裕也が熱を出したと聞いて、急いで保育園まで迎えに行ったんだった。
着いた時は寝ていたから、とりあえず家まで裕也を運んで、食料を買って家に帰ってきて、気づいたら裕也と一緒に寝てたんだ。
「裕也、プリンの前にお熱はかろう。」
「えー、プリン、プリン!」
こんなに元気そうだから熱もひいたかなと思いながら、プリンを差し出して、息子の脇に体温計をはさむ。
息子は嬉しそうにプリンを頬張る。
そういえば、背伸びたかな。
昨日、Tシャツ入らなかったな。
歯もだいぶ生え揃ったな。
改めて息子の成長を感じる。
それと同時に、落ち着いて息子と向き合っていなかったことに気づく。
月日は経ってるのに、私の時間は止まったままだ。まだ、俊彦さんが帰ってくるかもしれないと思ってしまう。どうしても玄関に意識が向いてしまう。物音がすると、玄関に確認しにいってしまう。
裕也は俊彦さんについて何も聞かない。あんなにお父さんっ子だったのに。
「ごめんね、裕也。」
そういうと、裕也はまた心配そうな顔で私を見る。
「ママ、大丈夫だよ。プリン食べたら元気になっちゃった!すごいね、プリン。」
体温計を見ると37.3°Cだった。
良かった。だいぶ下がった。
「裕也、じゃあ歯磨きしてお水飲んでもうちょっとだけママとお昼寝しようか。」
「うん!」
そういうと、息子はお気に入りのミニカーを持って洗面所へ向かった。