変わらない日々
美和子が患者に食事を食べさせ終わり、同僚に昼休憩へ入る旨を伝えた時に病棟へ電話がかかった。
「片岡さんー!電話です。日の丸保育園から。」
ナースステーションにいる後輩が、手を上げて心配そうな顔で美和子へ知らせる。
美和子の胸がざわついた。
有難い事に(というべきだろうか)今まで、入園から1度も保育園から電話がかかってきたことはない。
電話までかけ寄り、後輩へ礼を言う。
「お電話代わりました。片岡です。」
「片岡さん、お仕事中にすみません。私、日の丸保育園の山田です。裕也君の事でお電話しました。今お時間宜しいでしょうか。」
俊彦さんの事も電話で聞いたんだった。
綾子さんが、電話をかけてきた。
俊彦さんに言う前に私に話たい事があると。
綾子さんは会って伝えたいと言ってたけど、早く聞きたいと急かしてしまった。心の準備も出来てなかったのに。
私がもっと早く病院に行くように伝えていれば良かったんだ。後悔してもしたりない。
俊彦さんは「最近なんか、声が出にくくてさ。」と言っていた。
お母さんも「俊彦さん、ダイエットしてるのー?なんか、最近急に痩せたね。」と気づいてた。
1番近くにいた私が気づかなかったなんて。
「…という訳で、裕也君のお迎えに来ていただきたいのですが。」
美和子はふと我に返る。
「あ、すみません。裕也に何かあったのでしょうか?」
「あ、あのお熱が38度ありましてしんどそうなのでお迎えに来ていただきたくて…」
「分かりました。上司に相談して、できるだけ早く迎えにいきます。」
電話を置いた美和子は、深呼吸をする。
大丈夫。子どもの熱はよくあること。
自分に言い聞かせて、休憩所ではなく、師長の元へ向かった。