若葉ちゃん
「はー。どうしよう。」
私の前の席の背中を向けている優希の肩を持ちながら、私は机に伏せるように倒れた。
私の前の席は、何回席替えしても優希が前だから自然と仲良くなった。優希は美人だが、少し男っぽい所がある。
だから、女子にはとても人気が高い。
男子にもモテるんだけど、今時の草食系男子に好かれるタイプ。
ただ、私は知ってる。
優希には大人な彼氏がいるはずだ。
「どうしたの、里穂。いつもなら、休み時間にこれでもかってくらい片岡くんの話ばっかりするのに何かあった?」
さすが、気遣いさせたらNo.1って本当に思ってるけど、言ったら怒るから言わない。
褒められるのって嬉しいはずなのに。
「優希ー。それがさー。今日の朝、裕也が教室の前まで送ってくれたんだけどね。その時に、裕也が行きたい所があるっていうから野球とかボーリングとかバッティング?とか色々想像してたのに、「母さんの実家」なんて言うの。私、どうしたらいい?手土産いる?メイクこんなんだけど?そもそも、心の準備がー。」
振り向いてる優希の両肩にまた手をかけて、もたれるように倒れこむ。
優希が小さく笑った。
「実家って?おじいちゃんおばあちゃんの家ってこと?それは驚くね。(笑)
まだお母さんにも会ったことないんでしょ?(笑)」
優希はさらに大きく笑った。
優希の肩から両手を滑らして完全に机に伏せた。大げさにため息をつく。
「不安だー。」
優希はまた小さく笑い、私の頭を優しく二度叩いた。
「ま、片岡くんにも考えがあるんでしょ。思いつきで行動するタイプじゃなさそうだし。結果聞かせてねー。」
「うーん。ありがとーう。」
なんだか、吐き気もしてきた。
すると、チャイムが鳴った。
次の数学の試験が終わったら今日の試験は終わる。
胸がドキドキする。
不安な所もあるけど、裕也に会える。
もう、覚悟を決めよう。