はじまりの朝 2
裕也の保育園は、自宅マンションから見える距離だが、彼は色んな事に興味があるようでなかなか辿りつけない。
ついこないだは、蟻の行列に夢中になっていた。(蟻が土の中に入るまで動かなかった)
その前は、お隣の犬(名前はコニー)がお散歩から帰ってくる時に鉢合わせた。まずいと思ったが、もう遅かった。
裕也はコニーと遊んでいる。保育園に遅刻しそうだし、私も仕事に行かなくちゃ。
私は焦って、大声を出してしまった。
「裕也、早く行くよ!」
お隣さんも驚きの表情。
声を聞いた母が慌てて、外に出てきた。
大声を出してしまった事をお隣さん、母、裕也に謝罪し、心配そうな母を置いて保育園に向かう。
裕也はまだまだ、冒険者なんだ。
色んな事に興味津々なんだ。
自分に言い聞かせる。
もう少し、おおらかな気持ちでいないと。
ごめんね。こんな母親で。
俊彦さんなら、こんな時どうするのだろう。
「大丈夫?」
裕也が心配そうな顔で美和子を見つめる。
「うん、大丈夫よ。」
美和子は笑顔で裕也に答える。
頭をなでると、安心したように裕也は保育園へ歩きだした。
きっと、俊彦さんは笑って裕也と一緒に遊んでるんだろうな。想像して、笑みがこぼれた。