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自己紹介

今回は短めです。

元近衛騎士達と戦った場所から歩いて20分、森に少し入ったところにある洞窟に彼らのアジトはあった。中は木材などで補強、修繕されており、風通しも良くなかなか快適な場所であった。ユリウス曰く、彼らがこの辺りで活動を始めてから2か月ほどらしいが、それ以前からすでにこのような作りとなっていたらしく、彼らはたまったほこりなどを掃除しただけとのこと。どうやら以前この辺りを拠点としていた盗賊団が騎士団に討伐されるなどしていなくなり、空き家となっていたようだ。


貴明たちはとりあえず食堂のようなところへ入り、お互いの自己紹介を済ませた。ちなみに怪我をしたグレンは秘薬と治癒術師のおかげで完全に回復し、今は自室で休んでいる。治癒術師の男も精神力(MP)を大きく消耗したため疲労が大きく休んでいるためこの場にはいない。


「さあ、遠慮せずに楽にしてくれ。どうせ俺たちだってここは借りてるだけだからな。さて、見たところ怪我の類はなさそうだが先ほどの戦闘の後だ、疲れもあるだろう。ユリウス、食糧庫から何か食べ物と飲み物を持ってきてくれ」


「わかりました団長。貴明さんも楽にして待っていてくださいね」


そう言ってユリウスは部屋を出て奥へと向かっていった。そこでふと思ったことをガリウスに聞いてみる。


「食糧の類はアイテム欄じゃなくて食糧庫に保存しているんだな?アイテム欄なら食糧も腐らないからそちらに入れていると思ったんだけど」


「ああ、冒険者ならそうだな。現に俺たちも数日分の食糧はアイテム欄に入れてるよ。でも俺たちはこの辺りから動かないし、アイテム欄の容量だって無限じゃないからな。それに腹が減ったとこに食い物がほしくても、誰かのアイテム欄にあったら自由に食べることができないから、基本的に城や俺らみたいな集団の場合は食糧庫に保存するんだ。」


「それに生ものは腐る前にみんな食べてしまうし、他は保存食だからすぐ腐る心配はないですからね」


男ばかりだと消費するペースが早いんです、と戻ってきたユリウスが笑いながら付け加える。


なるほど、と思いながら貴明は少し考える。


(ストレージに限界がある?FOEではそんなのなかったはずだよなぁ。この世界で確認した時もちゃんと俺が持ってたものは全部あったし。もしこれがこの世界では特異なことならあまりばらさない方がいいか)


そんなことを考えていると、ユリウスやほかの元冒険者たちが料理を運んできて席に着いた。


「さ、とりあえず俺たちと貴明の出会いを祝して乾杯といこうか。貴明、今ここにいないグレンとタラスを抜かせば、ここにいる12名が俺の仲間たちだ」


「俺は岡本貴明、岡本が姓で貴明が名前だ。歳は19。あんまりこの大陸の常識の類には明るくないけどよろしく頼むよ」


そうして改めてみんなに挨拶をし、食事に入る。テーブルに載っているのは、大森林で狩ったであろう魔獣の肉と自家菜園しているという野菜のサラダ、そして林檎やブドウに似た果物や木の実だ。


それらを食べながら、お互いのレベルや情報を交換し合った。本来ゲームであれば他人のステータスを聞くのはマナー違反だが、この世界では自分のステータス画面を見せてレベルや身分(冒険者や騎士、神官など)を見せるのは自分の身を証明するのによく用いられるため抵抗はないらしい(さすがにパラメータの振り分けや装備、取得したスキルなどは見せないようだが)。


「改めて俺はガリウス、年齢は24、レベルは138だ。数か月前まではAランクの冒険者だったが、とある貴族が出した護送依頼を引き受けたとき、自分たちが運んでいるのがラービア連邦のエルフや獣人の子供たちであることがわかってな。どうやら連邦にいる奴隷商と結託してあちらの子供たちをこっちで売りさばいていたらしい。」


「僕はユリウス、歳は18、レベルは102です。元Cランク冒険者でこの集団の副リーダーのような役をやってます。ここにいるメンバーは全員その依頼に参加した冒険者なんですけど、その依頼を出した貴族に僕らが秘密を知ってしまったことがばれてしまいまして。僕らを始末しようと自前の私兵軍を派遣したんですけど撃退してしまったんですよ。それで今度は僕らを、私兵を襲った犯罪者に仕立てあげてしまいまして」


「基本的に冒険者ギルドはどの国家や権力からも独立しているんだがな。さすがに国に犯罪者と認定されたものをギルドに置いておくわけにもいかないからな。ガルーダのギルド長は最後まで頑張ってくれたんだが、迷惑もかけるのも忍びない。しょうがないからこうして盗賊まがいのことをしてあの貴族の輸送ルートをつぶしているんだ」


「なるほど、そういうわけだったんだな。道理で盗賊の割にすごく話が分かるし礼儀正しいわけだ。っていうかユリウス、お前連中と言い争ってた時と口調とか一人称違わないか?」


気になったので聞いてみる。するとユリウスは苦笑いしながら答えた。


「ああ、本当はこっちが素なんですよ。でも荒っぽいことするときに『僕』だとなめられますからね。意図的に荒っぽい口調にしてるんです。でもそれを言い出したら貴明さんだってあの場での雰囲気と変わってますよね。何となく口調もフランクになってますし」


「俺もこっちが素なんだよな。あのときは初対面だったし、何よりもみんな盗賊だと思ってたからね。戦いや真面目な時は基本あっちの雰囲気だけど、それ以外は気を抜かないと肩こるんだよ」


そうして雑談をする貴明たちだが、話が先ほどの戦闘の件になるとガリウスとユリウスが


「そういえば貴明のレベルは聞いてなかったな。あの戦いぶりは正直S-クラスどころかSクラスものだったぞ」


「あ、それ僕も気になります。団長より強い冒険者なんてこのあたりじゃあんまりいないのに、いったいどれだけレベルが高いんです?」


と聞いてきた。


正直に話していいものか貴明は迷った。いくら人当たりが良いとはいえ、ガリウス達とはつい先ほど知り合ったばかりだ。貴明のように図抜けたレベルの持ち主を前にして、貴明を利用しようと考えるものは当然現れるだろう。ガリウス達がそう考えないという保障は全くない。


しかし、と貴明は思う。今話した印象では、ガリウス達にそのようなことを考える者特有の後ろ暗い雰囲気が感じられない。曲がりなりにも大きなコミュニティをまとめていた貴明は、人を見る目にそれなりの自信を持っている。


そもそも貴明のレベルが255であることは紛れもない事実であり、今後隠し続けられる保障もない。そのような状態で他人に利用されるのを恐れ、偽りのレベルを伝え相手が信用できるかを判断していくのはあまりにも現実的ではない。何の地位もコネクションもない今の貴明にとって、この世界で仲間を作ることはすべてに勝る最優先事項なのだ。


(それに)


貴明は内心薄く笑う。この世界において貴明のレベルはおそらく規格外。仮に自らの力が他の勢力などに利用され不利な状況下に追い込まれたとしても、全ての障害を強行突破すればよい。それすら不可能な状況に追い込まれるようなら、どのみちこの世界で生き抜くことなど不可能だろう。


貴明はそう考え、偽りなく自らのレベルを告げた。


「確かにまだいってなかったな。俺のレベルは255だ。強制はしないけど、あんまり言いふらさないでくれると助かるよ」


貴明がそう告げると、


「…はっ?」


「…え?」


「なっ…」


「ぶっ!?」


「うぉおお!?きたねぇ!?」


みんな固まるか吹き出すかのどちらかになってしまった。


(ああ、やっぱり異常なレベルだったんだなぁ)


などと考えつつ、貴明はその様子を眺めながら少し冷めたお茶を飲み、この後に待ち受けるであろう質問の嵐をどうやって切り抜けるかを検討し始めた。


お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、FOEでの冒険者のランク分けとこの世界での分け方は若干違います。次回はそのあたりの解説になるかと。


誤字脱字、感想等ありましたらよろしくお願いします。

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