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遭遇

ようやくこの世界の住人と出会います。まぁヒロインはもうしばらく出てきませんが(笑)ちゃんと登場するのでもう少しお待ちください。

「んで、いきなりこんな状況かよ…。いや確かに俺も不注意だったんだが」


体術スキルの高さと風魔法の加護を受けてかなりの速さで森を抜けた貴明だが、いきなり

問題が発生した。グスタフ大森林はその魔獣の強さにより国家の力が及びにくいのだが、それはつまり盗賊のようなアウトローたちの拠点になりやすいともいえるのだ。つまり何が言いたいかというと…。




「なにぶつぶつ言ってんだてめぇ!」


「俺たちの縄張りにひとりで来るとか馬鹿じゃねぇのか?」


「見たところ騎士団の連中じゃねえな。となると俺たちに懸賞金をかけた冒険者ギルドの回し者かテメェ」




といった具合である。貴明とて確かにこういう事態も想定してある程度の覚悟もしていたが、まさかこの世界に来て1時間、森を抜けて5分でエンカウントするとは思っていなかった。


貴明は敵を確認するが、ざっと30人はいる。先ほど数名が増援を呼びに行ったため(30対1なのに!)この数はさらに増えるだろう。


「いや、いきなりお前たちの縄張りに侵入してすまない。確かに俺は冒険者だが、俺は依頼でグスタフ大森林での素材集めをしていただけだからお前たちには関与していない。ここは見逃してくれないか?」


これは貴明があらかじめ考えておいた口上である。今の貴明の格好は、FOE時代の最強装備ではなく(おそらくだがそんなものを身に着けていたらいらない面倒に巻き込まれるため)、せいぜいレベル100前後の冒険者が無理をすれば買えるだろう、と思われる防具と長剣を装備していた。


それでも元のステータスのせいでだいたいの敵にはまず負けないし、わざわざ自分の力を誇示するほど子供でもない。貴明はそう考えていたため、ここは穏便に済ませようと考えていたのだが、事態は貴明が想定していない方向へと進んでいく。


「お前たちなにやってんだ!俺らが狙うのは平民から搾取する悪徳貴族やその関連商人たちであって無関係の冒険者なんかじゃないだろう!もうじき団長も来るんだからおとなしくしていろ!」


「あぁ!?みみっちいこといってんじゃねぇよ!こちとらこんな辺鄙な場所でろくに楽しみもなくお前らに協力してやってんだから、多少の小銭稼ぎくらい見逃せや」


「馬鹿を言うな!俺たちはもとはといえば冒険者だぞ!貴族にはめられてこんな身になっちまったがそこまで落ちぶれちゃいねぇ。それに協力だと?お前ら元近衛騎士のくせに役人の不正に関与したせいでガルーダ皇家から除名されたくせに何言ってやがる!」


どうやら貴明の聞くところ、この盗賊団には二つの派閥があるようだ。一つは元冒険者で、貴族のせいで身分をはく奪された連中。もう一つが元近衛騎士だったが犯罪に手を染めその地位を失い、元冒険者たちの組織に身を寄せている連中だ。今ここにいる数は前者が11人、後者が21人だったが、どうやら今呼ばれている団長とやらが近衛騎士よりも高レベルであるため何とか押さえつけていたらしい。


「はっ、ガリウスの奴がいなくちゃ何もできねぇてめぇらが何言ってやがる。そもそも元近衛小隊長だった俺にでかい口きいてんじゃねぇよ!」


「なんだと貴様!落ちぶれたくせに偉そうに言いやがって!」


終いには貴明を無視して仲間割れを始めてしまった。貴明としては戦いたくないから一向に構わないが、さすがに絡まれておきながら無視されるこの状況には少し寂しさを感じる。


(しかしあいつ近衛隊の小隊長だったのか)


その男は見た目20歳後半から30歳に見えるが、その年齢にしてはなかなかの出世である。貴明はためしに無属性スキルの『サーチ』(無属性スキルはオリジナルではなく運営側が用意していた)を使いこの場の人間のレベルを確認してみた。この手の他人に干渉するスキルはこちらのレベルが高いほど効果が上がり、相手に阻害されにくくなる。


(ええと、あの小隊長殿のレベルが120か。ほかの元騎士は100前後。大体はみんな武器術に振ってるな。さすがに熟練度は見れないけど連中の装備からするとほぼ全員長剣使いだろうな。冒険者側の口論している奴はレベル102、他は90前後と。レベル102のほうはパッと見俺と同い年か少し下くらいなのになかなか高レベルじゃないか。だが確かにこのレベル差だと近衛騎士側が増長するのも仕方がないか。よほど団長とやらが強くないとこいつらがおとなしくしている理由がない)


こっそり貴明がそんなことを考えていると、30がらみのおっさんが小声で話しかけてきた。


「よぉあんた、巻き込んじまってすまねぇな。ユリウスの奴が連中の気を引いてるうちに逃げてくれ」


どうやら元冒険者側の人間らしい。貴明が確認したところレベルは96、この場にいる元冒険者側の中では2番目に高いレベルだ。


(あの男、たしかユリウスって言ってたか?注意を引くためにわざと怒鳴ってたのか)


少し感心しつつも今はそれどころではないことに気づき、貴明は離脱を選択する。


「すまん、お言葉に甘えさせてもらう。この借りはいずれ!」


そう言ってこの場を少し離れたところで、元近衛騎士側の男がその場を離れつつある貴明に気付いた。


「おいてめぇ、何逃げようとしてやがる!てかお前、人様の獲物逃がそうとしてんじゃねぇよ!」


その声に反応して、ユリウスと怒鳴りあっていた元小隊長の男がそちらに振り向く。


「おいおいおい、なめたマネしてくれてんじゃねぇか!見たところレベル100くらいはありそうだがただで済むと思うなよ!テメェらやっちまえ!」


「あっ、こら!やめないかお前ら!」


号令とともに元近衛騎士の連中が一斉に剣を構え貴明の方へと襲い掛かってくる。ユリウスたちが止めようとするが、邪魔をされて近づけないでいた。


(ちっ、この場で下手に反撃をすれば最悪殺し合いになるな。そうしたらこいつらはともかく冒険者側にも被害が出ることになる。別にそこまで気にする必要はないかもしれないが、あいつらは近衛の連中みたいに性根が捻じ曲がってないみたいだし、何とかこの場は穏便に切り抜けたい)


そう考えた貴明は、襲い掛かってくる連中を受け流しながら戦意がないことを主張する。


「待ってくれ!金が要るなら払えるだけ払う!とにかく俺は戦う気はないから落ち着いてくれ!」


しかしこの行動がいけなかった。どうやら相手に戦意がないことで気が大きくなったのと、元近衛騎士たちを軽く受け流しつつ一向に戦う気を見せない貴明にいらだった敵のリーダーが、先ほど逃げるよう話しかけてきた男に斬りかかったのだ。


「そもそもグレン、お前があのガキを逃がそうとしやがったからこんなことになったんだよな。テメェみたいなやつはいても邪魔だ。ガキもろともくたばっちまえ!」


グレンと呼ばれた男は何とか応戦しようとするが、ざっと30はレベルが上の相手に襲われてしまえば一対一ではどうしようもない。なすすべもなく袈裟切りにされてしまう。


「グレン、おいしっかりしろ!」


「お前らよくもグレンを!」


「はっ、あんな雑魚いたところで足手まといだからいい機会じゃねぇか。それともお前らもあいつの後を追ってみるか!?」


連中がそんなことを言いながら騒ぎ、武器を構えるものの、貴明は全く聞いていなかった。切り伏せられ血を流すグレンを見下ろすと、その場にしゃがみ込んでグレンの手をとる。


「俺のせいか…?俺が…俺が奴らとことを構える覚悟をしなかったから、あんたは斬られてしまったのか…!?」


どうやらまだ意識があったのか、俺の声が聞こえたらしいグレンが声を返してきた。


「…ばかっ、言ってんじゃ、ねぇ…よ。これは…俺たちがっ、巻き込んじまった…ことだ。っ、お前が気に病むことなんざ…ねぇよ」


そう言って力なく笑うグレン。30近くレベルが高い相手に正面から斬られてのだ。おそらくHPもほとんど残ってないだろう。しかも大量の血を流しているためだんだん顔色が青白くなっていく。おそらくだが一定量以上の血を流してしまうと継続してダメージを負いHPが減っていくのだろう。


「畜生!この傷じゃあ俺のスキルじゃ治しきれない…。傷が深すぎる上に流血がとまらねぇ!」


どうやら冒険者側に魔術使い、しかも水属性の派生魔法である治癒魔術の使い手がいたようだ。グレンに近づき回復を行う。だがおそらくまだ覚えたてなのだろう。これほどの大怪我には対応できないようだ。


そもそも平均レベルが90前後の冒険者たちだ。この魔術師もスキルポイントを魔術に全振りしていたわけではないのだろう(そもそもそんなことをしたら、あまりにも体捌きや移動速度が遅すぎてまともに戦えなくなってしまう)。何とか派生魔法を覚えられるようになって治癒魔術を覚えたのであろうが、基礎となる魔術のスキルポイントも治癒魔術の熟練度も足りないのではこの怪我を治せないのもしょうがないといえる。


しかし貴明にそんなことを考えている余裕などなかった。覚悟を決めるといいながら敵と戦うことに臆して、グレンが斬られるときに動けなかった先ほどの自分のふがいなさ。大怪我をしても俺を責めることなく笑って見せたグレンへの申し訳なさ。そして気まぐれともいえるほどどうでもいい理由でグレンを斬ったあの元近衛隊長の男への激しい怒り。さらにはそれでもなお戦いに積極的に関与することを拒む今の自分の無様さ。それらに支配されて貴明は動くことができずにいた。


しかし、次に聞こえてきた言葉が、そんな貴明を突き動かす。


「ごちゃごちゃうるせぇんだよテメェら!どうせ大した価値もねぇ安っぽい命の一つや二つでガタガタ騒いでんじゃねぇ!」


元隊長のそんなセリフが耳に入った瞬間











「ふざけてんじゃねぇぞてめぇらぁぁああぁ!!!」






理性を覆い尽くしてなお余りある衝動が貴明を突き動かした。


ようやく現れた現地人はかわいい女の子!ではなく男だらけの盗賊たちでした(笑)次回は戦闘回となります。しかしキャラクターがうまく動いてくれない…。

誤字脱字、感想等ありましたらお願いします。

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