表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/26

トパス近郊遭遇戦 対面

第1話以来の長さかも。

「こいつぁひでぇ……」


 部隊編成を終え、森林を探索する全小隊は件の現場を確認しに来たのだが、その場の光景を見たグレンが小さく呻いた。周りを見ると、一般兵のみならず分隊長クラスの指揮官の中にも顔をしかめ目を背けている者がいる。


 すでに偵察班の者から現場の報告を受けているとはいえやはり生の情報が欲しい、ということで捜索隊全員で確認に来たのだが、確かにこの場の惨状は凄惨の一言に尽きた。


 視界に入る範囲全域に転がる魔獣の死骸。大半はジャイアントラットだが、中にはヤングコボルトやダイアウルフのそれも目に入る。情報にあった通りだ。


「呻いてばかりもいられんな。とにかく探索を始めよう。各隊は既定のルート通りに探索を行い、何か発見した場合は合図を送れ。中佐殿、そろそろ出発しましょう」


 ガリソンがほかの小隊長に指示をだし、貴明に出発を促す。しかし貴明ら冒険者組は難しい顔をして周囲の観察を続けておりなかなか動きだそうとしない。


「貴明さん、これは……」


「やっぱりユリウスも気になるか」


「ええ、あまりにも不自然です。ガストンとジョウがハンター経験者でしたから、あいつらなら何かわかるかも……」


 その様子を見たガリソンは、何か不審な点があるのかと出発を取りやめ貴明に説明を求めた。


「どうしました、何か気になる点がありましたか?」


「ええ。この現場に残ってる攻撃の跡や足跡、それに死骸を確認したんですが、どうも様子がおかしいんです」


 貴明たちはここに到着してからまず最初に、この惨状を引き起こしたと思われる大型魔獣の足跡を探した。貴明とともに今回の依頼に参加した仲間の中に狩人ハンターの経験者がいたため、彼らがいればその足跡を追って容易に追跡ができるほか、足跡の種類で相手の種族がおおよそ予想できるからだ。


 死骸の体に刻み込まれた傷跡から、対象はかなりの巨体で鋭い爪、そして牙をもつことは推測できた。また多くの足跡の中に一種類だけ大きなものが確認されたため、おそらくはこの足跡の主こそこの状況を作り出したものだろう、と貴明たちは予測を立てた。


 しかしいくら調べても、大型魔獣がこの場を離れた跡を確認できなかったのだ。それこそこの場から地に足をつけずに立ち去ったとでも言わんばかりに。これがここに来た時の足跡もなければ飛行型魔獣の線もあったのだが、あいにくそちらはすでに発見済みである。


「なるほど。つまり仮にこの場を去ったのだとしたらあるべき足跡がなく、仮にこの場で死んだのだとしたらあるべき巨大な死骸がない、ということですな」


 仮にこの現場を調べたのがガルーダ軍の中でも魔獣関連の仕事が多い部隊の者であれば、貴明たちが指摘したことにも自発的に気づいたことだろう。しかし今回は対人戦闘が主任務で魔獣捜索の分野に疎い帝都守備隊だったため、指摘されるまでそのことに気が付くことができなかったのだ。実はそちらの面の強化訓練も今回の任務は兼ねられていたりする。


「貴明さん、ユリウス。調べてみたけどやっぱり去る時の足跡が見つからない。それとこっちのほうはかなり重要なんだが、この巨大な足跡の主、ダイアウルフとみてほぼ間違いないぞ」


「ダイアウルフだと!?」


 現場を調べ終わったジョウの言葉を聞いたガリソンが驚愕する。ほかの小隊長に至っては口を大きく開けて硬直していた。貴明たちはおそらくそうじゃないか、と予想していたためそこまで衝撃はなかったが、だからと言ってすんなりと信じられるものでもなかった。


「だけどダイアウルフにしてはいくらなんでも大きすぎる。ほかの獣型魔獣の可能性はないのか?」


 ユリウスの問いに対してジョウは首を横に振る。代わりにジョウの横に来たガストンが答えた。


「調べた限りだとその可能性はないな。このサイズとなると、獣系だとキングライガーやサーベルタイガー、シルバーウルフなどが挙げられるが、どれも足の形、爪の長さや数が一致しない。それにこれは魔獣に限った話じゃないが、歩き方というのは種族によってさまざまな癖があるんだ。足跡や周りの状況を調べるとそれがわかるんだが、ダイアウルフのそれと全く同じ癖をしている。ここまで来るとダイアウルフの突然変異種でも現れたんじゃないか、って思うぞ」


「気になるのはほかにもある。周囲の倒された木々の様子からこの場で風系統の魔術が使われたのはほぼ間違いないんだが、風魔術で死んだと思われる死骸が一つしか見つからなかった」


「一つ?報告では少数ながら複数体だと聞いていましたが?」


 当初の報告と異なる発言に近くにいたカーラが質問する。


「まず間違いないと思いますよ。確かに魔術の攻撃を受けた死骸ならいくつかありましたが、ほとんど急所から外れてます。これは完全に憶測なんすけど、その一体を攻撃する余波に巻き込まれた、ってとこだと思います」


「ちなみにその一体の種族は?」


「ダイアウルフです」


 その場にいる者すべてが押し黙る中、ジョウとガストンの声だけがその場に響いた。




 あまりにも状況が不透明過ぎるため、一度本隊のコーウェンに現在わかっていることを伝令に報告させに行き、貴明たちは改めて探索の方針を考えることにした。伝令が返ってくるまで各小隊の兵士たちは分隊規模で周辺の警戒、護衛を行い、各隊の隊長、副隊長、冒険者は状況の整理、ということになった。


「さて。我々が手に入れた情報は増えたが、状況はより複雑化した。新たに分かった情報も踏まえ、どのように探索を進めるべきか方針を固めよう」


 探索を行う小隊の現場指揮官を任されているガリソンが切り出した。とはいえその質問は、対魔獣戦闘や森林探索が専門ではない同僚たちよりもおもに貴明たちに対して向けられた。


「本隊からの指示が来るまでははっきりしたことは決められませんが、可能なら分散行動は控えたほうがよいかもしれません。先ほどジョウたちが出した報告の内容からして、とてもではありませんが今回の件が自然発生した事態とは思えません。おそらく第三者の関与があると思われます。もし我々と敵対する者の意思によって今回の件が引き起こされたのだとしたら、最悪の場合こちらは各個撃破されてしまう恐れがあります」


「俺も貴明の旦那に賛成でさ。20年以上冒険者として生きてきやしたが、こんなこと一度たりとも起こったこたぁねぇんです。それが俺らの進軍中に俺らの進軍経路でたまたま起きた、なんて考えるのはさすがに無理がありすぎる。どこの誰かはしらねぇが、こっちに対して何か思うところのあるやつが絡んでる、と思って動いたほうが賢明でしょうな」


 貴明とグレンがそれぞれ意見を述べると、隊長の一人が発言を求めた。


「私は当初の予定通りで問題ないと思う。我らに害なす存在の可能性は私とて感じているが、こちらが守勢に入ると尻尾を見せない恐れがある。ここはあえて分散して動き、どこか一つの隊に敵が食らいついた後、再集合してこれを捕縛、もしくは殲滅したほうがよくはないだろうか」


「待ってください。すでに第三者の存在が確実という前提で話が動いていますが、あくまでその可能性がある、という段階です。いきなり決めつけては視野を狭める恐れがあるのでは?」


「しかし状況が不自然にすぎるのもまた確かだろう。我々の主目的はあくまでアルザスでの任務だ。ここで無用な被害を出すべきではないぞ」


「いや、だからこそここで時間をかけるべきではないだろう。まだ正確な情報はほとんどないのだ。ここで必要以上に安全策をとって時間を浪費するのはよくないぞ」


 貴明とグレンの発言を皮切りに次々と意見が出されるが、どれも情報が不十分なためガリソンも決定を下せずにいる。しかしそこに本隊へ送った伝令が帰ってきたのだが、その返答が「現場の判断に任せる」であったため、いよいよどう動くか決めねばならなくなった。


「よし、いろいろ意見が出たがそろそろ動かねばなるまい。当初我らは各小隊ごと8つに分かれて行動する予定であったが、今より1部隊につき2個小隊の4部隊で探索を始める。理由は森林地帯ではあまり大人数で動いても連携が取りづらいため、ある程度分散しないと索敵の効率が悪いためだ。何かしら発見した場合の対処は当初と同様でいく。何か質問はあるか?なければ出発だ」


 ガリソンの指示を受けて各隊の隊長が部隊の再編を行う。貴明がいるガリソン小隊はグレンの隊と合同で動くこととなった。隊長同士で出発前に軽く打ち合わせを行うということで、目下暇になった貴明のもとにグレンがやってくる。


「どうにも嫌な予感が拭いきれませんなぁ。何事もなく終わりゃいいんですが」


「まったくだ。だけどこんなところで時間を潰すわけにもいかないしな。さっさと終わらせるためにも気合入れていくぞ」


「了解でさ!」







「とは言ったものの、そう簡単には見つからないか……」


 探索を初めて早一時間。野営地に大隊が到着したのが昼の2時過ぎで、実際に探索を始めたのがおおよそ3時半といったところである。今は6月の頭、もはや冬は終わり日の出ている時間はそれなりに長くなったのだが、それでも森の中は日が当たらず薄暗い。あと1時間もすれば明かりなしで歩き回るのは難しくなるだろう。


「中佐殿、何か気になることでも?」


 貴明の呟き (愚痴?)が聞こえたカーラが、何か発見したのかと貴明へと問いかける。


「いえ、ただの独り言です。しかし急がなければそろそろ探索が難しくなりますね」


 空を仰ぎ見ながら答える貴明。その視線の先には、鬱蒼うっそうというほどではないにしろ光を遮るには十分な枝葉が生い茂っていた。


「確かにそうですね。ここにウォーランドの山岳連隊や4軍がいればまだ状況は違ったのかもしれませんが……」


 カーラが挙げた部隊は、帝国南部のウォーランド連山を管轄区とする山岳、森林戦を専門とするウォーランド方面軍山岳連隊と、帝都の真上に広がるグスタフ大森林からノール以南の国土防衛を任務とするガルーダ帝国軍第4軍団のことである。共に平野での対人会戦ではなく、森林もしくは山岳地帯での対魔獣戦闘が得意な部隊として軍部では有名な部隊である。


「そりゃ無理っすよ副長。4軍はグスタフから南下してくる魔獣の群れから帝都を守る盾ですし、ウォーランドの奴らだとアルザスでの任務に対応できねぇっすもん」


「それに今回の任務は皇帝陛下直々に我ら帝都守備隊へと下された任務です。ただでさえ我々の師団長はほかの高級将校と距離を置いているんですから、そう簡単に頼むこともできないでしょう」


 周囲に気を配りながらも貴明とカーラの話を聞いていたフランツとクーガーが会話に参加してくる。当然彼らと同様に聞いていたガリソンは、クーガーの言葉に若干の苦みを含ませながら口をはさんだ。


「別にバークレイ大将軍閣下は面子のために他の部隊への要請を行わなかったわけではない。先頃発覚した上級官僚、上級将校たちの反逆未遂に伴い行われた粛清の余波で、各部隊の再編が滞っており増援を回す余裕がないために閣下がご自重なさっただけだ。上層部が一枚岩でないかのような発言は控えよ」


「っ!失礼しました!」


 クーガーが己の失言を悟り慌てる。確かに一時的に軍属となっているとはいえ、もとは外部の人間である貴明へと話していいような話題でもない。


「ははー!怒られてやがんのこいつ!」


「お前も無意味に煽るな!」


ゴヅッ!


「ごふっ!?た、たいちょー、今頭からめちゃくちゃ嫌な音がしたんすけど……」


「自業自得だ」


「あたまへこんでない?」とカーラのもとへ行ったフランツの頭を、カーラが苦笑しながら撫でるのを見ながら、先ほどのクーガーの言葉に若干の興味を持った貴明は聞いてよいものかと若干気にしながらもガリソンに質問した。


「話を蒸し返すようで恐縮なのですが、バークレイ大将軍とは?帝都守備隊の総司令官殿ですか?通常師団クラスの部隊司令官は上将軍が着任するものだと聞いているのですが」


 帝都守備隊は500人編成の大隊が10個部隊、計5000人で構成される師団規模の部隊だ。通常、大隊なら大佐、連隊なら準将軍、旅団なら将軍、師団なら上将軍、軍団なら大将軍といったように指揮官が割り当てられるのだが、なぜ大将軍でありながら一つ規模の小さい部隊の司令官に就いているのか少し気になった貴明である。


「確かに普通はそうですな。ですが我ら帝都守備隊は国軍の中でも最精鋭に分類され、他の部隊とは指揮系統も異なる少々特殊な部隊なのです。ですので規模は師団ですが扱いは軍団相当となっており、師団長も大将軍であられるバークレイ閣下が着任なさっておられます」


「でもそのせいでほかの部隊との連携が取りづらいとか、あの部隊はよその隊を見下してるーとか、陰でいろいろ言われてんすよねー」


「また沈みたいのか?」


 復活したフランツがまた余計なことを言ったため、青筋を浮かべたガリソンが再びこぶしを握り締める。しかしそれを振り下ろす直前に、小隊の索敵班が発動させていたディテクションに不審な魔獣が引っ掛かったとの報告があった。


「個体数は一つのみです。種族は不明ですが反応から見て大型であることは間違いありません。距離800、こちらの魔術に反応した模様で現在こちらに向かっております!」


「ご苦労。総員停止!第一偵察班は魔獣に接近し詳細を調べよ。ただし可能な限り交戦は避けろ。残りの者はここで接敵に備える。この魔獣が我々の探していたものかはわからんが、とにかく不意打ちを受けぬよう警戒せよ!」


「伝令兵!この魔獣がくだんのそれと同一であった場合に備え、本隊と各小隊への合図の準備をしておけ!」


 ガリソンとグレンのほうの小隊長であるラルフ少佐の指示が飛ぶ。それに素早く反応し防御陣形を取る味方の中、貴明とグレンはガリソンに呼ばれ彼のもとへと向かった。


「お二人には偵察班に同行して魔獣の詳細を調べていただきたい。あなた方がいれば余計な問題を起こす危険性が減るでしょうから」


「承知しました。ついてゆくのは俺たち二人だけですか?」


「いえ、それぞれ専属の副官と所属小隊から護衛を2名ずつ連れて行ってもらいます。人選は副官にでも決めさせてください」


「わかりました。急ごうグレン!」


「へい!」


 カーラに頼んで適当な者を護衛として選んでもらい、グレンの一行とともに第一偵察班に合流する。班は5名で構成されており、班長に話を聞いたところ魔獣との距離は750メートル、接近しては来ているもののそこまで移動速度は速くないとのことだった。


「いきなり正面から対面するのは避けたい。いったん魔獣の進路上から外れて側面からアプローチをかけましょう」


 班長の言葉に従い魔獣が通過すると思われるルートの側面に移動する。小隊から約500メートルの地点で待ち受けることにした。


 斥候任務を主としている班のため、冒険者の貴明らと変わらぬほどに隠密行動は得意らしく、見事に茂みに紛れて息を殺し対象が来るのを待った。


「……そろそろ来るな。サーチとスキャンの用意だ」


『……了解』


 班長が指示を出す。『スキャン』とは無属性スキルの中で『サーチ』や『ディテクション』と同じく探知型に分類されるスキルだが、サーチに比べより対魔獣に特化したスキルだ。相手の種族名や主な攻撃手段、使える魔術属性がわかる優れものだが、熟練度が上がればある程度物を透視して対象の存在や情報を得られるサーチと違い、直接黙視しなければ効力がないという欠点がある。加えてサーチの熟練度をかなり上げなくては習得できない上級スキルのため、覚えている者はあまり多くない。


 すでに足音がはっきり聞こえるほどに件の魔獣は接近してきている。その巨体を無理やり進めているためか、しきりに木々と体が擦れあうような音も聞こえてきた。おそらくもう50メートルも離れていないだろう。


 暗いためまだその姿を見ることはできないが、すでに十分サーチが効力を発揮する距離である。貴明とグレンもサーチを発動させようとした、その瞬間。




『グラァァァァァ!』


「っ!?伏せろ!」


 雄叫びが轟き、貴明が叫んだ瞬間、第一偵察班が潜んでいた周辺に強烈な衝撃波が襲い掛かった。







「何事か!」


「わかりませんが、偵察班が向かった方向から魔獣のものと思われる叫び声がした瞬間、爆発らしき現象が起こったものと思われます!索敵班の行為ではありません!」


「距離はここから500前後と思われます!全員で中佐たちの援護に向かいますか?」


 後方で待機していたガリソンらの元にもその衝撃は届いていた。魔獣との接敵に備え防御陣形をとっていたのが幸いし負傷者は一人もいなかったが、この地点ですら体が倒れそうになるような衝撃が起こったのだ。より近くにいる貴明たちがどうなったのか、最悪の可能性を考慮する必要もある。


「いや、今全員で向かうのは危険だ。第二偵察班を向かわせろ、ただし魔獣の確認ではなく、先行部隊の生存確認を優先しろ。それから本隊及び残りの探索隊に合図、そして伝令を送れ。我々の想定以上の事態が起きた、十分警戒するよう伝えよ!」


「我々はどうする?」


 もう一つの小隊を率いるラルフ少佐が聞いた。階級は同じだが現在2個小隊の指揮権を持っているのはガリソンだからだ。


「我がガリソン小隊は第二偵察班の後方につき現場に向かう。ラルフ小隊はこの場に陣を敷き、後続の部隊が集合するのをサポートしてくれ」


「心得た」


 短く答え部下に指示を出しに向かうラルフから視線を剥がし、ガリソンは爆発が起きたと思われる方向をにらみつける。


「我が隊の者がそう簡単に斃れるとは思えんが……」


 それでも先ほどの衝撃は尋常ではなかった。万が一の可能性もある。


「中佐殿、もしご無事なら彼らのことを頼みます……!」







「ごほっ、ごほっ!くそっ、みんな無事か!?」


「痛っ!……ええ、こちらは無事です!」


「おれのほうも何とかみんな無事でさ!」


 爆発の衝撃により土煙が立ち込める中、貴明の声に反応し次々に無事を知らせる声が返ってくる。多少の負傷者は出たようだが、何とか全員無事だったようだ。


「しっかし、今のはいったいなんだってンだ!?貴明の旦那が反応してなかったら全員今頃死んでたぞ!」


 グレンが頭を押さえながら叫んだ。爆発の衝撃で頭を揺さぶられたようだ。


「いや、そうでもないさ。もしこいつがなかったらほんとに今頃死人が出てたよ」


 貴明はグレンの言葉を否定し、首にかけていたネックレスを服の上から握りしめた。それはかつてサーシャから渡された、彼女の家に伝わるお守りの宝石であった。


 先ほどの爆発の際、貴明はほかの者よりも早く異常に気づき、偵察班の前に躍り出て彼ら全員を覆う障壁を発動させようとしたが、衝撃波のほうが一瞬早く貴明に襲い掛かった。しかしサーシャがくれたお守りが発動したため、何とかキャンセルされず発動することができたのである。


 かつてギュイーズ邸を襲撃する際に渡された後、いったん彼女に返されたそのエメラルドのお守りは、ノールの職人の手によりネックレスへと姿を変え再び貴明を守ったのである。




「お嬢にも帰ったら礼を言わんとならねぇな。それで旦那、これからどうしやす?やっこさんが来たみたいですぜ」


 グレンのセリフに全員の視線が衝撃波が来たほうへと向けられる。土煙も収まりつつあり、魔獣の姿もだんだんはっきり見えるようになってきた。


「カーラ大尉、この場の指揮は俺がとっても?」


「かまいません。どうぞご存分に」


 ちらりと後ろを振り向きカーラに確認を取る。本来指揮権を与えられていない貴明だが、この場を乗り切るには彼に任せるのが一番いいとカーラは考え、この場を貴明に委ねることにした。


 その返事を聞き今度こそしっかりと魔獣を見据える貴明。すでにサーチとスキャンの併用でその正体をつかんでいたが、あまりにも貴明の知るものとは乖離かいりしたその姿をにらみつける。


「ばかな。こいつは……」


 グレンについてきた副官が呻く。その言葉を引き継いだカーラが、魔獣の巨体を見つめ驚嘆の声を上げた。


「まさか、ランドリザードなの!?」


登場人物の名前ですが、すでに使ったことのある名前を忘れてまた使う、というミスを何度か書いてる最中にやらかしてたりします。見切り発車で書き始めるからこうなるのさ!


……設定集今作ってる最中なんで、並行して整理せねば。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ