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トパス近郊遭遇戦 状況確認

今回は短いです。荒いです。ごめんなさいです

 貴明がテントに入り待つこと数分。すべての隊長格、および冒険者がコーウェンの指揮テントに集結した。伝令からすでに事態は伝えられているのか、皆深刻そうな顔色をしている。


 全員が集まったことを確認すると、コーウェンは立ち上がり会議を開始した。


「皆ご苦労、冒険者諸君も急に呼び出して申し訳ない。これより定例報告会を中止し、対魔獣の緊急会議を執り行う。各員すでに伝令から伝えられていると思うが、今一度状況を確認しよう。副指令」


「はっ」


 副指令と呼ばれた男がテントの奥、面々から見た正面に立ち、偵察隊からあげられた情報を伝える。


「現在我々が野営しているこのトパス軍営地、その西に広がる森の入り口付近で、ジャイアントラット、ヤングコボルト、ダイアウルフなど低級魔獣の死骸が大量に発見された。調べた結果、死因は傷あとなどから大型魔獣に襲われたものと推測される。また、近辺に風属性魔術を使った痕跡があることから当魔獣は魔術が使えるBランク以上であると考えられる。大型魔獣の数、並びになぜ大量の魔獣が森の入り口に集まっていたかは現在調査中であり、今現在は第2、第3偵察隊が周囲の警戒に当たっている。以上だ」


 副指令が自分の席に戻ると、コーウェンが貴明たち冒険者組へと視線を向ける。


「と、いう状況だ。冒険者諸君に問うが、この近辺に生息する魔獣の中に該当する存在は何がある?」


「申し訳ありませんが、僕たちが把握している中であてはまる魔獣はこの周辺には存在しません。そもそも魔術が使える大型魔獣なんて、このガルーダでは北のグスタフ大森林とエル山脈、南のウォーランド連山にしか生息していないはずです。トパスの位置を考えても、そのいずれかから誰にも気づかれずにやってきたとは考えづらいかと」


「ついでに言やぁ、風属性魔術を使う大型魔獣なんてガルーダ周辺にはいませんぜ。おれらが知っているのだと、せいぜい大陸当方の紅玉海に生息するシーサーペント・アーサーかダイオン帝国内にいるワイバーン、エルナード王国南方のウィンドドラゴン。あとはガリア砂漠のサンドバードあたりが有名かと」


 ユリウスとグレンが質問に答える。風属性の魔獣は基本的に鳥型、小動物型の魔獣が多く、大型となるとグレンがあげたような有名どころしかいない。


「風魔法が使える魔獣使い(ビーストテイマー)の仕業、という可能性は?」


 部隊長の1人が質問するが、ユリウスがそれを否定する。


「その可能性はありません。ご存じとは思いますが、魔獣は危険な存在であるため軍属以外のすべての魔獣使いは冒険者ギルドへの加盟が義務付けられています。しかし現在このリベラ大陸に存在する民間の魔獣使いはたったの8人。そのすべてがガルーダ国外で活動中です。全員魔術が使える、もしくは使えるようになったという話は聞きませんし、仮に未登録の魔獣使いがいてもすぐに噂は広まります」


「ちなみに風魔術が使える別個体が一緒に行動している、というのも考えにくいっすねぇ。魔獣ってのはよほど強力な、それこそ高レベル特殊魔獣ユニークモンスターなどが率いない限り別種族で行動するこたぁねぇんです。もしそんなやつがいたなら、そもそもジャイアントラットたちだって群れに加わってるでしょうな」


 どれだけ考えても正体がわからない。せいぜい可能性としてはワイバーンやウィンドドラゴンが住処を変えてガルーダまで来た、ということがあり得るが、それもどこか違和感がある。


 誰も具体的な答えを出せず黙り込んでいる中、今まで言葉を発していなかった貴明が手を挙げた。


「あくまで可能性の話ですが、1つだけ該当するものがあります。『キメラ』です」


 皆が驚愕した面持ちで貴明の顔を見る。


「『キメラ』だと!?馬鹿な、そのようなものもはやこの大陸には存在しないぞ」


「左様。千年以上前に、そのあまりの強さと製造したものにすら制御できぬ凶暴さゆえに製造が禁止され、今では研究すらも行ってはならぬと各国の間で取り決めがなされておる。そもそも今となっては完全にその製法は失われているのだぞ?」


 軍の参謀たちが口をそろえて貴明の考えを否定する。さすがのユリウスたちも驚きを隠せないのか呆然としているが、それも当然の反応だった。


 このリベラ大陸ではその昔、国家間の戦争に自分たちの都合の良いように改造した魔獣『キメラ』を投入した時期があった。しかし、ただでさえ強力かつ凶暴な魔獣に別の魔獣を秘術によって結合した結果、より凶悪でより手の付けられない魔獣が多数生まれる事態が発生。最終的に各国は戦争どころではなく、自らが生み出したキメラの掃討に尽力する羽目になり、結果その影響でいくつもの国が国力を低下させ他国による侵略を招くことになった。


 そのことから当時存在した各国の王たちは、この先大陸にどのような国家が生まれようとも決してキメラの製造だけは行ってはならぬという、大陸で唯一の共通法ともいえる取り決めを行った。その取り決めは今でも有効であり、今となっては製法は完全に歴史の闇に消えたといわれている。


 今では大陸に存在するキメラはすべて駆逐されたといわれており、地域によっては聖域に住まう神々によって聖域に隔離、保護された、という伝承が残っているくらいだ。


 貴明もキメラはFOEでしか見たことはなく、どれも聖域にしか生息していなかったことと、キメラの設定で先ほどの大陸の歴史を知っていたため、当初この世界にキメラは存在しないと考えていた。


 しかし現状貴明が知る魔獣の中で条件に当てはまるものといえば、グレンが列挙したものを除けばキメラをはじめとする聖域の魔獣しか存在しないのだ。だが常識的にありえないということは貴明も理解していたため、自らの意見に固執しなかった。


 結局どれだけ話しても目星がつけられそうにないため、コーウェンは行動に移すことを宣言する。


「魔獣の正体は掴めんままだが、このまま放置するわけにもいかん。藪をつついた結果蛇どころかドラゴンが出てくる可能性も否定はできんが、正体不明の魔獣が町の近辺にいるとなるとトパスの住人にも影響が出る。冒険者付きの小隊は森林探索用装備を身に着け出撃体制に入れ。これより15分後に森の入り口に集合だ。アルザスでの活動の予行演習と心得よ。ほかの隊は応援要請があった時に備え中隊規模で出撃に備える。わかったな?」


『了解!!』


 すべての参謀、部隊長が起立して敬礼する。貴明たちもそれに倣い、各々が配属された小隊指揮官とともに部隊のもとへと向かった。




「貴明殿、少し良いか?」


 ガリソンとともに戻る途中、貴明はコーウェンに呼び止められた。ガリソンは先に小隊と合流する旨を貴明に伝えると、コーウェンに敬礼し去って行った。


「忙しいときにすまぬ。先ほどの貴明殿の意見が気になってな。なぜキメラの可能性をあの場で指摘した?」


 確かに大型魔獣で風魔術が使える、という条件だけで考えればキメラも当てはまる。しかしこれは、例えば日本の都市部に近い山の中に大きな動物がいるという場合に、恐竜の恐れがあるというようなものだ。それがわかっていながらなぜ貴明があの場でキメラを話題に出したのか、そこがコーウェンの気になる点だった。


「いえ、大した理由があったわけではないのですがね。先日皇帝陛下と会談した際、陛下が仰られた内容に『とある国が魔獣を操作している節がある』というものがあったんです。それでふと、もしかしたらと思って言っただけだったのですが。あの場でいうべきではありませんでしたね」


 貴明は少し恥ずかしそうに答えた。貴明自身、可能性としてはほぼあり得ないと考えていたためだ。


 しかしコーウェンは貴明の答えを聞いても笑うことなく、むしろ深刻そうに顔をしかめた。


「いや、むしろ小官もその話を陛下から伺った際同じことを考えたのだ。もしかしたら連合なりバルカンなり、古のキメラ製造技法を発掘、研究したのではないかとな」


「コーウェン隊長もですか!?」


 これには貴明が驚いた。はっきり言って自分でも荒唐無稽な話だと思っていたことを、国軍のエリート部隊の隊長も考えるなど思いもしなかった。


「あり得ぬ、とは思っていたがな。しかし『Sクラスを退ける魔獣』、そして『それを操る存在』となると、真っ先に伝承に残っているキメラの存在が頭をよぎってな。しかし少なくとも今ここにいる魔獣はキメラではないと思うぞ。ただの直感だがな。ただ」


 といったん言葉をきり、「いろんな意味で面倒な『何か』がある気はする」と、そういってコーウェンは去って行った。


 貴明も小隊と合流すべく移動を再開しつつも、先ほどのコーウェンの言葉がどうにも気になっていた。




話の進行が亀のように遅い……。少々予定を変更していろいろ省きながらサクサク行くべきか。少なくとも1話の長さはもう少し長くしたいなぁ。

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