事実確認
久々すぎる投稿、みなさんお待たせしてすみません!いろいろありましたが無事単位もすべて取得できました。パソコンも再び利用できる環境になりましたので、今後も更新を途切れさせないように頑張ります!
「と、いうわけで2か月ほど遠出することになりました」
「……どうして敬語なんですか兄さん?」
ギルドを後にした貴明一行は昼食をとりにいったん宿へと戻ってきていた。貴明たちの帰りを待っていたガリウスらと合流し、そのまま宿の食堂へと移動、ギルドで行われた会話の内容を説明していた。
とはいえ今回の依頼は1国家からの機密任務である。ヨハンからもガリウス以外には伝えぬよう指示が出ているため、フィーネたちへと伝えた内容は『ガルーダ西方アルザスのマンドラン辺境伯領にて確認された魔獣の群れの、国軍・アルザス軍と共同での討伐任務』となり、公国連合の動きや情報収集に関しては伏せることとなった。
「帝都守備隊っていえば国軍のエリート、国家防衛の要じゃないですか!そんな人たちの作戦に呼ばれるなんて皆さんすごいです!」
アッシュがそういうとほかの子供たちもうんうんとうなずく。帝都に住まう人々にとって帝都守備隊は近衛騎士団や親衛隊に匹敵する精鋭集団であり、敵国に攻め込まれた時の最後の砦と位置付けられている。彼らのような部隊が行う任務に応援として呼ばれることは、冒険者や傭兵の中では一種の名誉とされているのだ。
「でも少し変じゃないかしら?エル山脈といえば確かに強力な魔獣が多数生息しているから、軍が応援に行くのもわかります。でもこういった場合って、ふつうは騎士団が動くものだと思うのだけど」
「わたしもそう思います。それに今回派遣される帝都守備隊の規模は500人、1個大隊相当です。これだけの規模の応援が出るのに、冒険者ギルドへの人員派遣要請がたったの8人だけっていうのは…。何かおかしくないですか?」
フィーネとサーシャが疑問を投げかけた。ガルーダが保有する常備国軍 (騎士団や近衛、親衛隊、宮廷魔術師隊は除く)はおよそ16万人。これは近隣国家と比較すればかなりの規模であるのだが、そのうち件の帝都守備隊は5千人、この世界の軍では1個師団にあたる。
その中から1個大隊を派遣し、現地の辺境伯軍との合同作戦に冒険者を同行させるにしても、たったの8人だけ、というのは確かに違和感を感じる。
「その辺に関しては詳しく聞いてないけど、どうやら俺たちに求められてるのは単純な戦闘能力じゃなくて冒険者としての知識や技能らしい。つまりはオブザーバーとしての助っ人かな」
「……おぶざーばーってなに?」
貴明の答えにイリスは首をかしげる。ほかにもわかってなさそうな子が何人かいたため、ユリウスが「意見参考人って意味だよ」と付け加えた。
「要は魔獣の討伐そのものは軍が行うが、魔獣に関する知識を現役の高ランク冒険者から聞きつつ捜索や戦闘にあたろう、ということだろう。領内に入った魔獣の捜索をある程度分散して行うのだとしたら8人という人数にも納得できる」
今まで黙っていたガリウスがそうまとめた。ガリウスも今回の依頼の裏にある狙いに関してはある程度知っているのだが、自らが直接かかわるわけではないのであまり口を挟まない。
「騎士団と違って国軍は対人戦闘がメインで、魔獣との戦いは都市の近辺にいる奴としか経験がないからね。今回の討伐対象はエル山脈から下ってきた魔獣みたいだから俺たち冒険者にお鉢が回ったんだろう。騎士団だって別に対魔獣戦が専門、ってわけじゃないしね」
と、ユリウスがいったん話をまとめた後、「ところで」と切り出す。
「今回僕たちが向かうことになるアルザス地方、御領主はマンドラン辺境伯だけど、いったいどういう人なんだろうね?僕も帝都を拠点に動いてるからある程度貴族の話は耳に入ってくるのに、マンドラン卿の情報は全く聞いたことがないよ」
そういいながらガリウスへと視線を送る。この世界へきて間もない貴明がユリウスより貴族について詳しいはずもなく、グレンやサーシャをはじめとした他のものもユリウスほど情報に明るくない。となると必然的に質問の対象はガリウスとなる。
「あくまでギルドマスターからの又聞きの情報だが、数年前にマンドラン辺境伯は家督を娘へと継承したらしい。あの領地は連合と国境を接し、エル山脈からも強力な魔獣が現れるせいで代々私設軍が強いことで有名なんだが、ブラックオーガが領内に現れた時重傷を負ってしまったゆえの継承だそうだ。継承の儀を皇宮で執り行う時に一度ノールへ来た以来、一度も領地から出たことはないんだそうだ」
「ブラックオーガといえばレベル150の大物だな。普通なら皇帝親衛隊が出動してもおかしくない敵だ。それを辺境伯軍だけで討伐したのか?」
ブラックオーガと聞き貴明は内心驚く。貴明からすれば容易に倒せる敵ではあるが、この世界の人々からすれば十分脅威といえる難敵だ。
「ああ。帝都ノールからアルザスは距離がありすぎる。早馬が届いてから急いで応援に向かったがその時には多くの犠牲を出しながらも討伐に成功していたらしい。俺たち冒険者も緊急動員がかけられたんだが、俺はその時依頼でヴェルディアへと向かっていて参加できなかったんだ」
「あぁ、そういえばそんなこともありやしたな。おれは当時レベルが低すぎたため召集対象に入ってませんでしたが」
グレンが思い出すように相づちをうつ。
「それだけ戦闘が多い領地なら財政は大変なんじゃないか?魔獣の襲撃を考えると作物は大規模に生産できないし放牧も難しい。それに軍の増強や城壁等の修繕だってあるだろう。何かしら有力な産業でもあるのか?」
気になった点を質問する。
「いや、目立った収入源はない領地だったはずだ。せいぜいが高レベル魔獣の素材くらいか。というかそれくらいしかないな。鉱物資源や岩塩はなし、海に面していないから海産物もなしだ。隣接しているのが緊張状態のランバールだから交易もそこまで活発だという話は聞かないな」
やっぱり財政難なのか?と貴明が考えたところで、「そういえば……」とグレン。
「アルザスの財政に関してですが、財政難を訴えたマンドラン辺境伯に対して皇宮が一定の援助を決定した、みたいな話がありやせんでしたかね?」
グレンの問いにガリウスは渋い顔で答える。
「一応ありはしたんだがな。例の一件のあと、現皇帝陛下はアルザス近郊の皇帝直轄地に緊急事態の際、即応できる精鋭部隊を配置することを決定したんだ。しかし派遣された国軍が例のギュイーズの企みに加担していた第3騎士団とつながりがあった連中だったため、つい最近までまったく機能してなかったらしい。しかもそこの連中が皇宮からの支援金を横領していたためほとんどマンドラン辺境伯の手にはわたってなかったようだ。今回の帝都守備隊の派遣は、お膝元の部隊を動かすことで辺境伯に皇宮が本気であることを示す意味もあるんじゃないか?」
結局この件の話はここで終わり、貴明たちはそれぞれ依頼を受けたり遠征の準備をしたりといったん解散となった。
特に準備するものがない (アイテム欄にだいたい必要なものは入っているため)貴明は、しばらく面倒を見れなくなる子供たちの訓練につきあいながらも、先ほどのガリウスの話を思い返していた。
(ヨハンさんは今回の件、ランバール公国連合のことにしか触れてなかったけど、案外他にも目的がありそうだな。それこそ、俺たちへの密命を隠れ蓑にした他の目的が。ヨハンさんが隠す理由もないし、となると黙っているのは皇帝のほうか)
ナユタが訓練場所の森で発見したダイアウルフに攻撃を仕掛けるのを見ながら、貴明は皇帝ビスマルクの思惑を考えていた。
その日の深夜。
「と、いうわけで質問に来ました」
「衛兵は何をやっていた!」
貴明は皇帝の私室でカールと面会していた。アポイントなしで。
「いや、前回は城の中を通ってきたけど今回は面倒だから外壁をよじ登ってきた。駄目だったか?」
「だ、きさっ!……、…………。もうよい。で、何が聞きたいと?」
叫びたいのをこらえ、短時間で立て直したのはさすが一国の主といえる。貴明にソファーを勧め、自らもワインを片手に話を聞く体勢に入る。
「今回あんたが俺たちに依頼した内容についてだよ。あんたの依頼はあくまで旧都市国家残党および連合の動向を内密に調べる、とだけあった。だがあんたの狙いは本当にそうなのか?」
「なんだ、そのようなことか。あくまでお前たちに依頼したいことはそれだけだ、他意はないし、仮にあったとしてもそれは依頼主である余の都合だ。お前たちは与えられた依頼をこなしこちらから報酬を得る。それに納得した上での報酬の引き上げなのだろう?」
貴明が依頼報酬を引き上げたことの報告は届いていたのか、ビスマルクは苦笑いをしながらそう告げる。
「確かにこれが通常の依頼であれば、依頼主の内情にこちらが首を突っ込むのは筋違いだ。だが今回の件はそうじゃないだろう」
はぐらかそうとするビスマルクを貴明は追撃する。
「あんたは名指しで俺たちを、正確には“俺を”指名した。しかも皇帝自らの強制依頼だ。その上依頼の目的地は帝都ですらあまり情報が出回ってない辺境伯領、しかも先の内部蜂起の件に全く無関係ではない者たちがしばらくのさばっていた地ときている。キナ臭すぎるんだよ、この一件。あんたの思惑で政治や国家間の闘争に巻き込まれそうな、利用されそうな気がしてならない」
一気に言い切る貴明。しかし皇帝の表情に変化はない。
「なるほど、ある程度情報は入手したか。ヨハンか、……ガリウスあたりから聞いたか?まあとにかくお前の問いに答えてやろう。『気にしすぎ』だ。確かにこちらの与えた情報に不足があったのは認めるが、お前の思っているほど我が帝国は揺らいではおらん。つい最近お前たちのおかげで不穏分子の排除もできたしな」
そう笑って答えるビスマルクを、再度貴明は問い詰める。
「はたして本当にそうか?この依頼をギルドマスターから伝えられたときに彼はこう言っていたぞ?『本来なら皇家直属の諜報機関が動くが、他にも火種がありそちらまで手が回せない』と。仮にもガルーダのような大国の諜報部が手一杯になる状況ってなんだ?しかも緊迫している隣国の状況確認すら冒険者に依頼しなければならないだと?」
いったん息をつき、ビスマルクの目を見据える。表面上は変わらないが見返すその顔に先ほどまでの楽しげな様子はない。
「ありえないんだよ、そんな状況。あるとしたら『複数の国と同時に戦争している』ときくらいじゃないか?」
その言葉の直後、初めてビスマルクの表情が崩れた。
「……当たらずとも遠からず、というところだ。さすが、というべきかな?」
どこか疲れた顔で話す皇帝に貴明は顔をこわばらせる。
「まさか本当に戦争中なのか?軍に動員令が出た、なんて話は聞いてないぞ」
「別に宣戦布告をされてからが戦争というわけではない、ということさ。今我が帝国はランバール4公国のほかに旧都市国家残党、さらに東のバルカン王国やヴェルディア王国、クロス騎士団領まで手を組み我が国を狙っている状況だ。だが」
そこでビスマルクはワインを一口飲む。
「このような状況さして珍しくもない。こうしてお前に話すことができるくらいには目端の利く商人などは気づいている。しかし問題なのは彼奴らがここにきて一気に活動を活発化させていることなのだ。さながら本格的に戦闘を開始しかねないほどにはな。ゆえに現在我が国の諜報部は主に東方面に力を入れている。しかも今回お前たちに依頼した魔獣の討伐、この件も全くの無関係ではない」
「どういうことだ?アルザスでは珍しくないと聞いているからてっきりただの口実だと思っていたんだが」
「ああそうだ。魔獣が山を下ってくることはさして珍しいことではない。だが近年、その下ってくる魔獣が変化してきたのだ。貴明よ、なぜ魔獣は山を下ると思う?」
貴明に質問する。
「考えられるのは同族同士の縄張り争いに負けた、人里のほうが食料がとりやすい、他に強い個体が山脈に住み着き逃げてきた、……か?」
「おおむね正解だ。どうやらエル山脈に強力な種族、もしくは個体が住み着いたらしい。その結果、今までは確認されていなかったブラックオーガやクリムゾンベアー、キングタイタンまでもが山を下りつつある。どれもSクラス相当の魔獣だ」
「確かに厄介だが、それがこの件とどう繋がる?」
ビスマルクはもう一度ワインを飲むと、静かに答えた。
「……その個体、もしくは種族だが、連合かバルカンか、どちらかが意図的にはなった可能性が高いのだ。しかもある程度操作までしている節がある。今回お前には、依頼に乗じてエル山脈に侵入、その個体の確認もしくは撃破をしてもらうつもりだったのだよ」
「なるほどな。Sクラス魔獣すら追い出すと来たら、おそらくはSSクラスの可能性が高い。ガルーダの精鋭を集結させてもなお被害がでかくなる敵だ。ゆえに俺にぶつけさせて秘密裏に処理、敵国には強い戦士がガルーダにいると思わせることでけん制にもなると。単純に討伐依頼を出して俺に処理をさせなかったのは俺の存在を他国から隠したかったからか?」
「そんなところだな。いくら国軍に入る気はないとはいえ、優秀な冒険者はいてくれるだけで価値がある。可能なら囲い込みくらいはするさ」
そういうビスマルクの顔は国を思う為政者の顔だった。
「……わかった。いろいろ言いたいことはあるが今回はおとなしく依頼に従おう。少なくともお前の判断が国家元首として間違っているとは思わないしな。ただし、今後この手の依頼を出すときはややこしいことはしないで普通に出せ!いちいち物事の裏を読むのは面倒なんだよ」
実際、そのためのクロード・ランベルクなのだ。
「何を言っている。冒険者たるもの、依頼の裏を読むことは常に必要だぞ。それを怠ったがために陰謀に巻き込まれ死んでいったものを冒険者時代に何度も見ている。先輩としての忠告だ」
「なるほど、じゃあこっちも先輩の顔を立てて辺境伯のことは聞かないでおいてやるよ」
貴明がそう切り返すとビスマルクはぎょっとした顔になる。
「……何の話、……いや、隠しても仕方ないな。やはりお前もそう思うか?」
「十分あり得る、と思っている。そっちの調査はコーウェン隊長とやらに任せるつもりか?」
「それしかあるまい。さすがに2度も我が国の問題でお前の手を煩わせるわけにもいかぬし、何よりこのようなことを第3者に頼むなど我が国の恥だ」
ビスマルクが深いため息をつく。国家元首としては比較的若い30代の彼の眉間には深いしわが刻まれていた。
「それについて1つ提案があるんだが。ここはあえて俺に任せてみないか?あんたにとっても俺にとっても悪いようにはしないぞ?」
「俺にとっても、というところがお前の思惑をはっきりと物語っているな。件の魔獣討伐の報酬のつもりか?」
探るような目を貴明へと向ける。
「あんたにとっても悪い取引じゃないはずだ。本来だったらSSクラスの魔獣討伐なんて小白金貨10枚でもおかしくないんだぞ。しかもうまくいけば今あんたが1番欲しがっている情報まで手に入るんだ。どうだ、乗ってみないか?」
ニヤリ、と笑う貴明を見て、ビスマルクもようやく笑顔を見せた。
「……よかろう、この際お前に任せるのも悪くない。10億フォルもの大金を失うのも惜しいしな。だが!交渉の経過報告は正確にコーウェンへと行うのだぞ。加えて今回の一件で見聞きした我が国の内情に関するすべての口外を禁ずる。わかっているな?」
「了解だ。さすがにガルーダ1国を敵に回すのは骨が折れる。おとなしく従おう」
「……お前にとってガルーダは骨が折れる程度なのか?」
再びため息をつくビスマルクであった。
「さて、それじゃそろそろお暇しよう。夜分に悪かったな」
「今後は城壁にも警備を集中させなくてはならんな。しかしあれだけ話していたのに誰も気づかぬとは、衛兵は本当に何をやっておるのだ?」
話し合いが終わり、貴明が退出しようとするとビスマルクが愚痴をこぼす。警備の甘さを嘆いているようだ。
「あ、それはしょうがないよ。俺が防音魔法をかけておいたから」
「……この区画では余の許可したものしか魔法が使えぬよう城に魔術刻印がなされていたはずだが?」
以前貴明が侵入したとき、あまりにもあっさり侵入されたため警備担当のものが付け加えた防犯機能の一つだ。
「ああすまん。変な干渉があると思ったらそれが原因だったのか。力づくで力場を破ったから多分刻印も壊れてると思うぞ」
「……後で修復、強化するよう伝えておこう」
頭痛がする、という顔のビスマルクを見ながら「そのほうがいいな」、と笑って彼の肩をたたく貴明。
2度目の真夜中の会合はこうして終了した。
サブタイ考えるの意外と難しいですついつい適当になっちゃいますしょうがないんです!
補足ですがこのリベラ大陸における軍の編成は
分隊15人
小隊50人
中隊150人
大隊500人
連隊1500人
旅団3000人
師団5000人
軍団10000人
となっております。現実の軍の編成とは異なってます。




