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ギルド会館にて

ようやく冒険者登録にこぎつけました!これまで長かった…!もう少ししたら第1章が終了し新章に突入します。



週一更新がほんとに厳しくなってきた…!

貴族派の重鎮たちが処刑されてから3日後の朝。


貴明はガリウスやサーシャたちと連れ立って冒険者ギルド会館へと向かっていた。目的は貴明の冒険者登録、およびガリウスたちの冒険者復帰である。子供たちは全員レベルが30未満であり、冒険者登録の条件を満たしていないため今回は見学がメインである。


なぜ3日後であったかというと、財務卿や高等法院次長といった行政部や騎士団長・連隊長といった軍部の高官たちが一斉に粛清されたために少なくない混乱が起こったためだ。


以前ビスマルク5世が行った綱紀粛正時は皇帝側の面々が綿密な計画を立てて行ったためさほど混乱は起きなかったが、今回の件は皇宮側からしたら青天の霹靂であり対応が間に合わなかったのである。


そのため帝都の公的機関は一時的に機能を停止し、国家機関とも一定の相互関係にある冒険者ギルドも新規登録ができなくなっていた。ヨハンもこの3日間は忙しく働いており、ようやく混乱が落ち着いたためこうして出向くことになったのである。


 


「そういや俺、まだギルド会館見たことないな」


貴明が唐突につぶやく。その声が聞こえる位置にいたガリウスとグレンは顔を見合わせると、ああ、と納得した顔で返事を返す。


「そういえば帝都についてから爺さんの屋敷に直行したんだったな」


「やっこさんの屋敷を襲撃した後は子供たちの訓練で街を離れてやしたからね」


そこまで言ったところで彼らの話し声が聞こえたのだろう、ナユタとイリスが会話に入ってくる。


「そういえば兄さんは結局のところ、どのランクで登録するんですか?ヨハンさんと話していたときに実名や本当のレベルは申告しない、みたいなことを言ってましたけど」


「……お兄ちゃん、ウソのお名前使うの?」


最近この2人は貴明のことを兄さん、お兄ちゃんと呼ぶようになった。理由は「なんとなくお兄ちゃんっぽいから」だそうである。


貴明がそちらを見るとどうやらほかの子供たちも気になるのか、みんな興味深げな顔で貴明のほうを見ていた。


「そうだなぁ、とりあえずランクはBかな。いきなりAやSクラスで登録したら妙な噂が立ちかねないからね。名前は『クロード・ランベルク』で登録するよ。あとイリス、別にウソの名前じゃないぞ。もう1つの本名だ」


イリスの言葉に苦笑しつつ貴明は答える。事実、本来このキャラクターステータスの持ち主はFOEのアバター、『クロード・ランベルク』のものであるため、ある意味こちらも本当の名前といえるのである。


以前登録についてヨハンと相談した際、貴明は偽名で登録することを希望した。貴明のレベルは255、いかに隠そうとしてもいずれその力は周囲に知られてしまう恐れがある。貴明は名声がほしいわけではないので、仮に名が広まるならば『岡本貴明』ではなく『クロード・ランベルク』のほうがいいと判断したのだ。


「わたしとしてはいまだに信じられないんですけどね。貴明さん…クロードさんですか?…わかりづらいから貴明さんでいいですよね。とにかく貴明さんが冒険者じゃないなんて」


 その声の主である少女、フィーネが貴明を見ながら首をかしげる。




 ギュイーズ公爵邸にて捕らわれていた少女はフィーネと名乗った。年齢は18歳、160㎝程の身長と薄い水色の長い髪と目を持つその少女は、平民でありながらその容姿ゆえにギュイーズの手元に残され愛玩奴隷として調教される寸前だったらしい。


 事実、その容姿は「女神の生まれ変わりじゃ!」とヨハンが騒ぎ出しメイドたちに殴られるほどに見事なもので、アッシュをはじめとする少年たちはみな彼女に話しかけられただけで赤面をしていたものだ。


 ヨハンによるとサーシャの髪や瞳はガルーダの南東に位置するヴェルディア王国の平民層にたまに見られるものらしい。つまりフィーネはヴェルディア人の血を引いていることになるのだが、フィーネ曰くヴェルディアで嫌な出来事があり家族で親戚がいるラービア連邦へ移住することになったらしい。


 内戦中のラービアといえども移住先は主戦場から遠く、平和な生活を送っていたらしいのだが突如そこへ奴隷商たちが現れ連れ去られてしまったらしい。その時に家族や親せきは皆殺しにあってしまったとのことだ。


 最初はギルド関連の施設に預けようかとヨハンがフィーネに伝えたのだが、彼女は貴明たちとともに冒険者として生計を立てたいと主張したため、一時的に貴明預かりにして子供たちとともに訓練を施すことにしたのである。




 貴明が数日前のやり取りを思い出していると、フィーネと同じ感想を抱いていた子供たちが口々に同意する。


 フィーネや子供たちの追及をかわしながら一向が帝都のメインストリートを進んで行くと、正面に2本の剣が交差し、その後ろに盾が描かれている看板を掲げた大きな建物が見えてきた。


「みんな見えてきたぞ。あれが冒険者ギルド神聖ガルーダ帝国本部ノール会館だ」


 先頭を歩いていたガリウスが後続に声をかけながら会館を指さす。ユリウスたちは久しぶりに正面から堂々とギルドに入れるとあって感慨深げだ。


「貴明さんの話はヨハンさんから職員の方に通っているはずなのでスムーズに済むはずです。貴明さんには規則などについて、以前僕らからざっと説明しましたけど、詳しいことは受付で聞いてください」


 正直細部まで覚えてないんです、と照れ笑いしながらユリウスが言う。


「そのほうがよさそうだな。……よし、それじゃ行きますか!」


 改めて気合を入れなおし、一行は会館内へと入っていった。




 ギルド会館は1階から3階までが吹き抜けとなっているつくりの8階建ての建物だった。早朝であるためあまり込み合ってはいないが、それでも少なくない冒険者が1階のホールに集っていた。


 彼らは15名近い子供が入ってきたことに驚きつつも、その集団にガリウスたちの姿を見ると笑顔で声をかけてきた。不当な言いがかりでガリウスらが冒険者の地位をはく奪されたことはすでに知られており、無事に復職できたことを祝ってくれている。


 グレンなどが後程祝宴を上げる約束をしてこの場はいったん彼らと別れ、一行を先導するガリウスが1階ホールの奥にあるカウンターへと歩み寄る。


「おはようイリナ。ギルドマスターから話は聞いてるかい?」


「おはようございますガリウスさん。皆様、冒険者への復帰心からお待ちしておりましたよ。ギルドマスターからお話を伺っております。皆様の復帰の手続き、およびクロード・ランベルク様の冒険者登録ですね」


 ガリウスがカウンターに座っていた20代くらいの受付嬢とあいさつをかわす。


「あなたが貴明様ですね。今回登録のお手伝いをギルドマスターから言いつかっておりますイリナ・ベルナルドと申します。ガリウスさんたちは2階の受付でギルドカード更新手続きを行ってください。貴明様は私とこちらへ」


 そういってイリナは席を立ち貴明を先導するが、一瞬ガリウスと視線を交えたことに貴明は気づく。


「イリナさんはヨハンさんのお孫さんで、ガリウスさんの婚約者なんです」


 と、そのやり取りを見ていたユリウスがそっと教えてくれた。




 フィーネと子供たちをギルドの職員に預けた後ガリウスらと別れた貴明は、イリナの先導のもと8階にあるギルドマスターの執務室、つまりヨハンの部屋へとやってきた。


「ギルドマスター、ランベルク様をお連れしました」


「うむ、入りたまえ」


 失礼します、とイリナがドアを開ける。


 中は執務室と応接間が一緒になったようなつくりの広い部屋で、書類に目を通しているヨハンが1人デスクに向かっていた。


「おお、よう来たな貴明。こやつはワシの孫のイリナじゃ。イリナにはおおよその事情を話しておるからここの会館を利用するときに何か困ったことがあればこの子に頼るとよいぞ」


「改めまして、貴明様。ヨハンの孫で冒険者ギルドノール会館専属冒険者のイリナです。このたびはガリウスさんたちの汚名返上にご協力いただき誠にありがとうございます!」


 自分の婚約者が犯罪者扱いされるのはつらかったのだろう、目に薄く涙を浮かべながら頭を下げるイリナ。


「ワシももう少し力になれればよかったんじゃがのう。イリナやガリウスたちにはつらい思いをさせたもんじゃ」


 孫の頭をなでながらぼやくヨハン。ガリウスたちの前ではそんな様子は見せなかったが、やはり責任は感じていたのだろう。


「話が脱線してしまったの。貴明よ、今回お前には2つのギルドカードを作ってもらう。岡本貴明としてのものとクロード・ランベルクとしてのものじゃ」


 これもあらかじめ決めていたことだ。いくら目立ちたくないといっても、貴明が冒険者登録するのはこの世界での身分を明確にするためだ。仮に岡本貴明の名前が世に広まってしまった場合の保険、もしくはどうしても己の力を最大限に発揮しなければならない時の身代わりとしてクロードの名前で登録する。


「それでは貴明様。こちらの書類にお名前、出身地、レベルをお書きください。貴明様のものとクロード様のものをお願いします。出身地は必ずしも書く必要はありませんが、名前とレベルは必ずお書きください」


 イリナによって応接用のソファーに座った貴明の前に2枚の書類が差し出される。貴明は出身地は空白、レベルは貴明としてのほうは140、クロードとしてのほうは255と記入した。


「それではこちらの水晶に掌を押し当ててください。この魔具で本人の名前とレベルが一致しているかの確認と、年齢や各スキルレベル、熟練度の確認を行います」


 言われたとおりに手を乗せる。すると水晶が光だし、様々な文字が表面に浮かびだしたと思うと、唐突にその文字や光が消えた。


「……はい、『クロード・ランベルク』様としてのカードは完成しました。こちらです」


イリナがそう言って1枚の金属製のプレートを差し出す。手のひらサイズのそれは銀色に輝いており、表面には冒険者ギルドのマークである、会館の看板に書かれていたあの剣と盾の紋章が描かれていた。


「そのカードは本人が提示したいと思った時に本人が望んだ情報が浮かび上がってきます。本人でなければ情報を提示できないため本人確認の方法として用いられます。ギルドに対し何かしら不利益を与える行いをした場合、カードが黒く変色しますのでお気を付けください」


「何かしらの事情でやむを得ず、という場合はどうすればよいですか?」


 少し気になり質問する。


「その場合はギルドへその時の状況の説明を行ってください。仮に情状酌量の余地あり、と判断された場合は罰金などで許されることがあります。それ以外でカードを元に戻すには、ギルドが提示する懲罰用の高難易度クエストを行ってもらいます」


 かなり大変ですので気を付けてくださいね、と笑顔でウィンクされてしまった。


「あと仮に紛失された場合、どのような理由があれ再発行に小金貨10枚、10万フォルがかかるのでご注意ください。今回のガリウスたちの場合は紛失ではなく再登録ですので罰金はかかっておりません」


 そこまで説明すると、イリナはもう1枚のカードを取り出した。


「こちらは『岡本貴明』様としてのカードですが、少々手を加えて情報の書き換えを行います。本来は規則違反ですが、ギルドマスターの許可がある場合特例として行われております。クロード様として依頼をうける際にはこちらをご提示ください。貴明様のほうは明日完成しますのでまた後日お越しください」


 カードの説明は以上で終わったため、貴明とイリナはカウンターへと戻ることとなった。そこでギルドの規則や以来の受け方といった説明を行う。


 ヨハンに礼を言い、貴明はイリナとともに部屋を後にした。


現段階でいろいろ「…ん?」と思われる個所がちらほらあるかと思いますが次の回で補足があるので少々お待ちを。


貴明とクロードのギルドカードの設定を変更しました。



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