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ギュイーズ公爵邸襲撃作戦 

何回かに分けようかとも思いましたが一気にすすめました。感想の返事は来週にさせていただきますのでお待ちください。


それではどうぞ!

「常駐の見張りはなし。巡回中の兵が1名接近中だ」


「屋上の見張りは全部で5名。ほかの4人から見えにくいところにいるやつがいるな。そこから屋上に上がろう」


 激しい雨が降る中、ギュイーズ公爵邸を囲む外壁の一角に貴明たちの姿はあった。しかし彼らの体は漆黒の闇に包まれており、はたから見る限りそこに人がいることなど全く分からない。


 彼らは今、作戦開始の前に敵の配置を確認していた。貴明が侵入地点周辺の警備状況を確認しつつ、ガリウスが暗視ゴーグルのようなマジックアイテムを頭に装着し屋上の様子を確認する。


 貴明ならばサーチを使えば暗闇でもある程度敵の配置はわかるのだが、それでも広大な敷地すべてをカバーすることはできない。またレベルが200にも満たないガリウスたちでは目視しなければサーチは機能しないため、そもそもそのような使い方は不可能。よって基本的にこの世界で暗闇の中索敵する場合はこのようなマジックアイテムを使うのである。


「全員準備は整ったか?『黒装の指輪』が正常に機能してるか互いに確認しろ」


「ガリウス班準備完了だ」


「ユリウス班も問題ありません。いつでも行けます」


「よし、それじゃあ時間だ。各員、順次進入開始!」


 彼らは現在ヨハンより借り受けた中位隠密系魔具、『黒装の指輪』というマジックアイテムによって光の反射を最大限抑えることで暗闇に紛れていた。先ほどのゴーグルも借り物の1つだ。指輪の効果を確認した後、貴明の号令で潜入部隊は次々と外壁を乗り越え敷地内へと侵入した。


「……巡回が西側から接近中だ。今のうちに乗り込むぞ」


 あらかじめ念話石を敷地内に投げ込んで警邏の位置を把握できるようにしておいた貴明たちは、巡回の隙をついて広い庭を突っ切り屋敷のそばへと移動する。


「屋上の敵はこの真上に1人、屋敷内へ続く階段付近に2人、そのほか少し離れた2地点に1人ずついる。俺がまず真上の見張りを片付けた後みんなを引き上げるから、その後速やかに制圧しろ」


 貴明がほかのメンバーに指示を出しながら重力操作の地魔法を発動する。はじかれたように貴明は宙に舞いあがり、静かに屋上へと着地した。この地点の見張りはあまりの風雨の激しさに雨具のフードを深くかぶり、貴明とは反対側を見ているためまだ気づいていない。


 静かに見張りに近づく貴明。雨の音で足音は完全に掻き消えているため見張りは全く気付くことができず、速やかに気絶させられてしまう。


 気絶した見張りを拘束した後、貴明はほかのメンバーを引き上げる。彼らは速やかに残りの見張りを無力化すると、雨具代わりの外套をアイテム欄に押し込み屋敷内へと侵入する。


 屋敷の中は魔法石が一定の間隔で配置されておりヨハンの家同様明るく照らされていた。


「敵警備兵が1人魔力供給室の前にいる。あと角を曲がった先の公爵私室前に2人、そのとなりの部屋の前に1人だ。私室の中に2人、太ったのと痩せたのがいる。痩せてるやつはレベル143か、ということはこいつがリーナスか?」


「ああ、間違いないだろう。元神聖ガルーダ帝国帝都守備軍所属第3騎士団長リーナス・クライセフ。あの男は執事と護衛を兼ねてるから屋敷内でもほとんど離れないといっていたからもう片方はギュイーズだろうな。ほかにこの階に誰かいるか?」


「私室の隣室に1人いるな。レベル7だから兵士ではなさそうだ。公爵の身内か否かはわからないが警備兵がいるってことは重要人物とみていいだろう。ほかには見当たらないが、下の階にはかなりの人数がいるみたいだ。時間をかけずにさっさと済ませよう」


「同感だ。予定通り魔力供給装置を破壊した後貴明とユリウス班でギュイーズを拘束、証拠と奴隷を確保。俺の班は階段で敵を足止めだ」

 

 中を索敵しつつガリウスに確認する。そちらも貴明と同意見のようなので早速行動に移る。ステータスにものを言わせて急速に接近してきた貴明に警備兵は対応できず撃沈、手から滑り落ちかけた鉄杖が床に落ちるのを追いついたユリウスが受け止め、速やかに室内へと押し込む。


「貴明さん、ここまで静かに倒せるなら明かりを消して敵をひきつけずに終わらせたほうがよくありませんか?」


 一連の手並みを見た仲間の1人が問うが貴明は首を横に振る。


「いや、今はうまくいったが次も成功するとは限らない。臨機応変に対応するのも確かに大事だがここは予定通りにいこう。グレン、やってくれ」 


「よっしゃ、任せてくだせぇ。みんな『夜鷹の瞳』をつけろ、暗くなるぞ」


 グレンに言われ全員頭に先ほどガリウスが使っていたゴーグルを装着する。貴明も顔を隠す意味も込めて装着した。


「みんな準備はいいな。いくぜ!」


 グレンが小さく気合を入れ、手にしたバトルアックスで装置を破壊する。


 その瞬間、屋敷の光がすべて消えた。




「む?なんだ、供給装置が魔力切れでも起こしたか?」


「かもしれません。だれか見に行かせましょう」

 

 不意に暗闇に包まれた部屋で公爵と執事の主従は状況の確認をする。リーナスは部屋の前の兵に様子を見に行くよう指示し、室内に据え付けられた非常用のランプに火をともす。その後部屋に据え付けられたベルを鳴らし、階下の護衛隊に上がってくるよう指示を出す。


「どうしたリーナス、兵など呼びつけるなど。何か気になることでもあったか?」


その様子を見たギュイーズの問いに、眉間にしわを寄せてリーナスが答える。

 

「いえ、特別何かあったわけではありませんが何か嫌な予感がしまして。旦那様も念のため武装をしておいてください」


 自らも帯剣しつつ進言する。見た目は太った中年でしかないギュイーズだが、これでもレベルは101である。この世界では兵を率いるものは相応の力を誇示する必要があるため、王侯貴族は全体的にレベルが高いのだ。


 ギュイーズもその例に漏れないのだが、はっきり言って実戦経験はほとんどない。というのも面倒事は部下に投げ出す者が多いのが貴族で、配下の兵に瀕死になるまで魔獣を攻撃させた後、止めだけを刺してレベルを上げるものがほとんどなのだ。


 中には自力で高みに上る者もいたがギュイーズはその中に含まれず楽してレベルを上げたため、ただ普通の兵よりステータスが高い素人に毛が生えた程度の力量しかなく、リーナスが帯剣を促したのもあくまで保険でしかない。


「うむ、まあ用心に越したことはないな。一応隣の部屋にも増援を回せ」


「御意にございます。しかし供給室に向かわせた者はまだですかな?少々遅いですな」


 先ほど見に行かせた兵が気になりリーナスが外の兵に確認しようとドアノブに手をかけたところで、戦士としての感覚が激しく危険を訴える。その直感に逆らわずリーナスが飛びずさると、その直後に分厚いドアを突き破り1本の長剣が飛び出してきた。




「アルファ隊、階段を封鎖しろ!ベータ隊は私に続け!」


 様子を見に来た敵兵と見張り2名を倒し、ギュイーズがいると思われる部屋に突撃しながら貴明は事前に決めたコードで仲間に指示を出す。ついでに念のために一人称も変えてみている。


 本来ならもっと静かにやる予定だったのだが、いきなり階下から50名ほどの敵兵が現れたため仕方なく応戦を決断した。ユリウス班は貴明と別れ隣室へと突入する。


「アルファ隊了解!アルファ4、バリケードを作れ!」


「了解!『アースウォール』!」


 階段に陣取ったガリウス班の魔術師が縦2メートル横1メートルの石壁を数枚作り出す。その陰に隠れながらガリウスたちは剣を突出し、魔法で攻撃し、踊り場の手すりから手ごろな家具などを投げ落とす。


 暗闇の中での戦闘で敵は思うように戦えない。持ってきた松明たいまつやランプは魔術の風や水で消されたり、攻撃によってとり落とし屋敷に燃え移りそうになりあわててもみ消す。


 数に任せて押し上ろうとすれば、ガリウスたちが身を隠す石壁が階段を滑り落ちてきて兵士を押しつぶす。屋敷内での魔術戦闘は想定していなかったため第1陣の彼らの中に魔術師はおらず反撃もできない。階下の兵たちも異変には気付いていたが暗闇のせいで自分たちの隊長を発見できずろくな行動もできないままうろたえている声が聞こえてくる。


 屋外の見張りも屋敷内の異変には気付いていたが屋敷内からもたらされる情報が錯そうしているため有効な対応をすることができず、せいぜい門周辺の警備を強化することしかできずにいた。


「これならしばらく持ちそうだな。あとはあちら次第か」


 正面の敵に対処しつつガリウスは意識を貴明たちのほうへと向けた。




「な!なんだ貴様ら!わしの屋敷で何をしておる!?」


「旦那様、いったんお下がりください!『ストライクニードル』!」


 貴明が室内へと入り込むといきなり魔法で迎撃された。これに対し剣で薙ぎ払おうとした貴明だが、その前に貴明の体を風の渦が包み込み土の槍をすべてそらす。何事かと貴明は驚くが、よく見るとサーシャから借りたマジックアイテムがほんのりと光っているのに気が付く。


(さっそく助けられたか。ありがとう、サーシャ)


 心の中で礼を言いリーナスへと切りかかる貴明。それに対しリーナスは得意の土魔法で先制してにもかかわらず謎の風で軌道をずらされたことに驚愕している。それでも今までの経験で身についた動きで貴明を迎え撃つが、そのあまりの剣戟の重さにたったの1合で剣を取り落してしまう。


「!?馬鹿な!」


「おいリーナス、いったい何をしておる!早く剣を拾いそいつを倒さんか!」


「旦那様お逃げください!こやつ、わたくしのサーチでもレベルがわかりませぬ。おそらくはSクラス相当かと!」


 剣を取り落すリーナスにどなりつけるギュイーズだが、Sクラス相当という言葉に一気に顔色が悪くなる。急いで壁際においてある本棚へと駆け寄り、その裏にある緊急脱出用の抜け道へと逃げ込もうとする。


 ギュイーズが本棚を押すのを見た貴明はそれを阻止すべく近寄ろうとするが、リーナスがそれを許さない。いかにレベルに差があろうと実戦経験豊富な元騎士団長である。的確な動きで貴明の進路を妨害する。


 しかしそれでもレベル255である貴明を止めることはできなかった。リーナスはギュイーズに与えられた高位魔剣や身体強化の魔具を装備していたが、その彼が放った渾身の一撃をいともたやすくさばききりカウンターの胴薙ぎを入れる。


 最初は生け捕りも考えた貴明だが、いざ対峙した時にこの男は捕えても何も話さないだろうと直感した。事実それは当たっており、瀕死の重傷を負ったリーナスは懐から炎の魔法石を取出し、貴明ごと巻き込んで自爆した。


 間一髪反応できた貴明はリーナスの周りに水を含んだ竜巻を形成、炎が外に漏れるのを防ぎ鎮火するが、中心にいたリーナスはすでに高温の炎に包まれ焼死していた。


 それをしり目に貴明はギュイーズを追う。幸いほとんど逃げる暇もなかったギュイーズはあえなく貴明に拘束されリーナスの死体の横へと転がされる。


 リーナスの焼死体を見て顔を真っ青にするギュイーズに貴明が奴隷売買に関する書類の在り処や屋敷内の奴隷の有無に関して詰問するが、ことが露呈したら身の破滅であることを自覚している彼は断固として口を割らない。


「貴様!わしにこんなことをしてタダで済むと思うのか!?今なら見逃してやるからさっさと解放せんか!」


 自らの状況がわかっていないギュイーズの発言にあきれつつ、貴明は無表情に彼の指を1本切り落とす。大声でわめき散らすギュイーズに冷たく言い放つ。


「貴様をどうするか決めるのは我々だ。お前は黙って質問に答えろ。お前が答えるまで剣を体に突き立てては回復させ、四肢がなくなろうと何度でも切り刻んでやるぞ」


 あまりの激痛とそのセリフにギュイーズの公爵としての意地はたやすく崩れ去り、股間を濡らしながら質問に答える。何本かまた指を切り落とし公爵が嘘をついていないか確認していると、ユリウス班が1人の少女を連れてやってきた。その手には手錠がかけられている。


「ブラボーリーダー、隣室でとらわれていた少女を確保しました。奴隷として囚われていたようですが念のため拘束してあります。それから別の部屋に金庫がありました。書類はこの中かと思われます」


 ギュイーズの惨状を見ても顔色一つ変えずユリウスが報告する。その様子を見てなんだかんだで場馴れしてるんだなぁ、などと感想を抱いた貴明だったが気を取り直す。


「了解ベータ1。公爵に確認を取った結果対象は彼女1人のようだ。証拠もその金庫の中にあるらしい。念のため拠点にたどり着くまで彼女は拘束しておけ。これが金庫のカギだ、中身を確認し間違いなければすべて持ち出せ。その後アルファ隊とともにこの場を離脱する!」


「了解です!」


 ギュイーズの懐から取り出した金製のカギをユリウスへと手渡し、貴明はギュイーズを気絶させた後魔術防止の刻印付き手錠をかけて耳栓と目隠し、猿轡を施し麻袋を被せる。公爵の運搬をユリウス班の一人に任せると、貴明はガリウス班が陣取る階段へと向かう。


「アルファ1、作戦は成功だ。速やかにこの場を離脱する」


「了解だブラボーリーダー!それじゃあ仕上げを頼む!」


 何とか敵の攻勢を凌いだガリウスたち。たびたび窓から侵入した者もいたようだが、すべて警戒に当たっていた遊撃のユリウス班に片づけられたようだ。


「任せろ!『氷陣・散華』!」


 ガリウスの言葉に応じ貴明は階段にひしめく敵兵に魔法を放つ。FOE時代に作った貴明のオリジナル魔法であるためこの世界の魔法とだいぶ名前が変わっているが、その効果は文句なしの威力を持っていた。


 氷系魔法『氷陣・散華』。効果範囲は使い手のMP消費量で変わるが、対象の足元50センチメートルを完全に凍らせ身動きを封じ、さらに氷の表面に鋭い氷の槍を大量に生やす。少しでも身動きすれば先端が体に突き刺さり血が花のように散ることから貴明はこの名をつけた。


「これでしばらく時間を稼げる。離脱するぞ!」


効果を見届けた貴明はガリウス班を引き連れその場を後にした。




「ストライクリーダー、書類はすべて押収しました。確かに奴隷売買の契約書です。敵が来る前に早く離脱しましょう。さすがにそろそろ帝都守備隊が気付くころです」


屋上に貴明たちが上るとすでにユリウスたちが待機していた。ギュイーズは麻袋の中、少女も騒ぐことなく貴明たちを待っていた。しかしみな顔を隠し正体も明かさない貴明たちに警戒のまなざしを向けている。


「さすがに警備兵が庭中に散らばっているな。仕方ない、最短ルートで敷地内を突破する。外壁を飛び越えたら目標地点まで突っ走るぞ。っと、そのまえに。『炎弾・爆』!」


逃走ルートとは真逆の地点に炎魔法を放つ。着弾した途端大きな音をたて爆発し、その音につられて敵兵がそちらへ急行する。


「これでかなり敵は減ったな。厩舎もここから離れてるし破壊しに行くのも手間だ。さっさとずらかろう」

 

「……今の音で間違いなく帝都守備隊が気付いただろうしな。そうしたほうがよさそうだ」


妙なところでやることが過激というか大雑把な貴明にガリウスがあきれつつ答える。




 その後、潜入部隊は屋敷から無事離脱に成功、帝都守備隊に気を付けつつ闇の中へと姿を消した。







どうもワードで作った文をコピーした時に段落が勝手に無効になってたみたいです。今回は一応チェックしたので大丈夫だと思います。…なんか違和感あるなぁ。


誤字脱字、矛盾点、感想等ありましたらお願いします。

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