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ギュイーズ公爵邸襲撃作戦 直前

お待たせしました!何とか週一更新は守れた(汗)お気づきかと思いますが、タイトルが前回と一緒で前回のが変更しました。紛らわしくてすみません。

馬車襲撃3を改稿してヒロインの容姿を加えました。なぜ今まで忘れてたし。


それではどうぞ!

某日午後10時、ギュイーズ公爵邸。


「ひどく降るな。どうだ、調教術師は来れそうか?」


昼間同様窓の外を眺めながら、ギュイーズは傍らのリーナスに本日5度目の確認をする。昼過ぎから降り出した雨は激しさを増し、今となってはさながら滝と形容できるほどとなっている。その雨のせいで、本来ならすでに到着しているはずの調教術師がいまだ姿を現さないのだ。


それに対しリーナスは首を横に振り、同じく5度目の返事をする。


「いいえ旦那様。まだ到着しておりません。彼のものは近隣の街からこちらに馬車でやってくるといっておりましたから、この嵐につかまり身動きが取れずにいる恐れがあります。今夜中に到着することはないかと」


一言たりとも変わらぬ返答に苛立たしげに舌打ちし、ギュイーズは今夜調教する予定だった少女を閉じ込めている隣の部屋を憎々しげに見つめる。


「まあ良い。どのみち結果は変わらんのだ。それはそうと、この雨では商隊の到着も遅れるのではないか?」


「おそらくは問題ないかと。護衛隊のトルーマンに何があろうと遅れることの無いよう伝えてあります。奴も積み荷の重要性は理解しているでしょうから、予定通りに戻るでしょう」


その答えにギュイーズは満足そうにうなずく。が、少々首周りのぜい肉が付きすぎているため、はた目にはうなずいているようには見えない。


「うむ、それならばよい。もし高値で売れそうならダンザ伯爵に連絡を入れろ。彼は以前から新たな性奴隷を欲していたからな」


「御意にございます」


ギュイーズに向かって頭を下げるリーナス。それを見届けた後、調教に充てるはずの時間が空いたため何をするか考えつつ、ギュイーズは奴隷を閉じ込めている部屋へ視線を送る。彼女が調教によってどのように変化するかを思いにやにやと顔を緩ませた後、不意に外から響いてきた雷の音によって視線を窓の外へ移し本日6度目の質問をリーナスへと投げかけた。




ヨハンの自宅で作戦会議を終え出陣に備えて皆が準備をしている中、貴明はサーシャに呼び出され個室の中で対面していた。


呼び出したサーシャはとても緊張した表情で貴明を見つめていたがなかなか踏ん切りがつかないようで、一向にしゃべりだそうとしない。貴明もその様子から無理に促すことをせず、おとなしく話してくるのを待つ。


そのまま5分ほど時間が過ぎたが、ようやく決心がついたようで顔をこわばらせつつ手に持っていた何かを貴明へと突き出した。


「あ、あの!貴明さんにこれを持って行って欲しいんです!」


それは小さなエメラルドの宝石だった。派手な装飾はされていないが、それがかえって落ち着いた雰囲気を出しており作り手のセンスの良さを物語っている。サーシャが身に着けたら髪の色と相まってとてもよく似合いそうだった。


「これはどうしたの?確か持ち物は全部奴隷商たちに奪われたって言ってたけど」


「これはわたしの家に代々受け継がれてきたお守りです。風の魔法が込められていて、矢や簡単な魔法攻撃は防いでくれるんだそうです」


わたしの母の受け売りですが、とはにかみながらサーシャは言う。


「屋敷が襲われたとき、母がこれをわたしにくれました。あなたを必ず守ってくれる、だから決してあきらめてはならないと。そのあとすぐに捕まってしまったためこのお守りのこともあきらめていたんですが、なぜかこのお守りだけは彼らの『神眼』に見つからなかったんです」


この世界では、相手が持ち物を身に着けていなくてもアイテム欄に収納している可能性がある。もし武器を隠している可能性があれば、うかつに謁見をすることすらできない。


それを確かめるため、国家や特定組織に限らず一般市民に至るまで普及している持ち物検査用のマジックアイテムが『神眼』ある。現実世界でいうところのタブレット端末に聴診器がついたようなもので、相手の同意なしで使うのはマナー違反だが相手が所有しているものをすべてリスト表示することができる優れものだ。


FOEでもこの道具は存在し、ボス戦で手に入れたドロップアイテムを秘匿しているものがいないかどうかを確かめるのによく使われた。使用法も相手に聴診器を押し付けるだけでよいので、プレイヤーは軽くお医者さんごっこをやっている気分になる。通称『のぞき穴』ともいう。


「わたしの持ち物は衣服から逃亡用の金銭、非常食に至るまですべて奪われましたが、これだけは無事だったんです。きっと今回の作戦でも貴明さんを守ってくれるでしょう。どうかこれを持って行ってください!そして」


そこでいったん言葉を切り、涙にぬれた瞳で貴明を見つめ静かに告げる。


「生きて帰ってきてください。貴明さんだけじゃない。ガリウスさんも、ユリウスさんも、ほかのみなさんも全員、生きて帰ってきてください」


サーシャは今回の作戦内容を聞いているため理解している。たった10数人で500人近くの兵士が守る屋敷を奇襲するということを。そしてそれがいかに危険であるかを。


本来なら止めたい。しかしやらねば今回の件に片が付かず、さらに多くの奴隷が生み出されてしまうことも理解している。かといってサーシャが一緒についていくことなどできない。ただの足手まといになるだけだ。


ゆえにサーシャは貴明に願う。この一件に決着をつけることを。ほかに奴隷がいれば助け出してくれることを。無事に生きて帰ることを。


それらのことを察した貴明はサーシャの目をしっかりと見つめ、しかとうなずく。


「ああ、任せておけ。みんな無事に連れ帰ってくるし、奴らの証拠も残らず持ち帰ってきてやる。俺に至っては無傷で帰ってきてやるからな!」


なんたってレベル255の冒険者だぞ、と軽くおちゃらけて返す。


貴明がサーシャを気遣いあえてお気楽な返事をしたことをちゃんと察したサーシャは、たまった涙をぬぐい笑顔で答える。


「未満ですけどね!」




それはそうと、と貴明が切り出す。


「サーシャのそのお守り、もしかしたら継承アイテムじゃないのか?」


「『継承アイテム』?」


サーシャが首をかしげながら聞き返す。


『継承アイテム』とはその名の通り、代々受け継がれたものや強力な敵を倒したことによって倒した本人にのみ与えられたアイテムの総称である。


「ああ、さっきサーシャはそのお守りを代々伝わるものだといったよな。その手のものは、持ち主が許可しない限り決して相手に見つからないし、だれにも使うことができないんだ」


「そんなものがあるんですか。貴明さん本当に物知りなんですね!」


キラキラした笑顔で見つめられてしまう。


「いや、あくまでもしかしたらの話だって。とにかくありがたくお借りするよ。死んでも壊さないから安心しろ!」


「もう!死んでまで守ったって本末転倒じゃないですか!」


その後2人を見つけたイリスとナユタも加わり、出発の時間までの時間を2人で何をしていたのか、というナユタとイリスの猛攻をしのぎつつ過ごしていった。




「貴明、準備はいいか?」


「ああ、いつでも行ける。ほかのメンバーは?」


「ユリウスの奴がギルドマスターに捕まってますぜ。なんでも役に立つアイテムやらなんやらを持って行けって言われて一緒に保管庫に行ってやす」


貴明が正面玄関のホールに到着するとあらかたのメンバーがそろっていた。ちなみに先ほどの会話は上からガリウス、貴明、グレンである。


「おぅ、みな待たせたのう。こやつにいろいろ持たせたから使うといい。説明は馬車で聞くんじゃな」


「遅れてすみません。ギルドマスターから役に立ちそうなものをいろいろいただきましたよ!」


少し遅れてヨハンとユリウスがその場にやってくる。ユリウスの手には人数分のポーチがあり、すでに中身が入っているのであろう、全体的に少し膨らんでいるのがわかる。


「それじゃあそろそろ出発しよう。馬車である程度の距離まで近づいた後徒歩で移動、作戦終了後は予定の場所に行くからそこで待機していてくれ」


ガリウスが今回の移動を任された御者たちに出発を伝える。彼らは首肯すると馬車を玄関まで運びに行った。




馬車が来るまでホールで待っていると子供たちが連れ立ってやってきた。サーシャやイリス、ナユタもいる。その中の一人、自己紹介をしたときアッシュと名乗った人種の少年が一歩前に出て貴明たちへと頭を下げる。


「どうか無事に帰ってきてください。ギュイーズ公爵の罪を立証することも大事ですが、何よりもみなさんに死んでほしくありません。お願いします、どうか御無事で」


それに合わせて子供たちが頭を下げる。皆自分たちを助けてくれた貴明たちを慕っており、自分たちも行きたい!と言い出す子もいたが当然連れて行けるはずもなく。


子供受けが良いユリウスの説得により一応はあきらめてくれたがそれでも悔しさを覚えているのだろう、何人かが唇をかみしめているのが貴明たちから見えた。


「おう、任せとけ!おれたちゃCランク冒険者だ、あんな兵隊どもには負けねぇさ!」


「安心して待ってな!あんな奴ら俺一人でも十分なくらいさ!」


「おいみんな、クランツの奴が全員相手にしてくれるってよ!」


「クランツおめぇ吹きやがったな!よぅしみんな敵はクランツに丸投げだ!」


「ちょぉ!?まてまてお前らまちやがれまってくださいごめんなさい!」


みなが思い思いに子供たちを元気づける。彼らのやり取りを見てようやく顔をあげ笑顔を見せる子供たち。その様子を見ながらヨハンが爆笑し、貴明とガリウスがヨハンを見ながら苦笑する。




その後馬車が到着し、一行はギュイーズ公爵邸を目指した。


結局公爵邸につかなかった!もう少し進行を早くしないと(汗)……が!リアルの行事が立て込んでまして執筆に今までほど時間をとることができません!コメントの返事も最悪まとめて活動報告で、ということになるかもです。論文なんて大っきらいだー!


誤字脱字、矛盾点、感想等ありましたらお願いします。

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