一時休憩
日間ランキング5位に入っていて気絶しそうになりました。まだ皆さんにいろいろ問題点を挙げてもらいながら訂正している段階なので、あまりのPVの伸びる速さに正直焦り気味です。未熟な作品を読ませてしまい申し訳ありません(汗)さらなる向上を目指しますので皆様今後ともよろしくお願いします!
「…と、いうわけだったんだよ。説明下手でスマン」
「いや、こっちこそ悪いな。長々説明させてしまって」
「でも…、なんというか相変わらず規格外ですよね貴明さんは。ユニークモンスターのシルバーウルフと契約した人なんて今まで聞いたことないですよ」
サーシャ達3人を連れてアジトに戻り、子供たちの世話をして全員寝付かせた後、貴明は仲間たちに事情を説明した。今の時刻は午前3時。さすがに子供達は疲れ切っており、何人かは(ナユタなど)一緒に聞きたがったが結局眠ってしまった。
「まあとにかく、一応作戦の第一段階は無事終了したわけだ。この後は予定通りに動いていいんですかい?」
グレンが貴明に確認する。今回の作戦は、まず森を抜ける馬車を強襲し子供達及び証拠物品、奴隷商人を確保する第一段階と、貴族の屋敷を襲い関係書類の確保、及び関係者の捕縛を狙う第二段階の二段構えで構成されている。第一段階で目立った負傷者も無く、子供や契約書、指輪に商人を無事に確保できたため、総員で貴族の屋敷を襲撃することが可能だった。
「そうだな。予定通り今晩はこのまま休み、夜明けとともに子供たちを起こそう。その後皆を連れて帝都ノールを目指し、帝都にいるガリウス達の協力者に一旦身柄を預ける。その夜に帝都近郊にある屋敷を強襲するぞ。馬車の到着予定は明日の正午だと商人は言っていたから、不審に思われずに襲撃するチャンスは今日の夜しかない。商人は一緒に運んで拘束しておいてもらおう」
今現在奴隷商人はアジトの奥に拘束した状態で、シルバーウルフのイルが入っていた檻の中に放り込まれている。奴隷の販売経路を聞きだし、ほかに関与したものを教えることを条件に殺さず司法当局に引き渡すことを約束したためだ。それでも奴隷売買は神聖ガルーダ帝国では重罪。おそらくかなり重い罰が与えられるものと思われる。
鍵は壊してしまったため、貴明は土魔法の派生魔法、錬金魔法で檻を改造し、材質を鉄製から地球の特殊合金製に変えた上で、ふたの部分を溶接してしまった。よって商人は貴明に出してもらわない限り、永遠に狭い檻から出られなくなってしまった。
この光景を見た仲間たちは、錬金までいとも簡単に使える貴明に驚き半分、あきれる半分だった。本来なら派生魔法を使えるだけでも魔術師としては優秀と判断されるのに、そのときに行った錬金はかなりの高スキルレベルと熟練度がなければ到底不可能なほど鮮やかなものだったのである。そのくせ先ほどの戦闘では長剣一本で敵をなぎ払う戦いぶりを見せており、いかに貴明のスペックが異常であるかを皆思い知らされた。
「了解した。協力者の冒険者ギルドマスターには事前に伝書鳩で話をつけているからいつでも動けるぞ。幸い今日の夜は嵐になりそうだからな。屋敷で戦闘が起きても帝都守備隊が聞きつけてくるのは遅れるはずだ。屋敷に忍び込む際もばれにくいだろう」
「問題は貴族の私兵団500人ですけど、正直貴明さんがいれば大丈夫そうですね。敵に気づかれないように屋敷に侵入し、歩哨などは血を出さないように始末または拘束。その後制服を奪って敵に紛れながら書類を捜す班と、貴族や奴隷の身柄を押さえる班に分かれて行動。貴明さんはその間に敵主力を無力化して回る。これでいいんですよね?」
貴明の決定にガリウスが了解の旨を伝え、ユリウスは作戦の最終確認をする。本来は襲撃した馬車の護衛達の持ち物に屋敷内での制服があることを期待していたのだが、どうやら全員アイテム欄には入れていなかったらしい。人が死んだ場合、その人物がアイテム欄に入れていた物や金銭の類は全て死体の周りに飛び出る。それらを確認したところ、誰一人それらしいものは持っていなかったのだ。
それに対し貴明は頷き、仲間達全員を見渡す。
「ああ、それでいい。この件が成功した後、俺がガルーダ帝国主城のガーランド城へと潜入し、ビスマルク5世に証拠と貴族を引き渡す。ガリウスはギルドマスターに俺が忍び込んで内密に会いに行くことだけ皇帝に伝えるよう頼んでくれ。決して警備を緩めることの無いようにな」
今回貴明達が相手にする貴族はとある大派閥の有力者であるため、正規の手順では皇帝の下に連絡が行く前にもみ消されてしまう恐れがある。よって、ガリウスと個人的に繋がりのあるギルドマスターに協力を依頼し、ギルドマスターの伝で直接皇帝に事の顛末を伝えることにしたのだ。
それらのことを確認し終え、今できることが全て無くなったところで貴明は休憩を宣言する。
「よし!それじゃあ今はこれくらいにしてみんな休もう。まだ2月だから夜明けは遅いが、それでもあと4時間ほどで日が昇る。それまでゆっくり休んで英気を養おう。まだ寒いから風邪を引かないようにな」
FOEでもそうだったのだが、この世界は地球と同じく1年が365日で1月から12月まである。リベラ大陸を含め2つの大陸が北半球にあり、1つが南半球。残りの1つが赤道をまたいで南北に伸びている。
皆が解散するのを見送った後、肉体的にはほとんど疲労は無いが精神的に疲れた貴明は、寒い通路を通り自室としてあてがわれた部屋へと1人向かうのだった。
「あれ、おはようサーシャ、ナユタ。まだ暗いのに早起きだね。誰かほかに起きてるかな?」
「あ、おはようございます貴明さん!ガリウスさんはもう起きてらっしゃいますよ」
「おはようございます。やっぱり昨日の今日ですから緊張で目が覚めてしまったみたいです」
貴明が目を覚まし食堂へ入ると、そこにはすでに2人の少女が座っていた。ウィンドウ画面を展開し時刻を確認してみるとまだ7時前。この時期ガルーダのある大陸中央部は8時あたりにならないと日が昇らない。場所によって当然差はあるが。
「お、貴明も起きたか。今この子達にお茶を入れたところなんだがお前も飲むか?みんなが起きだすまでもう少し時間がかかるから、まだ飯を出すわけにはいかないが」
待ってる間に冷めてしまう、とお茶を飲みながらガリウスが言う。
「おはようガリウス。俺ももらうよ。でもガリウスが一番だったか、てっきり一番乗りはユリウスだと思ってたけど」
「一番は僕でしたよ。さっきまで外に出て、魔獣除けの結界が機能してるか確認していたんです」
貴明が挨拶がてら自分の予想を言うと後ろからユリウスの訂正が入った。昨晩はみな疲れていたため歩哨は立たず、貴明が張った結界のみでアジトを守っていたのである。しかし貴明の張る結界は最大熟練度の光魔法で形成されているため、それこそシルバーウルフのオーウェンのような固体でなければ近づくことすらできない。
「おはようございます貴明さん。結界のおかげでゆっくり眠ることができました。さっき確認しましたがすごいですね。全然効力が減ってませんでしたよ」
ユリウスはガリウスに礼を言いながらお茶を受け取り、貴明に報告してくる。
「おはようユリウス。役に立ったならよかったよ。ところで今日の朝飯は何だ?」
基本的にこの集団の食事はガリウスとユリウスが担当している。ほかのメンバーに任せると、魔獣の肉を豪快に焼いて塩を振っただけのものしか出ないため、自ら買って出たらしい。5人で朝ごはんの話で盛り上がっていると次第に人が起きだしてきたため、皆で朝食をとる。まだ起きていない子もいたが、食堂の面積の都合上先に食べることにしたのだ。
その後残りの子供達も朝食を食べ終えたところで、貴明は今後のことについて説明をした。子供達は皆ラービア連邦に帰る場所は無いため承諾し、可能なら自分達を助けてくれた貴明達とともに冒険者になりたいとサーシャやイリス、ナユタを中心に強く希望してきた。それにはまだ今後どうなるかわからないと即答は控え、ことに決着がついてから改めて考えるということでひとまず落ち着いた。
そして午前9時、一向は帝都ノールを目指し移動する。全員馬車や馬に騎乗しているため移動速度は速く、当初の奴隷商人達の計画より大幅に早い午後6時にノールに到着することができた。
というわけで次回から帝都ノールへと舞台が移ります。とはいえまだ都市の描写などはないと思いますが。
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